假令たとひ)” の例文
新字:仮令
これと同時どうじにその論議ろんぎ具體化ぐたいくわした建築物けんちくぶつ實現じつげんさらのぞましいことである。假令たとひその成績せいせき多少たせう缺點けつてんみとめられてもそれ問題もんだいでない。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
村落むらはしからはしまでみなどう一の仕事しごと屈託くつたくしてるのだから季節きせつ假令たとひ自分じぶんわすれたとしてもまつたわすることの出來できるものではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それ程になるのも考へものであるとも思ふが、併し假令たとひ樂しみ事にしろやつぱり其處迄行かなければつまらないとも思ふ。
写生紀行 (旧字旧仮名) / 寺田寅彦(著)
假令たとひ醫術が進歩したの、衞生設備が完全に近づいて來たのと云うても、今日猶吾人は、常に疾病の爲に直接間接に惱まされぬいて居るのである。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
假令たとひ都を遷すも、其の盛大をきはむること今日の如きは實に難からん。然らば則ち公常人のしのぶ能はざる所を忍ぶ、其功亦多し。きう藩士日高誠實ひだかせいじつ時に句あり云ふ。
平素彼は彼女の前でおくびにも出したことのない子供の名を假令たとひ夢であるにしても呼んだとしたら、彼女はどんなに苦しみ出したかしれなかつた。彼は息をいて安堵の胸を撫でた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
『三月兎ぐわつうさぎとは大變たいへん面白おもしろいのね、大方おほかたこれが五ぐわつなら狂人きちがひになつてあばまはるだらう——假令たとひぐわつほどではなくとも』あいちやんはつてうへると、其猫そのねこえだうへすわつてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
かくの如き御樣子ごやうすにては對決たいけつなしに忽ち負公事まけくじと成り申すべし此上の處御心を大丈夫になし給ふべし後にはかく申す安間平左衞門ひかへてれば假令たとひ大山がくづれ來る共少しも御心勞に及ばずと力を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
貴方あなたしんじてゐなさるから結構けつこうだ。然云さうい信仰しんかうりさへすれば、假令たとひかべなか塗込ぬりこまれたつて、うたうたひながら生活せいくわつしてかれます。貴方あなた失禮しつれいながら何處どこ教育けういくをおけになつたか?
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あさこゝろ思召おぼしめすか假令たとひどのやうなことあればとてあだびとなんのその笑顏わらひがほせてならうことかはやまほどのうらみもくるすぢあれば詮方せんかたなし君樣きみさま愛想あいさうつきての計略たくみかとはおことばながらあまりなりおやにつながるゝつみおなじと覺悟かくごながら其名そのなばかりはゆるしたまへよしや父樣とゝさまにどのやうなおにくしみあればとてかはらぬこゝろわたしこそ君樣きみさまつまなるものを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
若し人類にして植福の精神や作業が無いならば、人類は假令たとひ勇猛なるも、數千年の古より、今猶獅子熊の如き野獸と相伍して居なければなるまい。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
假令たとひ他人たにんためにはかなしいでもの一じつだけは自己じこ生活せいくわつからはなれて若干じやくかん人々ひとびとと一しよ集合しふがふすることが彼等かれらにはむし愉快ゆくわいな一にちでなければならぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
建築家けんちくか勿論もちろん、一ぱん人士じんしへず建築界けんちくかい問題もんだい提出ていしゆつして論議ろんぎたゝかはすことはきわめて必要ひつえうなことである。假令たとひその論議ろんぎ多少たせう常軌じやうきいつしてもそれ問題もんだいでない。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
一石一石が然樣さういふ次第を經て局に下さるゝなら、其の人假令たとひ鈍根なりとも、幾十局幾百局を圍むの後に於ては必らずや棊技漸く進むことで有らう。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
おつぎは卯平うへいいたはるにはいく勘次かんじ八釜敷やかましくても一々ことわりをいうてはなかつた。勘次かんじはおつぎが暫時しばしでもなくなると假令たとひ卯平うへいそばるとはつても
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)