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満腔
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まんこう
ふりがな文庫
“
満腔
(
まんこう
)” の例文
旧字:
滿腔
満腔
(
まんこう
)
の好意をもっていたのであるが、その後、いろいろと悪評が伝わり、お山に
匿
(
かく
)
まい置くべからず——という衆議になったからじゃ
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と。これ彼が
満腔
(
まんこう
)
の不平を
攄
(
の
)
べたるなり。
然
(
しか
)
れども
吾人
(
ごじん
)
を以てこれを見れば、一老生の言、実に彼が急所を刺すものあるを覚う。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
「暮れて帰れば春の月」と
蕪村
(
ぶそん
)
の時代は
詩趣満々
(
ししゅまんまん
)
であった
太秦
(
うずまさ
)
を通って帰る車の上に、余は
満腔
(
まんこう
)
の不平を
吐
(
は
)
く所なきに
悶々
(
もんもん
)
した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
この物質的に何らの功能もない述作的労力の
裡
(
うち
)
には彼の生命がある。彼の
気魄
(
きはく
)
が
滴々
(
てきてき
)
の
墨汁
(
ぼくじゅう
)
と化して、一字一画に
満腔
(
まんこう
)
の精神が飛動している。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その彼らにどうして、みずから批判をくだすことなんかできたろう? 彼らはそれら神聖な大家の名前にたいして、
満腔
(
まんこう
)
の尊敬をささげていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
裏切者にならないために、貴女の純真な、切ない愛情をタッタ一つ抱いて、
満腔
(
まんこう
)
の感謝を捧げて死んで行きたいために。
近眼芸妓と迷宮事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
併しそれを正面から実行した点につき、この方面の作歌に一つの基礎をなした点につき、旅人に
満腔
(
まんこう
)
の尊敬を払うて
茲
(
ここ
)
に一首を選んだのであった。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
満腔
(
まんこう
)
の
慷慨
(
こうがい
)
黙々に付するに忍びず、ただちにその血性を
攄
(
の
)
べ発して一篇の著書とはなりしなり。しかしてこの書初めて世に公布する客年十一月にあり。
将来の日本:01 三版序
(新字新仮名)
/
新島襄
(著)
満腔
(
まんこう
)
ただ忠孝の二字あるのみにして、一身もってその藩主に奉じ、君のために死するのほか、心事なかりしものが、一旦開進の気運に乗じて事を挙げ
徳育如何
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
彼は
満腔
(
まんこう
)
の悲憤を抑えるに忍びず、自ら小パンフレットをつくって、これを知不知のあいだに配布した。「日章旗、影うすし」という題であったと思う。
叛骨・中野正剛:――主観的な覚え書き
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
皆身命に関する事なるにおいてをや、われは意気相投ずるを待って、初めて
満腔
(
まんこう
)
の思想を、陳述する者なりと、何事においても、
総
(
すべ
)
てかくの如くなりし。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
吾人は
貞淑
(
ていしゅく
)
なる夫人のために
満腔
(
まんこう
)
の同情を
表
(
ひょう
)
すると共に、賢明なる
三菱
(
みつびし
)
当事者のために夫人の
便宜
(
べんぎ
)
を考慮するに
吝
(
やぶさ
)
かならざらんことを切望するものなり。……
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
すばやく
私語
(
しご
)
しあいつつ、なおも障子に躍る片腕長身の士のつるぎの舞いを見つめている両人——諏訪栄三郎
満腔
(
まんこう
)
の戦意をこめて思わず柄がしらを握りしめ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
しかし今は時勢に
鑑
(
かんが
)
みまた自分の衰老を省みて、今なおわたくしの旧著を精読して批判の労を
厭
(
いと
)
わない人があるかと思えば
満腔
(
まんこう
)
唯感謝の情を覚ゆるばかりである。
正宗谷崎両氏の批評に答う
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
これは
満腔
(
まんこう
)
の敵意を、反っくり返った鼻と、山のごとく
聳
(
そび
)
えた肩に見せて、万七の
空嘯
(
うそぶ
)
く前を通ります。
銭形平次捕物控:061 雪の足跡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ただ彼女が哀れな中宮の運命によせた
満腔
(
まんこう
)
の同情を、中宮の描写それ自身の内に生かせて行くのである。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
時も時、学校を
罷
(
や
)
めて何をするという方角もなく、
満腔
(
まんこう
)
