ほろぼ)” の例文
そこでこの歌の心はどういうものかというと実によい歌です。かかる勇気がなければ到底大敵をほろぼして国難を救うことは出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ねがわくはわが求むる所を得んことを……願くは神われをほろぼすをしとし御手みてを伸べて我を絶ち給わんことを」と彼はひたすらに死をねがう。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
慘酷むごい/\おのれめにはほろぼされたのぢゃ! おゝ、戀人こひゞとよ! わがいのちよ! いや/\、いのちとははれぬ、んでしまうてゐやるわが戀人こひびと
公之をうれへ、田中不二麿ふじまろ、丹羽淳太郎等と議して、大義しんほろぼすの令を下す、實に已むことを得ざるのきよに出づ。一藩の方向はうかう以て定れり。
この世からあの悪人をほろぼさなければ止みません、それにはただ一ツの方法、あの連判状を奪い返し、その爪を剥いでやります。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
もし浮瀬なく、強い者のために沈められ、ほろぼされてしまうものであったならば、それはいわゆる月に村雲むらくも、花に嵐の風情ふぜい
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
憎みうらめるいかりの余に投返されて、人目にさらさるる事などあらば、いたづらに身をほろぼきずを求めて終りなんをと、遣れば火に入る虫のあやふく、捨つるは惜くも
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
怖しい、暗い夜の翼が、すべての色彩を腐らし、ほろぼして、翼たゆく垂れ下がって、森のいただきと接吻せっぷんしたらしい。
森の暗き夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
土深く鍬を入れて掘り返えし、丁寧に根を拾う外にほろぼす道は無い。我儕は世を渡りて往々此種の草に出会う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
義竜は弘治こうじ二年の春、庶腹しょふくの兄弟喜平次きへいじ孫四郎まごしろうの二人を殺し、続いて父道三どうさん鷺山さぎやまたたこうて父をほろぼしてからは、美濃みのの守護として得意の絶頂に立っていたが
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
私やあなたの造り主で、そのかたは、御自分のおつくりになつたものは決しておほろぼしにならないの。
其後そののち田常でんじやう簡公かんこうころすにおよんで、ことごと高子かうし國子こくしぞくほろぼす。じやう曾孫そうそんいたりて(三三)自立じりふし、いんせい威王ゐわうる。へいもちおこなふ、おほい穰苴じやうしよはふ(三四)ならへり。
鹿台ろくたいの財を発するには、無道むだうしやうほろぼさんではならぬと考へたのだ。己が意をこゝに決し、げんかれたくし、格之助に丁打ちやううちをさせると称して、準備に取り掛つたのは、去年の秋であつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
一朝いっちょう幕政府の顛覆てんぷくに際して、生徒教員もたちまち四方に散じて行くところを知らず、東征の王師、必ずしも開成校を敵としてこれをほろぼさんとするの意もなかりしことならんといえども
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
狂乱に近い画家の精神が一種の自爆性を帯びて激しく発散する。いかなる怒濤どとうにもほろぼされまいとする情意の熱がそこにまばゆいばかりの耀かがやきを放って、この海景の気分をまとめようとあせる。
ころして霊魂たましいをころしものどもをおそるな、霊魂たましいとをゲヘナにてほろぼものをおそれよ。われ平和へいわとうぜんためにきたれりとおもうな、平和へいわにあらず、かえってつるぎとうぜんためきたれり。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
弱きもののしへたげられ、ほろぼさるゝ光景であつた。数本の足——或は毛深い、或は青白い、或はなめらかな数本の足がだらりと空間に下つて見られた。かれは思はず手を合せて、口に経文をとなへた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
今までの悪業あくごう罪障消滅つみほろぼしの為に頭を剃りこぼって、の様な辛苦修行でもし、カン/\坊主に成って今迄の罪をほろぼさなくっちゃアく処へも往かれねえから、己の事は諦めて呉れとはいいましたが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一 われらは妖官をらして法はほろぼさず、妖民は斬る
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其子ジウスにほろぼされ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
金をほろぼし、宋を傾け
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しかるに神の所作しょさくにして愛養物なる我を何故に彼はかくまで苦めかつほろぼさんとするのであるかと、ヨブは依然として神に向って肉迫するのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
今日こんにちの人才をほろぼす者は、いはく色、曰く高利貸ぢやらう。この通り零落おちぶれてをる僕が気毒と思ふなら、君の為になやまされてをる人才の多くを一層不敏ふびんと思うて遣れ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
私の眼には次第々々に、女の姿が、私の藝術をほろぼす妖魔のやうに見えて來た。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
同じもののような気がしてならない。何だかわからぬ愛のために、恋のために、その悲しさのために、霊魂たましいとをゲヘナにてほろぼもの、ああ、私は自分こそ、それだと言い張りたいのだ。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
この媚は己の醒めた意識がほろぼそうとした為めに、却って raffinéラフィネエ になって、無邪気らしい仮面を被って、その蔭に隠れて、一層威力を逞くしているのではないかとも思われるのである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あつかひかたがわるいので爆發ばくはつし、れと武器ぶきほろぼす。
人をほろぼすほほゑまひ。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
「汝の手我を営み我をことごとく作れり、しかるに汝今われをほろぼし給う也」と八節はいい、九節は八節の反覆というべく
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ボヘミヤのハッスまさに焼殺しょうさつせられんとするや大声よんでいわく「我死するのち千百のハッス起らん」と、一楠氏なんし死して慶応明治の維新に百千の楠公起れり、楠公実に七度ななたび人間に生れて国賊をほろぼせり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)