トップ
>
相
>
すがた
ふりがな文庫
“
相
(
すがた
)” の例文
あゝ私がこの十年の間見てきたことは実に恐ろしい人生の
相
(
すがた
)
であった。(沈黙。やがて決心したるごとく立ち上がる。死骸に向けて)
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
主題たる戦争行為だとか
群雄割拠
(
ぐんゆうかっきょ
)
の状などは、さながら
彩
(
いろど
)
られた彼の民俗絵巻でもあり、その
生々動流
(
せいせいどうりゅう
)
する
相
(
すがた
)
は、天地間を舞台として
三国志:01 序
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかもその生活の
相
(
すがた
)
には、何か罪から遠いものがあるではないか。あるいはこれを必然さに充ちた生活として説く事も出来るであろう。
苗代川の黒物
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
ここの御社の御前の
狛犬
(
こまいぬ
)
は全く狼の
相
(
すがた
)
をなせり。
八幡
(
やわた
)
の鳩、
春日
(
かすが
)
の鹿などの如く、狼をここの御社の御使いなりとすればなるべし。
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
有の至境であって、また無に近い
相
(
すがた
)
ではあるまいか。現世を超えて、ふと、あの世を垣間見た——そういった風な霊感におそわれる……
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
▼ もっと見る
したがって、病に応ずる薬が、それぞれあるように、人間の身の悩み、心の
悶
(
もだ
)
えを、救う仏にもまたいろいろ変わった
相
(
すがた
)
があるわけです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
因果、又は因縁という言葉は、正確に言いますと、
因
(
いん
)
・
縁
(
えん
)
・
果
(
か
)
、ということで、この世の中のあらゆるものの存在の
相
(
すがた
)
の説明であります。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
儒者風をした高朗たる人物、その門下らしい松前という若武士、林を通して空を仰ぎ、しばらく天体星の
相
(
すがた
)
を、まばたきもせず見ていたが
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あがりぎわに一枚引きめくって来た
艫
(
とも
)
の板をぶらさげて、泰軒は半眼をうっとりと眠ってでもいるよう……
自源流
(
じげんりゅう
)
水月
(
すいげつ
)
の
相
(
すがた
)
。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
殊に其の時代の
相
(
すがた
)
をはつきり知つてゐたならば、其の器物に對しての鑑賞が、一段とはつきりしてきて、其の時代と共に呼吸することが出來る。
やきもの読本
(旧字旧仮名)
/
小野賢一郎
(著)
彼が好んでつかふ比喩の形式を、思想の貧しさとして嗤ふものもあるが、比喩は、彼の場合、単なる比喩ではなくして、生命の瞬時の
相
(
すがた
)
である。
「葡萄畑の葡萄作り」後記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
福子もまた、このおばあさまの前に
坐
(
すわ
)
ると、何もかも忘れて、生れたままの
相
(
すがた
)
で大きな
懐
(
ふとこ
)
ろに抱かれている感じだった。
万年青
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
源氏物語の中にあるあの
薄雲女院
(
うすぐもにょういん
)
に見るような不義に至るまでも、あらゆる
相
(
すがた
)
において好色はあわれ深いものであった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
姫の俤びとに貸す為の衣に描いた
絵様
(
えよう
)
は、そのまま
曼陀羅
(
まんだら
)
の
相
(
すがた
)
を具えて居たにしても、姫はその中に、唯一人の色身の幻を描いたに過ぎなかった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
淀の水車のくりかえす如くくり返される哀しさを人間の
相
(
すがた
)
と見て、その
相
(
すがた
)
をくりかえしくりかえし書き続けて来た私もまた淀の水車の哀しさだった。
世相
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
姫の
俤
(
おもかげ
)
びとに貸すための衣に描いた
絵様
(
えよう
)
は、そのまま曼陀羅の
相
(
すがた
)
を具えていたにしても、姫はその中に、唯一人の
色身
(
しきしん
)
の幻を描いたに過ぎなかった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
具
(
そな
)
えたる少年、
齢
(
とし
)
二十に余ることわずかなれば、新しき
剃髪
(
ていはつ
)
の
相
(
すがた
)
傷
(
いた
)
ましく、いまだ古びざる僧衣を
纏
(
まと
)
い、
珠数
(
