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暗
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あん
ふりがな文庫
“
暗
(
あん
)” の例文
だから彼が、
暗
(
あん
)
に、宮方へ寄せる好意のごときも、宮方の思想やその“世直し”の実現に同調しているわけではさらさらないのだ。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうしてその裏側へ
暗
(
あん
)
に自分の長所を
点綴
(
てんてつ
)
して喜んだ。だから自分の短所にはけっして思い及ばなかったと同一の結果に帰着した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「オイ君。君は、ああいうチャンバラを見物にゆく趣味はないのかネ」と、正木署長の一行についてゆかないのかを
暗
(
あん
)
に尋ねた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今は秋陰
暗
(
あん
)
として、空に
異形
(
いぎょう
)
の雲満ち、海はわが坐す岩の下まで満々とたたえて、そのすごきまで
黯
(
くろ
)
き
面
(
おもて
)
を点破する一
帆
(
ぱん
)
の影だに見えず。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
一 道を
同
(
おなじう
)
し義相
協
(
かな
)
ふを以て
暗
(
あん
)
に集合せり、故に此理を益
研究
(
けんきう
)
して、道義に於ては一身を不
レ
顧
ミ
、必ず
踏
(
ふみ
)
行ふべき事。
遺教
(旧字旧仮名)
/
西郷隆盛
(著)
▼ もっと見る
三好家にも異存はなかった。兄の透も反対しなかった。それでも、奥さんは多代子にむかって
暗
(
あん
)
に注意をあたえた。
深見夫人の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
『
伊波伝毛乃記
(
いわでものき
)
』といふものあり。これ
曲亭馬琴
(
きょくていばきん
)
暗
(
あん
)
に人を
誹
(
そし
)
りて
己
(
おの
)
れを
高
(
たこ
)
うせんがために書きたるものなりとか。
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
また世の中には科学万能主義を排斥すると称して、
暗
(
あん
)
に世人の科学に対する信用を減殺しようとはかる者があるが、これもまた大いに戒むべきことである。
戦争と平和
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
自ら
不覊磊落
(
ふきらいらく
)
なる調子を具有し、一転しては虚無的の放縦なるものとなりて、以て
暗
(
あん
)
に武門の威権を嘲笑せり。
徳川氏時代の平民的理想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
自分としても
暗
(
あん
)
に勝利のほほえみを以て迎えていたのに、今となって、色を売る
女風情
(
おんなふぜい
)
に、あの人の心全部を奪われてしまったとなると、お松の気象では
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その時の自分の態度が
曖昧
(
あいまい
)
であつたのをすず子は賛同したんだと思つた。それも無理がない。實際に自分は
暗
(
あん
)
に
慫慂
(
しようよう
)
したやうな態度を示して居たからである。
計画
(旧字旧仮名)
/
平出修
(著)
室内の灯を受けて、半身は
明
(
めい
)
、半身は
暗
(
あん
)
、
染
(
そ
)
め
分
(
わ
)
けの姿を冷々と据えて、けむりのごとく、水のごとく……。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
日に
焦
(
こ
)
げたる
老翁
(
ろうおう
)
鍬を肩にし
一枝
(
いっし
)
の桃花を折りて
田畝
(
でんぽ
)
より帰り、老婆
浣衣
(
かんい
)
し終りて
柴門
(
さいもん
)
の
辺
(
あたり
)
に
佇
(
たたず
)
み
暗
(
あん
)
にこれを迎ふれば、
飢雀
(
きじゃく
)
その間を
窺
(
うかが
)
ひ井戸端の
乾飯
(
ほしいい
)
を
啄
(
ついば
)
む
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
それを故意に漂母と言ったのは、一つはユーモラスのためであるが、一つは
暗
(
あん
)
にその長屋住いで、蕪村が平常世話になってる、隣家の女房を意味するのだろう。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
最前の審問に於て、ダメス王の鼻は——記憶せず——と云い抜けて、
暗
(
あん
)
にその無能力を認めております。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「愉快どころか、かう寒うなつて!」かの
女
(
ぢよ
)
は自分の衣物の用意が足りないのを
暗
(
あん
)
に訴へたやうだ。
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
態
(
てい
)
よき言葉を用いて
隠蔽
(
いんぺい
)
し、
暗
(
あん
)
に
自慢
(
じまん
)
