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ういうい
ふりがな文庫
“
初々
(
ういうい
)” の例文
白地の
浴衣
(
ゆかた
)
に、この頃はやる麻の葉絞りの紅い帯は、十八の娘をいよいよ
初々
(
ういうい
)
しく見せた。林之助はもう一度お絹とくらべて考えた。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
貞奴はその妹分の優しい、
初々
(
ういうい
)
しい
大丸髷
(
おおまるまげ
)
の若いお嫁さんの役で、
可憐
(
かれん
)
な、本当に
素
(
す
)
の貞奴の、
廿代
(
はたちだい
)
を思わせる
面差
(
おもざ
)
しをしていた。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
奥さんの小言の
飛沫
(
とばしり
)
は
年長
(
うえ
)
のお嬢さんにまで飛んで行った。お嬢さんは
初々
(
ういうい
)
しい頬を
紅
(
あから
)
めて、客や父親のところへ茶を運んで来た。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
明りを受けたお蓮さまの顔は、真珠をあたためたようにかがやいて、眉の剃りあとの青いのも、絵筆で引いたように
初々
(
ういうい
)
しいのだった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そう言えば、
鵲
(
かささぎ
)
は、
弾機
(
ばね
)
仕掛けのような飛び方をして逃げて行く。七面鳥は生垣のなかに隠れ、
初々
(
ういうい
)
しい
仔馬
(
こうま
)
は
槲
(
かしわ
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に身を寄せる。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
▼ もっと見る
花嫁の心もまず少しは落ちつきて、
初々
(
ういうい
)
しさ恥ずかしさの
狭霧
(
さぎり
)
に
朦朧
(
ぼいやり
)
とせしあたりのようすもようよう目に
分
(
わか
)
たるるようになりぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
折々、水道栓でぶつかる
初々
(
ういうい
)
しい娘があった。紙人形のように薄手で弱そうな子であった。露地で逢っても
俯
(
ふ
)
し眼に過ぎるだけだった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あの娘は美しい。そうして大変
初々
(
ういうい
)
しい。父親とは似も似つかぬ。会って話したら楽しいだろう」こういう気持ちも働いていた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
家庭以外の空気に触れたため、
初々
(
ういうい
)
しい
羞恥
(
はにかみ
)
が、
手帛
(
ハンケチ
)
に振りかけた香水の
香
(
か
)
のように自然と抜けてしまったのではなかろうかと疑ぐった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その紐で
絞
(
し
)
められた
白粉
(
おしろい
)
っ気もない顔は、涙を誘う
初々
(
ういうい
)
しさと、邪念のない美しさを、
末期
(
まつご
)
の苦悩も奪う
由
(
よし
)
はなかったのです。
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その張りきった体格と、娘でありながら、まだ子供のような無邪気な
初々
(
ういうい
)
しさが、思わず七兵衛を
見惚
(
みと
)
れさすものがあります。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
姉よ、あなたはいる、
葡萄棚
(
ぶどうだな
)
の下のしたたる朝露のもとに。あんなに美しかった
束
(
つか
)
の
間
(
ま
)
に嘗ての姿をとりもどすかのように、みんな
初々
(
ういうい
)
しく。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
与一との生活に、もっと私に青春があれば、きっと私は
初々
(
ういうい
)
しい女になったのだろうけれど、いつも、
野良犬
(
のらいぬ
)
のように食べる事に
焦
(
あせ
)
る私である。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
いまだ十六ぐらいの
初々
(
ういうい
)
しい美しい娘。羞かしそうに偽の三津五郎のそばへ寄って行って、顔を
赧
(
あか
)
らめながらモジモジと身体をくねらせている。
顎十郎捕物帳:22 小鰭の鮨
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
が、美奈子はそうしたはしたない感情を、グッと抑え付けることが出来た。彼女は
平素
(
いつも
)
の
初々
(
ういうい
)
しい
温和
(
おとな
)
しい美奈子だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
すると、さも
嬉
(
うれ
)
しそうに
莞爾
(
にっこり
)
してその時だけは
初々
(
ういうい
)
しゅう
年紀
(
とし
)
も七ツ八ツ若やぐばかり、
処女
(
きむすめ
)
の
羞
(
はじ
)
を
含
(
ふく
)
んで下を向いた。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まだ十七八らしく、すべすべした肌のいろが、川魚のような
光沢
(
つや
)
を放って、胸から腰のあたりのふくらみも、髪の花簪のように
初々
(
ういうい
)
しい小娘だった。