じゅず
)
を下げ、
草鞋
(
わらじ
)
を
穿
(
うが
)
ちたり。奥の方を望みつつ
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
神尾主膳が何故に机竜之助をここへ置いたかということは、まだ疑問でありましたけれど、ここへ置かれた机竜之助は、
囚人
(
めしうど
)
でも監禁の
相
(
すがた
)
でもありません。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
尤
(
もっと
)
もわたくしの
眼
(
まなこ
)
の中にえがいた火の色と白と鼠の取り合わせは、後日まったく思いもかけぬ
相
(
すがた
)
で現われるには現われましたが、それはまだ先の話でございます。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
カピ長 いかにも、
往
(
ゆ
)
きて
再
(
ふたゝ
)
び
還
(
かへ
)
らぬ
支度
(
したく
)
が。おゝ、
婿
(
むこ
)
どの、いざ
婚禮
(
こんれい
)
の
前
(
まへ
)
の
夜
(
よ
)
に、
死神
(
しにがみ
)
めが
貴下
(
こなた
)
の
妻
(
つま
)
を
寢取
(
ねと
)
りをった。あれ、あのやうに
花
(
はな
)
の
相
(
すがた
)
の
色
(
いろ
)
も
褪
(
あ
)
せたわ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
文久
(
ぶんきゅう
)
元年の春であった、自然の
相
(
すがた
)
をそのまま写したように、世の中もまた激しい転変を迎えていた。
春いくたび
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
若き命が清澄の環境に於て、その純眞そのものを示す
相
(
すがた
)
に湧出せられてゐる。かうした環境と、かうした詩境こそは廿年以前に於ては全く見られてなかつた新詩境である。
山岳美観:02 山岳美観
(旧字旧仮名)
/
吉江喬松
(著)
「情ないものじゃないか。中国が悲惨だとか何とか云いながら、こちらだって中国のようになってしまったじゃないか」と、流転の
相
(
すがた
)
に心を打たれてか、順一もつぶやいた。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
先づ初め、層々と聳えてゐる
峰巒
(
ほうらん
)
の
相
(
すがた
)
が現れた。その山が尽きる辺から、落葉し尽くした疎林が淡々と、浮かんでゐる。疎林の間には一筋の小径が、遥々と遠く続いてゐる。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
わたくしの為に世の
相
(
すがた
)
を飾り、
凡
(
すべ
)
ての花の枝の美しさをば限り知られぬ栄光に輝してくれたのですのに、わたくしは全く
恍惚
(
こうこつ
)
として地上に身を投げ伏し、
耀
(
かがやか
)
しい自然、その
衣
(
ころも
)
の
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
物の
相
(
すがた
)
、そこに今まで観なかつたものを観るやうになつた、物の色、香、音といふものから離れて、物のかたち、物のすがた、そのものに没入しようとしてゐる、多分こゝから
其中日記:02 (二)
(新字旧仮名)
/
種田山頭火
(著)
魔性が、然し、人の心のまことの
相
(
すがた
)
ではあるまいか。もとよりそれを知らぬあなたではない筈だ。人の心の弱さ、醜くさに気付けばこそ、あなたはそれを怖れてゐたに相違ない。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
展
(
ひら
)
け。世紀は轉換する。躍進更に躍進する。興隆日本の正しい
相
(
すがた
)
、この體制に信念あれ。
新頌
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
今までは薄いヴェールに包まれていた世の
相
(
すがた
)
がだんだんはっきりと見えるようになった。私のような貧乏人がどうしても勉強も出来なければ偉くもなれない理由もわかってきた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
これほど下劣で
卑賤醜悪
(
ひせんしゅうあく
)
なものに堕落することが出来るのだろうか? これほど変るものだろうか? これが果して真相に近いことだろうか? ところが、すべてこれが真実の
相
(
すがた
)
で
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
太子の教が、仏法求道者に
屡々
(
しばしば
)
みらるるごとき固くるしい戒律臭を帯びず、大和の春野のように、のびのびとした
相
(
すがた
)
で発揚されたことは、私に限りない感銘と
悦
(
よろこ
)
びをもたらすのである。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
それまではまだ隅々に幾分でも「奥山」の
相
(
すがた
)
を残していた「公園」がそれ以来根本から改まった。すなわち猿茶屋がなくなり、釣堀がなくなり、射的がなくなり、楊弓場がなくなった。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
