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燦々
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さんさん
ふりがな文庫
“
燦々
(
さんさん
)” の例文
京子は
燦々
(
さんさん
)
と降り注ぐ月光の中に、はっきりとそれを見たのであった。五十嵐老博士は窓から半身を乗り出して救いを求めていた。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
郭中
(
かくちゅう
)
は一面
燦々
(
さんさん
)
たる燈燭である。中央のひろい一殿に、彼は
請
(
しょう
)
じられた。しかし彼は、
椅子
(
いす
)
に
倚
(
よ
)
らず、宋江を見ると、下に坐って
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
春もいくらか深くなって、そこの紅梅がむせるように匂う頃、寺の上の明るい雑木山に
転
(
ころ
)
がって居ると、鳥がチチと暗き、日は
燦々
(
さんさん
)
とふりそそぐ。
鰯
(新字新仮名)
/
岩本素白
(著)
夜を一つの大きな眼とすれば、これはその
見詰
(
みつ
)
める
瞳
(
ひとみ
)
である。気を取り紛らす
燦々
(
さんさん
)
たる星がなければ、永くはその
凝澄
(
こりすま
)
した注視に堪えないだろう。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
やがて、水の
流
(
ながれ
)
を前にして、
眩
(
まばゆ
)
い
日南
(
ひなた
)
の糸桜に、
燦々
(
さんさん
)
と雪の咲いた、
暖簾
(
のれん
)
の
藍
(
あい
)
もぱっと
明
(
あかる
)
い、桜湯の前へ立った。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
「白いものを着たものは木蔭へ隠れよ」という声に、皆はぞろぞろ藪の奥へ
匐
(
は
)
って行く。陽は
燦々
(
さんさん
)
と降り
灑
(
そそ
)
ぎ藪の向うも、どうやら火が燃えている様子だ。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
鳥の羽を飾った五彩
赫々
(
かっかく
)
たる宝石の
鏤
(
ちりば
)
められた王家の紋章が輝き、太子の服の
襟
(
えり
)
から
釦
(
ボタン
)
ことごとく、ただ
瓔珞
(
ようらく
)
のごとき宝玉で、
燦々
(
さんさん
)
として
帳
(
カーテン
)
を引いた部屋の中に
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
しかも雨後の
雫
(
しずく
)
は
燦々
(
さんさん
)
と所在の
岩角
(
がんかく
)
、洞門にうち響きうち響き、降るかとばかりに
滾
(
こぼ
)
れしきる。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
その八手の
群葉
(
むらば
)
をくぐって、銀の線が奥へ流れて行く、日の光を貫いた吹き針の針で、五間の空間を一直線に飛んで、空にあるうちは
燦々
(
さんさん
)
と輝き、八手の葉の蔭に流れ込むや
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
急に、雨雲が晴れ渡って、太陽が
燦々
(
さんさん
)
と輝きはじめた。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
凍つたしづくが
燦々
(
さんさん
)
と降り
『春と修羅』
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
絶えず
燦々
(
さんさん
)
と放たしむ
光箭
(新字新仮名)
/
今野大力
(著)
すこし
距
(
へだ
)
てて、一群の騎馬隊が
燦々
(
さんさん
)
と
手綱
(
たづな
)
轡
(
くつわ
)
をそろえて来るのが見えた。中ほどにある
年歯
(
ねんし
)
まだ二十一、二歳の弱冠が元康その人だった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
村も畑も
燦々
(
さんさん
)
と輝いた。その輝きはあまりに鋭いので却って人々を静寂な気持にした。輝きには、そのまま死んでしまいたいような神秘な魅力があった。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
しかも眼を挙げて一歩窓外を眺むれば、そこには真昼の陽光が
燦々
(
さんさん
)
と降り
濺
(
そそ
)
いで彼方の昼なお暗き鬱蒼たる糸杉や、
橄欖
(
かんらん
)
の森を背景に、一面の繚乱眼も
眩
(
くら
)
まんばかり
絢
(
あや
)
な花園であった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
見おろす一面の
河幅
(
かふく
)
は光り、光の中に更に
燦々
(
さんさん
)
たるものが光って、その点々を
舷側
(
げんそく
)
に、声なく浮ぶ小舟がある。小舟には一、二の人かげの水にうつって、何やらしきりに
棹
(
さお
)
で
河心
(
かしん
)
を探っている。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
灯火に射られて胸に垂らした金剛石が
燦々
(
さんさん
)
と
猩々緋
(
しょうじょうひ
)