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
ええママヨとふてくされて
齧
(
かじ
)
りつくと
忽
(
たちま
)
ち狂犬の如くになったので、アラレもなくエゲツないやり口が
寧
(
むし
)
ろ家康の
初々
(
ういうい
)
しさを表していると見てもよい。
家康
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼等の眼のさきの、マッチ工場のトタン塀に添うて、並んでいるアカシヤは、
初々
(
ういうい
)
しい春の芽を吹きかけていた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
ぽん太については、森鴎外の「百物語」に出ているが、あれはまだ二十前の
初々
(
ういうい
)
しい時のことであっただろう。
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
初々
(
ういうい
)
しい若竹の緑に、どこからか麦を打つ埃が飛んで来る。明るい日のかんかん照りつける日中の趣である。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
お作は婚礼当時と変らぬ
初々
(
ういうい
)
しさと、男に甘えるような様子を見せて、そこらに散った
布屑
(
きれくず
)
や糸屑を拾う。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
荒い黄羽二重の大名縞の筒袖に短い
袴
(
はかま
)
をつけて、褐色の鞄を右肩から左脇に懸けて、赤い靴足袋を
穿
(
は
)
いた君の
初々
(
ういうい
)
しい姿は私の目に妙に懐しく映ったのであった。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
ただ、その気味のわるいほどの
初々
(
ういうい
)
しさと、眼も当てられぬイジラシイ美しさに打たれただけであった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
まことに艶麗な
句柄
(
くがら
)
である。近いうちに分家をするはずの二番
息子
(
むすこ
)
の
処
(
ところ
)
へ、
初々
(
ういうい
)
しい花嫁さんが来た。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
はじめに見た武家の
御息子
(
ごそくし
)
様のような
初々
(
ういうい
)
しい丁寧な言葉づかいも、しだいに
失
(
な
)
くなったともいった。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
それなればこそ子供を三人も生んだのであろう。そして
初々
(
ういうい
)
しい少女の
花嫁
(
はなよめ
)
は、夫の家に引き取られて旧家の主婦たるにふさわしいさまざまな
躾
(
しつけ
)
を受けたであろう。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
初々
(
ういうい
)
しき大嶋田結ひ綿のやうに絞りばなしふさふさとかけて、
鼈甲
(
べつかう
)
のさし込、
総
(
ふさ
)
つきの花かんざしひらめかし、何時よりは
極彩色
(
ごくざいしき
)
のただ京人形を見るやうに思はれて
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
けれど、変りやすい
花車
(
きゃしゃ
)
な顔、生き生きした小さな鼻、
初々
(
ういうい
)
しいやさしい微笑をもっていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
しかしある女性においては、赤子のほかに見出されないような
初々
(
ういうい
)
しさを染めだす。おぬいさんのそれはもとより後者だった。高低のある積雪の面に照り映えた夕照のように。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
馬車ががらがらと村を通ってゆくと、だれでも家の窓にかけよる。そして、どっちを見ても、田舎の人たちの生き生きした顔や、
初々
(
ういうい
)
しい乙女たちがくすくす笑っているのが見える。
駅馬車
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
さらにこの二人の死の覚悟を見て
己
(
おの
)
が恋を犠牲にするおみつも、最初はただ
初々
(
ういうい
)
しい無邪気な田舎娘として描かれ、その恋もまたきわめて率直な、あからさまな嫉妬によって現わされる。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
しかし、また考えると、高潔でよく引き締った半僧生活は、十数年前、すでに、僕は思想と実験との上で通り抜けて来たのだ。そんな
初々
(
ういうい
)
しいことで、現在の僕が満足出来ないのは分りきっている。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
いや、少なくともあの純情という紺絣を取り戻し、抱きしめ、
初々
(
ういうい
)
しく身に着けている、何とも晴れ晴れしい心地がした。勇気百倍。凜々としたものが、はち切れそうに身体全体へ満ち満ちてきた。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
部屋へはいって來たのは非常に若い男で、年のころは十九ぐらい、あるいはもう少し下かも知れない——と思われるほど、その美しい、鼻っ柱の強そうに空うそぶいた顏には、
初々
(
ういうい
)
しさが溢れていた。
永遠の夫
(旧字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
年老いたるあわれな
初々
(
ういうい
)
しい心よ!
