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にょにん
ふりがな文庫
“
女人
(
にょにん
)” の例文
それとも
次第
(
しだい
)
にうすれ去る記憶を空想で補って行くうちにこれとは全然異なった一人の別な貴い
女人
(
にょにん
)
を作り上げていたであろうか
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
女は
頸
(
うなじ
)
に懸けたる
金
(
きん
)
の
鎖
(
くさり
)
を解いて男に与えて「ただ
束
(
つか
)
の
間
(
ま
)
を
垣間
(
かいま
)
見んとの願なり。
女人
(
にょにん
)
の頼み引き受けぬ君はつれなし」と云う。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は
得度
(
とくど
)
しがたき悪魔として
女人
(
にょにん
)
を憎んでいるらしく、いかなる
貴人
(
あてびと
)
の奥方や姫君に対しても、彼は膝をまじえて語るのを好まなかった。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
併し、
女人
(
にょにん
)
堂を過ぎて平地になった時には、そこに平凡な田舎村が現出せられた。駕籠のおろされた
宿坊
(
しゅくぼう
)
は、避暑地の下宿屋のようであった。
仏法僧鳥
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
「そう思うのはその方の心が狭いからの事じゃ。
弥陀
(
みだ
)
も
女人
(
にょにん
)
も、予の前には、皆われらの悲しさを忘れさせる
傀儡
(
くぐつ
)
の類いにほかならぬ。——」
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
その一転瞬の間に、尾崎の断崖を背景にして、モヤモヤした砲煙の間から浮きあがってきた、清らかな、世にも美しい
女人
(
にょにん
)
の顔をありありと見た。
ひどい煙
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
というのは、突然に——全く突然に、どこからとび出したのか、一人の若い
女人
(
にょにん
)
が、部屋の隅に現われた。彼女の手にはピストルが握られていた。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「いといませぬ。さまざま人は申しまする。この私を、古い平家の
女人
(
にょにん
)
や平安の
女性
(
にょしょう
)
に比して、鎌倉の世が
鋳
(
い
)
て生んだ鎌倉型の女子じゃなぞとも」
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三枝先生と言ってチヤホヤもてなしてくれるから庄吉は有頂天になって、それからというもの
酔余
(
すいよ
)
の
女人
(
にょにん
)
夢遊訪問はアパートのマダムの部屋となった。
オモチャ箱
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
ああ、
O'Grie
オーグリー
、
煩悩
(
ぼんのう
)
はたけり、信仰は脅かす。
精進潔斎
(
しょうじんけっさい
)
のその日に、
女人
(
にょにん
)
を得ようとしたのは、返す返すも悲しいめぐり合わせでした。
一週一夜物語
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
きれいな方である上に、
錦繍
(
きんしゅう
)
に包まれておいでになったから、この世界の
女人
(
にょにん
)
とも見えないほどお美しかった。
源氏物語:10 榊
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
諺
(
ことわざ
)
に女は
三界
(
さんがい
)
に家なしと申しまして、この世に女の立てた家はございません、本来、
女人
(
にょにん
)
というものは、物を使いつぶすように出来ている身でございまして、物を守って
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
わたしがただの一度、眼をあげて一人の
女人
(
にょにん
)
を見て、その後何年かのあいだ、最もみじめな苦悩をつづけて、わたしの一生の幸福が永遠に破壊されたことを考えてみてください。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
其真下に
涅槃仏
(
ねはんぶつ
)
のような姿に横っているのが麻呂子山だ。其頂がやっと、講堂の屋の棟に、乗りかかっているようにしか見えない。こんな事を、
女人
(
にょにん
)
の身で知って居る
訣
(
わけ
)
はなかった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
あの男の重ねた
罪業
(
ざいごう
)
が目に見えるような気になり、この世の
女人
(
にょにん
)
のために、——多勢の親と夫のために、——私は思わず、見覚えの小屋の道具箱から、手馴れた鑿を取り、着物のままで
銭形平次捕物控:069 金の鯉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼女も、そうした社会の
女人
