“波瀾:はらん” の例文
“波瀾:はらん”を含む作品の著者(上位)作品数
夏目漱石12
吉川英治5
永井荷風3
島崎藤村3
下村湖人3
“波瀾:はらん”を含む作品のジャンル比率
社会科学 > 経済 > 貨幣・通貨100.0%
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.9%
文学 > 日本文学 > 詩歌0.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
しかも昨日きのう病院で起った波瀾はらんの結果として、彼女がわざわざそこまで足を運んでいようとは、夢にも知らなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は自分と御米の生命ライフを、毎年平凡な波瀾はらんのうちに送る以上に、面前まのあたり大した希望も持っていなかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしながら、波瀾はらん表面ひょうめんに見せないだけ、お政が内心の苦痛くつう容易よういなわけのものでなかった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
私の郷里で暮らしたその二カ月間が、私の運命にとって、いかに波瀾はらんに富んだものかは、前に書いた通りですから繰り返しません。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大なり小なり次の波瀾はらんが呼び起されずに片がつこうとは、いかに自分の手際に重きをおくお延にも信ぜられなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
平和の状態に戻る前には必然に多少の波瀾はらんが常にあるもので、あたかも山岳から平野におりてゆくようなものである。
これがもし達者な作家であったなら、その間に、たとえば五カ年とか、七カ年とかにわたる波瀾はらん万丈の物語を展開したかもしれない。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
波瀾はらんも曲折もない単調な生活を続けて来た私の内面には、常にこうした苦しい戦争があったものと思って下さい。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
富岡は、こゝ数年の波瀾はらん縦横な戦ひのなかで、何処かに自分の人間らしさを失つて来てゐるやうな気がしてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
人生を脱離して超越していると考えながらも、やがて人生の波瀾はらんの中に巻き込まれているのが普通の状態である。
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
經濟界けいざいかい急激きふげき波瀾はらんあたへることはないことを確信かくしんしてる。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
波瀾はらんの上にも脚色きやくしよく波瀾はらんきはめて、つひに演劇の一幕ひとまくが終る。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
これほどの出来事も過ぎ去った後になって見れば、維新途上の一小波瀾はらんであったと考えるものもあるほど、押し寄せる世界の波は大きかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
全て波瀾はらん曲折も無限の薄明にとざされて見え、止み難い退屈を驚かす何物も予想することが出来なかった。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
だから時局の波瀾はらんをみると、海道から府内は、昼夜、ひっきりなしに六飛脚びきゃくだ。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——おあんじなされますな、たとえ、いかなる波瀾はらんを生みましょうとも、かれらのことでござります」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その古い色を見ると、木村の父のふとぱらな鋭い性格と、波瀾はらんの多い生涯しょうがい極印ごくいんがすわっているように見えた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
さうして通貨つうくわ急激きふげき減少げんせうするやうになれば、經濟界けいざいかい波瀾はらんあたへることになるのであるが
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
びとを帰したお政は、いささか気もおちついたものの、おちついた思慮しりょが働くと、さらに別種べっしゅ波瀾はらんが胸にわく。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
下界げかいるとまなこくらむばかりで、かぎりなき大洋たいやうめんには、波瀾はらん激浪げきらう立騷たちさわ
しからざればいらざる風濤ふうとうの描写をいて、主人公の身辺に起る波瀾はらん成行をもう少し上手に手際てぎわよく叙したらば好かろうと思う。
二剣、その所をべつにしたが最後、波瀾はらん激潮げきちょうを生み、腥風せいふうは血雨を降らすとの言い伝えが、まさにしんをなしたのである。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
