尼寺あまでら)” の例文
きらひ鎌倉の尼寺あまでらへ夜通のつもりにて行れるなり出入の駕籠舁かごかき善六といふがたつての頼み今夜はこゝに泊られしなりと聞かぬ事まで喋々べら/\と話すを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
俊助しゅんすけはこの病室の戸口に立って、窓の外をふさいでいる白椿しろつばきの花を眺めた時、何となく西洋の尼寺あまでらへでも行ったような心もちがした。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ぼくたちの学校がっこうもん鉄柵てつさくも、もうとっくに献納けんのうしたのだから、尼寺あまでらのごんごろがねだって、おくにのために献納けんのうしたっていいのだとおもっていた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
天狗てんぐ生活せいかつくらべたら、女人禁制にょにんきんせい禅寺ぜんでら男子禁制だんしきんせい尼寺あまでら生活せいかつでも、まだどんなにも人情味にんじょうみたっぷりなものがありましょう。
成程ほんで読むとうらしい。けれども、芝居では結婚してもささうである。能く思案して見ると、尼寺あまでらへ行けとの云ひかたわるいのだらう。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ひとが、かつ修學旅行しうがくりよかうをしたとき奈良なら尼寺あまでらあまさんに三體さんたいさづけられたとふ。なかから一體いつたいわたしけられた阿羅漢あらかんざうがある。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
親類には大きい尼寺あまでらの長老になっている尼君あまぎみが大勢あって、それがこの活溌かっぱつな美少年を、やたらに甘やかすのである。
「居ないのかしら。……それに、おさきひとりで留守をしているという尼寺あまでらが、こんな大きなお寺なのかね? ……」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お前に言はせると、世の中のことは皆んな變だよ。角の荒物屋のお清坊が、八五郎に渡りをつけずに嫁に行くのも變なら、松永町の尼寺あまでらの猫の子にさかりが付くのも變——」
そこは蓮照寺れんしょうじという尼寺あまでらなのよ。そこは女人の外は禁制なんだけれど、裏門から忍びこんでごらんなさい。そして鐘つき堂のある丘をのぼると、そこに小さな庵室あんしつがあってよ。
鍵から抜け出した女 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それで、亞尼アンニーは、いよ/\弦月丸げんげつまる沈沒ちんぼつしたといたときにあられず、私共わたくしどもまぬといふ一念いちねんと、その息子むすこ悔悟くわいごとをいのるがために、浮世うきよそと尼寺あまでらかくしたのです。
またのものは尼寺あまでらちひさき芝生しばふうへに百合の紋章打つたる天幕てんとを張りたる如し。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
南方へ指してだんだん進んで参りますとネーニンという尼寺あまでらがあります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
尼寺あまでらて、ぼくはびっくりした。まるでおまつりのときのような人出ひとでである。いや、おまつりのとき以上いじょうかもれない。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
決し在所ざいしよの永正寺と云尼寺あまでらへ入みどり黒髮くろかみそり念佛ねんぶつまい生涯しやうがいおくりし事こそ殊勝しゆしようなれされば長庵を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「お前に言わせると、世の中のことは皆んな変だよ。角の荒物屋のお清坊が、八五郎に渡りをつけずに嫁に行くのも変なら、松永町の尼寺あまでらの猫の子にさかりが付くのも変——」
本當ほんたう奇妙きめうことだとおもつてると、あること、ウルピノ山中さんちうとて、子ープルスのまちからは餘程よほどはなれた寒村かんそんの、浮世うきよそと尼寺あまでらから、一通いつつう書状てがみとゞきました、うたがひもなき亞尼アンニー手跡しゆせき
其証拠には尼寺あまでらへ行けと云はれたオフェリヤがちつとも気の毒にならない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そられたる斷食だんじきの日、尼寺あまでら童貞どうていこぞりて運河に船の行くを眺めたり。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
それから、またかわをどんどんくだっていくとちいさい尼寺あまでらがありました。そこではなとうがありました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
亭主に引合はせぬ徳右衞門は一大事となほ然氣さりげなく善六に答へし如く此者どもにもはなしたりさらばとて十人の内より三人を鎌倉の尼寺あまでらつかはし殘り七人は其儘そのまゝ龜屋に宿やどりて鎌倉の安否あんぴ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
掃除そうじわって、いよいよだい二十かい常会じょうかいひらこうとしていると、きこりのようなおとこひとが、かおながい、みみおおきいじいさんを乳母車うばぐるまにのせて、尼寺あまでら境内けいだいにはいってた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)