(
にょにん
)
ゆえ、早熟だった。彼女は遊びとしては、若手の人気ある俳優たちと
交際
(
まじわ
)
っていた。そして彼女がもっとも好んだものは
弄花
(
ろうか
)
——四季の花合せの争いであった。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
もしや
女人
(
にょにん
)
の肌の
香
(
か
)
をまぎらわせるためではないかと疑いながら承わっておりますると案の定、それから
後
(
のち
)
の石月様の心遣いに、女ならでは行き届きかねる節々が見えまする……これが二つ……
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「あい。あちらにも残りのお地蔵さまがやはり六体ござります。合わせて十二体ござりましたゆえ、十二地蔵とも、また
女人
(
にょにん
)
地蔵とも申しまして、一真寺においでのころから評判のお地蔵さまでござりました」
右門捕物帖:29 開運女人地蔵
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「
大蛇
(
だいじゃ
)
を見るとも
女人
(
にょにん
)
を見るべからず」
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
高速度
女人
(
にょにん
)
虐殺の工場となす
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「
御坊
(
ごぼう
)
。いかに狂えばとて、
女人
(
にょにん
)
をとらえてなんの狼藉……」と、千枝太郎は叱るように言った。「静まられい、ここ放されい」
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それらの人々は何ごとにも容易に
飽
(
あ
)
くことを知らない。一人の
女人
(
にょにん
)
や一つの
想念
(
イデエ
)
や一本の
石竹
(
せきちく
)
や一きれのパンをいやが上にも得ようとしている。
十本の針
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
二人が分けても物足りなく感じたのは、浮世に住んで居る人間の一種で、総べての禍の
源
(
みなもと
)
とされている
女人
(
にょにん
)
と云う
生物
(
いきもの
)
を見たことのない事であった。
二人の稚児
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
廉子はじめ後宮の
女人
(
にょにん
)
たちもすべて、諸家の“
預
(
あず
)
け
籠
(
ご
)
め”となって分散されていたのである。また新朝廷の、
久我
(
こが
)
ノ右大臣へも事のよしを報じてもどった。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「月並ですか、月並と云うと——さようちと説明しにくいのですが……」「そんな
曖昧
(
あいまい
)
なものなら月並だって好さそうなものじゃありませんか」と細君は
女人
(
にょにん
)
一流の論理法で詰め寄せる。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今夜は
怖
(
こわ
)
い晩である。夢に現われた不動尊は、いまだに米友にはその心が読めない。今ここに現われた現実の人は、言葉こそ優しい
女人
(
にょにん
)
であれ、その
面貌
(
かおかたち
)
は言わん方なき奇怪なものである。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
女人
(
にょにん
)
は、とっとと出てお行きなされ。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
御行水
(
ごぎょうずい
)
も遊ばされず、且つ
女人
(
にょにん
)
の肌に触れられての
御誦経
(
ごずきょう
)
でござれば、
諸々
(
もろもろ
)
の仏神も不浄を
忌
(
い
)
んで、このあたりへは
現
(
げん
)
ぜられぬげに見え申した。
道祖問答
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
鷺
(
さぎ
)
のように風に吹かれて
佇
(
たたず
)
んでいる二人の
女性
(
にょしょう
)
があった。
雲母坂
(
きららざか
)
の登り口なのである。ここから先は
女人
(
にょにん
)
の足を一歩もゆるさない浄地の
結界
(
けっかい
)
とされているのだ。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
八歳の龍女
当下
(
とうげ
)
に成仏の
例
(
ためし
)
をひいて、たとい罪業のふかい
女人
(
にょにん
)
にもあれ、その厚い信仰にめでて、一度は対面して親しく教化をあたえて貰いたいと、しきりに繰り返して頼んだ。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
『
安庠漸々
(
あんじょうにぜんぜん
)
向菩提樹
(
ぼだいじゅにむかう
)
。』
女人
(
にょにん
)
を見、乳糜に
飽
(
あ
)
かれた、
端厳微妙
(
たんごんみみょう
)
の世尊の御姿が、
目
(
ま
)
のあたりに
拝
(
おが
)
まれるようではないか?