の不平を抱いて放浪していた時、卒然としてこの文学勃興の機運に際会したは全く何かの因縁であったろう。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
拙者などが
茅屋破窓
(
ぼうおくはそう
)
の下に眠りて、貧苦多患の境遇にありながら、毎日毎日
満腔
(
まんこう
)
の愉快をもって日を送るのは、全くこの天地、この万物の不可思議なることを悟りて
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
憎
(
にくし
)
みを、
満腔
(
まんこう
)
に忍んで、彼はやがて
仇敵
(
かたき
)
どもがすすめる杯を、今夜も重ねねばならぬのだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
何うだ? 参ったろうと言わないばかりだったから、
心委
(
こころまか
)
せにする外仕方がなかった。それに釣堀の魚としては上乗のものと認められたから、僕は
満腔
(
まんこう
)
の賛意を表して置いた。
ロマンスと縁談
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
極めて安心に極めて平和なる曙覧も一たび国体の上に想い到る時は
満腔
(
まんこう
)
の熱血を
灑
(
そそ
)
ぎて敬神の歌を作り不平の吟をなす。
慷慨淋漓
(
こうがいりんり
)
、筆、剣のごとし。また平日の貧曙覧に非ず。
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
経典翻訳者の
甚深
(
じんしん
)
なる苦心と労力に対して、
満腔
(
まんこう
)
の感謝の意を表さねばならぬと思います。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
ところで第二の事実は、今の今まで僕はこの男の風格に、
満腔
(
まんこう
)
の敬意を感じていたのに、今や僕の眼から見ると、この男はたちまち低く低く沈みに沈んでゆくということでした。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
満腔
(
まんこう
)
の不平を
湛
(
たた
)
えて、かえって
嫣然
(
えんぜん
)
として天の一方を
睨
(
にら
)
むようになり得ると、こはいかに、薄汚い、耳の遠い、目の赤い、
繿縷
(
ぼろ
)
を
纏
(
まと
)
った婆さんが
杖
(
つえ
)
に
縋
(
すが
)
って、よぼよぼと尋ねて来て
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
イエスに対して
満腔
(
まんこう
)
の信頼を捧げたと同時に、反射的に自己の不信仰を意識したのです。我々が本気になって一生懸命にイエス様を信じようとする時に、自分に信仰のないことを知る。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
否、まだ外にもあるに違いないということが推定された。それ故、「新青年」の編輯者が、かかる隠れたる作家を明るみへ出そうと企てられたことに自分は
満腔
(
まんこう
)
の賛意を表するのである。
「二銭銅貨」を読む
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
ところで、
猊下
(
げいか
)
、あなた様に向かっては
満腔
(
まんこう
)
の歓喜を
披瀝
(
ひれき
)
いたしまする!
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
と、
満腔
(
まんこう
)
の若やかな親しみを寄せるけれども、新月を見て、そういう親しみを持ち得る子供はない。新月を見ることを愛するものは、やはり年増の味を愛することを知る人でなければならない。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そうして後世の人がこれを用いることができるように
溜
(
た
)
めて往かんとする欲望が諸君のうちにあるならば、私は私の
満腔
(
まんこう
)
の同情をもって、イエス・キリストの
御名
(
みな
)
によって、父なる神の御名によって
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
わたしの肺臓は
満腔
(
まんこう
)
の力を吹き込むのを許されるのだった。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
いま天下に縦横し、ここ江南に臨んで強大の呉を一挙に粉砕せんとし、感慨尽きないものがある。ああ大丈夫の志、
満腔
(
まんこう
)
、歓喜の涙に濡る。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
主人が
満腔
(
まんこう
)
の熱誠をもって髯を調練していると、台所から多角性の
御三
(
おさん
)
が郵便が参りましたと、例のごとく赤い手をぬっと書斎の
中
(
うち
)
へ出した。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
憐れな運命の持主に
満腔
(
まんこう
)
の同情を寄せると同時に、そんな人々が正義の力によって救われて行く筋道を、自分の事のように
力瘤
(
ちからこぶ
)
を入れて読み続けた。
老巡査
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
満腔
(
まんこう
)
の
慷慨
(
こうがい
)
黙々に付するに忍びず、ただちにその血性を
攄
(
の
)
べ発して一篇の著書とはなりしなり。しかしてこの書初めて世に公布する客年十一月にあり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