それがいけないから、それを破壊したといふ劇でも、まだよほどさういふ所がある。あの平淡なチエホフの劇などでさへさうだ。ところが、実際の
相
(
すがた
)
は、——自然は、決してさうでない。
社会劇と印象派
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
新しいことは真の生活の
相
(
すがた
)
である。既に生活が不断に移って行く以上、私たちの倫理観もまた不断に移らねばならない。永久の真理というものを求めることの愚は
琴柱
(
ことじ
)
に
膠
(
にかわ
)
するにひとしい。
鏡心灯語 抄
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
泣女の古い
相
(
すがた
)
はこの帷子被りのように、死者の身近き者が当ることになっていたのが、時勢とともに赤の他人の、しかもこれを半営業とする婦人を雇うようになったのであると信じている。
本朝変態葬礼史
(新字新仮名)
/
中山太郎
(著)
彼は、「運命」によって影を与えられ、「愛」によって不死の水を
注
(
そそ
)
がれ、そして「永遠」に向かって流れて行く人生の
相
(
すがた
)
を、彼の幼ない智恵の中に、そろそろと刻みはじめていたのである。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
時代の容貌が形造らるるのはその年々の
相
(
すがた
)
によってである。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ありし日を思ひいでなむ世の
相
(
すがた
)
の悲しき歌を君はうたひし
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
何と云うこましゃくれた
相
(
すがた
)
だ
わが児に
(新字新仮名)
/
加藤一夫
(著)
孩児
(
みどりご
)
の四肢の
相
(
すがた
)
を示現する。
夜の讃歌
(新字旧仮名)
/
富永太郎
(著)
怒
(
いか
)
れる
相
(
すがた
)
秋の瞳
(新字旧仮名)
/
八木重吉
(著)
刀は名鏡である、人は、止水の
相
(
すがた
)
でそれに溶け合わなければならない。一点の曇り、一点の揺るぎでも、心が動じれば、刀も狂う。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこから
細徑
(
ほそみち
)
を少し行くと、俄然として路は
巖端
(
いははな
)
に止まつて、脚下は絶壁の深澗になり、眼前の
對
(
むか
)
ひの巖壁に霧降の麗はしい
相
(
すがた
)
は見えた。
華厳滝
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
だから「あきらめる」とは「
諦観
(
たいかん
)
」することで、つまり、もののほんとうの
相
(
すがた
)
を見ること、すなわち真実を見きわめることです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
寺は
詮
(
せん
)
ずるに彼岸の浄土が此岸に映る
相
(
すがた
)
なのである。そこにはそれぞれに美しい物が集ってくる。品物はみな仏菩薩なのである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
世の中というものはこうして、ちょっとのことで、こうもくいちがうものであろうかと、一空さまは、実に不思議な
相
(
すがた
)
を見せられた気がした。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
彼が好んでつかう比喩の形式を、思想の貧しさとして
嗤
(
わら
)
うものもあるが、比喩は、彼の場合、単なる比喩ではなくして、生命の瞬時の
相
(
すがた
)
である。
「ぶどう畑のぶどう作り」後記
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
(でも
妾
(
わたし
)
はあの旅をして、百姓一揆の中などへはいって、本当に浮世の
相
(
すがた
)
を知り、おかげで心がしっかりして来た)
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その変幻極まりない複雑な
相
(
すがた
)
を、前に述べました因縁の法則に当てはめて相において学び取ろうとするのが、私たちの智の範囲に属する経験や知識です。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
後生
(
ごしょう
)
のいい人だけが、沈んだ村の
相
(
すがた
)
を舟の上から水底に見る——てなことになるんでしょう、お気の毒な運命ですけれど、美しい大和魂が、わたしは嬉しいわ
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
“相”の意味
《名詞》
(あい)相づちを打つこと。
(あい)酒の相手をすること
(あい)共謀すること。また、その仲間。
(あい)あいこ
(ソウ)姿。外見。顔つき。
(ソウ)運勢や吉凶の兆し。
(ショウ)宰相。大臣。
(シャン)象棋の駒の一つ。
(出典:Wiktionary)
相
常用漢字
小3
部首:⽬
9画
“相”を含む語句
形相
相応
相撲
相対
相見
相互
相違
相貌
相識
面相
相合
相伴
相成
相済
相好
相談
相当
相棒
相手
相應
...