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捉
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つか
ふりがな文庫
“
捉
(
つか
)” の例文
風が襲いかかり、三之助の
捉
(
つか
)
まっている雨戸が、危なく吹き飛ばされそうになった。三之助は部屋へ戻りながら、もういちど云った。
暴風雨の中
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
独断なり故に
狭隘
(
けふあい
)
なり。彼は数個の原則を
捉
(
つか
)
み此を以て人事の総てを論断せんとせり。彼は何物も此原則の外に逸する能はずとせり。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
油断をしてゐるうちに、達二はいきなり山男に足を
捉
(
つか
)
まれて倒されました。山男は達二を組み敷いて、刀を取り上げてしまひました。
種山ヶ原
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
出すもので私たちは振り落されないようにしっかり
捉
(
つか
)
まっていながら寝不足と霧雨とに悩まされてすっかり憂鬱になっていました。
穴
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「ふん、なにがいい相談だ。あたしは三日前にここから身を投げるつもりのところを、お前のようなゲジゲジ虫に取っ
捉
(
つか
)
まって……。」
廿九日の牡丹餅
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
何か知らん痛いものに脚の指を
突掛
(
つっか
)
けて、危く大噐氏は顛倒しそうになって若僧に
捉
(
つか
)
まると、その途端に提灯はガクリと
揺
(
ゆら
)
めき動いて
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
忠作は上手に桝を明けて鼠をギュウと
捉
(
つか
)
まえて、地面へ置くと、足をあげてそれを踏み殺してしまいました。女中はホッと息をついて
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「印度洋の方では、何とかいふ軍艦がたつた一隻で
荒
(
あ
)
ばれまはつてゐるんだつてね。それがちつとも
捉
(
つか
)
まらないと云ふから面白いねえ」
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
其処へ
饒舌家
(
おしやべり
)
の叔母が小供達と共に泊りに来たのが、今朝も信吾は其叔母に
捉
(
つか
)
まつて出懸けかねた。吉野は昌作を伴れて出懸けた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
喧嘩がしたくて来たものは、
卓子
(
テーブル
)
に
捉
(
つか
)
まつてお辞儀をするものだと知つてゐる馬左也氏は、直ぐ老教師の用事を
見貫
(
みぬ
)
いて苦い顔をした。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
……ええ……そのヤングは軍艦が
浦塩
(
うらじお
)
に着くと間もなく、このオブラーコの舞踏場へ
遣
(
や
)
って来て、一番最初に妾を
捉
(
つか
)
まえて踊り出したの。
支那米の袋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
耳許
(
みみもと
)
で
叱
(
しか
)
り
咎
(
とが
)
めるような声がするとともに右の腕首をぐいと
捉
(
つか
)
んだ者があった。務は浮かしていた体をしかたなしに下に落した。
白っぽい洋服
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
複雑な自然人生の中から何らか普遍的な要素を
捉
(
つか
)
まえていて、そしてそれを表わすに最も簡単明快な方法を選んでいる事である。
津田青楓君の画と南画の芸術的価値
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「兎も角も、わけがありさうだ。お前は二人を逃さないやうに、この物干からよく見張つてくれ。俺は庭から廻つて一人づつ
捉
(
つか
)
まへて見る」
銭形平次捕物控:331 花嫁の幻想
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
逢って見た青木は、思ったよりも書生流儀な心易い調子で、初対面の捨吉を
捉
(
つか
)
まえて、いきなりその時代の事を言い出すような人であった。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「面白がられちゃ困るけれど、話し序だ。四年の学年試験の時、先生の時間にカンニングをやって取っ
捉
(
つか
)
まってしまったんだよ。ハッハヽヽ」
ロマンスと縁談
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
とこわ/″\乗りますと、乗り付けませんで、殊に道中馬は危ないから、油汗が出て
確
(
しっ
)
かり
捉
(
つか
)
まっている。シャン/\/\と馬方が曳き出す。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それを
明瞭
(
はっき
)
りそう感ずるのは阿賀妻だけかも知れない。いや、みんな——これと