(彼はモークをモロックと呼んでいた。)——しかしモークが帰ってゆくと彼はすぐに、そのまったくの温情にたいして
満腔
(
まんこう
)
の感謝を覚ゆるのだった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
寡婦
(
かふ
)
として彼を育て上げた彼の母、彼の姉、彼の二兄、家族の者は皆彼が海軍を見捨つることに反対した。唯一人
満腔
(
まんこう
)
の同情を彼に寄せた人があった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ある伝記者はリストの豊かなる愛情を
讃美
(
さんび
)
して、それは全く比類のないものであったと言っている。彼は接する者誰にでも、
満腔
(
まんこう
)
の親しさと愛とを注ぎかけずにはおかなかった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
水の光で
明
(
あかる
)
く見える板橋の上を提灯つけた車が走る。それらの景色をばいい知れず美しく悲しく感じて、
満腔
(
まんこう
)
の詩情を托したその頃の自分は若いものであった。
煩悶
(
はんもん
)
を知らなかった。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と芳野君は
大切
(
だいじ
)
を取った。口先では
諢
(
からか
)
いながらも、
満腔
(
まんこう
)
の好意を持っている。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
口を
極
(
きわ
)
めてすでに立ち去りたる巡査を
罵
(
ののし
)
り、
満腔
(
まんこう
)
の熱気を吐きつつ、思わず腕を
擦
(
さす
)
りしが、四谷組合と
記
(
しる
)
したる
煤
(
すす
)
け
提灯
(
ちょうちん
)
の
蝋燭
(
ろうそく
)
を今継ぎ足して、力なげに
梶棒
(
かじぼう
)
を取り上ぐる老車夫の
風采
(
ふうさい
)
を見て
夜行巡査
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わたしはヴォルテェルを
軽蔑
(
けいべつ
)
している。若し理性に終始するとすれば、我我は我我の存在に
満腔
(
まんこう
)
の
呪咀
(
じゅそ
)
を加えなければならぬ。しかし世界の
賞讃
(
しょうさん
)
に酔った Candide の作者の幸福さは!
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は周密なる思慮を
率
(
ひき
)
いて、
満腔
(
まんこう
)
の毒血を相手の頭から浴びせかけ得る偉大なる俳優であった。もしくは尋常以上の頭脳と情熱を兼ねた狂人であった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
貞昌は、その一言を、
満腔
(
まんこう
)
からいった。城兵五百の生命と、徳川家の浮沈のためだ。主君とはいえ、彼のほうからこそ、手をついて頼みたいところだった。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
未亡人と娘は名探偵に
満腔
(
まんこう
)
の感謝を捧げた。娘と名探偵とはとうとう恋仲にまでなったが、しかし、それでも娘の
生命
(
いのち
)
を狙っている悪人の正体ばかりは、どうしても掴めなかった。
書けない探偵小説
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
生きんがために愛したがり
満腔
(
まんこう
)
の愛を消費したがる力強い率直な同情心、それの欠けてることだった。つぎにはまたおそらく、仕事の疲労、あまりに困難な生活、思想の熱烈さ、などであった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
小野さんはすぐ来るのみならず、来る時は必ず
詩歌
(
しいか
)
の
璧
(
たま
)
を
懐
(
ふところ
)
に
抱
(
いだ
)
いて来る。夢にだもわれを
弄
(
もてあそ
)
ぶの意思なくして、
満腔
(
まんこう
)
の誠を捧げてわが
玩具
(
おもちゃ
)
となるを栄誉と思う。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし同じ嘆息にしても、ああ——と
満腔
(
まんこう
)
から
鬱
(
うつ
)
を天へ吐きすてるのもあるし、われとわが身へ、ああと歎いて、世の憂いをいよいよ身一つに
蒐
(
あつ
)
めてしまうものとがある。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
師たる自分からも
満腔
(
まんこう
)
の
念祷
(
ねんとう
)
をもってご
賢慮
(
けんりょ
)
におすがり申す——というような内容なのである。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
信雄はもとより信孝に
満腔
(
まんこう
)
の不平を抱いている。勝家にも快くないこと勿論だ。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
信長は、
満腔
(
まんこう
)
の怒りを、心に抑えつけながら心で叫んだ。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“満腔”の意味
《名詞》
満 腔(まんこう)
体中。
(出典:Wiktionary)
満
常用漢字
小4
部首:⽔
12画
腔
漢検準1級
部首:⾁
12画
“満”で始まる語句
満
満更
満足
満洲
満々
満潮
満干
満天星
満目
満山