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喬木
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きょうぼく
ふりがな文庫
“
喬木
(
きょうぼく
)” の例文
植物として私の最も好む山百合、
豌豆
(
えんどう
)
の花、白樺、
石楠花
(
しゃくなげ
)
のほかに、私は落葉松という一つの
喬木
(
きょうぼく
)
を、この時より加えることにした。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
すでに、
廖化
(
りょうか
)
の剣は、彼のうしろに迫っていた。司馬懿は目の前にある
喬木
(
きょうぼく
)
の根をめぐって逃げた。それは
十抱
(
とかか
)
えもある大木だった。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大きくはないが
喬木
(
きょうぼく
)
が立ち
籠
(
こ
)
めて
叢林
(
そうりん
)
を為した処もある。そしてその地には少しも人工が加わっていない。全く自然のままである。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
春琴の眼疾というのは何であったか明かでなく伝にもこれ以上の
記載
(
きさい
)
がないが後に検校が人に語ってまことに
喬木
(
きょうぼく
)
は風に
妬
(
ねた
)
まれるとやら
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
梅雨のように、じめじめと陰気な、こまかい雨が、赤松を濡らし、栽地の土を濡らし、丘の斜面を、雑木林を、松の
喬木
(
きょうぼく
)
を濡らしている。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
高柳君は今こそ苦しいが、もう少し立てば
喬木
(
きょうぼく
)
にうつる時節があるだろうと、苦しいうちに絹糸ほどな細い望みを
繋
(
つな
)
いでいた。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
富士山中で、大宮口の森林として、もっとも名高いモミ、ツガ、ナラ、モミジ、ブナなどの、夏なお寒い
喬木
(
きょうぼく
)
帯を通過する。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
周囲十町はたっぷりとあり、
喬木
(
きょうぼく
)
灌木
(
かんぼく
)
生い繁り、加うるに
蔓
(
つる
)
草が縦横にはびこり、一旦うかうかはいろうものなら、容易なことでは出られない。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それとは直角に
七葉樹
(
しちようじゅ
)
の並木が三列に植えられ、既に盛り上がるように
沢山
(
たくさん
)
の花の芽を持っている。どれもこれも六七十年の
逞
(
たく
)
ましい
喬木
(
きょうぼく
)
であった。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
その落ちついた有様は、
梢
(
こずえ
)
の葉一つ動かさない
喬木
(
きょうぼく
)
が、晴れた青空にすっきりと立った姿のごとくでありました。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
いわゆる故国は
喬木
(
きょうぼく
)
あるの
謂
(
いい
)
にあらずと、唐土の賢人はいったそうだが、やはり故国の喬木はなつかしい。
秋の修善寺
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この銅像は
丈
(
たけ
)
一丈六尺と申すことにて、台石は
二間
(
にけん
)
に余り候はむ、
兀如
(
こつじょ
)
として
喬木
(
きょうぼく
)
の
梢
(
こずえ
)
に立ちをり候。
凱旋祭
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかも
喬木
(
きょうぼく
)
が多いのですが、その代り田地はない処。
畠
(
はたけ
)
はあるが、畠には一面に麻を植えてあります。
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
原っぱに立つ
喬木
(
きょうぼく
)
のような千恵子も、路地の片隅の雑草のようなミネも、同じ会合へと集っている。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
城の崖からは太い逞しい
喬木
(
きょうぼく
)
や古い
椿
(
つばき
)
が緑の
衝立
(
ついたて
)
を作っていて、井戸はその蔭に坐っていた。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
それ世界は造物主の林園なり。人類はその野禽なり。これをしてその幽谷を出で
喬木
(
きょうぼく
)
に移り林園を
快翔
(
かいしょう
)
せしめんと欲せば、まず貴族社会の籠中に孤囚たらしめざるべからず。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
疑いなくこのたびの戦争に依って日本が世界的強国となったことは、この一事を以て証拠立てることが出来る。これで永久の平和が来るかといえばそうでない。
喬木
(
きょうぼく
)
烈風多し。
吾人の文明運動
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
たまに、
喬木
(
きょうぼく
)
があっても枯れていて、わずか数発の弾でぼろりと倒れてしまうのである。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
が、何と言っても
