トップ
>
底
>
てい
ふりがな文庫
“
底
(
てい
)” の例文
さらずば道行く人に見せられぬ何等かの祕密を此屋敷に
藏
(
かく
)
して置く
底
(
てい
)
の男であらう、今は見上げる許り高い黒塗の板塀になつて居る。
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
セキスピアもバナードショオも背後に
撞着
(
どうちゃく
)
、
倒退
(
とうたい
)
三千里せしむるに足る
底
(
てい
)
の痛快無比の喜悲劇の場面を、
生地
(
きじ
)
で行った珍最期であった。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
どういう点で在来の史書があきたらぬかは、彼自身でも自ら欲するところを書上げてみてはじめて判然する
底
(
てい
)
のものと思われた。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
むろん今日の「理智」を満足せしめる
底
(
てい
)
のものではない。正直なところ、僕にしてもこの和讃を馬鹿らしく思ったことがある。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
誰が何を饒舌つても、争つても忽ち消えてしまつて一沫のよどみも感ぜられない
底
(
てい
)
の
実
(
げ
)
にも長閑な春の午近い海辺であつた。
まぼろし
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
▼ もっと見る
すなわち一度は忠実なる門下生となってその上において我等は百尺
竿頭
(
かんとう
)
に一歩を進める
底
(
てい
)
の心掛けが肝要なことであります。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
その二つの欲望が弱いならば、信仰はいらない。いい加減のところに落ちつく
底
(
てい
)
のものである。この二つの欲望が弱くては信仰に到達し得ない。
念仏と生活
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
僕の尊敬する所は鹿島さんの「人となり」なり。鹿島さんの如く、熟して
敗
(
やぶ
)
れざる
底
(
てい
)
の東京人は
今日
(
こんにち
)
既に見るべからず。
明日
(
みやうにち
)
は
更
(
さら
)
に
稀
(
まれ
)
なるべし。
田端人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
写生文家の人間に対する同情は叙述されたる人間と共に
頑是
(
がんぜ
)
なく
煩悶
(
はんもん
)
し、無体に号泣し、直角に跳躍し、いっさんに
狂奔
(
きょうほん
)
する
底
(
てい
)
の同情ではない。
写生文
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
貧弱な肉体の情慾が醜く猛獣の性慾が壮観である
底
(
てい
)
の架空なパラドックスを弄してひそかに慰めるに過ぎなかつたのだ。
枯淡の風格を排す
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
いやしくも皮下多少の血ある
底
(
てい
)
の者が
※乎
(
かいこ
)
として見て過ぐるあたわざる幾多悲惨の現象をいかにわれらの眼前に展開しつつあるやの実状に至っては
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
この思想——すなわち罪を憎んで人を憎まざる
底
(
てい
)
の大岡さばきが、後世捕物小説の基本概念になったかも知れない。
江戸の昔を偲ぶ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
いわんや神の子イエスが我を愛し給い、わがイエスを信じまつる時、荒野に水湧き砂漠に花開く
底
(
てい
)
の奇蹟が我らの人生に起こるのに格別不思議もない。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
「君の言うことは一々もっともだが、僕の場合は少し違う。君が心配するほどのことはないよ」
底
(
てい
)
の考えでますます深みに
陥
(
おちい
)
るのもわれわれはしばしば見る。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
航空機械の創造等に比すべく、
吾人
(
ごじん
)
人類の信仰なり生活なりを、根底よりくつがえす
底
(
てい
)
のものであった。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
有名な
吝嗇家
(
りんしょくか
)
であったが、しかししっぽをつかまれるような吝嗇家ではなかった。根本においては、自分のでき心や義務のためには容易に浪費者となる
底
(
てい
)
の蓄財家だった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
却ってつきつめる
底
(
てい
)
の探求を放擲するものであるということを、深く注目しなければならぬ。
読書法
(新字新仮名)
/
戸坂潤
(著)
まわりのものの
変移流転
(
へんいるてん
)
の
相
(
すがた
)
に眼をとめている——が、一度発するが早いか、石を
絶
(
た
)
ち、山を
裂
(
さ
)
き、人を
砕
(
くだ
)
かずんば
止
(
や
)
まざる
底
(
てい
)
の
剛剣
(
ごうけん
)
——それが、喧嘩渡世の茨右近である。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
