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羨
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うらや
ふりがな文庫
“
羨
(
うらや
)” の例文
あるいは俊夫君がある事件を解決して多額の報酬を貰うと、それを
羨
(
うらや
)
んで、金員を分与せよなどという虫のいい要求を致してきます。
深夜の電話
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
ある友が
水盤
(
すいばん
)
といふものの桃色なるを持ちしを見てはそのうつくしさにめでて、彼は善き家に生れたるよと幼心に
羨
(
うらや
)
みし事もありき。
わが幼時の美感
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
じっさい動物は
羨
(
うらや
)
ましい。私は、
敏捷
(
びんしょう
)
に枝から枝へ、金網から地上へ跳びまわっている猿が
羨望
(
せんぼう
)
に堪えなかった。実に元気な動物だ。
動物園の一夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
老人はたくみな処世術にたいして尊敬を感じていて、自分にまったくできないことだと知ってるだけに、いっそうそれを
羨
(
うらや
)
んでいた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「如何とも致し難いですましていらっしゃられるのが
羨
(
うらや
)
ましうございますわ、少しはわたしたちの身にもなってごらん下さいましな」
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
羨
(
うらや
)
ましい、
素晴
(
すばら
)
しく幸福そうな眺めだった。涼しそうな緑の衝立の蔭。確かに
清冽
(
せいれつ
)
で豊かな水。なんとなく魅せられた感じであった。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
ニーナ すばらしい世界だわ! どんなにわたし
羨
(
うらや
)
ましいか、それがわかってくだすったらねえ! 人の運命って、さまざまなのね。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
岩本は知られないようにつけながら、……いよいよあの女らしいが、
彼奴
(
あいつ
)
どうしてものにしたろう、と、
羨
(
うらや
)
ましくてたまらなかった。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
地下室の中でも、彼は、遠方から
地響
(
じひびき
)
の伝わってくる爆撃も夢うつつに、
傍
(
かたわら
)
から
羨
(
うらや
)
ましがられるほど、ぐうぐうと
鼾
(
いびき
)
をかいて睡った。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
一方では自分の境遇と比べて見て
羨
(
うらや
)
ましくもあるが、一方では
己
(
おの
)
が愛している猫がかくまで厚遇を受けていると思えば嬉しくもある。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「とにかく、一年でも二年でも、旅でゆっくり本の読めるだけでも
羨
(
うらや
)
ましい。加賀町なぞも君の仏蘭西行には大分刺激されたようだ」
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
屋敷の西側に一丈五六尺も廻るような
椎
(
しい
)
の樹が四五本重なり合って立って居る。村一番の
忌森
(
いもり
)
で村じゅうから
羨
(
うらや
)
ましがられて居る。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そしてそれ/″\の人々が他の職業を
羨
(
うらや
)
んでゐる。併し自分の第一義と信ずる仕事を職業となし得ぬのは何たる苦痛であらう。……
手品師
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
くだんの浪人者は、気もそぞろのふうで、のびあがり、肩で息をしながら、雪をいただいて帰る人びとを
羨
(
うらや
)
ましそうに見おくっている。
顎十郎捕物帳:08 氷献上
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
お舟はそれを
羨
(
うらや
)
ましいもののやうに見やりながらそつと涙を拭きました。何んにも言ひませんが、思ひは千萬無量と言つた姿です。
銭形平次捕物控:175 子守唄
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「それは
羨
(
うらや
)
ましいかぎりですね」と、自分の銀行における地位を考えたKは、言った。「ではあなたの地位は微動もしないのですね?」
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
「家は貧乏ですからね。けれども寛一や、チョコレートぐらいは、新太郎さんを
羨
(
うらや
)
ましがらなくたって、いくらでも買って上げますよ」
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
善
(
よ
)
い
爺
(
じい
)
さんが
測
(