鈴木女教員の代わりの教員が来、吉川訓導の代わりの師範学校出の先生が来て、丘の中腹の学校は元どおりの、内に波瀾はらんはらんだ表面の平和を続けていった。
錯覚の拷問室 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
実生活の波瀾はらんに乏しい、孤独な道を踏んで来た私のうちに、思いもかけず、多数の個性を発見した時、私は眼を見張って驚かずにはいられなかったではないか。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
こういうことのあったのは永禄元年のことであるが、この夜買った紅巾こうきんたたりで、土屋庄三郎の身の上には幾多の波瀾はらん重畳ちょうじょうした。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
送別式に何かの波瀾はらんを予想し、興味本位でそれを期待していた生徒たちも決して少くはなかった。彼らは、見送りのために校庭に集合しながら、くちぐちに言った。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
で、吉次の計画は、極めて簡単な一投石で、その目的の波瀾はらんを、中央に捲起まきおこすことができるものとして——平泉のやかたから黙約を得ていたのだった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
動揺期にある社会は守旧破壊の双方の主張の風を受けてますます波瀾はらんをあげているが、多数の人々はその双方の思想を識別して向背を決するだけの文化を有していない。
俄然、平常へいぜい、直胤の一派を支持している者と、ひそかに、それへ反感を抱いている者との感情が、環の一投石に依って、露骨な波瀾はらんをよび起したのであった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
めば砂の山を歩いて松の木立を見る。砂の浜に下りて海の波瀾はらんを見る。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
江戸駒込こまごめの別邸で波瀾はらんの多い生涯しょうがいを終わった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
波瀾はらんの上にも脚色の波瀾を極めて、遂に演劇の一幕ひとまくが終る。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こうして、この晩の研究会は、いつもにない波瀾はらんを見せたとはいえ、一二のすぐれた塾生の協力によって、ともかくも友愛塾らしい結論を生み出すことに成功して、最後の幕をとじた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そう思うと葉子は無理にも平地に波瀾はらんが起こしてみたかった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
指輪は魔物である。沙翁さおうは指輪を種に幾多の波瀾はらんを描いた。若い男と若い女を目に見えぬ空裏くうりつなぐものは恋である。恋をそのまま手にとらすものは指輪である。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
身動きがとれなくなって、人間が腐った時、また波瀾はらんが起る。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
——話は要領を得ずにすんでしまったが、私にはやッぱり構造、たとえば波瀾はらん、衝突から起る因果いんがとか、この因果と、あの因果の関係とか云うものが第一番に眼につくんです。
虚子君へ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの波瀾はらんの多い御隠居の生涯しょうがいがそれだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし彼の心が、再びこの山村の平和に退屈しても、なお、これ以上の波瀾はらんを欲するかしら? それは杢之進にも分らない。ただ当座は、一刻も早く陶器山すえものやまの静まるのを念じたに違いない。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして心の中でこんなことを思うのだった——自分の生涯には現にまた一つ、波瀾はらんとかエピソードとかいったものがあったけれど、それもやっぱりもう済んでしまって、今では思い出が残っているのだ……。
「人間万事塞翁さいおうの馬。元気を出して、再挙をはかるさ。人生七十年、いろいろさまざまの事がある。人情は飜覆ほんぷくして洞庭湖の波瀾はらんに似たり。」と洒落しゃれた事を言って立ち去る。
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
私達の使った無事という言葉は、男女なんにょの間に起る恋の波瀾はらんがないという意味で、云わば情事の反対をしたようなものであるが、私の追窮心ついきゅうしんは簡単なこの一句の答で満足できなかった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
英国金融資本が、米国産業資本に強靭きょうじん波瀾はらんをまきおこしたために、米国資本を背景とした商工都市大阪は、ウォール街を恐怖がおそうと同時に、赤鼻女の野暮なアメリカの衣裳をつけて財界の迷路に立った。