必ずしも上流者流の間にのみ限らなければならぬ
底
(
てい
)
のものでなくなったことに基づくとはいいながら、なおそのほかに伝播力が藤原時代に比して大いに増加したということも
東山時代における一縉紳の生活
(新字新仮名)
/
原勝郎
(著)
それ故善良なる習慣を作るまで、暫く十分の報酬を官吏に与えてそれに満足させ、同時に一方に規律ある軍隊、警察を置き、馬賊も白狼匪も全然閉息する
底
(
てい
)
の力を備うべきである。
三たび東方の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
うそにも「上総屋」という名まえの残っていた
底
(
てい
)
の、そうした古い、すぎ去った情景のなかにだったからこそ、自由にわたしに動かすことが出来たのだろうか? こうした会話を
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
しかしてその無為にして化する
底
(
てい
)
の性質は、散弾の飛ぶもほとんどいずこの家に
煎
(
い
)
る豆ぞと思い
貌
(
がお
)
に過ぐるより、かの攻城砲は例よりもすみやかに持ち
出
(
いだ
)
されざるを得ざりしなり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
不義、毒殺、たとえば父子、夫妻、最親至愛の間においても、その
実否
(
じっぷ
)
を正すべく、これを口にすべからざる
底
(
てい
)
の条件をもって、
咄嗟
(
とっさ
)
に
雷
(
らい
)
発して、河野家の家庭を襲ったのである。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
玩具と言えば単に好奇心を満足せしむる
底
(
てい
)
のものに過ぎぬと思うは非常な誤りである。玩具には深き寓意と伝統の伴うものが多い。換言すれば人間生活と不離の関係を有するものである。
土俗玩具の話
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
人に
狎
(
な
)
れないように深甚な用意を払い、極度に怒りっぽく、何ものへ向っても直ちに角を逆立ててて突進し、これを粉砕せずんば止まざる
底
(
てい
)
の充分な野牛だましいを植えつけ、育むのだ。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
見やるごとにサモイレンコが思わず唸り出さずにはおられぬ
底
(
てい
)
のものだった。
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
孔子の所謂る其の心に順ひて其の
則
(
のり
)
を越えざる
底
(
てい
)
のものならざるべからず。
美的生活を論ず
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
けれどもだんだん私に迫って来て、あなた死んでは詰らんじゃないかとかなんとかいろいろな事をいい出したけれども、私はすべて鋭き正法を守る
底
(
てい
)
の論法をもって厳格に打ち破ってしまった。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
殿の御推挙なさる人物なら——やがては、日本を背負って立つ
底
(
てい
)
の——
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
と涙を流し手を合せ
鰭伏々々
(
ひれふし/\
)
歎く
體
(
てい
)
忠義の心
底
(
てい
)
顯
(
あらは
)
れしかば可睡齋も感心なし
善哉々々
(
よきかな/\
)
汝が
志操
(
こゝろざし
)
感心致したり
力
(
ちから
)
の及ぶ
丈
(
だけ
)
は救ひ遣はさんと云しかば三五郎はハツとばかりに平伏なし有難
涙
(
なみだ
)
に
咽
(
むせ
)
び
頓
(
やが
)
て
暇
(
いとま
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
興味に遊んでいる方を楽しまない
底
(
てい
)
の意地の悪さがある。
ばけものばなし
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
将軍に
睡壺
(
だこ
)
を撃砕する
底
(
てい
)
の感激を起さしめたのである。
余興
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
さらずば道行く人に見せられぬ何等かの秘密を此屋敷に蔵して置く
底
(
てい
)
の男であらう、今は見上げる許り高い黒塗の板塀になつて居る。
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
生馬
(
いきうま
)
の眼を抜き、
生猿
(
いきざる
)
の皮を
剥
(
は
)
ぎ、生きたライオンの歯を抜く
底
(
てい
)
の神変不可思議の術を如何なる修養によって会得して来たか。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
かつての自分の
誇
(
ほこり
)
であった・
白刃
(
はくじん
)
前
(
まえ
)
に
接
(
まじ
)
わるも目まじろがざる
底
(
てい
)
の勇が、何と
惨
(
みじ
)
めにちっぽけなことかと思うのである。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
安寧秩序をみだし良良なる風俗を
害
(
そこな
)
ふ
底
(
てい
)
