姉妹きょうだい)” の例文
この伯母さんは、女学校を出て、行燈袴あんどんばかま穿いて、四円の月給の小学教師になったので、私の母から姉妹きょうだいの縁を切るといわれたひとだ。
私は炬燵にあたりながら、姉妹きょうだいの子供を眺めて、どうして自分の仕事を完成しよう、どうしてその間この子供等を養おう、と思った。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……(桔梗ヶ池の奥様とは?)——(お姉妹きょうだい……いや一倍お綺麗きれいで)とばちもあたれ、そう申さずにはおられなかったのでございます。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仲のいいこの姉妹きょうだいの間に争いが起ったらしく、あろうことか、あるまいことか! 妹は到頭、姉を撃ち殺してしまったというのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
おそらく、姉も城下の獄につながれているのであろう。そうなれば、姉妹きょうだいひとつはすうてなだと思う。どうしてもない一命とすれば、せめて
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるところに、性質せいしつちがった姉妹きょうだいがありました。おなはははらからまれたとは、どうしてもかんがえることができなかったほどであります。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おしお やがてもう暮れるというに、姉妹きょうだいの方々は何をしてござるのやら……。このごろの日和ひよりくせで、又降って来たようじゃが……。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
姉妹きょうだい二人が揃ったのだから、すぐにも荏原屋敷へ乗り込んで行って、主馬之進を殺して復讐したい。お父様の怨みを晴らしたい)
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
食卓をかこんでいた姉妹きょうだいは、一様に視線を合せたが、新子は、前川氏からだろうと思うと、大いそぎで立ち上ろうとすると、美和子が
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
二人は午餉ひるげを食べながら、身の上を打ち明けて、姉妹きょうだいの誓いをした。これは伊勢の小萩こはぎといって、二見が浦から買われて来た女子である。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大納言家の内が急に寂しくなった気がして、西の姫君などは始終いっしょに暮らした姉妹きょうだいなのであるから、物足らぬ寂しい思いをしていた。
源氏物語:45 紅梅 (新字新仮名) / 紫式部(著)
鷺太郎の眼を奪った、その三人組の少女は、二人姉妹きょうだいとそれに姉のお友達で、瑠美子るみこ——というのが、その姉娘の名であった。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
母は失望したような顔をして、いっしょに行っておいでなと云った。僕は黙って遠くの海の上をながめていた。姉妹きょうだいは笑いながら立ち上った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いっそ迎えに行こうか? しかし、どこを探したらいいのだ? 姉妹きょうだいのところか? けれど、姉妹のところへ行って訊ねるのは馬鹿げている。
そして、三人のうちの一人が、その目を或る時間の間使うと、それを眼窩めのあなからはずして、次の番に当った姉妹きょうだいの一人に渡す。
「子供はほんとにすぐに仲よくなるものですね。」とテナルディエのかみさんは叫んだ。「あんなにしているとまるで三人の姉妹きょうだいのようですね。」
……市蔵という兄だけでおんな姉妹きょうだいもないし父が厳しくて稽古ごとなどもみんな師匠を家へ呼んで習ったから奈尾には友達というものがなかった。
合歓木の蔭 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
二人の姉妹きょうだいはブロンドで、姉妹同士似ており、バルナバスにも似ているが、バルナバスよりもきつい顔つきをして、大柄でじょうぶそうであった。
(新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
「わかります。私の印度に居るお父様が、西洋人から領地を取上げられかけた時に、私たち姉妹きょうだいを買い取って、お父様を助けて下すった方でしょ」
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
またお悦さんおきせさんなど姉妹きょうだいの都合の好いままに任せ、私は自分の家なる前回度々たびたび申した彼の源空寺門前の親たちの家にいることになりました。
なんでもそれは、あらしの夜、ふたりの姉妹きょうだいが勉強をしていると、ふいに停電してしまうので、古いランプを持ち出してきてともすのだそうである。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
しかし翌日の午後駅へついてみると、葉子姉妹きょうだいや弟たちも出迎えていて、初めての時と別にかわりはなかった。彼は再び例の離れの一室に落ちついた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それであるから、姉妹きょうだいもただならぬほどむつまじいおはまがありながら、別後一度も、相思の意を交換した事はない。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
たぶん私との性格の相違でしょうが、ご姉妹きょうだいではあっても異性でなければわからぬところがあるかもしれません——
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
勇敢なことにかけては雄の鵞鳥もかなわないくらいで、悪い犬などが来ても立派に姉妹きょうだいの鵞鳥たちをかばってやる。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
