容貌きりよう)” の例文
すそ海草みるめのいかゞはしき乞食こじきさへかどにはたず行過ゆきすぎるぞかし、容貌きりようよき女太夫をんなだゆうかさにかくれぬゆかしのほうせながら、喉自慢のどじまん腕自慢うでじまん
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
近いためしは今尾の奥様、押出しはよし、容貌きりようはよし、御教育もあるとやら。やらやら尽くしで殿達は、近来の大騒ぎ。何でもあんな細君おくさんをと、独身ひとりものはなほの事。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
大層な容貌きりようだつたといふから、町内の若い男は門並逆上のぼせあがつてゐましたよ、中でも遊び人の喜三太——おうまや中間上がりの喜三太といふ厄介な男を親分も御存じでせう。
おせきは今年十七の娘ざかりで、容貌きりようもよい方である。
あれなりとらずんばこの降りに客の足とまるまじとお力かけ出してたもとにすがり、どうでも遣りませぬと駄々をこねれば、容貌きりようよき身の一徳
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
らうかりふでずさびに、此樣このやうよびよいものいてれたるまちといふをば引出ひきいだしぬ、をんな容貌きりようきにこそ諸人しよにんあいけて果報くわほうこのうへものなれ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
このは東京広しといへども、山村の下女に成る物はあるまじ、感心なもの、美事みごとの心がけとめるもあれば、第一容貌きりようが申分なしだと、男はきにこれを言ひけり。
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さとかたにもいゑにてるよし、としは十一、容貌きりようはよいさうなとふに、おくさまかほをあげて旦那だんな面樣おもやういかにとうかゞひしが、成程なるほどそれはおぼめしより、わたしにかれこれは御座ござりませぬ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
年は随一若けれども客を呼ぶに妙ありて、さのみは愛想の嬉しがらせを言ふやうにもなく我まま至極の身の振舞、少し容貌きりようの自慢かと思へば小面こづらが憎くいと蔭口かげぐちいふ朋輩もありけれど
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
としずいわかけれどもきやくぶにめうありて、さのみは愛想あいさううれしがらせをふやうにもなくわがまゝ至極しごく振舞ふるまいすこ容貌きりよう自慢じまんかとおもへば小面こづらくいと蔭口かげぐちいふ朋輩はうばいもありけれど
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
容貌きりようのわるい妻を持つぐらゐ我慢もなる筈、水呑みづのみの小作が子として一足飛そくとびのお大尽なればと、やがては実家をさへ洗はれて、人の口さがなし伯父伯母一つになつてあざけるやうな口調を
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
容貌きりようのわるいつまつぐらゐ我慢がまんもなるはづ水呑みづのみの小作こさくとして一そくとびのお大盡だいじんなればと、やがては實家じつかをさへあえあはれて、ひとくちさがなし伯父そぢ伯母おば一つになつてあざけるやうな口調くてう
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
馬爪ばづのさしぐしにあるひと本甲ほんかうほどにはうれしがりしものなれども、人毎ひとごとめそやして、これほどの容貌きりよううもとはあたら惜しいもの、ひとあらうならおそらく島原しまばらつての美人びじん
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
上杉うへすぎのおぬひと桂次けいじがのぼせるだけ容貌きりようも十人なみすこしあがりて、よみ十露盤そろばんそれは小學校せうがくかうにてまなびしだけのことは出來できて、にちなめる針仕事はりしごとはかま仕立したてまでわけなきよし
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
上杉のおぬひと言ふ、桂次がのぼせるだけ容貌きりようも十人なみ少しあがりて、よみ書き十露盤そろばんそれは小学校にて学びしだけのことは出来て、我が名にちなめる針仕事ははかまの仕立までわけなきよし
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さるあめのつれ/″\におもてとほ山高帽子やまだかぼうしの三十をとこ、あれなりとらずんはこのりにきやくあしとまるまじとおりきかけしてたもとにすがり、うでもりませぬと駄々だゝをこねれば、容貌きりようよきの一とく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
容貌きりようよき女太夫おんなだゆうかさにかくれぬゆかしの頬を見せながら、喉自慢のどじまん、腕自慢、あれあの声をこの町には聞かせぬが憎くしと筆やの女房舌うちして言へば、店先に腰をかけて徃来ゆききながめし湯がへりの美登利
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)