はか
)
らず大福運を得たすぐ
後
(
あと
)
に、きっともう一度悪い爺さんが
羨
(
うらや
)
んで真似そこなって、ひどい失敗をする段が伴なっている。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「いただいています、僧正のこういう自由なお姿を見ているのは、私として、何よりの馳走に存じます。また、
羨
(
うらや
)
ましくも思われます」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
草木の美しさを
羨
(
うらや
)
むなんて、余程自分の生活に、自分の心持ちに不自然な醜さがあるのだと、
此
(
こ
)
の朝つく/″\と身に
沁
(
し
)
みて考へられた。
椎の若葉
(新字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
田舎の紳士が父祖伝来の土地に住むこと以上に、真に立派で
羨
(
うらや
)
むべきことはないと父は心に決め、年じゅう自分の領地で暮らしています。
クリスマス・イーヴ
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
雪子の細胞には、他人のさういふ仕打ちの底の心理を察して
羨
(
うらや
)
むだけの
旧家
(
きゅうか
)
育ちの人間によくある、加虐性も被虐性も織り込まれてゐた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼女はまだ若かった父や母に
猫
(
ねこ
)
の子のように育てられて来た。銀子の素直で
素朴
(
そぼく
)
な親への愛情は、均平にも
羨
(
うらや
)
ましいほどだった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
当時、島の内の自分の家にも奉公人が大勢いたから、自分は彼等があの唄をうたって遊ぶのを見ると、同情もし、また
羨
(
うらや
)
ましくもあった。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そこには何等の努力も義務も附帯してはいない。あの純一無雑な生命の流露を見守っていると私は涙がにじみ出るほど
羨
(
うらや
)
ましい。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ソレ御覧、色狂いして親の顔に
泥
(
どろ
)
を
塗
(
ぬ
)
ッても仕様がないところを、お勢さんが出来が宜いばっかりに叔母さんまで人に
羨
(
うらや
)
まれる。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
また
奥州
(
おうしゅう
)
より出て来たあの
田舎武士
(
いなかぶし
)
が、
御大将
(
おんたいしょう
)
の眼前で晴れの武術を示すなど分に過ぎたる
果報者
(
かほうもの
)
だと
羨
(
うらや
)
んだものもあったろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「おおおお、野郎ども
羨
(
うらや
)
むなよ! 途方もねえ別嬪を貰うのだが、そいつあ好色で貰うのじゃねえ。別の考えで貰うのだからな」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
呑
(
のみ
)
足を投出し居るに九郎兵衞是を見て嗚呼
御前
(
おまへ
)
は
羨
(
うらや
)
ましい
私
(
わし
)
は今此
湖水
(
こすゐ
)
に身を投やうか此帶で首を
縊
(
くゝ
)
らうかと思ひ居たりと云ふを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
彼は
瘠
(
や
)
せた、静脈の透いて見えるような美しい皮膚の少年だった。まだ
薔薇
(
ばら
)
いろの頬の所有者、私は彼のそういう貧血性の美しさを
羨
(
うらや
)
んだ。
燃ゆる頬
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
それがどんなに
羨
(
うらや
)
ましかったろう。そしてその多くの町の子たちが遊びの指導者でもあったのだが、彼らはよく裏切りもした。
旧聞日本橋:02 町の構成
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
遊んでいながら出来る仕事は結構で
羨
(
うらや
)
ましいとか、お袋の話はなかなかまわりくどくって僕の待ち設けている要領にちょっとはいりかねた。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
七十六 この室に蝟集している人々が
即
(
すなわ
)
ち全人類の
僅
(
わず
)
かなる遺族なんだ、この人々の
外
(
ほか
)
に人は無い、けれど彼等は死んだ人の幸福を
羨
(
うらや
)
んだ
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
それと共にいかに恋ゆえとはいいながらかほどまで義理も身も打捨てて構わぬ若い盛りの無分別ほど
羨
(
うらや
)
ましいものはないと思うのであった。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
中にも青木女監取締りの如きは妾の
倦労
(
けんろう
)
を気遣いて毎度菓子を紙に包みて持ち来り、妾の
独
(
ひと
)
り読書に
耽
(
ふけ
)
るをいと
羨
(
うらや
)
ましげに
