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茱萸
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ぐみ
ふりがな文庫
“
茱萸
(
ぐみ
)” の例文
庭の
茱萸
(
ぐみ
)
も、つくばいもその頃のなじみである。また清一郎、小三郎などという異腹の兄たちがいたことも記憶のどこかに残っている。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これに呼応するかのように大手の木曽勢は、日宮林の六千余騎、松長の柳原、
茱萸
(
ぐみ
)
の木林の一万余騎も、どっとばかりに鬨の声をあげる。
現代語訳 平家物語:07 第七巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
井戸端の
茱萸
(
ぐみ
)
の実が、ほんのりあかく色づいている。もう二週間もしたら、たべられるようになるかも知れない。去年は、おかしかった。
女生徒
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
重陽の節に山に登り、菊の花または
茱萸
(
ぐみ
)
の実を
摘
(
つ
)
んで詩をつくることは、唐詩を学んだ日本の文人が、江戸時代から好んでなした所である。
十九の秋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
……そこで、
袂
(
たもと
)
から紙包みのを出して
懐中
(
ふところ
)
へ入れて、
圧
(
おさ
)
えて、こう抱寄せるようにして、そして襟を
掻合
(
かきあわ
)
せてくれたのが、その
茱萸
(
ぐみ
)
なんだ。
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
次に遠く西に離れて、
茱萸
(
ぐみ
)
の木の蔭に
稍
(
やゝ
)
新しい墓石があつて、これも臺石に長島氏と彫つてある。墓表には男女二人の戒名が列記してある。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
近くの・名も判らない・低い木に、燕の倍ぐらゐある眞黒な鳥がとまつて、
茱萸
(
ぐみ
)
のやうな紫色の果を啄んでゐる。私を見ても逃げようとしない。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
夏になるとその子を
負
(
おぶ
)
って、野川の
縁
(
ふち
)
にある
茱萸
(
ぐみ
)
の実などを摘んで食べていたりした自分の姿も
憶
(
おも
)
い出せるのであった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
いま花の眼についたは、
罌粟
(
けし
)
、菖蒲、孔雀草、百日草、鳳仙花、其他、梅から柿梨
茱萸
(
ぐみ
)
のたぐひまで植ゑ込んである。
梅雨紀行
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
「真弓殿の唇は、よく熟れた
茱萸
(
ぐみ
)
のようで、唇の紅さが、そのまま小菊の上へ写りそうでならない。
一寸
(
ちょっと
)
拝見——」
百唇の譜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
月日はたちまちのうちに経過して、下枝の
茱萸
(
ぐみ
)
の実が赤く色づき、垣根の野菊が色美しく咲いて、九月ともなった。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
そして向かふの
茱萸
(
ぐみ
)
の根方に、ころがつてゐる手毬を見つけると、急いでいつて、こつそり
懐中
(
ふところ
)
の中へ拾ひこんだ。みんなに見られたくなかつたのである。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
長い冬の荒れた海がしづまつて、水平線が遥かな澄んだ奥の方に休んでゐるのだ。そして雲雀が空に歌ひ、砂丘の
茱萸
(
ぐみ
)
藪へ落下した。それが即ち初夏だつた。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
で、小松や
満天星
(
どうだん
)
や
茱萸
(
ぐみ
)
や、
櫨
(
はぜ
)
や
野茨
(
のいばら
)
などで、丘のように盛り上がっている、藪の蔭に身をかくしながら
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それから女主人は余に向いて蕨餅を食うかと尋ねるから、余は蕨餅は食わぬが
茱萸
(
ぐみ
)
はないかと尋ねた。
くだもの
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
茱萸
(
ぐみ
)
の枝が落ちていた。けさ遊びにきた村の子がすてたのであろう。大きな鳥の羽根をひろう。鳥の落してゆく羽根は天からふった宝ものみたいに子供心に嬉しかった。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
彼は
茱萸
(
ぐみ
)
の枝に
衣
(
きもの
)
の
裾
(
すそ
)
を引っかけながらすぐ傍へ往った。女は
姝
(
きれい