の人騒がせは許しがたい悪徳であるなぞと途方もないことが書いてあつたよ。
西東
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
況
(
いは
)
んや私は尋常の文人である。後代の批判にして誤らず、
普遍
(
ふへん
)
の美にして存するとするも、書を名山に蔵する
底
(
てい
)
の事は、私の為すべき限りではない。
澄江堂雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼の精神が
朦朧
(
もうろう
)
として不得要領
底
(
てい
)
に一貫しているごとく、彼の眼も
曖々然
(
あいあいぜん
)
昧々然
(
まいまいぜん
)
として
長
(
とこし
)
えに
眼窩
(
がんか
)
の奥に
漂
(
ただよ
)
うている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
預言者は神の言を以て表面的なる人の心を
審判
(
さば
)
く。我々は喜怒色に現わさざる
底
(
てい
)
の聖人君子ではない。併し悲しむならば神の悲を悲しみ、怒るならば神の怒を怒るべきである。
帝大聖書研究会終講の辞
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
雷
(
らい
)
のごとく
騒
(
さわ
)
ぎ
立
(
た
)
つ数千の反対者を
眼前
(
がんぜん
)
に
列
(
なら
)
べて、平然と
構
(
かま
)
えて、いかに
罵詈讒謗
(
ばりざんぼう
)
を
浴
(
あび
)
せても、どこの
空
(
そら
)
を風が吹く
底
(
てい
)
の顔付きで落着き払って議事を進行せしめたその態度と
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
だが、昔から偉大なる発見なり発明なりは、それが公表される瞬間まで、全世界の常識が不可能と考え、怪談お伽噺と嗤う
底
(
てい
)
の事柄であったことをも一考して見なければなるまい。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
私は今日のロイド・ジョージはもって六尺の孤を託すべき
底
(
てい
)
の人物であると言ったが、彼を育てた
叔父
(
おじ
)
のリチャード・ロイドその人がまた、実にもって六尺の孤を託すべき底の人物であった。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
じいさんばァさんで七輪の火を
熾
(
おこ
)
していた
底
(
てい
)
のしがない店の所産だった。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
獅子一
吼
(
く
)
百獣
震駭
(
しんがい
)
する
底
(
てい
)
の猛威を振わん事を説いたためだ。
三たび東方の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
恰
(
あたか
)
も欧州戦前のバルカンの如く、日露戦前の
竜岩浦
(
りゅうがんぽ
)
の如く、如何なる名外交家と
雖
(
いえど
)
も
後
(
しりえ
)
に
瞠若
(
どうじゃく
)
たらしむる
底
(
てい
)
の難解問題となっているのであるが
謡曲黒白談
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
趣味以上にでるためには必然その道に殉ずる
底
(
てい
)
の馬鹿も演じとかくの批判も受けなければならないのが阿呆らしくもあり怖ろしくもある様子にみえた。
雨宮紅庵
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
『或る他の一記事』といふのは、此場合に於て決して木に竹をつぐ
底
(
てい
)
の突飛なる記事ではないと自分は信ずる。
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
到底人間社会において目撃し得ざる
底
(
てい
)
の伎倆であるから、これを全能的伎倆と云っても
差
(
さ
)
し
支
(
つか
)
えないだろう。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
実にそれは、何か吐き気を催す様な、
或
(
あるい
)
は、いきなり笑い出し
度
(
た
)
い様な、余りにも度はずれな、珍妙で、おかしくて、しかも、ゾーッと腹の底から震えが来る
底
(
てい
)
の、戦慄すべき諧謔であった。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
要するに教育者が注意すべきは、
活
(
い
)
ける社会に立ち
万国
(
ばんこく
)
に共通し得べく厳正にして自国自己及び自己の思想に恥じず、実際の人生に接して進み、世界人類に貢献する
底
(
てい
)
の人物を造る事に
在
(
あ
)
るなり。
教育の最大目的
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
“底”の意味
《名詞》
(そこ)器、図形、地形など、物体の最も下になる部分。即ち、ある部分の周囲が全て、その部分よりも高い位置をなしている場合のある部分。
(テイ)累乗の演算において、繰り返し掛け合わせられる数。対数
log_{b} x
における
b
。基数。
;対義語
(語義1):頂
(出典:Wiktionary)
底
常用漢字
小4
部首:⼴
8画
“底”を含む語句
水底
海底
到底
船底
心底
胸底
地底
真底
底冷
底止
底光
河底
眼底
底土
川底
谷底
筐底
徹底
糸底
底力
...