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そうは思いきわめながらも、林之助がまつげの
塵
(
ちり
)
ともいうべきは、かのお里の
初々
(
ういうい
)
しいおとなしやかな顔かたちであった。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それというのも日ごろから、そのお美しさと
初々
(
ういうい
)
しさとに、感心もし敬ってもいる、お小夜様だったからでございます。
怪しの者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いや、花も恥じらわしげな菊路の、触れなばこぼれ散りそうな
初々
(
ういうい
)
しい風情が、ついにおろか者十郎次の情欲をぐッと捕えてしまったに違いないのです。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
初々
(
ういうい
)
しいお静の女房振りに比べて、出戻りで理智的で、
確
(
しっか
)
り者らしいお品は、美しさに変りはなくとも、二つ三つ老けて見えるのも是非のないことでした。
銭形平次捕物控:089 百四十四夜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
剥
(
む
)
き卵みたいな可憐な少女の顔も見えたり、
初々
(
ういうい
)
しげな人妻らしい、ほつれ髪の顔もあったりするのであった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あの御隠居さんの居る商家の奥座敷で
初々
(
ういうい
)
しい手付をしながらよく菓子などを包んで捨吉にくれた大勝の大将の娘が、最早見違えるほどの姉さんらしい人だ。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
はじめて落着く場所にかえったような安らかさと、これから始ろうとする
試煉
(
しれん
)
にうち
克
(
か
)
とうとする
初々
(
ういうい
)
しさが、
痩
(
や
)
せた妻の身振りのなかにぱっと
呼吸
(
いき
)
づいていた。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
と
初々
(
ういうい
)
しいほど細い声を掛けると、茶の間の悪く暗い戸棚の前で、その何かしら——内臓病者補壮の食はまだ考えない、むぐむぐ頬張っていた士族
兀
(
はげ
)
の
胡麻塩
(
ごましお
)
で
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
正目
(
まさめ
)
に見るのはこれがはじめてだが、話に聞いていた悪性女の感じはどこにもない。少女といってもいいような
初々
(
ういうい
)
しい
稚顔
(
おさながお
)
をしている。手足の形も未熟である。
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
旧臘
(
きゅうろう
)
京都を立つ前に、藩の御用飛脚から受け取った妻の消息の文面が、頭のうちに、消しても消しても浮んでくる。それに続いて妻の、
初々
(
ういうい
)
しい笑顔が浮んでくる。
乱世
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
人に遠慮して、わざと横を向いている
面
(
かお
)
には
初々
(
ういうい
)
しい恥かしさがありました。一糸も乱れずに結い上げた片はずしの
髷
(
まげ
)
には、人の心に食い入るような油がありました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
金一封を出して戻ってもらいたい位だ。だが、きんは、眼の前にだらしなく酔っている男に一銭の金も出すのは厭であった。
初々
(
ういうい
)
しい男に出してやる方がまだましである。
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
女学生みたいに
初々
(
ういうい
)
しい美鳥の姿は、世にも微笑ましいコントラストを作っているのであった。
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
明治初年の日本は実にこの
初々
(
ういうい
)
しい解脱の時代で、着ぶくれていた着物を一枚
剥
(
は
)
ねぬぎ、二枚剥ねぬぎ、しだいに裸になって行く明治初年の日本の意気は実に
凄
(
すさ
)
まじいもので
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
初
常用漢字
小4
部首:⼑
7画
々
3画
“初”で始まる語句
初
初心
初手
初夏
初春
初陣
初秋
初午
初旬
初更