機敏きびん)” の例文
九、 大地震だいぢしん場合ばあひには水道すいどう斷水だんすいするものと覺悟かくごし、機敏きびん貯水ちよすい用意よういをなすこと。またみづもちひざる消防法しようぼうほうをも應用おうようすべきこと。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
こゝろのなかで、これ神經衰弱しんけいすゐじやく結果けつくわむかしやう機敏きびん明快めいくわい判斷はんだんを、すぐつくげるあたまくなつた證據しようこだらうと自覺じかくした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そしてかなり機敏きびんだったので、自分じぶんがほめられたのをさとった。けれども、祖父そふが自分のうちの何を一番ほめたのか、それがよくわからなかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
無口で鈍重な逸作が、対社会的な画作に傑出けっしゅつして居るのは、その部分が機敏きびんに働く職能しょくのうの現れだからである。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
なんぢ此度このたび使命しめい成敗せいばいは、海底戰鬪艇かいていせんとうていが、日本帝國につぽんていこく守護まもりとして、現出げんしゆつすること出來できるか、いなかのわかであるぞ。きはめて機敏きびんに、きはめて愼重しんちようなれ。
今一人の薄汚なき小男を後にて聞けば、失敬な世に安伴あんばんと呼ばれて中々なか/\あまくない精悍せいかん機敏きびんの局長なりけり。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
また獲物えものするどみづつてすゝんでるのを彼等かれら敏捷びんせふ闇夜あんやにもかならいつすることなく、接近せつきんした一刹那せつな彼等かれら水中すゐちうをどつて機敏きびんあみもつ獲物えものくのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
機敏きびんな探偵は、その表情と手の動きを見のがしませんでした。いきなりとびついていって、おさえているポケットに手を入れ、一枚の紙幣を取りだしてしまいました。千円札です。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だが、岸本監督はさすがに落ちつきをとり戻して、機敏きびんに頭を働かせていた。今こそ一男を使う時だ! 大人おとながのればあのはりは落ちる。だが子供なら……そうだ、一男なら大丈夫だ。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
さては、小太郎山こたろうざんから手当てあてされて、甲府こうふ城下じょうかにはいるまえ、にじ松原まつばられいもいわずきずてにして自分はけだしてしまった、あの、優雅ゆうがにして機敏きびんな少女の工匠たくみたちであったか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とゴルドンが、次郎の機敏きびん処置しょちを感謝した。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
みづなしの消防しようぼうもつと不利益ふりえきであるから、水道すいどうみづまらないうち機敏きびん貯水ちよすい用意よういをすることが賢明けんめい仕方しかたである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
はなしいたときかれむし御米およね機敏きびん才覺さいかくおどろかされた。同時どうじはたして夫丈それだけ必要ひつえうがあるかをうたがつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一同いちどう無事ぶじか。』とさけんだのは、なつかしや、櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさこゑ同時どうじに、いま一人ひとり乘組のりくんでつた馴染なじみかほ水兵すいへいが、機敏きびん碇綱いかりづなげると、それがうま鐵檻車てつおりくるま一端いつたんとまつたので
それにしても、きみがあの三人を、そっと写真にとっておいたのは、機敏きびんだったぞ。
天空の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
露骨ろこつ機敏きびんに、利害を主張すればそれでよかった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
實際じつさい前記ぜんき大地震だいぢしんおいては機敏きびん動作どうさをなしてかへつて軒前のきさき壓死あつししたものがおほく、おくれながら小屋組こやぐみした安全あんぜんかれたものは屋根やねやぶつてたすかつたといふ。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
機敏きびんな明智探偵が、このさわぎをぼんやり見ているはずはありません。探偵は二十面相がおそわれたと知ると、すぐさまポケットのピストルを取りだして、賊の胸にねらいをさだめました。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)