するごとくに聞こゆるでもあろうが、正直に自白すれば、近来になって僕もゲーテを
尊崇
(
そんすう
)
するの念が、十年前にくらべて増してきた。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
即ち
崎陽
(
きよう
)
において、小林に贈るの書中にも、
仮令
(
たとい
)
国土を
異
(
こと
)
にするも、共に国のため、道のために尽し、
輓近
(
ばんきん
)
東洋に、自由の新境域を
勃興
(
ぼっこう
)
せんと、
暗
(
あん
)
に永別の書を贈りし
所以
(
ゆえん
)
なり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
しばしば見かえりて何か
詞
(
ことば
)
をかけんとして思いかえして行く老人あり、振りかえりながら「死して再び花は咲かず」と
俚歌
(
りか
)
を低声に唄うて
暗
(
あん
)
に死をとどむる如く
誡
(
いまし
)
め行く職人もあり。
良夜
(新字新仮名)
/
饗庭篁村
(著)
それに井生村楼の
女将
(
おかみ
)
が同会に大変肩を入れ、楼の全部の席を同会のために提供してくれ、しかも席料なども安くしてくれ、非常に同情的に
暗
(
あん
)
に後援してくれたのでいろいろ都合がよく
幕末維新懐古談:49 発会当時およびその後のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
その度毎に明
暗
(
あん
)
、
悲喜
(
ひき
)
こもごも
至
(
いた
)
る二人の
顏
(
かほ
)
附たるやお
察
(
さつ
)
しに任せる次第だ。
下手の横好き:―将棋いろいろ―
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
公
(
おおやけ
)
にこれを口に唱えざれば
暗
(
あん
)
に自からこれを心の底に許すものの如し。
学者安心論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
光吉
(
こうきち
)
は午前中は
拝賀式
(
はいがしき
)
のあいさつの下書きをつくったり、それを
暗
(
あん
)
しょうして、うまく話をする
練習
(
れんしゅう
)
にむちゅうだった。そして母が
病院
(
びょういん
)
のそうじをすまして帰ってくると、のぼりをかつぎにでかけた。
美しき元旦
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
腹の中では、その義務を
容易
(
たやす
)
く果させるために、叔母が自分と連れ立って、夫人の所へ行ってくれはしまいかと
暗
(
あん
)
に願っていた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
朱貴は見えないが、朱富がいる以上、何らかの計で、自分を助けてくれるつもりだろうと、
暗
(
あん
)
に、反語をわめいてみたのである。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「どうかするよ——まツこと困るなら、おれだけでも東京へ歸つて工面する、さ。東京へ歸りさへすれば何とか出來よう。」義雄は
暗
(
あん
)
に自分ばかりの歸京をほのめかす。
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
そうか。ちっとも知らなかった。よくある話だが、一体そういう事はどうして起るものだろう。最初男が
暗
(
あん
)
に
教唆
(
きょうさ
)
するのか、それとも女が勝手にやり出してから、男の方がそれを
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかし世間はむごいもので、気の毒とか可哀そうとかいう口の下から、大工の六三郎は引廻しの子だとか、海賊の子だとかいって、
暗
(
あん
)
に彼を卑しむような蔭口をきく者も多かった。
心中浪華の春雨
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
とうとう「不満」という言葉を使って、参謀は有馬参謀長に、
暗
(
あん
)
に警告を発した。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
無礼な挙動を
振舞
(
ふるま
)
って得意がるが、これは表は善で、裏は悪なりという前提に
捉
(
とら
)
われたるより起こる誤解であって、
幽明
(
ゆうめい
)
の区別を論ずる者が、
幽
(
ゆう
)
とか
暗
(
あん
)
とか称すれば、それだけで悪感をいだき
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
暗
(
あん
)
に山木を実例にとれるなりき。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
かくして細君の父と彼との間には自然の造った
溝渠
(
みぞ
)
が次第に出来上った。彼に対する細君の態度も
暗
(
あん
)
にそれを手伝ったには相違なかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
暗
(
あん
)
たんたる中に、ツウ——と赤い、一筋の光がみえた。まさに
無明
(
むみょう
)
の底から
碧落
(
へきらく
)
を仰いだような狂喜である。お綱は、われを忘れて闇を泳いだ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いずれまた電話で。」と重吉は女中と共に
梯子段
(
はしごだん
