昼寝ひるね)” の例文
旧字:晝寢
昔は「五月蠅」と書いて「うるさい」と読み、昼寝ひるねの顔をせせるいたずらもの、ないしはくさいものへの道しるべと考えられていた。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
多くの若い者を使っていた農家では、線香せんこう一本のたつあいだなどという、おかしいほどみじかい時間の昼寝ひるねをさえ規則にしていた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
きりがうっすらとかかって、空はどんよりとくもっていました。みんなが昼寝ひるねをしているとき、アッカがニールスのそばにやってきて
その翌日吾輩は例のごとく椽側えんがわに出て心持善く昼寝ひるねをしていたら、主人が例になく書斎から出て来て吾輩のうしろで何かしきりにやっている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
よっちゃんは、いつも、いまごろ昼寝ひるねをしますので、いい心地ここちねむってしまいました。「おがさめましたら、わたしれてゆきますから。」
時計とよっちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、この時分からも、もっともっとむかし新羅しらぎの国の阿具沼あぐぬまというぬまのほとりで、ある日一人の女が昼寝ひるねをしておりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
くやしまぎれに一寸法師いっすんぼうしは、そっとおひめさまが昼寝ひるねをしておいでになるすきをうかがって、自分じぶん殿とのさまからいただいたお菓子かしのこらずべてしまって
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
まことみませぬがおとほしなすつてくださりまし、なるたけお昼寝ひるね邪魔じやまになりませぬやうにそツ通行つうかういたしまする。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
午後になって、いやに蒸暑むしあつ空気くうきたたえた。ものうい自然の気を感じて、眼ざとい鶴子が昼寝ひるねした。掃き溜には、犬のデカがぐたりと寝て居る。芝生には、ねこのトラがねむって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その翌日、きはなたれたよろこびよりも、大事なものをぬきとられたようなさびしさにがっかりして、昼寝ひるねをしているところへ、思いがけず竹一たけいち磯吉いそきちがつれだってやってきた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
大抵たいていのひとが暑さにかまけて、昼寝ひるねでもしているか、すずしい船室を選んで麻雀マアジャンでもたたかわしているのに、ぼくは炎熱えんねつけるような甲板の上ででも、あなたや内田さんと、デッキ・ゴルフや
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
八月八日のおひるすぎ、おとなたちがござをしいて昼寝ひるねをしているじぶん、心平君しんぺいくんたちは、いつものように、土橋のところへあつまりました。それから、山の大池に向かって、しゅっぱつしました。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
昼寝ひるねをじゃましてすまなかった」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
『お昼寝ひるねでせう。』
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
昼寝ひるねの夢の凄さ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
また、あつ日盛ひざかりには、らくらしているような人々ひとびとは、みんな昼寝ひるねをしている時分じぶんにも、はたけこえをかけてやりました。
大根とダイヤモンドの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるとき天皇は、お昼寝ひるねをなさろうとして、お寝床ねどこにおよこたわりになりながら、おそばにいらしった皇后に
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
新羅しらぎくに阿具沼あぐぬまというぬまのそばで、ある日一人ひとりの女が昼寝ひるねをしておりました。するとふしぎにも日のひかりにじのようになって、ている女のからだにさしみました。
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
岡田はまたその時分自分の家の食客しょっかくをして、勝手口に近い書生部屋で、勉強もし昼寝ひるねもし、時には焼芋やきいもなども食った。彼らはかようにして互に顔を知り合ったのである。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それに君は俺が唯遊んで昼寝ひるねして暮らす様に云うたが、俺にも万更仕事が無いでもない。聞いてくれ。俺のあたまの上には青空がある。俺の頭は、日々にちにち夜々ややに此青空の方へ伸びて行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
関東地方でも、千葉県などではコジャという言葉がひろくもちいられ、中国地方も隠岐島おきのしまなどは、田植の日の午前のバサマを小茶こちゃ、午後に昼寝ひるねをして起きて食べるのを、小茶おちゃともいっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
よくあそびにくる近所きんじょ子供こどもらも、みんな昼寝ひるねをしているとみえて姿すがたせません。ただせみが、あちらのもりほういているのがこえてきたばかりでした。
てかてか頭の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるいは須永も母も仲働もいっしょに出たかも知れない。おさんはきっと昼寝ひるねをしている。女はそこへ這入はいったのである。とすれば泥棒である。このまま引返してはすまない。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
びく/\もので、戸袋の中や、室内のデスクの下、ソファの下、はてはがくの裏まで探がした。居ない。居ないが、何処かに隠れて居る様で、安心が出来ぬ。枕を高くして昼寝ひるねも出来ぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
人々ひとびとは、うちなかで、昼寝ひるねでもしようとおもっているやさきなものですから、あたままくらからあげて口説くどきました。
泣きんぼうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私なども学校をやめて、縁側えんがわにごろごろ昼寝ひるねをしていると云って、友達がみんな笑います。——笑うのじゃない、実はうらやましいのかも知れません。——なるほど昼寝は致します。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたしは、昼寝ひるねをしている時分じぶんに、ゆめなかでこのチャルメラのこえいたこともあります。またそとあそんでいる時分じぶんに、かなたの往来おうらいにあたっていたこともあります。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
当人も勉強家であるかのごとく見せている。しかし実際はうちのものがいうような勤勉家ではない。吾輩は時々忍び足に彼の書斎をのぞいて見るが、彼はよく昼寝ひるねをしている事がある。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのから時計とけいはりまえのごとく、うごきはじめました。よっちゃんは、当座とうざは、いままでのように、おちついて、昼寝ひるねも、おかあさんにかれながらするようになりました。
時計とよっちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
なお車の上で観察すると往来の幅がはなはだ狭い。がそれは問題ではない、私の妙に感じたのはその細い往来がヒッソリして非常に静かに昼寝ひるねでもしているように見えた事であります。
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その翌日よくじつも、よっちゃんはいつものように昼寝ひるねをしました。そして、ぱっちりとくと、また昨日きのうのように、ほかのうちではないかと、あたまをあげて、あたりをまわしました。
時計とよっちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
「芳江は昼寝ひるねですか、どうれでしずかだと思った」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昼寝ひるねをしようとおもって、うちなかで、できなくてまゆをひそめているものは、いまにもあのこえからて、あたりのいえや、くさや、えついて、そら真紅まっかになりはしないかとおもっていたのです。
泣きんぼうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「その代り昼寝ひるねをするだろう」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おれ主人しゅじんは、あちらの茶屋ちゃや昼寝ひるねをしているのだ。」とこたえました。
馬を殺したからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おかあさんが、昼寝ひるねをなさっていて、つからなくてよかった。」
真昼のお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)