)” の例文
これからちょうど、その無尽むじんり札が始まろうというところ、身共の手に、首尾しゅびよく札が落ちたら、その上で御相談しようではないか
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かなり遠方からやつて来たといふ栗毛の馬とり合つたあげく、相沢の馬は優勝をち得て、賞品ののぼりと米俵とを悠々と持つて行つた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
それでただり上げを、永久の競り上げ——他人よりもまさり自分自身よりもまさろうとする——を、なさなければならなかった。
少し草臥くたびれ加減の私の二円五十銭のネクタイは、たとえ硝子ガラスでも燦然さんぜんたる光のせいで、たちまち五円ぐらいの値打にり上ってしまった。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
専務は更に五十円の賞与を賭けた。だが、依然として行く者は誰もなかった。五十円が百円に昇り出した。百円が百二十円にり上った。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
かけてあった取り残しの無尽を安くって落したくらいであったので、病気になってからも思うような保養も出来なかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ところがだんだんとりおろして来て、いよいよ零に近くなった時、突然として暗中あんちゅうからおどり出した。こいつは死ぬぞと云う考えが躍り出した。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今は季節であるから盛に若芽をふいているが、仔細に見ると、老木の割に若芽がひどくい過ぎるように思われる。
則重の本陣近くでもり合いが続けられていたのであったが、いち早く弾丸の放たれた方へ視線を向けた河内介は
それは二十六七に見える女で、髪を勝山まげにして紫の手柄をかけていた。金五郎はその偶人を二十五両でり落として得意になっているところであった。
偶人物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
私たちもり抜いて二枚の油絵を買った。グジコフ筆「窓の静物」とガボリュボフの「クレムリン」「雪景」。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
恋のい——あまりにも露骨むきだしな、われとわがこころの愛憎に驚きながらも、弥生は日夜そのお艶とやらを魔神にかけてのろわずにはいられなかったのだ……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「おや、お蝶さま、早く上ってご覧なさいましよ。蚤の市からりが始まってしまったのでございます」
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
一年の半分は何とか彼とかり合っている。然うしてそれが大きくなると必ず僕のところへ持って来るから厄介さ。一度は亭主が何うしても離縁すると言い出した。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それより早く、一足飛びこんだ葉之助、ガッチリ受けて鍔元つばもとり合い、ハッと驚くその呼吸を逆に刎ねて体当り! ヨロヨロするところを腰車、さっと払って横へ抜け
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さあ骨董が何様して貴きが上にも貴くならずに居よう。上は大名達より、下は有福の町人に至るまで、競つて高慢税を払はうとした。税率は人〻が寄つてたかつてり上げた。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
両岸はり合うように近くなって、洗ったような浅緑の濶葉に、蒼い針葉樹が、三蓋笠さんがいがさかさなり合い、その複雑した緑の色の混んがらかった森の木は、肩の上に肩を乗り出し
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
坪二両に立退料三百両というところまでりあげたが、それでも頭をたてには振らない。
顎十郎捕物帳:18 永代経 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
金魚鉢の中で、火焔だけがり上りだしたのであった。見る見るうちに火焔の底が現れた。火焔はズンズンのぼってゆく。やがて金魚鉢の頂上のところ一面に焔々と火は燃え上った。
火葬国風景 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それはそうとしても、今までにはもっと立派な地所がいくらもり売りになったんだ
と云うのは、母とり合い、陥し入れてまでも、幻の彼を占めようとしたからです。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
結局は姉妹きょうだいのあさましいあいになって、お互に気まずい思いの数々を、味わわなければならぬと思うと、今更美沢に手紙一つ書きにくく、電話一つかけにくいような、割切れないものが
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
二つの声が同時にり合って起り、甲高い方が一方を強引に押し切って
乳房 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
あの樣子の良い内儀が顏を出して愛嬌あいけうを振りくから、皆んなはずみが付いて、り合つてやつて來まさア、石川五右衞門が夫婦づれで來たつて、聖天堂の側なんか寄りつけるものぢやありません
自然りあげられて、一台千円などという法外な値となります。向側は何事もなくて、立派な家が並んでいます。そこの人たちはそれぞれ地方などへ疎開して、空家あきやに留守番だけがいるのでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
その間も、フィラデルフィアのロス氏のもとへは、一通ごとに脅威を強調した誘拐ゆうかい者の手紙が、間断なく配達されていた。身代みのしろ金は、五万ドルにまでりあがっていた。もう一日の猶予ゆうよもならない。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