の光を放射する。それにも劣らず輝くのは、
饑
(
う
)
えた鷲のように物凄い
瞽
(
めし
)
いていない一眼である。彼は全く椅子から離れ太刀の柄へ手を掛けた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
なるほど、見てあれば、河原立ちしていた供人の同勢は、弓、
長柄
(
ながえ
)
などを
燦々
(
さんさん
)
とゆるぎ出して、もうそこの舟橋を彼方へ渡りかけている。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
燦々
(
さんさん
)
たる岩の
群
(
むれ
)
と、ごろた石の河原と両岸のいきるる雑草の花とだ。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
数丈
(
すうじょう
)
の高さに昇ると見る間に、今まで朦朧たるその人影は、
煙火
(
えんか
)
の
如
(
ごと
)
く
虹
(
にじ
)
の如く、
燦々
(
さんさん
)
たる光を纏うと共に、紫匂う振り袖に、
東雲
(
あけぼの
)
染めの袴を穿き、したたるような
若衆髷
(
わかしゅわげ
)
の、若衆の姿が現われた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
海はいちめん
燦々
(
さんさん
)
と揺れた。その輝く海波の沖に——ああすでに沖の方だったが、政子の眸に、一点、黒く見えたものがあった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
山の緑が、そうして
白楊
(
ポプラ
)
のそよぎが
燦々
(
さんさん
)
と光り、街の屋根が見え、装飾された万国旗の赤、黄、紫が見え、青い海が見え、
檣
(
マスト
)
が見え、私たちの高麗丸が見え、ああそうして、白い
鴎
(
かもめ
)
の飛翔が見えた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
信玄は、毘沙門堂の縁に、
床几
(
しょうぎ
)
をおかせて腰かけていた。幹の大きな
若楓
(
わかかえで
)
が、そのすがたに
燦々
(
さんさん
)
と日光の
斑
(
ふ
)
をそよがせていた。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
背景は
燦々
(
さんさん
)
たる
白光
(
はっこう
)
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
この日、
馬煙
(
うまけむり
)
は天をおおい、両軍の
旗鼓
(
きこ
)
は地を埋めた。なにやら
燦々
(
さんさん
)
と群星の飛ぶような光を、
濛々
(
もうもう
)
のうちに見るのだった。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
秋となればこの大木の金葉が
燦々
(
さんさん
)
と城下町から遠望されるので、熊本の城を称んで一名「いちょう城」とも唱えられたほど
由緒
(
ゆいしょ
)
ある樹であった。
日本名婦伝:谷干城夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
同時にそれに力を得、官軍の猛将
薛元輝
(
せつげんき
)
もまた、城の一門を押しひらかせ、
金甲鉄鎗
(
きんこうてっそう
)
の光り
燦々
(
さんさん
)
、
奔流
(
ほんりゅう
)
となって敵中へむかって
吶喊
(
とっかん
)
して行った。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その陣羽織は、
銀摺
(
ぎんず
)
りに
雪南天
(
ゆきなんてん
)
の
朱
(
あか
)
い
実
(
み
)
をちりばめた
燦々
(
さんさん
)
たるもの。そして、かぶとは用いず、彼が好みの道誉笠だ。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雨は少し小やみになったが、なお、ばばの白髪に
燦々
(
さんさん
)
と光って
降
(
ふ
)
り
注
(
そそ
)
いだ。お通は、引摺られながら、
掌
(
て
)
を合せて
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
公称一万五千という
士馬精鋭
(
しばせいえい
)
が、
陣鼓
(
じんこ
)
を打ち鳴らし、
旗幟
(
きし
)
をひらめかせ、
燦々
(
さんさん
)
と国境の
彼方
(
かなた
)
へさして流れてゆくのを見た甲府の人々の眼には、依然として
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
五十騎、或いは百騎を従え、ときには子ども(小姓)も連れ、
長柄
(
ながえ
)
の大傘を
翳
(
かざ
)
させ、
燦々
(
さんさん
)
と、
馬印
(
うまじるし
)
を立てて練り歩く彼の「御通過」を仰ぐと、味方の兵は
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
天照大神、八幡大菩薩と、金文字で打出した日輪旗が、中の一
檣頭
(
しょうとう
)
に
燦々
(
さんさん
)
とかがやいている。それこそ尊氏の乗船、足利方の本軍と、新田方には見えたであろう。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すなわち丞相府の前に勢揃いして、鉄甲
燦々
(
さんさん
)
