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折角
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せっかく
ふりがな文庫
“
折角
(
せっかく
)” の例文
誰
(
た
)
れか
這入
(
はいっ
)
て来る、電報がかかる、訪問客が来る、
折角
(
せっかく
)
考えていたことを中途で妨げられて、またヤリ直すことが
幾度
(
いくど
)
あるか知れぬ。
人格を認知せざる国民
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「わ、わが
輩
(
はい
)
は、せ、
折角
(
せっかく
)
ここまで持ってきた戦車に、生前、一度は、の、乗ってみたいのだ。そ、その地底戦車というやつに……」
地底戦車の怪人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
二週間がアト一日となった五月十一日は
折角
(
せっかく
)
晴れ続いていた天気が引っくり返って、朝から
梅雨
(
つゆ
)
のような雨がシトシトと降っていた。
冥土行進曲
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
たまには
行乞
(
ぎょうこつ
)
にも行かなければならない。
折角
(
せっかく
)
思い立った座禅思惟を取られて思うように運ばなくなった。慧鶴はそれでも辛抱した。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
スウェターコートのかくしに手を入れると、さあしまった、
山刀
(
メス
)
が無い、
折角
(
せっかく
)
頂上で撮したフィルムを三巻入れといたサックが無い。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
▼ もっと見る
いかにも火を吹くという事は骨の折れる仕事であった。女は髪をよごし煙を忍んで、
折角
(
せっかく
)
吹付けていてもちょっと休むとむだになる。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
が、
折角
(
せっかく
)
の
依
(
たの
)
みとあって
見
(
み
)
れば
何
(
なん
)
とか
便宜
(
べんぎ
)
を
図
(
はか
)
って
上
(
あ
)
げずばなるまい。
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
母人
(
ははびと
)
を
瀑壺
(
たきつぼ
)
のところへ
連
(
つ
)
れてまいるがよかろう……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
葛城王
(
かずらきのおおきみ
)
が
陸奥国
(
みちのくのくに
)
に派遣せられたとき、国司の王を接待する方法がひどく不備だったので、王が怒って
折角
(
せっかく
)
の御馳走にも手をつけない。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
宋に
奔
(
はし
)
り、続いて
晋
(
しん
)
に逃れた太子
蒯聵
(
かいがい
)
は、人毎に語って言った。淫婦刺殺という
折角
(
せっかく
)
の義挙も臆病な
莫迦
(
ばか
)
者の裏切によって失敗したと。
盈虚
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
折角
(
せっかく
)
命懸けで頂戴した品物をよ。
仮令
(
たとい
)
蜜柑の中へ押込んだとしてもよ。誰に拾われるか分りもしねえ線路の
側
(
わき
)
なぞへ抛られるものかね。
指環
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
折角
(
せっかく
)
恵まれた素質はあっても、充分に発育す可く余りに抵抗力が弱かったので、其点から言うと今の人は非常に幸福であると思います。
登山談義
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
漱石氏が
折角
(
せっかく
)
京都に滞在していて寺ばかり歩いていると聞いた時、私は今夜せめて都踊だけにでも氏を引っぱって行こうと思い立った。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
翌日の新聞は、
隅田川
(
すみだがわ
)
の満潮と、川開の延期とを伝えた。
水嵩
(
みずかさ
)
が増して危いという記事は、
折角
(
せっかく
)
翹望
(
まちもう
)
けた娘達をガッカリさせた。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「これこれ、壁辰殿。そういうわけであってみれば、
折角
(
せっかく
)
だが、きょう貴殿に押えられて、突き出されるという
仕儀
(
しぎ
)
には参らぬ」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「
済
(
す
)
まないのは、お
前
(
まえ
)
さんよりこっちのこと、
折角
(
せっかく
)
眠
(
ねむ
)
いところを、
早起
(
はやお
)
きをさせて、わざわざ
来
(
き
)
てもらいながら、
肝腎
(
かんじん
)
のおせんが。——」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
今のような有様では
折角
