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らんまん
ふりがな文庫
“
爛漫
(
らんまん
)” の例文
私は苦笑したが、この
爛漫
(
らんまん
)
とした娘の性質に交った好学的な肌合いを感じ、それがこの娘に対する私の敬愛のような気持ちにもなった。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
形式だけ見事だって面倒なばかりだから、みんな節約して
木地
(
きじ
)
だけで用を足している。はなはだ痛快である。天醜
爛漫
(
らんまん
)
としている。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
もう首都としての
爛漫
(
らんまん
)
から頽廃期に入っていた古いものに、かえって、ぽッと出のぼくは、新鮮と驚異を覚えていたものとみえる。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どのような情念でも、天真
爛漫
(
らんまん
)
に現われる場合、つねに或る美しさをもっている。しかるに嫉妬には天真爛漫ということがない。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
それほど、不思議なくらい天真
爛漫
(
らんまん
)
たるものが、その恋を打ちあけた龍造寺主計のことばからにおって、お高をつつんだのだ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
天才の花は
爛漫
(
らんまん
)
と開き、果を結んで、あっぱれ協会の飾りともなり、名誉ともなったのであるから、かく優遇したのは当然の事と言ってよい。
ファラデーの伝:電気学の泰斗
(新字新仮名)
/
愛知敬一
(著)
カントも「我々が常に無限の歎美と
畏敬
(
いけい
)
とを以て見る者が二つある、一は上にかかる星斗
爛漫
(
らんまん
)
なる天と、一は心内における道徳的法則である」
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
新時代の世界文明は東西の文化を融合して我が極東帝国の上に
聚
(
あつま
)
り、桜花
爛漫
(
らんまん
)
として
旭光
(
きよくくわう
)
に匂ふが如き
青史未載
(
せいしみさい
)
の黄金時代を作るべきを論じて
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
彼の目の前には三の切り札が
爛漫
(
らんまん
)
たる花となって咲き乱れ、七の切り札はゴシック式の半身像となり、一の切り札は大きい蜘蛛となって現われた。
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
江戸の春がまさに
爛漫
(
らんまん
)
といふ頃ですが、八五郎の胸には妙にこだはりがあつて、いつものやうには樂しみきれません。
銭形平次捕物控:215 妾の貞操
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
かの
爛漫
(
らんまん
)
たる桜花と無情なる土塀と人目を忍ぶ少年と
艶書
(
えんしょ
)
を手にする少女と、ああこの単純なる
物象
(
ぶっしょう
)
の配合は
如何
(
いか
)
に際限なき空想を誘起せしむるか。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
黒い高塀に囲まれているので、往来からは見えなかったが、庭一面に草花が
爛漫
(
らんまん
)
と咲き乱れているのであった。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
折から桜花は故郷の山に野に
爛漫
(
らんまん
)
と咲き乱れていた。どこからか
懶
(
ものう
)
い
梵鐘
(
ぼんしょう
)
の音が流れてくる花の夕暮、ミチミは杜に手を取られて、静かに
呼吸
(
いき
)
をひきとった。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
丘の上には、数本の大きい八重桜が、
爛漫
(
らんまん
)
と咲乱れて、移り
逝
(
ゆ
)
く春の名残りを
止
(
とど
)
めていた。
其処
(
そこ
)
から見渡される広い庭園には、晩春の日が、うら/\と
射
(
さ
)
している。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
自然は我らに無償にて百花を
爛漫
(
らんまん
)
たらしめ、芳香を
馥郁
(
ふくいく
)
たらしむることを思わば、枝葉を折り採る事の出来得べきはずなし、万物の霊長たる資格を標示すべきである。
尾瀬沼の四季
(新字新仮名)
/
平野長蔵
(著)
一同はこれに
勢
(
いきおい
)
を得て、歌ったも歌ったり、「春
爛漫
(
らんまん
)
」から「都の西北」「春は春は」のボート歌
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
時
(
とき
)
に、
毛
(
け
)
一筋
(
ひとすぢ
)
でも
動
(
うご
)
いたら、
其
(
そ
)
の、
枕
(
まくら
)
、
蒲團
(
ふとん
)
、
掻卷
(
かいまき
)
の
朱鷺色
(
ときいろ
)
にも
紛
(
まが
)
ふ
莟
(
つぼみ
)
とも
云
(
い
)
つた
顏
(
かほ
)
の
女
(
をんな
)
は、
芳香
(
はうかう
)
を
放
(
はな
)
つて、
乳房
(
ちぶさ
)
から
蕊