槙
(
まき
)
の果ほど子供たちに喜ばれたものはなかった。
喬木
(
きょうぼく
)
の槙の木は、栗や椎の木のような下枝がなかったので、木登りの上手な子供でなければ登ることができない。
甘い野辺
(新字新仮名)
/
浜本浩
(著)
しかし
池畔
(
ちはん
)
からホテルへのドライヴウェーは、
亭々
(
ていてい
)
たる
喬木
(
きょうぼく
)
の林を切開いて近頃出来上がったばかりだそうであるが、樹々も路面もしっとり雨を含んで見るからに冷涼の気が肌に迫る。
雨の上高地
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
硝子戸越しに
喬木
(
きょうぼく
)
の
梢
(
こずえ
)
が坐っている私の眼に見える。医学書にある神経図に似た梢が
俄
(
にわか
)
にゆらゆらと動いた。それと一緒に硝子にあたる風の音を私は聞いた。私は手を伸ばして窓をあけた。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
烏の群が空低く鳶に追われているその下に、石垣の端近く、羽毛のような葉をした
喬木
(
きょうぼく
)
に黄色い小さな花が雨に打たれて今を盛りと咲き誇っているのが、射るように釘抜藤吉の眼に映った。
釘抜藤吉捕物覚書:02 梅雨に咲く花
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
自分は
三鬼山
(
みきざん
)
の奥に三年
籠
(
こも
)
り、一人の老翁のために剣法を授かったが、その老翁が
喬木
(
きょうぼく
)
は風に
嫉
(
ねた
)
まれるから、決してその術を現わさぬよう、
平常
(
ふだん
)
は馬鹿を装っているがいいといわれたから
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
満山隠然として
喬木
(
きょうぼく
)
茂り、
麓
(
ふもと
)
には清泉
灑
(
そそ
)
げる、村の最奥の家一軒その
趾
(
あと
)
に立ちて流れには
唐碓
(
からうす
)
かけたる、これぞ佐太郎が住居なりき、彼は今朝未明に帰り来たり、夜明けたれど外にも出でず
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
自分で板戸を繰りあけて見ると、縁先には、枯れた花壇の草や
灌木
(
かんぼく
)
が風のために吹き乱された小庭があって、その先は、
杉
(
すぎ
)
、松、その他の
喬木
(
きょうぼく
)
の茂みを隔てて
苔香園
(
たいこうえん
)
の手広い庭が見やられていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
喬木
(
きょうぼく
)
を下って幽谷ニ入ル。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「
喬木
(
きょうぼく
)
風にあたる。何しろ、御勲功の
赫々
(
かっかく
)
たるほど、人の
嫉
(
や
)
っかみもしかたがあるまい。わけて特に、
君寵
(
くんちょう
)
義貞に厚しともあれば……」
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鴻雁
(
こうがん
)
は空を行く時列をつくっておのれを護ることに努めているが、
鶯
(
うぐいす
)
は幽谷を
出
(
い
)
でて
喬木
(
きょうぼく
)
に
遷
(
うつ
)
らんとする時、
群
(
ぐん
)
をもなさず列をもつくらない。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
或いは下から高く投げ上げて
占
(
うらな
)
いをしたという地方もあり、または支那でいう
鮑魚神
(
ほうぎょしん
)
同然にその草鞋の
喬木
(
きょうぼく
)
の梢にあるを異として、神に祀った話もある。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
山の左右から道の方に向かい、打ち重なった
喬木
(
きょうぼく
)
が、枝葉を交えているために、空を見ることが出来なかった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼の今までいた所は北向きの湿っぽい
臭
(
にお
)
いのする汚い
室
(
へや
)
でした。
食物
(
くいもの
)
も室
相応
(
そうおう
)
に粗末でした。私の家へ引き移った彼は、
幽谷
(
ゆうこく
)
から
喬木
(
きょうぼく
)
に移った趣があったくらいです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
裾を蹈んで頭を叩けば、ただこの一座山のごとき大奇巌は月界に飛ばんず形。繁れる雑種の
喬木
(
きょうぼく
)
は、
梢
(
こずえ
)
を揃えて
件
(
くだん
)
の
巌
(
いわ
)
の裾を包んで、滝は音ばかり森の中に聞えるのであった。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
中でもシャスタ
樅
(
もみ
)
と呼ばれる
喬木
(
きょうぼく
)
の一種は、この山、特有とまでゆかなくても、この山の産として最も名高いのであるが、富士の
落葉松
(
からまつ
)
を、富士松と呼ぶたぐいであるかも知れない。
火と氷のシャスタ山
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
だらだら坂を登り切ると、丘の頂上は
喬木
(
きょうぼく
)
の
疎林
(
そりん
)
となり、その間を縫う
径
(
みち
)
を通るとき、暑い午後の
日射
(
ひざし
)
は私の額にそそぎ、汗が絶え間なくしたたった。林をぬけると、やや
広闊
(
こうかつ
)
な草原があった。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