(
せっかく
)
食物衛生を天下に
勧
(
すすめ
)
ても
厭世観
(
えんせいかん
)
や悲哀観の流行するため人の元気
沮喪
(
そそう
)
して食物を消化吸収するの力なく
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「ねえ、法印、そッとして置いてやっておくれよ。
折角
(
せっかく
)
二人して、いい玉を、わたくしのところへ連れて来てくれたのだからさ」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
全
(
まった
)
く峯にはまっ黒のガツガツした巌が
冷
(
つめ
)
たい霧を
吹
(
ふ
)
いてそらうそぶき
折角
(
せっかく
)
いっしんに
登
(
のぼ
)
って行ってもまるでよるべもなくさびしいのでした。
マグノリアの木
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「こう話が決ったら気にいらない事があったりしても、
我儘
(
わがまま
)
を言って帰ったりなぞしてはいけない——
折角
(
せっかく
)
御縁があって来たのじゃから。」
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「いや、その御心配は無用にしてくだされ、私の処は、とても人の来る処じゃないから、
折角
(
せっかく
)
だがそれはお断りしておきます」
竈の中の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
だからそう云う史料は始めから否定している僕にとっては、
折角
(
せっかく
)
の君の名論も、徹頭徹尾ノンセンスと云うよりほかはない。まあ待ち給え。
西郷隆盛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
然し耗っても
錆
(
さ
)
びても、心棒は心棒だ。心棒が廻わらぬと家が廻わらぬ。
折角
(
せっかく
)
苅
(
か
)
り入れた麦も早く
扱
(
こ
)
いて
撲
(
ぶ
)
って俵にしなければ
蝶々
(
ちょうちょう
)
になる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
折角
(
せっかく
)
皆をここまで連れて来たのに、天気が悪いから機嫌を損じたのである。でも天気が悪いのは、斎藤さんの責任じゃない。
八ガ岳に追いかえされる
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
水を忘れた、餌入を忘れた、
焚付
(
たきつけ
)
を忘れたなんて、忘れ物をされると、
折角
(
せっかく
)
楽みに来ても、却って腹立てる様になるからね。
大利根の大物釣
(新字新仮名)
/
石井研堂
(著)
「
折角
(
せっかく
)
お泊まり下すっても、おかまい申すことも出来ません。わたくしは急用が起りましたので、すぐに行ってまいります」
中国怪奇小説集:04 捜神後記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そしてお説法やお談義は、
折角
(
せっかく
)
芸術を好きなものまで嫌いにさせて了う、手段としても極めて拙劣な非芸術的のものである。
新しき世界の為めの新しき芸術
(新字新仮名)
/
大杉栄
(著)
彼女の許しなしには
遂
(
つい
)
に咲く機会のなかつたに
異
(
ちが
)
ひない菊の花なのだ。
折角
(
せっかく
)
こんな
麗
(
うる
)
はしさに花咲いた菊を今更どこへ置かうかと思ひ
惑
(
まど
)
つた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
三人はそうした波の様子を見ると少し気味悪くも思いました。けれども
折角
(
せっかく
)
そこまで来ていながら、そのまま
引返
(
ひきかえ
)
すのはどうしてもいやでした。
溺れかけた兄妹
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「でも
折角
(
せっかく
)
覚えた芸だで腐らせることもないよ、松つあん」と木之助は励ますようにいった。「東京は別だよ、場所(都会)の人間はあかんさ」
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
切通しで、万太郎と金吾の為に、
折角
(
せっかく
)
な場合を
邪
(
さまた
)
げられて姿を消したが、かれは、それで
諦
(
あきら
)
めて帰るような人間ではない。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
折角
(
せっかく
)
飲みに行こうと云うお誘だから是非行きたいものじゃと云うのが
物分
(
ものわか
)
れでその日は
仕舞
(
しま
)
い、翌日も屋敷から通って塾に行てその男に
出遇
(
であ
)
い
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
彼はこの安藤と云う見ず知らずの人間のために、突然楽しい空想を破られたばかりでなく、今夜の
折角
(
せっかく
)
の幸福にひびを入れられたような気がした。
途上
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「
折角
(
せっかく
)
お美乃が嫁入りするんだぜ、その
扮
(
なり
)
で高砂やアでもあるめエ。——これで間に合わなきゃ、またなんとかするぜ」