見惚
(
みと
)
れ居たりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
『えい、
殘念
(
ざんねん
)
だ/\、
此樣
(
こん
)
な
時
(
とき
)
、
本艦
(
ほんかん
)
の
水兵
(
すいへい
)
が
羨
(
うらや
)
ましい。』と
叫
(
さけ
)
んだまゝ、
空拳
(
くうけん
)
を
振
(
ふ
)
つて
本艦々頭
(
ほんかんかんとう
)
に
仁王立
(
にわうだち
)
、
轟大尉
(
とゞろきたいゐ
)
は
虎髯
(
こぜん
)
逆立
(
さかだ
)
ち
眦
(
まなじり
)
裂
(
さ
)
けて
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
自分よりは一つ年上の
甥
(
おい
)
のRが煙草を吸って白い煙を威勢よく両方の鼻の
孔
(
あな
)
から出すのが珍しく
羨
(
うらや
)
ましくなったものらしい。
喫煙四十年
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
政治上の罪は世人の
羨
(
うらや
)
むところと聞けど我は之を喜ばず、
一瞬時
(
いちじ
)
の利害に
拘々
(
こう/\
)
して、空しく抗する事は、余の為す
能
(
あた
)
はざるところなればなり。
我牢獄
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
言葉の端々に滲み出る妻への愛情、六兵衛は心の裡に
羨
(
うらや
)
ましさを感じながら別れを告げて出た、——と表に待っていた吉公が
おもかげ抄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
酒を
呑
(
の
)
み出した紳士のまはりの人たちは少し
羨
(
うらや
)
ましさうにこの豪勢な北極近くまで猟に出かける
暢気
(
のんき
)
な大将を見てゐました。
氷河鼠の毛皮
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
近江屋も相当の身代ではあるが、井戸屋とは比較にならない。井戸屋の名は
下町
(
したまち
)
でも知っているものが多いので、お妻はその幸運を
羨
(
うらや
)
まれた。
経帷子の秘密
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
大村は篤介の
苗字
(
みょうじ
)
だった。広子は「大村の」に微笑を感じた。が、一瞬間
羨
(
うらや
)
ましさに似た何ものかを感じたのも事実だった。
春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
持っておられるのは
羨
(
うらや
)
ましいくらいだ。実にりっぱなものだし、無論ずいぶん高価なものにちがいない。あれは何歳くらいだと思いますかね?
モルグ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
しかもロンドン
以外
(
いがい
)
の
町
(
まち
)
にもわが
東京
(
とうきよう
)
の
帝室博物館
(
ていしつはくぶつかん
)
ぐらゐのものが
無數
(
むすう
)
にあるのは、なんと
羨
(
うらや
)
ましいことではありませんか。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
この宴会に来たものは、永くその面白さを忘れずにいて、ポルジイが柄にない、気の利いた事をして、のん気に歓楽を極めているのを
羨
(
うらや
)
んだ。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
再縁再度の不幸を想いては佐太郎の妻となるべき女を
羨
(
うらや
)
み、佐太郎の一方ならぬ
恩誼
(
おんぎ
)
を思いては、この家を出てまた報ゆるの時なきをかこち
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
身長は五尺四寸を下るまいし、体重は少し
痩
(
や
)
せた時に二十貫といっていた位である。全く、
羨
(
うらや
)
ましい位見事な身体であった。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
先ず大概はわれわれ骨人が
憧憬
(
どうけい
)
してやまないところの、充分な腕を並べていて、その陽気のために、
羨
(
うらや
)
ましくも悩ましい気に
打
(
うた
)
れるのである。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
「そうか。
羨
(
うらや
)
ましいな。Wさんに附いて行くのだから、途中でまごつくことはあるまいが、旅行はどんな
塩梅
(
あんばい
)
だろう。僕には想像も出来ない」
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
年少不良の徒の歌に、私は
屡
(
しばしば
)
、飛びあがる様に新しくて、強い気息を聴いて、
密
(
ひそ
)
かに
羨
(
うらや
)
み喜んだ事も、挙げよとなら若干の例を示す事が出来る。
歌の円寂する時
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
羨
常用漢字
中学
部首:⽺
13画
“羨”を含む語句
羨望
可羨
御羨
物羨
健羨
艶羨
欣羨
羨怨
気羨
遠羨
羨道
羨渓
羨涎
羨殺
羨望者
羨敷
乗羨
歆羨
欽羨
御羨敷
...