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木偶
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でく
ふりがな文庫
“
木偶
(
でく
)” の例文
以後、王子は何事をもいわず、何事をも行わず、蝋の
木偶
(
でく
)
のようになって一生を終った。死ぬ迄の間に彼のしたことは、たった一つ。
セトナ皇子(仮題)
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
晋の
区純
(
おうじゅん
)
は鼠が門を出かかると
木偶
(
でく
)
が槌で打ち殺す
機関
(
からくり
)
を作った(『類函』四三二)。北欧のトール神の槌は専ら
抛
(
なげう
)
って鬼を殺した。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
また、僧を
金襴
(
きんらん
)
の
木偶
(
でく
)
と思うている俗の人々がいうのじゃ。われらには、自分の信心を信ずるがゆえに、さような窮屈なことは
厭
(
いと
)
う。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
船には二三十人の
木偶
(
でく
)
の坊が紺色の繪の具で並列せしめられた。そしてそれらの人の中から十幾本かの釣竿が立つて居るのである。
海郷風物記
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
小倉はその性格が煮え切らないところから、この事件の進展に対し、何らの役目を勤めることのできない一の
木偶
(
でく
)
の
坊
(
ぼう
)
に過ぎなかった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
▼ もっと見る
まるで
毀
(
こわ
)
れた
木偶
(
でく
)
のように、ぐたぐたとそこへ、しだらなく躯を投げだした藤七を見て、お紋は暫く途方にくれるばかりだった。
野分
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そしてそれからのことである——
木偶
(
でく
)
のやうに動きを忘れた投影の深い静物と成り果てたのは! およそ人の生活苦を個人の上へ累積して
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
これだけの餌をやって置けば、江戸開府以来といわれた名御用聞の銭形平次といえども、
木偶
(
でく
)
のように操縦が出来ると思っているのでしょう。
銭形平次捕物控:227 怪盗系図
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
子沢山で、不作つづき、税金は
苛
(
から
)
い、軍人、
掠賊
(
ものとり
)
、お役人
方
(
がた
)
、旦那衆、皆より集ってあの
木偶
(
でく
)
の棒みたいな男ひとりを苦しませているのである。
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
なんの
木偶
(
でく
)
の
坊
(
ぼう
)
——とひと口に云ってしまえばそれ
迄
(
まで
)
ですが、生きた人間にも木偶の坊に劣ったのがないとは云えません。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
地球の緯度線が
草鞋
(
わらじ
)
の爪先に引っかかるわけである、しかも争う
可
(
べか
)
らざるは朝の神秘なり、一たび臨むとき、
木偶
(
でく
)
には魂を、大理石には血を
与
(
あたえ
)
る。
奥常念岳の絶巓に立つ記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
「ビール一つ見つけられんなんて、
木偶
(
でく
)
の坊とも大馬鹿とも、方図が知れんじゃないか! ああん? いやさ、こいつ横着なんじゃないのかい?」
接吻
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
飯粒
(
めしつぶ
)
に
釣
(
つ
)
らるゝ
鮒男
(
ふなをとこ
)
がヤレ
才子
(
さいし
)
ぢや
怜悧者
(
りこうもの
)
ぢやと
褒
(
ほ
)
めそやされ、
偶
(
たま
)
さか
活
(
い
)
きた
精神
(
せいしん
)
を
有
(
も
)
つ
者
(
もの
)
あれば
却
(
かへつ
)
て
木偶
(
でく
)
のあしらひせらるゝ事
沙汰
(
さた
)
の
限
(
かぎ
)
りなり。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
一個の
木偶
(
でく
)
にすぎなかった私は、危険な人物となった。そして
苛酷
(
かこく
)
が私を破滅さしたと同じく、その後寛容と親切とは私を救ってくれたのである。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それだから俺は始めから死ぬんだ死ぬんだといって聞かせているのに、貴様たちはまるで
木偶
(
でく
)
の坊見たいだからなあ。
ドモ又の死
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
男を迷はさず男の魂を飛さずに
惚
(
ほ
)
れられる女は一人も無かつた。惚れればきつと男の性根を抜き、男を
腑抜
(
ふぬ
)
けにして
木偶
(
でく
)