銭形平次捕物控:120 六軒長屋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
が併しどうも結構でないのは、
折角
(
せっかく
)
「サム」に
則
(
のっと
)
り乍ら、一向「サム」の精神なるものを咀嚼していないことである。
日本探偵小説界寸評
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
実に彼は死よりもつらき不面目を
担
(
にな
)
いつつ、
折角
(
せっかく
)
新調したりし寒防具その他の手荷物を売り払いて旅費を
調
(
ととの
)
え、
漸
(
ようや
)
く帰京の
途
(
と
)
にはつき得たるなりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
若い美しい人に恐ろしいものを見せると、
折角
(
せっかく
)
の美しさが、そのために破壊されてしまいそうで私は
怖
(
こわ
)
かったのです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
母は
折角
(
せっかく
)
言うていったんは帰したものの、初めから危ぶんでいたのだから、再び出てきたのを見ては、もうあきらめて深く
小言
(
こごと
)
も言わない。兄はただ
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
「私も立退くのは心外なのだ。こんな怪談めいた事件に負けて、
折角
(
せっかく
)
の研究を中止するのは科学者として最大の恥辱だ。私も君と一緒に
此処
(
ここ
)
へ残ろう」
廃灯台の怪鳥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そんな原始的な機械じゃ、
折角
(
せっかく
)
ですが、資本主義は滅びませんわ。ところで、おい、あの人殺しの犯人は、俺たちだと思われやしないかい。逃げよう。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
折角
(
せっかく
)
心持が緊張しているうちにやり遂げたかった計画も、こうした
状態
(
ありさま
)
でずるずると一角から崩れはじめました。
流転
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
兄さんは、脱走しちゃあいけない……
折角
(
せっかく
)
……出世したのに……折角……兄さんでも捕まれば殺される……あたいは知ってるんだ……兄さんにそんな事を
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
折角
(
せっかく
)
白井が尽力してくれたのも
画餅
(
がへい
)
となった、大久保某の言に
拠
(
よ
)
ると、只見川の上流の白沢を登るが便利というので、この登路は林治は知らないのである
平ヶ岳登攀記
(新字新仮名)
/
高頭仁兵衛
(著)
「
折角
(
せっかく
)
お招き申してもおさびしいといけないと思って、一番仲のよいお友達と御一緒にと申しあげましたの。」
江木欣々女史
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
いてもいられなくっても
最
(
も
)
う仕様がないやな。まァお照そんな話はよしにしようよ。
折角
(
せっかく
)
今夜はお正月らしくなって来たところだ。お照、お父さんのお箱を
雪解
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
折角
(
せっかく
)
天下太平のお祝いを申しに出て来た鳳凰の
頸
(
くび
)
をしめて毛をむしり取るようなものじゃ御座いますまいか。
三月三十日
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「
折角
(
せっかく
)
京までつけて来たのに、みすみす大村の首をのがしたら、大楽どんに会わする顔がござりませぬぞ」
流行暗殺節
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
先
(
せん
)
にも言ったように、心のよくない人間でしたから、
折角
(
せっかく
)
御馳走をくれようとまで言ってくれた親切などは忘れてしまって、いきなり御馳走をさし出してくれた
蕗の下の神様
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
昔、四十七士の助命を排して処刑を断行した理由の一つは、彼等が生きながらえて生き恥をさらし
折角
(
せっかく
)
の名を汚す者が現れてはいけないという老婆心であったそうな。
堕落論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
折角
(
せっかく
)
のこのK——の夏を見棄て
周章
(
あわて
)
て、東京に帰るにも及ぶまい、という気持と、それにこのサナトリウムが学友の父の経営になっている、という心安さから、結局
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
たとえ涙を催すようなことがあっても、決して
折角
(
せっかく
)
捕えて来たこの男を許すようなことはなかろう。捕われた男はしみじみと悲しくなって、束の間の我が命を考えた。
捕われ人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
折
常用漢字
小4
部首:⼿
7画
角
常用漢字
小2
部首:⾓
7画
“折角”で始まる語句
折角村