出世をり合うて呪咀のろい合うものと聞いた、蔵元屋の前の御寮さんが、コッソリ里子に遣ったままにして置いた芋屋の娘……正しく蔵元屋の血統ちすじを引いた、お熊さん同様の一点の疵もない卵の剥き身
ついばむ雀の羽根にましろくたまり時の間消ゆる霰のしら玉
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ままになるなら、自分は退いてもよいから、平田氏を三十三間堂へ立たせてみたいが、実は手前も、明日あしたの晩、頼母子講たのもしこうの金をり落して
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老人はいながら、顔の向をうしろへ変える。ねじれたくびに、行き所を失った肉が、三筋ほどくびられて肩の方へり出して来る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
粗末なアトリエでおなかのへったグジコフがぱんのために徹夜しているところが表現派の映画面のように心描される。東洋の一旅人がそれをりおとしたのだ。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
さあ骨董がどうして貴きが上にも貴くならずにいよう。上は大名たちより、下は有福ゆうふくの町人に至るまで、競って高慢税を払おうとした。税率は人〻が寄ってたかってり上げた。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
りの遊びをしておる若旦那たちは、わたしの姿を見ると、ちょっと揶揄からかいましたが、別に疑うこともなく遊びに夢中になっています。あとはまた酒盛りにでもなることでしょう。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
新網の瑞安寺では掏摸の故買けいずの市が立って、神田連雀町の湯灌場買い津賀閑山が、江戸中の掏摸のすって来た煙草たばこ入れ、頭の物、薬籠などをっていると、その場の宰領手枕舎里好のもとへ
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ちょうど其の日は激しいり合いがあって、その女たちのうちでも働き盛りの年頃の者は、しきりに負傷者の世話などをしたあとのことであった、例の如くその日の合戦の噂話うわさばなしが始まったので
鯉市ぞ本城寺前に立てりとふ早や短日たんじつりてあらむか
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ほおの末としっくり落ち合うあごが——腭をててなよやかに退いて行く咽喉のどが——しだいと現実世界にり出して来る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これは権之助が丹田で堪忍をやぶったうめきである。——彼の丸ッこい五体は、闘志に節くれだって、詰めよる山伏に対して、彼のほうからもりつめて行った。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しまはみんながりをやっている十二畳と自分の部屋との間の敷居近く膝を乗り出して、かしこまってはいるが、うつゝを抜かした人のように口を開けて若旦那たちの所作を眺めていました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
洒落しゃれの片眼鏡に三鞭シャンパンの泡がね、歩道のなかばまでり出した料理店の椅子に各国人種の口が動き、金紋つきの自動車が停まると制服がドアを開け、そこからTAXIDOが夜会服デコルテを助け下ろし
諸国船しよこくぶねとしの塩鰤りあぐとかんもものかは裸でおらぶ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しかも窮しているせいか、それが順をおってだんだんむずかしい方へあがって行くように感ぜられてならなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
織田おだ今川いまがわのほろびたのちは、家康いえやす領地りょうちざかいは小田原おだわら北条氏直ほうじょううじなおととなり合って、碁盤ごばんの石の目をあさるように武州ぶしゅう甲州こうしゅう上州じょうしゅうあたりの空地あきちをたがいにりあっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雪降らむ雲は低きに荒々し山袴さんぱくづれが真鯉まごひりあぐ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
り上るように鮮かさを見せる満山の新緑。
呼ばれし乙女 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
やがて余の船の頭が営口丸の尻より先へ出た。そうして、尻から胴の方へじりじりとげて行った。船は約一丁を隔ててほとんど並行へいこうの姿勢で進行している。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
思いきった値に、られたのはいいが、悪戯いたずらか、間違いかと、不安を感じだして
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その上本当の水、しかも坑と同じ色の水に濡れるんだから、心持の悪い所が、倍悪くなる。その上水はくろぶしからだんだんり上がって来る。今では腰までかっている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
パッと居合抜いあいぬきに大刀を払ったが、その瞬間、一方でパチン! と火花を降らしたかと思うと、すぐ焼刃やいばのすり合う音がして、つばと鍔とがりあうまもあらず、デン! と一方が蹴仆された。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「アハハハハ」と老人は大きな腹をり出して笑った。洋灯ランプかさ喫驚びっくりするくらいな声である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)