)
な顔をまたこっちに向けた。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
与平治
(
よへいじ
)
茶屋附近虫取
撫子
(
なでしこ
)
の盛りを過ぎて開花するところより、一里茶屋に至るまで、
焦砂
(
せうさ
)
を
匂
(
にほ
)
はすに花を以てし、夜来の宿熱を
冷
(
ひ
)
やすに刀の如き
薄
(
すゝき
)
を以てす、
雀
(
すゞめ
)
おどろく
茱萸
(
ぐみ
)
に
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
そうして一本のやや大きな
灌木
(
かんぼく
)
の下に立ち止まると、手を
伸
(
の
)
ばしてその枝から赤い実を
揉
(
も
)
ぎとっては
頬張
(
ほおば
)
っていた。それは何の実だと
訊
(
き
)
いたら、「
茱萸
(
ぐみ
)
だ」と彼等は返事をした。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
茱萸
(
ぐみ
)
や連翹の木蔭から雉子や山鳥やかけすの類が頓狂な声を立てゝ飛び立つたり
春の手紙
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
信州でも北半分は、
唐辛子
(
とうがらし
)
とか
皀莢
(
さいかち
)
の
莢
(
さや
)
とか、
茱萸
(
ぐみ
)
とか
茄子
(
なす
)
の木とかの、かわった植物を門口に
焚
(
た
)
き、南の方へ行くと
藁
(
わら
)
人形を作りまたは
御幣
(
ごへい
)
を立てて、コトの神を村境まで送り出す。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
漢土にも
伝
(
つた
)
えがある。
汝南
(
じょなん
)
の
恒景
(
こうけい
)
というものの家に、或る日、一仙人がのぞいて
曰
(
い
)
うには、この秋、災厄あり、それを遁れんと思えば、
紅絹
(
もみ
)
の
嚢
(
ふくろ
)
に
茱萸
(
ぐみ
)
を入れて
臂
(
ひじ
)
にかけ高き山に登れと。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
軟らかいふくらみへ針を立てると、ポッチリと
茱萸
(
ぐみ
)
のような血が湧いて来ます。お銀様はそのチクリとした痛みと共に湧いて出る血を、さもいい心持のように眺めてから仕事にかかります。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
四月の十五日頃から、私達は花ざかりの世界を
擅
(
ほしいまま
)
に楽むことが出来る。それまで
堪
(
こら
)
えていたような梅が一時に開く。梅に続いて直ぐ桜、桜から
李
(
すもも
)
、
杏
(
あんず
)
、
茱萸
(
ぐみ
)
などの花が白く私達の周囲に咲き乱れる。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
こまごまと
茱萸
(
ぐみ
)
の
鈴花
(
すずばな
)
砂利に散りあはれなるかなや照りのはげしさ
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
行きずりの道のべにして
茱萸
(
ぐみ
)
の
実
(
み
)
ははつかに
紅
(
あか
)
し
紅
(
あけ
)
極
(
きは
)
まらなむ
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
松が古葉を黄色い
茱萸
(
ぐみ
)
の花の上へ落している。
豆腐買い
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
時も時とて、
茱萸
(
ぐみ
)
にさへ
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
茱萸
(
ぐみ
)
の實食べた
故
(
ふる
)
さとの
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
藪に
茱萸
(
ぐみ
)
の木
別後
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
茱萸
(
ぐみ
)
あかき
短歌集 日まはり
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
いやしくも父兄が信頼して、子弟の教育を
委
(
ゆだ
)
ねる学校の分として、
婦
(
おんな
)
、
小児
(
こども
)
や、
茱萸
(
ぐみ
)
ぐらいの事で、臨時休業は
沙汰
(
さた
)
の限りだ。
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
茱萸
(
ぐみ
)
の
木
(
き
)
林
(
ばやし
)
に、今井四郎兼平のひきいる六千余騎は、
鷲
(
わし
)
の
瀬
(
せ
)
を渡って
日宮
(
ひのみや
)
林に陣を構え、大将義仲は、一万余騎を引き連れ、
埴生
(
はにゅう
)
に陣を敷いた。
現代語訳 平家物語:07 第七巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
近くの・名も判らない・低い木に、
燕
(
つばめ