と流れゆく兵馬の編制を見ると、次のような順列であった。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
の
歌主
(
うたぬし
)
の心と同じように、いつも果てなく悲しい
波騒
(
なみざい
)
とのみ見る海の色までが、きょうは明るくて、
燦々
(
さんさん
)
と
睫毛
(
まつげ
)
にかがやいて、希望そのものを波打つかに思われる。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あなやと思うまに、丈八の
蛇矛
(
じゃぼこ
)
、黒鹿毛の逸足、
燦々
(
さんさん
)
たる
甲盔
(
こうがい
)
が、流星のごとく此方へ飛んできた。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜光虫のような
燦々
(
さんさん
)
たる一騎がその先頭を切って来る。
胆
(
たん
)
、驚くべし、女将軍の一丈青であった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
桔梗河原の矢来の外から唯一度見たことのある黒漆の長髯、逞しい五体、
燦々
(
さんさん
)
たる二つの
眼
(
まなこ
)
。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
燦々
(
さんさん
)
と、その
旌旗
(
せいき
)
や
甲
(
よろい
)
かぶとに
旭光
(
きょっこう
)
がきらめいて、群集は眼もくらむような心地に打たれた。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人も
無
(
な
)
げである。信玄そのものばかりでなく、周囲にある幕将までをまるで無視している放言だった。当然、あたりに居ならぶ鉄甲
燦々
(
さんさん
)
たる諸将の感情はうごかずにいられない。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今、越えて来た飛騨川から、
爽
(
さわ
)
やかな風が、その長い行列の上を
燦々
(
さんさん
)
と渡ってゆく。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この炎天に、暁の雨も乾いて、人馬は汗と
埃
(
ほこり
)
にまみれ、華やかな
縅
(
おどし
)
の色や陣羽織もみな白っぽくなっていた。ひとり
燦々
(
さんさん
)
として烈日を射るが如きものは、
金瓢
(
きんぴょう
)
の馬じるしだけであった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
貝の音につれて、
燦々
(
さんさん
)
、粛々、秀吉につづく隊列は流れ出した。その日の秀吉の服装はいうもおろか、小姓、近習以下、列のすそに至るまで、さながら絵巻を
繰
(
く
)
るような美しさだった。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その作法なり、態度なりが、いかにも自然で、そして
気
(
け
)
だかかった。ひら、ひら——と童子のうない髪にちりかかる梅の白さが、何か、
燦々
(
さんさん
)
と光りものでも降るように七郎の眸には見えた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼処
(
かしこ
)
を二本松と呼ぶか。……あのあたりに
燦々
(
さんさん
)
と見ゆる大軍こそ彼の
床几場
(
しょうぎば
)
。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
中にも
白旄黄鉞
(
はくぼうこうえつ
)
の
燦々
(
さんさん
)
たる親衛兵にかこまれている白馬金鞍の大将こそ、すなわち曹操その人であろう、
青羅
(
せいら
)
の
傘蓋
(
さんがい
)
は珠玉の
冠
(
かんむり
)
のうえに高々と揺らいで、威風天地の色を奪うばかりだった。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
卯ノ花おどしの
鎧
(
よろい
)
に、黄金の大太刀、くわ形のかぶとを負い、その上、美男でもおわしたから、光彩、すでに大将軍らしい威容を
燦々
(
さんさん
)
と辺りに払って、ご自身
確
(
しか
)
と、将座を自覚しているようだ。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼方
(
かなた
)
の森の中からである。程なくそこの篠村八幡の境内から光秀以下、騎馬の
幕僚
(
ばくりょう
)
たちが、
西陽
(
にしび
)
を斜めに、
燦々
(
さんさん
)
として騎歩しずかに、各部隊を
閲
(
えっ
)
しながら順次こなたへ近づいて来るのが見られた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
海も山も、
燦々
(
さんさん
)
として
眩
(
まばゆ
)
い。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
地に
燦々
(
さんさん
)
とうごいている。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
初更
(
しょこう
)
の星、
燦々
(
さんさん
)
の頃
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
燦
漢検準1級
部首:⽕
17画
々
3画
“燦々”で始まる語句
燦々会
燦々奕々