人形のやうに扱はうとする。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
するとその
木偶
(
でく
)
のような顔に、不意に一種の暖かい光りが閃めいて、感情とは言えないまでも、仄かな感情の残影とでもいうようなものが現われた。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
その夜、彼女は、晝間より長つたらしく、
木偶
(
でく
)
の如き妹を聞き役にして、胸中に叢がる思ひを取り留めもなく打ち明けた。話のうちに涙をさへ落した。
新婚旅行
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
その無生の
木偶
(
でく
)
にお母さんのあるわけもないのであるが、かくそれを人間の如く見ていう所に、雛に対する親しみと、打ち興じた興味があるのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
でも彼は、新しいものをさがしているときなぜアフリカ土人の作った原始的な
木偶
(
でく
)
へかえったのだろう。それから、現実をバラバラにして置く図解へ。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
糸で
曳
(
ひ
)
かるる
木偶
(
でく
)
のように我を忘れて行く途中、この馬鹿野郎
発狂漢
(
きちがい
)
め、
我
(
ひと
)
のせっかく洗ったものに何する、馬鹿めとだしぬけに
噛
(
か
)
みつくごとく
罵
(
ののし
)
られ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
一口
(
ひとくち
)
にいういわゆる「
様子
(
ようす
)
がいい」人、すなわち
木偶
(
でく
)
同然の者のために身を誤るのはすなわちこれである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
世界中で何もかも
木偶
(
でく
)
の棒ですが、子供だけは生々と跳ね廻っています。にこにこっと笑う笑顔ったらありませんよ。私の子供もよく笑ってばかりいましたっけ。
林檎
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
自分は雷ヶ浦の力で
木偶
(
でく
)
の如く取扱はれ最後に頭を小常陸君の右肩へトント打突けられた。頭は暫く肉の中に埋まり
頓
(
やが
)
て弾ね返される時
呼吸
(
いき
)
をすつかり切らした。
相撲の稽古
(新字旧仮名)
/
岡本一平
(著)
「それは考へなくちやいけないよ、ジャネット。もし私が昔の私だつたら、あなたに考へさせるやうにするだらうけれど——だが——眼も見えぬ
木偶
(
でく
)
の坊ぢやあ!」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
おとよさんの秘密に少しも気づかない省作は、今日は自分で自分がわからず、ただ自分は
木偶
(
でく
)
の
坊
(
ぼう
)
のように、おとよさんに引き回されて日が暮れたような心持ちがした。
隣の嫁
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
おれは気の毒に思うたから、女は
咎
(
とが
)
めるにも及ぶまいと、使の
基安
(
もとやす
)
に頼んでやった。が、基安は取り合いもせぬ。あの男は勿論役目のほかは、何一つ知らぬ
木偶
(
でく
)
の坊じゃ。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
妾の目から見る時は、世間の男は
木偶
(
でく
)
同様、恐ろしくもなければ面白くもない。それに荻ノ江を
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ただそれは
木偶
(
でく
)
のように私のするがままになっていた。泣きもしなかった。そして荒々しい息づかいをしながら、下の方からじっと私の顔を見上げた。殊更に目が白かった。
光の中に
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
「いやです、いやです。私には親があるのです。兄弟があるのです。助けて下さい、後生です。本当に
木偶
(
でく
)
の
坊
(
ぼう
)
の様に、あなたの云いなり次第になります。離して、離して」
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
だから僕が
先刻
(
さっき
)
から云うんだ、実地を踏んで
鍛
(
きた
)
え上げない人間は、
木偶
(
でく
)
の
坊
(
ぼう
)
と
同
(
おん
)
なじ事だって
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
空
(
あ
)
いたテーブルにかけさせられても、茂緒はしゅうし
木偶
(
でく
)
のようにだまっていた。だまっているあいだに、みんなの話から、修造たちがもうここを立ち去ったことも分かった。
風
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
百計尽きて、仕様がないと観念して、性を
矯
(
た
)
め、情を
矯
(
た
)
め、
生
(
いき
)
ながら
木偶
(
でく
)
の様な生気のない人間になって了えば、親達は始めて満足して、漸く善良な傾向が見えて来たと曰う。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
とウルリーケは
屹然
(
きっ
)