捉
(
つか
)
めないにも
拘
(
かかわ
)
らず、何かさばさばしないものを感じていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
隣の
息子
(
むすこ
)
が雌を連れて来て、
刮々
(
くゎくくゎく
)
云わしたら、雄はひとりでに床の下から出て来て、難なく
捉
(
つか
)
まった。今更の様だが女の力。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
眼
(
め
)
は
小
(
ちひ
)
さく、
鼻
(
はな
)
は
赤
(
あか
)
く、
肩幅
(
かたはゞ
)
廣
(
ひろ
)
く、
脊
(
せい
)
高
(
たか
)
く、
手足
(
てあし
)
が
圖※
(
づぬ
)
けて
大
(
おほ
)
きい、
其手
(
そのて
)
で
捉
(
つか
)
まへられやうものなら
呼吸
(
こきふ
)
も
止
(
と
)
まりさうな。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
というて前にあるレクシン(
経帙
(
きょうちつ
)
の締木)を取り左の手に私の胸倉を
捉
(
つか
)
まえて私の
頭顱
(
あたま
)
をめがけてぶん擲ろうとしたです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
西郷贔負
(
さいごうびいき
)
の二葉亭はこの伯父さんが官軍だというのが気に
喰
(
く
)
わないで、
度々
(
たびたび
)
伯父さんを
捉
(
つか
)
まえては大議論をしたそうだ。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「しっ、声を出すんじゃない。静かにしろ。おれに
捉
(
つか
)
まったが百年目だ。これ、じたばたしたって駄目だよ、腕力ならおれの方がずっと強いんだ」
暗中の接吻
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
串戯
(
じょうだん
)
を云っちゃ困る……これから行って逢えるようなら、橋の上で巡査に
捉
(
つか
)
まる、そんな色消しは見せやしない。……
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ね、今日わざわざ探偵長に国境まで娘を送らせたのも国探としてフランス黒表に載って仕舞ったあの娘が途中で
捉
(
つか
)
まったりし無い保護をしたんですよ。
ドーヴィル物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「
汝
(
われ
)
何處
(
どこ
)
さ
行
(
え
)
くんだ。こうれ」
勘次
(
かんじ
)
は
引
(
ひ
)
つ
捉
(
つか
)
まうとしたがおつぎは
身
(
み
)
を
捩
(
ねぢ
)
つてさつさと
行
(
ゆ
)
く。
勘次
(
かんじ
)
は
慌
(
あわ
)
てゝ
草履
(
ざうり
)
の
爪先
(
つまさき
)
が
蹶
(
つまづ
)
きつゝおつぎの
後
(
あと
)
に
跟
(
つ
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
葉子は庸三によって新聞の記事を何とかできるだけ有利に
糊塗
(
こと
)
しなければならなかったが、庸三もこうして彼女に
捉
(
つか
)
まった以上逃げをうつ手はなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
いわゆる文明社界に住む人の特色は何だと
纏
(
まと
)
めて云って御覧なさい。私にはこう見える。いわゆる文明社会に住む人は誰を
捉
(
つか
)
まえてもたいてい同じである。
文壇の趨勢
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私はずつと後まで、其の意味を
捉
(
つか
)
む事が出来なかつた。其の学校は、ホテル・ド・ルウロオプの中にあつた。
子供の保護
(新字旧仮名)
/
エマ・ゴールドマン
(著)
何んだろうと
窺
(
のぞ
)
いて見るとお勝さんが、疑いを掛けたその裏長屋の泥棒猫を
捉
(
つか
)
まえて、コン畜生、々々といって力任せに
鼻面
(
はなづら
)
を板の
間
(
ま
)
へ
擵
(
こす
)
り附けております。
幕末維新懐古談:17 猫と鼠のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
捉
(
つか
)
まえて聞くと、今朝殆ど私と
入違
(
いりちが
)
いに尋ねて来たのだそうで、何でもお神さんの身寄だとかで、車で手荷物なぞも持って来たから、地方の人らしいと云う。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
命の綱にしっかりと
捉
(
つか
)
まえて見ていた、そうして立ちすくむ足を踏み
占
(
し
)
めて、空を仰ぐと、頭上には隆々たる大岩壁が、甲鉄のように、凝固した波を空に
抛
(
な
)
げ上げ
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
子供等は時々彼等を
捉
(
つか
)
まえて
玩弄
(
おもちゃ
)
にする。彼等はお
愛想
(
あいそ
)
よく、耳を立て鼻を動かし小さな手の輪組の中におとなしく立っているが、少しでも、隙があれば逃げ出そうとする。
兎と猫
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
危うく梯子に
捉
(
つか
)
