甘酒あまざけ)” の例文
甘酒あまざけ時間じかんみじかいのとかうぢすくないのとであつつくむのがれいである。それだからたちまちにあまるけれどもまたたちまちに酸味さんみびてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
すなわちその日に口にする甘酒あまざけすし、外部から想像し得ない深い歓楽は、村として神をまつらぬ前から引継がれたものであった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
つきゆきはなおろいぬんだとては一句いつくつくねこさかなぬすんだとては一杯いつぱいなにかにつけて途方とはうもなくうれしがる事おかめが甘酒あまざけふとおなじ。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
さても吉兵衞はもとよりとめる身ならねば乳母うばかゝゆべき金力ちからなく情け有家へ便たよこしかゞめて晝夜をわかたず少しづつもらなし又はちゝの粉や甘酒あまざけと一日々々を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「お正月しょうがつがくれば、おまえのすきなおもちをついてやるし、甘酒あまざけもこしらえてやる。」と、おっしゃるのでした。
おかまの唄 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その頃その木蔭こかげなる土手下の路傍みちばたに井戸があって夏冬ともに甘酒あまざけ大福餅だいふくもち稲荷鮓いなりずし飴湯あめゆなんぞ売るものがめいめい荷をおろして往来ゆききの人の休むのを待っていた。
この曲物まげものは塩見の甘酒あまざけ、竹の皮へ包んだのが踏切のけわい団子だんごといってうちこそ不潔きたないけれども大磯第一の名物だ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
夏は心太ところてん、冬は甘酒あまざけの呼び売りをしていたのだから、その身の上は、長屋の連中がみんな知っている——。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
もう一人は、貧乏人のお神さんで、大根を一本、たゞおいてけと云つて、その代り、熱い甘酒あまざけを出してくれた。おれは今でも、その二人の顔を、はつきり覚えてる。
医術の進歩 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
はんかなあまい/\甘酒あまざけ赤行燈あかあんどうつじゆれば、そ、青簾あをすだれ氣勢けはひあり。ねや紅麻こうまえんにして、繪團扇ゑうちは仲立なかだちに、蚊帳かやいと黒髮くろかみと、峻嶺しゆんれい白雪しらゆきと、ひとおもひいづれぞや。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
祭となれば、何様な家でも、強飯おこわふかす、煮染にしめをこさえる、饂飩うどんをうつ、甘酒あまざけを作って、他村の親類縁者を招く。東京に縁づいた娘も、子を抱き亭主や縁者を連れて来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「おおまあや、この降るのにおまえどこにあそんでおった。さあおじいさんとこへきな。あしたあまつりだからな、みんなのじゃまになっちゃいけねい。いまに甘酒あまざけもできるぞ。うむ、かきのほうがえいか、よしよし」
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
彼等かれらむし自分じぶんうちつくつたものゝはう佳味うまいにもかゝわらず大勢おほぜいともさわぐのが愉快ゆくわいなので、水許みづばかりのやうな甘酒あまざけ幾杯いくはいかたむけるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
眞鍮しんちう茶釜ちやがま白鳥はくてう出居いでゐはしら行燈あんどうけて、ともしびあかく、おでん燗酒かんざけ甘酒あまざけもあり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一三 この老人は数十年の間山の中にひとりにて住みし人なり。よき家柄いえがらなれど、若きころ財産を傾け失いてより、世の中に思いをち、峠の上に小屋こやを掛け、甘酒あまざけ往来おうらいの人に売りて活計とす。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
斗樽とだるにはにごつたやうな甘酒あまざけがだぶ/\とうごいてる。神官しんくわんしろ指貫さしぬきはかまにはどろねたあとえて隨分ずゐぶんよごれてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ふつ/\なるをのぞ甘酒あまざけ
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)