)
の倍ぐらいある真黒な鳥がとまって、
茱萸
(
ぐみ
)
のような紫色の果を
啄
(
ついば
)
んでいる。私を見ても逃げようとしない。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
千代之助の心を犇と捕えたのは、尼法師の紅い唇——
茱萸
(
ぐみ
)
のように丸くて、茱萸のように艶やかな唇だったのです。
百唇の譜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
五五
あら玉の月日はやく
経
(
へ
)
ゆきて、
五六
下枝
(
したえ
)
の
茱萸
(
ぐみ
)
色づき、垣根の
五七
野ら菊
艶
(
にほ
)
ひやかに、
九月
(
ながつき
)
にもなりぬ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
上の方の
崖
(
がけ
)
ぎわの雑木に
茱萸
(
ぐみ
)
が成っていて、
萩
(
はぎ
)
や
薄
(
すすき
)
が
生
(
お
)
い茂っていた。潮の音も遠くはなかった。松の枝葉を
洩
(
も
)
れる
蒼穹
(
そうきゅう
)
も、都に見られない清さを
湛
(
たた
)
えていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
気になるのは唇が貝の蓋のように薄く、
茱萸
(
ぐみ
)
のように赤いこと、焚火に照らされておりながら、その顔色が蒼味を持って白く、気味悪いほどだということである。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
茱萸
(
ぐみ
)
。これは茱萸としては先づ見ごとな木である。苗代茱萸でも秋茱萸でもない所謂西洋茱萸であるが、根もとから幾本かに分れて枝の茂つてゐる大きな木である。
たべものの木
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
そう思いながら、ふと眼をあげると、坂道の左に、熟れた実をびっしり付けた、
茱萸
(
ぐみ
)
の木があるのをみつけた。宇乃は足を停めて、まあきれいな、と眼をみはった。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
奈良井
(
ならゐ
)
の茶屋に息ひて
茱萸
(
ぐみ
)
はなきかと問へば茱萸といふものは知り侍らず。珊瑚実ならば背戸にありといふ、山中の珊瑚さてもいぶかしと裏に廻れば矢張り茱萸なり。
かけはしの記
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
松の下の
茱萸
(
ぐみ
)
の藪陰にねて空を見てゐる私は、虚しく、いつも切なかつた。
石の思ひ
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
こまごまと
茱萸
(
ぐみ
)
の
鈴花
(
すずばな
)
砂利に散りあはれなるかなや照りのはげしさ
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
悴
(
かじ
)
けたる花し散るなと
茱萸
(
ぐみ
)
折りて
不玉
(
ふぎょく
)
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
核
(
さね
)
ぐみし
茱萸
(
ぐみ
)
は、
端山
(
はやま
)
の
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
うちの
女房
(
かみさん
)
が、
襷
(
たすき
)
をはずしながら、土間にある下駄を
穿
(
は
)
いて、こちらへ——と前庭を一まわり、
地境
(
じざかい
)
に
茱萸
(
ぐみ
)
の樹の赤くぽつぽつ色づいた下を。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二階などからはわたしの庭とも眺められるその松原にはまた無數の
茱萸
(
ぐみ
)
の木が繁つてゐる。それこそ丈低い林をなしてゐる所がある。苗代ぐみもあれば秋茱萸もある。
家のめぐり
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
女中の説明によれば、それは野猪の脂を、
鉄鍋
(
てつなべ
)
に溶かして、その熱で
煎
(
い
)
り焼きにしたのだという。また掛け汁は、
茱萸
(
ぐみ
)
とやまももの実を煮詰めて、絞ったものだ、ということであった。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
○苗代
茱萸
(
ぐみ
)
を食いし事 同じ信州の旅行の時に道傍の家に苗代茱萸が真赤になっておるのを見て、余はほしくて堪らなくなった。駄菓子屋などを
覗
(
のぞ
)
いて見ても茱萸を売っている処はない。
くだもの
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
松の下の
茱萸
(
ぐみ
)
の
藪陰
(
やぶかげ
)
にねて空を見ている私は、
虚
(
むな
)
しく、いつも切なかった。
石の思い
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
茱
漢検1級
部首:⾋
9画
萸
漢検1級
部首:⾋
12画