)
を降りると、
直様
(
すぐさま
)
慶応義塾病院に電話をかけ、お千代を呼出して、「家へは帰って来てはいけない」と言って
暗
(
あん
)
にその意を
含
(
ふく
)
ませ
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「返せと云ふのではない、僕の札幌滯在が長くなつたのは長くなつたが、氷峰君のところにゐた方が多いので、それでなければ、遊廓で——その多い方にもまだ禮はしてないくらゐだから、君の方も待つて貰ひたいのだ。」
暗
(
あん
)
にあれだけやれば十分ではないかと云ふ意を
泡鳴五部作:04 断橋
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
それどころか、彼はこの妹のような態度で、お延が外へ対してふるまってくれれば好いがと、
暗
(
あん
)
に希望していたくらいであった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、皇太子
邦良
(
くになが
)
(亡兄、後二条の御子)とすれば、待望の季節であった。しきりに密使を関東へやり、早くも後醍醐の譲位を
暗
(
あん
)
に策動しだした。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
暗
(
あん
)
に人から
瞞
(
だま
)
されて、働かないでもすんだところを、無理に
馬鹿気
(
ばかげ
)
た働きをした事になっているから、奥さんの実着な勤勉は、精神的にも
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
述懐して、
暗
(
あん
)
に
乾児
(
こぶん
)
たちへも、このごろの
収穫
(
みいり
)
の貧しい理由をいって聞かせると、蜘蛛太は、
小賢
(
こざか
)
しい眼をかがやかし
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかしそれよりも遥かに強く、夫の心を知らない彼女がこんな態度で
暗
(
あん
)
に自分の父を弁護するのではないかという感じが健三の胸を打った。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「もっとも、この間うちから、しきりに、町の非難をかりて、
暗
(
あん
)
に、お奉行を
誹謗
(
ひぼう
)
したりしていましたからね。何か、不平がたまっているんでしょう」
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
同時にこの無意味な行動のうちに、意味ある劇の大切な一幕が、ある男とある女の間に
暗
(
あん
)
に演ぜられつつあるのでは無かろうかと疑ぐった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
警固の中に加わっている
地方
(
じかた
)
(本土)武士のうちにも、また、いつか島内へ流れこんで来ている
外者
(
そともの
)
の山伏や僧などの宮方臭い人物までも、
暗
(
あん
)
に配所をめぐって
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あるいは正面に動く機会が来るかも知れないと思った時、自分はチョコレートを
頬張
(
ほおば
)
りながら、
暗
(
あん
)
にその瞬間を
捉
(
とら
)
える注意を
怠
(
おこた
)
らなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
山城ノ入道は、
暗
(
あん
)
に宮方を奉じており、息子の本間三郎と家臣の一部は、鎌倉へ忠節をちかっている。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その結果始めは向うから来るのを待つつもりで、
暗
(
あん
)
に用意をしていた私が、折があったらこっちで口を切ろうと決心するようになったのです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
去年も今年も、よろず正月の春景色に変りはないが、拝賀に参内する顔ぶれだけが変って、後醍醐の
朝
(
ちょう
)
に誇り栄えていた顔は一つも見えぬ——と、
暗
(
あん
)
に人心を
諷
(
ふう
)
している。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
有名になった事が
左程
(
さほど
)
の自慢にはならぬが、墨汁一滴のうちで
暗
(
あん
)
に余を激励した故人に対しては、此作を地下に寄するのが或は
恰好
(
かっこう
)
かも知れぬ。
『吾輩は猫である』中篇自序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ウーム。秀吉は伊那丸に
好意
(
こうい
)
をよせて、
暗
(
あん
)
に、かれを
庇護
(
ひご
)
しているものとみえる。だが……」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私はその金を平生から気の毒に思っていた、或懇意な芸術家に贈ろうかしらと思って、
暗
(
あん
)
に彼の来るのを待ち受けていた。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
暗
常用漢字
小3
部首:⽇
13画
“暗”を含む語句
薄暗
暗誦
幽暗
暗黒
暗示
暗夜
暗中
暗闇
暗礁
後暗
真暗
仄暗
微暗
暗号
暗殺
小暗
夕暗
宵暗
暗討
暗々
...