大阪万華鏡 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
あとは人間が勝手に泳いで、おのづか波瀾はらんが出来るだらうと思ふ、さうかうしてゐるうちに読者も作者もこの空気にかぶれて是等これらの人間を知る様になる事と信ずる、もしかぶれ甲斐がひのしない空気で
『三四郎』予告 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何か波瀾はらんがあればいい。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この多事なる世界は日となく夜となく回転しつつ波瀾はらんを生じつつある間に我輩のすむ小天地にも小回転と小波瀾があって我下宿の主人公はその尨大ぼうだいなる身体をしてかの小冠者差配と雌雄しゆうを決せんとしつつある。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御健康はいかがです。現在別にわるいところがないのなら、無論近い将来にもさして病難があるとは思われません。現在は唯今ただいまも申上げたように波瀾はらんのあった後むしろ無事で、いくらか沈滞というような形もあります。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
世間並みの夫婦として別にひとの注意をひくほどの波瀾はらんもなく、まず平穏に納まっているから、人目にはそれでさしつかえないようにみえるけれども、姉娘の父母はこの二、三年のあいだに、苦々しい思いをたえず陰でなめさせられたのである。
手紙 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ただ杜甫の経歴の変化多く波瀾はらん多きに反して、曙覧の事蹟ははなはだ平和にはなはだ狭隘きょうあいに、時は逢いがたき維新の前後にありながら、幾多の人事的好題目をその詩嚢しのう中に収め得ざりしこと実に千古の遺憾いかんなりとす。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
と云う訳で、少しでも労力を節減し得て優勢なるものが地平線上に現われてここに一つの波瀾はらんを誘うと、ちょうど一種の低気圧と同じ現象が開化の中に起って、各部の比例がとれ平均が回復されるまでは動揺してやめられないのが人間の本来であります。
現代日本の開化 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二つの刀が同じ場所におさまっているあいだは無事だが、一朝乾坤二刀、そのところを異にするが早いか、たちまち雲竜双巴ふたつどもえ、相応じ対動して、血は流れ肉は飛び、波瀾はらん万丈、おそろしい現世の地獄、つるぎの渦を捲き起こさずにはおかないという。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そんなことして平地に波瀾はらん起すより当分内証で会うてる方ええやないか、ぜんたい綿貫の方には別に結婚せんならん理由ないのんで、そんな体で無理な相談やいうこと自分かて分ってますねんけど、光子さんの方がそないいつまででも一人でいられるはずないさかい
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これらの武家の興亡はそれだけでも歴史に波瀾はらんに富んだ見せかけを与えているが、もっと根本的な重大事は、武家といわれる身分のものが、政治権力を朝権の外にうち立てたということであって、その武家が次々に入れかわるごとに、その力を大きくしていったのである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
ただ拘泥こうでいせざるを特色とする、人事百端、遭逢纏綿そうほうてんめんの限りなき波瀾はらんはことごとく喜怒哀楽の種で、その喜怒哀楽は必竟ひっきょうするに拘泥するに足らぬものであるというような筆致が彼らの人生にもたらきた福音ふくいんである。
写生文 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かりに、道江を中心とした問題が、本来、時代とはかかわりのない大きな浪であったとしても、それが、事実、一層大きな、ほとんど無限ともいうべき大きな時代の浪の中での一波瀾はらんであったとすれば、単にそれだけを切りはなして描いただけでは、彼のほんとうの生活を描いたことにならないであろう。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
私は、多年情海の波瀾はらんしのいで来た、海に千年山に千年ともいうべき、その女主人と差し向いに坐っていると、何だか、あまりに子供じみた馬鹿らしいことをいい出すのが気恥かしいようで、妙に自分ながらかたくなって口ごもっていると、そこへ外から今帰ったらしい若いおんなが一人出てきて、
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
そないにして、夫の方もいずれまた一と波瀾はらん持ち上ること分ってましたが、さしあたり前より都合ようなったくらいですよって、私はますますのぼせてしもて、情熱の奴隷となってしもたのんですが、その最中に、私に取ってまるきり寝耳に水の事が、——もうもうほんまに、夢にも思いがけなんだ事起ったのんです。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)