まって——まだ上り切るまでには三四段残っている——怖る怖る下を見ると黒く見えるのは人のようだ。その黒いものはだんだん梯子を上って来るように見えた。
暗い空
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
声の起った所へ、戻りかけた面々も足を
回
(
かえ
)
して、真っ黒に寄りたかった。そこの岩陰へ、見つけた者が先へ躍って、
猪
(
しし
)
でも手捕りにするように、一人の男を
捉
(
つか
)
まえて組伏せていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とっ
捉
(
つか
)
まえて、しょびいて帰ろうって云うんだからな。
俺
(
おい
)
らは
褒美
(
ほうび
)
を貰うだろうさ、だがその代り庄三郎さんは、掟通り首を切られなけりゃあならねえ。どうもこいつがよくねえなあ
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
何だか、池の水の中に泳いでいる美しい金魚か何ぞのように、あまり遠くへ逃げもせず、すぐに手に
捕
(
つか
)
まりそうで、さて容易に
捉
(
つか
)
まらないというような心地のするのがその女であった。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「あ、
捉
(
つか
)
まえた、田村のおばさま、きょうは放しませんよ、きょうで三日もいらっしっているんじゃない? あたい、ちゃんと時間まで知っているんだもの。きのうも五時だったわ。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
しかし、大工達がそれを側面にくつつけるまでは、用心深く
捉
(
つか
)
んでゐるのだ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
「あいつらの一人がやったのさ」と亭主はポッポッと湯気を立てながら「何しろ
通
(
とおり
)
一ぱいぶちまけちゃったんだ。阿呆め、自分で拾い集めないで行ったら、ふん
捉
(
つか
)
まえてやるところだった」
青玉の十字架
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
評家久しく彼を目するに高踏派の盟主を以てす。
即
(
すなは
)
ち格調定かならぬドゥ・ミュッセエ、ラマルティイヌの後に
出
(
い
)
で、始て詩神の雲髪を
捉
(
つか
)
みて、これに
峻厳
(
しゆんげん
)
なる詩法の
金櫛
(
きんしつ
)
を加へたるが故也。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
俺は、こんなけちな奴だから、大したことは望まねえし、又、出来もしねえと
諦
(
あきら
)
めている。そこで、ちょっくら、有りすぎる所から、小判を
捉
(
つか
)
み出しちゃあ、無さすぎる方へ撒いて歩くのよ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
平七は飽くまでも、自分の引き出した話の
緒
(
いとぐち
)
を
捉
(
つか
)
まへて放さなかつた。
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
と怒鳴りながら駈けて来て、ギユツと、
襟頸
(
えりくび
)
を
捉
(
つか
)
んで
子供に化けた狐
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
「なぜ不必要かというとですね、かれらはすでに自分の首に縄を巻きつけている。私どもはただその縄の端を
捉
(
つか
)
まえればいいんです」
日日平安
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
油断
(
ゆだん
)
をしているうちに、
達二
(
たつじ
)
はいきなり山男に足を
捉
(
つか
)
まいて
倒
(
たお
)
されました。山男は達二を組み
敷
(
し
)
いて、刀を
取
(
と
)
り上げてしまいました。
種山ヶ原
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
もう打っちゃっては置けないので、庄太が
取
(
と
)
っ
捉
(
つか
)
まえて詮議すると、いや、もう、意気地のない奴で、小さくなって恐縮している。
半七捕物帳:54 唐人飴
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
警護の侍たちや参詣の群衆は直ぐに縁の下へ追いかけましたが、それに
捉
(
つか
)
まったのは運悪く、がんりきでなくて米友でありました。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
水産学校の卒業生を
捉
(
つか
)
まえて御指導になるような
塩梅
(
あんばい
)
式にですね……お願い出来たら、それこそ本格にピッタリと来るだろう。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼女は、何かこうシッカリと
捉
(
つか
)
まる物でも
無
(
なけ
)
れば、自分の弱い
体躯
(
からだ
)
まで今に何処へか持って行かれて了うような眼付をした。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
捉
常用漢字
中学
部首:⼿
10画
“捉”を含む語句
引捉
取捉
捕捉
把捉
択捉
生捉
蛇捉
捉績
電捉
盲捉戯
擇捉島
捕捉滅尽
捕捉殲滅
一捉
捉出
拘捉
利腕捉
不捉