(
しべ
)
を
湧
(
わ
)
かせて、
爛漫
(
らんまん
)
として
咲
(
さ
)
くだらうと
思
(
おも
)
はれた。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ずっと新見附のあたりまで
爛漫
(
らんまん
)
と咲きつらなり、お濠の水の上に
紛々
(
ふんぷん
)
たる花ふぶきを散らしなどして、ちょっとした花見も出来そうな所だったのに、惜しいことだと思う。
早稲田神楽坂
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
おまえ、この
爛漫
(
らんまん
)
と咲き乱れている桜の樹の下へ、一つ一つ屍体が埋まっていると想像してみるがいい。何が俺をそんなに不安にしていたかがおまえには納得がいくだろう。
桜の樹の下には
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
しかも
嫉妬
(
しっと
)
はして、腹をたてなどする時に天真
爛漫
(
らんまん
)
な所の見える無邪気な夫人なのであった。
源氏物語:35 若菜(下)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
銀色の
玉兎
(
ぎょくと
)
が雲間に
隠顕
(
いんけん
)
して居る光景は
爛漫
(
らんまん
)
たる
白花
(
びゃくげ
)
を下界に散ずるの趣あり、足音はそくそくとして寒気
凜然
(
りんぜん
)
膚
(
はだえ
)
に迫るものから、
荷持
(
にもち
)
も兵士も
顫
(
ふる
)
いながら山を登りますと
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
珍念、何を答えるかと思われたのに、きくも天真
爛漫
(
らんまん
)
、こともなげにいってのけました。
右門捕物帖:29 開運女人地蔵
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
自分はその桜花
爛漫
(
らんまん
)
を落ちついた気持で鑑賞することが出来なくなってしまうのである。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それはごく天真
爛漫
(
らんまん
)
なる時期であって、ちょうどランク伯爵が、上院議員の服装をし
綬章
(
じゅしょう
)
をつけ、あの長い鼻をして、
赫々
(
かくかく
)
たる行ないをなした人にふさわしいいかめしい顔付きで
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
何人
(
なんぴと
)
も
爛漫
(
らんまん
)
たる平和を望まぬものはないが、その平和を維持せんとしては、時に戦争をしなければならない。大戦争さえすればその後に大平和が来る。世の中はこういうものである。
青年の天下
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
遅れ咲きの
八重
(
やえ
)
ざくらが、
爛漫
(
らんまん
)
として匂う
弥生
(
やよい
)
のおわり頃、最愛の弟子
君川文吾
(
きみかわぶんご
)
という美少人を失って、悲歎やるせなく、この頃は
丹青
(
たんせい
)
の能をすら忘れたように、香を
拈
(
ねん
)
じて物を思い
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
試みに見よ封建社会の道徳なるものは天真
爛漫
(
らんまん
)
、自然のうちに修養あり、自由のうちに規法ある、愛すべき親しむべきものにあらず。かえってただ式に
拘泥
(
こうでい
)
したる死物の道徳にあらずや。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
周囲にたゞよう夕闇を
弾
(
はじ
)
き返すようにして、
爛漫
(
らんまん
)
と咲いているのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ただこの喬木が、
亭々
(
ていてい
)
、次代にそびえ、
爛漫
(
らんまん
)
、この世を君が代の春とのどかにする日があれば——わが願いは足れりといえる。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さすがに春の
灯火
(
ともしび
)
は格別である。天真
爛漫
(
らんまん
)
ながら無風流極まるこの光景の
裏
(
うち
)
に良夜を惜しめとばかり
床
(
ゆか
)
しげに輝やいて見える。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ほめて酒を汲む人もないのに、惜しげもなく
爛漫
(
らんまん
)
と咲き誇って、さながらうす紅色の綿雲をかけつらねたよう——。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
今まで薄暗いところで見た娘の
貌
(
かお
)
のくぼみやゆがみはすっかり
均
(
な
)
らされ、いつもの
爛漫
(
らんまん
)
とした大柄の娘の眼が涙を
拭
(
ふ
)
いたあとだけに、
尚更
(
なおさら
)
、
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
えとしてしおらしい。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
躑躅
(
つつじ
)
ヶ崎のお
館
(
やかた
)
を巡り左右前後に延びているこの甲府のいたるところに
