目論見もくろみ)” の例文
そのうちにお信さんは、金太郎の目論見もくろみを察し、それを止めようとしたが、金太郎にしてはいまさら思ひ留るわけにも行かなかつた。
一、 最初さいしよ一瞬間いつしゆんかんおい非常ひじよう地震ぢしんなるかいなかを判斷はんだんし、機宜きゞてきする目論見もくろみてること、たゞしこれには多少たしよう地震知識ぢしんちしきようす。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
その声は葉子の目論見もくろみに反して恐ろしくしとやかな響きを立てていた。するとその男は大股おおまたで葉子とすれすれになるまで近づいて来て
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
苦労をさせたことを忘れないので銀子のことは銀子の好きなようにさせ、娘をあやつって自身の栄耀えいようを図ろうなどの目論見もくろみは少しもなかった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
いよいよふたを明けましたのが確か五月の六日……五日の節句という目論見もくろみであったが、間に合わず、六日になったように記憶しております。
セレブリャコーフ どうもわからん、なぜ君はそう興奮するのかね? わたしだって何も、この目論見もくろみが理想的なものだなどと言いはしない。
あんな高価な紙鳶を手に入れるどういふ目論見もくろみなのか解らなかつたが、その声の中には、きつと返して見せるといふりんとした意志のひらめきがあつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
これが彼奴等あいつらの本音であったのだ。長い道中を、散々怖がらせ、いじめ抜いて置いて、最後には、今の世に聞いたこともない磔刑の目論見もくろみとは。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
仮令たとえ兄の言うように、小父さんにどんな目論見もくろみがあろうとも、そのために小父さんを憎む気にはどうしても成れなかった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
日本人種にほんじんしゆといふものは却々なか/\器用きようでござりますから、たちまち一つの発明はつめいをいたし、器械きかい出来できて見ると、これいて一つの新商法しんしやうはふ目論見もくろみおこしました。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
職長は目論見もくろみ外れから工合悪そうに、肩を振って帰って行った。職工たちの眼はそれを四方から思う存分あざけった。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
候わば今日道通りの民家を焼払わしめ、明日は高清水を踏潰ふみつぶし候わん、と氏郷は云ったが、目論見もくろみ齟齬そごした政宗は無念さの余りに第二の一手を出して
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今は故人の松下軍治がしたゝか者だつた事は知らぬ者もないが、たとへば、金でも借りようとかつるでも発見めつけようとかいふ目論見もくろみで人を訪ねる事があるとする。
然し繼母に取つてはすべての目論見もくろみがはづれてしまつたのだ。貰ひ娘は、かの女がここへ這入る前に、自家へ下宿人を一人置いてたその人と一緒になつてしまつた。
泡鳴五部作:01 発展 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
弓之進め用心深いからな……そういう訳ならそれもよかろう。せっかくの目論見もくろみだ、とげさせてやろう
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そうすると、つまり、日本中の芸者と女郎を集めて、毛唐に見せてやりてえと、こういう目論見もくろみか」
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
でも僕にはひとつの目論見もくろみがあったのです。あの不破家の八畳の板の間、あるいは好天気の折は庭先を利用して、毎日曜毎に小学生相手の画の講習実習をやったらどうだろう。
ボロ家の春秋 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
お父さんは余程以前からこういう目論見もくろみをしていたと見えて、旅行日程の書いてある手帳を持って来た。そうして二人がなお話しているところへだんさんがノソッと姿を現した。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
同じ拗者仲間の高橋由一たかはしゆいちが負けぬ気になって何処どこからか志道軒しどうけんの木陰を手に入れて来て辻談義つじだんぎ目論見もくろみ、椿岳の浅草絵と鼎立ていりつしておおいに江戸気分を吐こうと計画した事があった。
これは清川八郎の目論見もくろみで、それが新徴組になったのです。こんな歴史は今改めていうまでもない話であるが、諸藩の注意人物を、どうするこうするというようなものじゃない。
中里介山の『大菩薩峠』 (新字新仮名) / 三田村鳶魚(著)
パリはいまだかつて彼の心をかない。彼はパリを知らないのである。パリもほかの町と違うはずはない、こう思っている。それで博覧会にも出掛けようという目論見もくろみさえ立てない。
敵は、ああたと井上君との地盤を調べて、票を片っぱしから食うてしまう目論見もくろみじゃ
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
どこかへ売りつけようという目論見もくろみではあったが、つい気がひけて出来なかった。
「私の伯父おじと兄は恐ろしい盗人で、今晩貴郎あなた方を殺して、金を目論見もくろみをしておりますが、決して指一本も差させませんから、静に寝ておってくださいませ、私に考えがございます」
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
かげではだいぶ不仕末ふしまつの事があったそうだ、社会主義も唱えたそうだ、某婦人と仲がよかったそうだ、謀叛むほん目論見もくろみさえしたそうだ、始終しじゅう下等な女や悪党の仲間につき合っておったそうだ