と法水を見据えたが、検事はその一言で、
木偶
(
でく
)
のように硬くなってしまった——なぜなら、彼の云うのがもし真実だとすれば、あれほど厳然たる艇長の死が
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
此御中
(
このおんなか
)
に
何
(
なに
)
とてお
子
(
こ
)
の
無
(
な
)
き、
相添
(
あひそ
)
ひて十
年
(
ねん
)
餘
(
あま
)
り、
夢
(
ゆめ
)
にも
左樣
(
さやう
)
の
氣色
(
けしき
)
はなくて、
清水堂
(
きよみづだう
)
のお
木偶
(
でく
)
さま
幾度
(
いくたび
)
空
(
むな
)
しき
願
(
ねが
)
ひに
成
(
なり
)
けん、
旦那
(
だんな
)
さま
淋
(
さび
)
しき
餘
(
あま
)
りに
貰
(
もら
)
ひ
子
(
こ
)
せばやと
仰
(
おつ
)
しやるなれども
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
男の木乃伊と女の木乃伊が、お
精靈
(
しやうらい
)
樣の茄子の馬の樣な格好をして、上と下とに重なり合つてゐた。その色が鼠色だつた。さうして
木偶
(
でく
)
見たいな、眼ばかりの女の顏が上に向いてゐた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
「ウフフ、枯れ木も山のにぎわいと申す。よくもこう
木偶
(
でく
)
の坊がそろったもんだ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
実際人間は振り子の調子につれて、カタカタと動きパタリと倒れる
木偶
(
でく
)
のようではないか。私は自分が以前あの例の娘を見初めて通いつくした頃もそんな考えに苦しめられたものである。
職工と微笑
(新字新仮名)
/
松永延造
(著)
紙の上ではすぐれてるか知れないが、その数字の工場から外へ出ると、もうまるで
木偶
(
でく
)
の棒だ。生活と実務との経験ある良識家に導かれなかったら、学者はとてもやってゆけるものではない。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そこで妾の腹に出來ても、自分の
種
(
たね
)
は種であるといふところから、周三を連れて來て
嗣子
(
しゝ
)
としたのであつた。從ツて目的がある。父は、周三を自分の
想通
(
かんがへどほ
)
りに動く
木偶
(
でく
)
になツて
貰
(
もら
)
ひたかツた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
それがもとで、遂には他の人形をも舞わすようになり、後には浄瑠璃に合せて段ものを演出し、遂には「
道薫坊
(
どうくんぼう
)
」と云われた人形舞わしが成立した。道薫坊とは「
木偶
(
でく
)
の坊」ということである。
賤民概説
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
「あれだ、ああいう
木偶
(
でく
)
の
坊
(
ぼう
)
を祭り上げて、いい気になって騒いでいる」
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「清正公に較べますと今時の工学士は皆
木偶
(
でく
)
のごとありますからなあ」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
止せ、と
退
(
しさ
)
る、
遣着
(
やッつ
)
けろ、と出る、ざまあ見ろ、と笑うやら、痛え、といって
身悶
(
みもだ
)
えするやら、一斉に皆うようよ。有触れた銀流し、汚い
親仁
(
おやじ
)
なら何事もあるまい、いずれ器量が操る
木偶
(
でく
)
であろう。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
驚いて、
木偶
(
でく
)
のように凝り固まって立っていおる。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
あなたの前で喰せ物の口の達者な
木偶
(
でく
)
どもが
朝菜集
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
火に遇つた
木偶
(
でく
)
といぢけさせました!
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
『ば、ばかなっ!
木偶
(
でく
)
が、生きた人間に、ものを教えたら逆さま事じゃ。御勝手に為されたがよい。随分、御随意に、おやんなさい』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
口数の
寡
(
すくな
)
い、極く控え目勝ちな女であった。美人には違いないが、動きの少い、
木偶
(
でく
)
の様な美しさは、時に阿呆に近く見えることがある。
妖氛録
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
金之助は立って
衣紋
(
えもん
)
を直し、刀を取上げて振返った。半三郎は毀れた
木偶
(
でく
)
のように、身を投げだしたまま動くけはいもなかった。
落ち梅記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
木
常用漢字
小1
部首:⽊
4画
偶
常用漢字
中学
部首:⼈
11画
“木偶”で始まる語句
木偶坊
木偶人形
木偶師
木偶漢
木偶之坊
木偶法印