手放てばな)” の例文
そのとき、のぶは、お人形にんぎょう着物きものをきかえさせて、あそんでいましたが、それを手放てばなして、すぐにおかあさまのそばへやってきました。
青い花の香り (新字新仮名) / 小川未明(著)
いまや、お慈悲じひ、お慈悲じひこゑれて、蒋生しやうせい手放てばなしに、わあと泣出なきだし、なみだあめごとくだるとけば、どくにもまたあはれにる。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
勘次かんじはおしなつただけはおつぎを使つかつてどうにか從來これまでつくつた土地とち始末しまつをつけようとおもつた。ことすぐうしろなので什麽どんなにしても手放てばなすまいとした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのことまをげるだけ、無用むよう口數くちかずぎますまい。ただみやこへはいるまへに、太刀たちだけはもう手放てばなしてゐました。——わたしの白状はくじやうはこれだけです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
浜松城はままつじょうのお使者番ししゃばんは、満天まんてんほしにくるまれたかく尖端せんたん擬宝珠ぎぼうしゅのそばで、手放てばなしに大声あげて泣いていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その中津を横に見ておッさんの処をよけて来たではないか。それも乃公おれが此処に居なければかく、乃公が此処で貴様に面会しながらこれ手放てばなして江戸にけと云えば兄弟共謀だ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
余はある人にう云うた、不用の地所があるなら兎も角、恰好かっこうの代地があったら格別、でなければ農が土を手放てばなすはうおの水にはなれるようなものだ、金なんか直ぐあわの様に消えて了う
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
殿とのさまがしがって、手放てばなそうともなさらなかったのです。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
可愛かあいい二人の子を犠牲いけにへにする気で泣き乍ら手放てばなした。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
じつに、不思議ふしぎおとがするので、いままで、おおくの人々ひとびとゆずってくれとたのまれましたけれど、手放てばなさなかったしなです。
汽船の中の父と子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「これはどうも、手放てばなしなところを」
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうは、もう、そのむすめ自分じぶんのものにされることなら、あの大事だいじなものを手放てばなしてもいいというになりました。そして、そのことをおつ相談そうだんしました。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なにしろ、先祖代々せんぞだいだいからの宝物ほうもつですから、なるべくなら手放てばなしたくないとおもっています。よくかんがえてからご返事へんじもうしあげます。」と、おとここたえました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おとこは、あほうどりをひとり手放てばなすのを気遣きづかって、自分じぶん学校がっこうまで先生せんせいといっしょについていきました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そんなふうに、骨董屋こっとうやから、まことしやかにいわれて、ものは、やす手放てばなしてしまいました。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
っていて、どうなるもんでなし、もうかったら、手放てばなすもんだよ。さいわい、わたしにはせるくちがあるのだ。」と、おとこは、なかなか老人ろうじんに、わたそうとしませんでした。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いや、商売しょうばいですから、しいものでもかねになれば手放てばなしますが、生涯しょうがいはいらないとおもうものがありますよ。そんなときは損得そんとくをはなれて、わかれがさびしいものです。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「これを手放てばなしてしまえば、明日あしたから、自分じぶんは、りょうにゆくことができない。」と、おもいましたが、つま病気びょうきなら、そんなことをいっていられませんので、あるあさ鉄砲てっぽうって
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いくらなら手放てばなすかな。」
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)