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「ばか、蜂の話じゃないぞ、ひとりの
女人
(
にょにん
)
の運命について、わしは釈尊のおつたえをいっているのだ」
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
女人
(
にょにん
)
を奪って行ったというのは——
真偽
(
しんぎ
)
はしばらく問わないにもしろ、女人自身のいう所に過ぎない。
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして沢庵と城太郎とが
低声
(
こごえ
)
になって話しているのを黙って聞いていると、城太郎は、
弥陀
(
みだ
)
の前で懺悔する
女人
(
にょにん
)
のように、
睫毛
(
まつげ
)
に涙さえ見せて、聞かれない先まで
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いえいえ、一度は私も、お別れするに
耐
(
た
)
えかねて、
峰
(
みね
)
の一の鳥居あたりまで、お後を
慕
(
した
)
って行きましたが、
女人
(
にょにん
)
の
入峰
(
にゅうぶ
)
は禁制とのことに、泣く泣く戻って参りました」
日本名婦伝:静御前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、魔王の
浅間
(
あさま
)
しさには、その乳糜を
献
(
けん
)
じたものが、
女人
(
にょにん
)
じゃと云う事を忘れて居った。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
深夜ではあるし、
女人
(
にょにん
)
はいない筈の寺院だけに、その泣き声は、妙に若い学僧たちを懐疑させた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし謀叛人になった聖者は、
天竺震旦
(
てんじくしんたん
)
本朝を問わず、ただの一人もあった事は聞かぬ。これは聞かぬのも不思議はない。
女人
(
にょにん
)
に愛楽を生ずるのは、
五根
(
ごこん
)
の欲を放つだけの事じゃ。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と、いってこの聖域へ
女人
(
にょにん
)
を連れて上るなどということは思いもよらない望みである。
叡山
(
えいざん
)
の
高嶺
(
たかね
)
はおろかなこと、この
雲母
(
きらら
)
坂から先は一歩でも女人の踏み入ることは許されない。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、とにかく保吉は三十年後の
今日
(
こんにち
)
さえ、しみじみ
塵労
(
じんろう
)
に疲れた時にはこの永久に帰って来ないヴェネチアの少女を思い出している、ちょうど何年も顔をみない初恋の
女人
(
にょにん
)
でも思い出すように。
少年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「やはり、
女人
(
にょにん
)
をここへ入れたのは、わしらの誤りだった。御仏の旨にちがっていた」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
埃及
(
エジプト
)
の
煙草
(
たばこ
)
も吸わなければならぬ。音楽会の
椅子
(
いす
)
にも坐らなければならぬ。友だちの顔も見なければならぬ。友だち以外の
女人
(
にょにん
)
の顔も、——とにかく一週に一度ずつは必ず東京へ
行
(
ゆ
)
かなければならぬ。
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
婉曲
(
えんきょく
)
な
女人
(
にょにん
)
の案内は、むしろ始末にならぬ
茨
(
いばら
)
の枝にまといつかれている如しだ。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ほとんど
女人
(
にょにん
)
の
嬌羞
(
きょうしゅう
)
に近い
間
(
ま
)
の悪さの見えるのは不思議である。
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
おろかしや、平ノ忠盛も、ひとりの
女人
(
にょにん
)
に制せられて、二十年の間、われとわが心を
煩
(
わずら
)
い通してしもうた。ばかじゃったよ、おれは。——平太、おまえのばかを、おれはしかれん。あははは。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
従って、年々、彼への監視や
拘束
(
こうそく
)
は、
弛
(
ゆる
)
やかになってもいた。給仕の
女人
(
にょにん
)
として、女性をおくことも黙認されている。——近頃、ひそやかに奥に
侍
(
かしず
)
いている
亀
(
かめ
)
の
前
(
まえ
)
は、彼の二度目の愛人だった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遠林寺の
祐海
(
ゆうかい
)
とやらが、柳沢家に
伝手
(
つて
)
を求めているとか、大奥の縁引へ奔走しているとか、その結果を見た上でとか何とか、まるで
女人
(
にょにん
)
の
為
(
す
)
るような
陋劣
(
ろうれつ
)
な策に大事を
恃
(
たの
)
んでいるのじゃないか。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お
上様
(
かみさま
)
のお使いとして、ただいまこの
源氏閣
(
げんじかく
)
の上に
着城
(
ちゃくじょう
)
いたしそろところ、あやしき
女人
(
にょにん
)
居合
(
いあ
)
わせ、あなたの火を見て、乗りまいりたるクロという
鷲
(
わし
)
をうばい、
屋上
(
おくじょう
)
より
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
らん
気
(
け
)
ぶりにてそろ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
搦
(
から
)
め手門の
濠
(
ほり
)
の外へ。中に
女人
(
にょにん
)
も二人ほど連れております」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれども
麗
(
うるわ
)
しい
女人
(
にょにん
)
の年ばえが、それだけでも分った。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“女人”の意味
《名詞》
女 人(にょにん、じょじん)
(主に仏教で)女の人。女性。
(出典:Wiktionary)
女
常用漢字
小1
部首:⼥
3画
人
常用漢字
小1
部首:⼈
2画
“女人”で始まる語句
女人禁制
女人像
女人国
女人柱
女人衆
女人達
女人大衆
女人成佛
女人済度
女人結界