「倒れかかっている甲賀家の
喬木
(
きょうぼく
)
、この世に
頼
(
たよ
)
り
人
(
て
)
のないお千絵様——、それを
支
(
ささ
)
える力、救うお方は、あなたのほかにはございません」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この通を行尽すと
音羽
(
おとわ
)
へ曲ろうとする角に大塚火薬庫のある高い崖が聳え、その
頂
(
いただき
)
にちらばらと
喬木
(
きょうぼく
)
が立っている。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その他にやや遠くから実験したものには
笛
(
ふえ
)
太鼓
(
たいこ
)
の
囃
(
はや
)
しの音があり、また
喬木
(
きょうぼく
)
の
梢
(
こずえ
)
の燈の影などもあって、じつはその作者を天狗とする根拠は確実でないのですが
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
富士見高原の峠道、
喬木
(
きょうぼく
)
がすくすくと左右に生え、その葉が高く頭上を蔽い、
穹窿型
(
きゅうりゅうがた
)
をなしている。トンネルが通っているようだ。木の葉にさえぎられて空が見えぬ。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
喬木
(
きょうぼく
)
の梢を風が渡るのが見える。道はうねりながら林の奥に消えていた。此処からは樹群がまばらで木々の長い影が地に落ちていた。疲労が快よい倦怠感に変って行くのがはっきり感じられた。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
照り返す河原の水べりを避けて、出水あとの堤崩れが見える一
喬木
(
きょうぼく
)
の下に、三七信孝は、馬印を立て
床几
(
しょうぎ
)
をすえて
憩
(
いこ
)
うていた。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然
(
しか
)
り雨の窓を打ち軒に流れ
樹
(
き
)
に
滴
(
したた
)
り竹に
濺
(
そそ
)
ぐやその
響
(
ひびき
)
人の心を動かす事風の
喬木
(
きょうぼく
)
に叫び水の渓谷に
咽
(
むせ
)
ぶものに優る。風声は憤激の声なり水声は
慟哭
(
どうこく
)
なり。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
見ていると——帯は長く尾を
曳
(
ひ
)
いて
喬木
(
きょうぼく
)
の
梢
(
こずえ
)
に懸り、そのあまりは、枝から地上へ、旗の如くダラリと垂れ下がりました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
このあたり今は
金富町
(
かなとみちょう
)
と
称
(
とな
)
ふれど、むかしは
金杉
(
かなすぎ
)
水道町にして、南畆がいはゆる
金曾木
(
かなそぎ
)
なり。懸崖には
喬木
(
きょうぼく
)
なほ天を
摩
(
ま
)
し、樹根怒張して巌石の
状
(
さま
)
をなせり。
澗道
(
かんどう
)
を下るに竹林の間に椿の花開くを見る。
礫川徜徉記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
野中にみえる一本の
喬木
(
きょうぼく
)
の根へ、百は、女のからだをしばりつけた。お稲は、
媚態
(
びたい
)
と狂態のかぎりをつくして、百に、命をたすけてくれと泣いてさけんだ。
野槌の百
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
魚鳥マタ
碕沂
(
きぎん
)
ノ間ニ
相嬉
(
あいあそ
)
ブ。池ノ南ハ密竹林ヲナシ、清流ソノ下ヲ
穿過
(
せんか
)
ス。池ノ北ハ
稲畦蔬圃墻外
(
とうけいそほしょうがい
)
ノ民田ト相接ス。園ハ
喬木
(
きょうぼく
)
多ク、
槎枿竦樛
(
さげつしょうきゅう
)
、皆百年外ノ物タリ。而シテ堂独リ翼然トシテ池上ニ臨ム。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
この君の
精神
(
こころ
)
をとおし、この殿の将来をとおし、自分の理想は、何らかの
象
(
かたち
)
で世に行われよう。自分はこの
喬木
(
きょうぼく
)
を大ならしめる根もとの
肥料
(
こえ
)
であっていい。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ヒラリと、その
喬木
(
きょうぼく
)
の下枝へ飛びついたかと思うと、
猿
(
ましら
)
のようにバサバサと木の葉を散らして
攀
(
よ
)
じ登った。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
以来、城中の士気は、一葉一葉落ちてゆく晩秋の
喬木
(
きょうぼく
)
にも似ていた。脱走者は相継いでやまないし、城外からのさまざまな噂も寒風の如く入って来る。たとえば
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そういったほど、
喬木
(
きょうぼく
)
の厚ぼったい茂りが、一同の上をふさいできた。みんなわらじばきなので、シト、シト、シト……と揃う
跫音
(
あしおと
)
が言葉のない間を静かにつなぐ。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
喬木
(
きょうぼく
)
の仆れるように、
虚空
(
こくう
)
に人生の真をつかみながら、まだ三十幾つかの若い生涯を彼は終った。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
喬
漢検準1級
部首:⼝
12画
木
常用漢字
小1
部首:⽊
4画
“喬木”で始まる語句
喬木林
喬木世家