姉妹きょうだいという姉妹はみんなよそへとついでしまっていたので、ミーチャはまる一年というもの、グリゴリイのもとで、下男小屋に暮らさなければならなかった。
「ねえ、お寿女さん、あたくしたち姉妹きょうだいなんですもの、これからは、せいせい、あたくし、お役に立ちますわ」
痀女抄録 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
わたしはまた弟たちや、女の姉妹きょうだいと握手した。小さい子をうでにだき上げようとしたが、かの女はすっかりカピに気を取られていて、わたしをおしのけた。
だが彼様あんな人は諦めておくんなましよ、しっかりしなましよ、おまはんも親族みより兄弟もなし、わちきも親族兄弟がないから、お互に素人に成ったらば姉妹きょうだいになろうと
それまで竜子は小石川こいしかわ茗荷谷みょうがだにの小じんまりした土蔵付の家に母と二人ぎり姉妹きょうだいのようにくらして来た。
寐顔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
近所の町や近在からも見識らぬ人たちがたずねて来て、この奇蹟を礼讃して行った。ラザルスの姉妹きょうだいのマリーとマルタの家は、蜜蜂の巣箱のように賑やかになった。
「うむ、ひょっとするとこれやア姉妹きょうだいかも知れねえ。——だが、あいつの肌に、まともにさわもねえうちに、箆棒べらぼうな、あんな野郎が、あすこへ現れるなんて。——」
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
境遇では天と地程も違った、この二人の娘は、忽ちにして、姉妹きょうだいの様に仲よしになってしまった。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
美濃みのの、神大根王かんおおねのみこという方のむすめで、兄媛えひめ弟媛おとひめという姉妹きょうだいが、二人ともたいそうきりょうがよい子だという評判をお聞きになって、それをじっさいにおたしかめになったうえ
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
もうたった三里行きさえすれば清水港、そこに姉妹きょうだいのようにしていたお松さんが待っている。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ところが源三と小学からの仲好なかよし朋友ともだちであったお浪の母は、源三の亡くなった叔母と姉妹きょうだい同様の交情なかであったので、が親かったもののおいでしかも我が娘の仲好しである源三が
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
みたま因縁いんえんもうすものはまことに不思議ふしぎちからっているものらしく、これが初対面しょたいめんでありながら、相互おたがいあいだへだてのかきはきれいにられ、さながらけた姉妹きょうだいのように
西宮さんがそんな虚言うそを言う人ではないと思い返すと、小万と二人で自分をいろいろ慰めてくれて、小万と姉妹きょうだいの約束をして、小万が西宮の妻君になると自分もそこに同居して
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
このひとは、台所の歌い手で、それに、お茶わかしとははらちがいの姉妹きょうだいだったのです。
それから「皆さん、救われた一人の姉妹きょうだいのために祈って下さい」と自分がまず、跪いて声をふるわせながら熱心に祈った。それにつづいて、伊藤を初めほかのものも感謝の祈りをささげた。
姉妹きょうだい二人、角兵衛獅子に売られたのを、佐吉が引取ってしばらくかせがせていましたが、角兵衛を廃業してからは、下女にして使って、少しは給金でも溜めさせて、故郷の越後へ帰すつもり——
おとら 昔は随分仲好しで、世話になったり世話したり、姉妹きょうだい同然にしていたんだが、この何年というものは、途中で会えば顔をそむけ、よんど困って尋ねてくれば、今のように叩き出させる。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
紳士の随伴つれと見える両人ふたりの婦人は、一人は今様おはつとかとなえる突兀とっこつたる大丸髷、今一人は落雪ぼっとりとした妙齢の束髪頭、いずれも水際みずぎわの立つ玉ぞろい、面相かおつきといい風姿ふうつきといい、どうも姉妹きょうだいらしく見える。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
時勢とき時勢ときで、良人おっとは滅多にうちにいませず、舅姑しゅうとに良人の姉妹きょうだい二人ふたり=これはあとで縁づきましたが=ありまして、まあ主人を五人もったわけでして、それは人の知らぬ心配もいたしたのですよ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
女義太夫たれぎだの巴好巴生姉妹きょうだいが躍りあがるようにして抱き合った。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
サナギ小屋の姉妹きょうだいたちを知っている
「よかった! ……俺の生涯にたった一つ、きれいなものがこれで残る……。三人の姉妹きょうだいから、やっぱり、俺は、拾うものを拾った」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玉琴 そのお叱りはとくより知っていれど、むかしに変る今の身の上、唯うかうかとしていては姉妹きょうだいふたりが何となりましょうぞ。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼女は、近年はほとんど、高橋元子もとこ藤間勘素娥ふじまかんそが)の舞踊茂登女会もとめかいに出演し、作曲していた。元子のお母さん姉妹きょうだいも、浜子の友だちだった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
承知して私は道を下り始めましたが、姉妹きょうだいは湖でボートでもぎながら私が曲り角近くまで下ってゆくのを計っていたのかも知れません。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)