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ロシアは確かに北方から南下してチベットに侵入しようと目論見もくろみつつある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
カフェーの給仕きゅうじ気分と、いにしえの太夫の気分とを集めたものへ、芸妓の塩梅あんばいと、奥女中のとりなしとを加減して、そのころの紳士の慰楽の園としようとした目論見もくろみで、お振袖ふりそでを着せて舞わせもし
大橋須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
と云うと、僕に始からある目論見もくろみがあって、わざわざ鎌倉へ出かけたとも取れるが、嫉妬心しっとしんだけあって競争心をたない僕にも相応の己惚うぬぼれは陰気な暗い胸のどこかで時々ちらちら陽炎かげろったのである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
上下合体ともに太平をうたわんとするの目論見もくろみならん。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
目論見もくろみまして、幾度私と喧嘩するかも知れません
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
ふり否々いや/\然に非ず此は此程手土産てみやげにても持參すべきなれども其代りに進ぜるなりと種々申て漸々やう/\受納うけをさめさせなほ靱負ゆきへは申樣我等未だ少々の資本しほんもあれば何ぞ一目論見もくろみ致し度思ふなり何と金貸渡世かねかしとせいは如何有らんと相談さうだんなせば主はおどろき御身何程の金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
教師はしきりにその用途を問いただしたが、恥じやすい乙女心おとめごころにどうしてこの夢よりもはかない目論見もくろみを白状する事ができよう。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
内儀かみさんを一人世話しましょう。いいのがありますぜ。」と和泉屋は、新吉の店がどうか成り立ちそうだという目論見もくろみのついた時分に口を切った。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そして、その本拠が製氷工場であること、倭文子さん達がそこに幽閉ゆうへいされたことが分ると、僕はすぐ、谷山の恐ろしい目論見もくろみを感づいたのです。……
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
けて遅く帰るようで有ったらば隙をうかゞって打果してしまうか、あるいは旨く此方こちらへ引入れて、家老ぐるみ抱込んでしまうかと申す目論見もくろみでございます。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いつも錢形の親分にばかり手柄を持つて行かれるから、今度こそはこちとらだけで、左傷の五右衞門を擧げようといふ目論見もくろみだ。捕頭は秋葉の小平親分
……ふん、フランスじゃそうかも知れないけれど、このロシアじゃ、そんな目論見もくろみもへったくれもありゃしない。
一つヤンヤといわせる目論見もくろみであるのだが、それには一趣向あるので、自分の案としていろいろ考えた結果、日本の鳥を主題にして諸家に製作を頼んだのである。
先日こなひだの朝も、上西氏が郵船株の目論見もくろみで夢中になつてゐると、鞍の下では馬は哲学上の大発見をした。
「そうするとつまり、日本中の芸者と女郎を集めて毛唐に見せてやりてえと、こういう目論見もくろみか」
水を飲ませて貰っている中に、住職に会って、東洋行の目論見もくろみを話したんだね。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それから考えるとそれは当時新聞社の慣用手段のふところがねをむさぼろうという目論見もくろみばかりから来たのでない事だけは明らかになった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「それはおれに任せて置けばいいのだ。君達は、黙って俺の指図さしずに従っていればいいのだ。二三日の内に、俺のすばらしい目論見もくろみが、君達にも分るだろう」
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
横井源太郎は物々しくうなづきました、打越金彌の目論見もくろみが、次第にわかつて來るやうな氣がするのです。
そうして、目論見もくろみ通りをやったところ、予期通りそれがうまく行って、文句なしに畠を通してくれました。
わしもそういつまでぶらぶらしてはいられないで、今度という今度は商売をやろうと思って、そのことでいろいろ用事もあるで……。」と言うていたが、父親の目論見もくろみでは
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
してみれば、やっぱり何物をか新たにその台座の上に建てようとの目論見もくろみに相違ない。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
夜詰よづめの御家来も多勢おおぜい附いて居ります、其の中には悪い家来が、くば毒殺をしようか、あるいは縁の下から忍び込んで、殺してしまう目論見もくろみがあると知って、忠義な御家来の注意で
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
葉子は張り出しになっている六畳の部屋へやをきれいに片づけて、火鉢ひばちの中にこうをたきこめて、心静かに目論見もくろみをめぐらしながら古藤の来るのを待った。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
僕は父親のある極悪非道な目論見もくろみを想像して身慄みぶるいした。あれは僕に顔を見られることさえ恐れているのだ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)