爛漫
(
らんまん
)
と咲いているのであったが、わけてもお館の中庭と伝奏屋敷と山県邸と神明の社地とに多かった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お
豊
(
とよ
)
は
今戸橋
(
いまとばし
)
まで歩いて来て
時節
(
じせつ
)
は
今
(
いま
)
正
(
まさ
)
に
爛漫
(
らんまん
)
たる春の四月である事を始めて知った。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
天真
爛漫
(
らんまん
)
を心掛けましょう。こないだお隣りの
越後獅子
(
えちごじし
)
に
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
鼻の円遊なんぞもいて、正に、百花
爛漫
(
らんまん
)
であった。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
花は
爛漫
(
らんまん
)
と、梢に咲き乱れていた。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
こうなると、日ごろのゲジゲジも
迂路鼠
(
うろねずみ
)
も
青草蛇
(
あおだいしょう
)
も、案外、天真
爛漫
(
らんまん
)
なもので、飲む、踊る、唄うなど、百芸の
歓
(
かん
)
を尽して飽くるを知らない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
天醜
爛漫
(
らんまん
)
としてゐる。所が此
爛漫
(
らんまん
)
が度を越すと、露悪家同志が御互に不便を感じて来る。其不便が段〻
高
(
かう
)
じて極端に達した時利他主義が又復活する。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
すると娘は、
俄
(
にわか
)
に、ふだん私が見慣れて来た
爛漫
(
らんまん
)
とした花に咲き戻って、朗に笑った。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
お
豊
(
とよ
)
は
今戸橋
(
いまどばし
)
まで歩いて来て
時節
(
じせつ
)
は
今
(
いま
)
正
(
まさ
)
に
爛漫
(
らんまん
)
たる春の四月である事を始めて知つた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
辰五郎の醉態は、まさに
爛漫
(
らんまん
)
たるものでした。
銭形平次捕物控:211 遠眼鏡の殿様
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「師の御房がお帰りなされた」草庵のうちにこの声が起ると、なぜかこの春の日を
寂
(
せき
)
として沈んでいた空気が、いちどに
爛漫
(
らんまん
)
と明るくなった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
辰五郎の酔態は、まさに
爛漫
(
らんまん
)
たるものでした。
銭形平次捕物控:211 遠眼鏡の殿様
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
今の時間でいうと、午前十一時頃の、春は
爛漫
(
らんまん
)
と
天地
(
あめつち
)
に誇っていて、
微風
(
そよかぜ
)
の生暖かく吹いている日であった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
多少の泰平は
謳
(
うた
)
われたろうが、なかなか中央における
醍醐
(
だいご
)
の茶会とか、桃山文化の、あの
爛漫
(
らんまん
)
な盛時や豪華ぶりは、夢想もできないものだったろうと思われる。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「児玉少佐。花は咲いたが、今年だけは、春
爛漫
(
らんまん
)
という辞句は当らんな。満目の
春泥
(
しゅんでい
)
みな荒涼じゃ」
日本名婦伝:谷干城夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
京都や諸国の城下では見られない異色のある文化も、ここにだけ
爛漫
(
らんまん
)
と濃く新しさを誇っていた。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
爛漫
(
らんまん
)
と、
楼
(
ろう
)
に灯は入ったが、まだ三筋の柳町に、買手どもの影は見えない宵の口であった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
汴城
(
べんじょう
)
城下、花の都。冬ながら宋朝文化
爛漫
(
らんまん
)
な千
街
(
がい
)
万戸
(
ばんこ
)
は、人の騒音と賑わいで、
彩霞
(
さいか
)
、煙るばかりであった。
禁裡
(
きんり
)
の森やら
凌烱閣
(
りょうけいかく
)
の
瑠璃瓦
(
るりがわら
)
は、八省四十八街のその
遠方此方
(
おちこち
)
にのぞまれる。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“爛漫”の意味
《名詞》
爛漫(らんまん)
花が咲き乱れること。
明らかに現れること。
(出典:Wiktionary)
爛
漢検1級
部首:⽕
21画
漫
常用漢字
中学
部首:⽔
14画
“爛”で始まる語句
爛
爛々
爛熟
爛酔
爛熳
爛壊
爛然
爛醉
爛壞
爛焼