よっ)” の例文
よってかの家を彩牋堂とこじつけ候へども元より文藻ぶんそうに乏しき拙者せっしゃ出鱈目でたらめ何かき名も御座候はゞ御示教願はしく万々ばんばん面叙めんじょを期し申候
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
よって此間じゅうよりギボン、モンセン、スミス等諸家の著述を渉猟しょうりょう致し居候おりそうらえどもいまだに発見の端緒たんしょをも見出みいだし得ざるは残念の至に存候ぞんじそろ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一人の教員が文明史を教えているというから文明史はどんな書物によってやっておられるか、ギゾーの文明史でも御用おもちいかと問うた
今世風の教育 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「為人全く」とあるも、これもとより人より見ての完全であって、神より見ての完全ではない。完全の程度は見る人の目によって異なる。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
其方儀そのほうぎ先達さきだっながいとま差遣さしつかわし候処そうろうところ以後心掛も宜しくよっ此度このたび新地しんち二百石に召し返され馬廻り役被仰付候旨おおせつけられそうろうむね被仰出候事おおせいだされそうろうこと 重 役 判
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けだし論者のごとき当時の事情じじょうつまびらかにせず、軽々けいけい他人の言によって事を論断ろんだんしたるがゆえにその論の全く事実にはんするも無理むりならず。
十五人なら十五人に会頭かいとう一人ひとりあって、その会読するのをきいて居て、出来不出来によっ白玉しろだまを附けたり黒玉くろだまを付けたりすると云う趣向で
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
第三軍は、村上、来島等の海軍を以て組織し、厳島の対岸を警備し、場合によっては、陶の水軍と合戦を試みんとするものだ。
厳島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
明治八年、父が始めてここに家を建てた時には、百坪の借地料が一円であったそうだが、今では一坪二十銭以上、場所によっては一坪四十銭と称している。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……この事件は如何なる心理遺伝の爆発によって生じたものか? その心理遺伝を故意に爆発させた者が居るか居ないか。又、居るとすればどこに居るか。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それでこの砲台は当時比較的新らしい形式によっていて、幕府が築いた品川沖の台場よりもこの方が実用に適っているといって、わが藩の者は自慢していた。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
我等われら今度こんど下向候処げこうそろところ其方そのほうたい不束之筋有之ふつつかのすじこれあり馬附之荷物積所うまつけのにもつつみしょ出来申候しゅったいもうしそろつき逸々はやばや談志之旨だんしのむね尤之次第もっとものしだいおおきに及迷惑申候めいわくをおよぼしもうしそろよっ御本陣衆ごほんじんしゅうもって詫入わびいり酒代さかて差出申候さしだしもうしそろ仍而件如よってくだんのごとし
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
よって更に出直して「大丈夫」ト熱気やっきとしたふりをして見て、歯を喰切くいしばッて見て、「一旦思い定めた事をへんがえるという事が有るものか……しらん、止めても止まらんぞ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
よって我等老夫婦は、北海道に於ける最も僻遠へきえんなる未開地に向うて我等の老躯と、僅少なる養老費とを以て、我国の生産力を増加するの事に当らば、国恩の万々分のいつをも報じ
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
よって、そのころ、山城国稲荷山をうつして勧請かんじょうしたというのだが、お末社が幅をきかしてしまって、道灌どうかんが祷ったという神の名も記してない。秀郷祀るところの御本体も置いてない。
先生のきょ、同じく戒心かいしんあるにもかかわらず、数十の生徒せいとともな跣足せんそく率先そっせんして池水いけみずくみては門前に運び出し、泥塗満身でいとまんしん消防しょうぼう尽力じんりょくせらるること一霎いっしょう時間じかんよっかろうじてそのさいまぬかれたり。
なるほど僕は近藤さんのおさっしの通り恋愛によって一方の活路を開いた男の一人である。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
……鐘を守るとも守るまいとも、勝手にしろと言わるるから、俺には約束がある……義によって守っていたんだ。鳴らすなと言うに、誰がすき好んで鐘を撞くか。勿論、即時にここを去る。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
十五日 朝根室分娩ぶんべん牡犢おすこうしである。例によって母牛にせずしてこうしを遠く移した 母牛は壮健である。杉山発情午後交尾さした。アンヤ陰部より出血 十三日頃発情したのであるを見損じたのである。
牛舎の日記 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
明日みょうにちは父に米を買って与える事も出来ぬ処から、其の金子を以て米薪に代えて父を救った其の孝心によって父を思う処から
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
◯しかしてヨブの仲保要求の完全に充たされたるは、勿論もちろんイエスの降世によってである。かの微かなる叫び、遂にこの大なる実現にまで進化したのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
約束したからと云て時勢によったものだ、この大変な騒動中に屋敷を買うと云うような馬鹿気ばかげたことがあるものか。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
勢い込んで駈け出そうとするのを、母は呼び止めて何事をか囁き示すうちに、日もようやく暮れかかったらしい。例によっ濛々もうもうたる山霧がうしおの如くに湧いて来た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
よってその勧められるがままに旧版を校訂しあわせて執筆当初の事情と旧版の種類とをここにしるすことにした。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
丁野も半助も久政のにくみを受けながら、遠藤喜右衛門きえもんが能く取りなしけるによって、久政もようやく思返し、此頃はそば近く出勤しけるにより、今日評定の席へも差加へられたり。
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
即ち意識的精神作用が熟睡によって休止しおる間に於て、全身の細胞相互間の反射交感作用が
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
故に其概略を知るのみ。片山八重藏かたやまやえぞう夫婦の最初より今日迄の詳細を知るには及ばざるなり。よって予が見聞する処の概略を記して、後年に至り幾分か創業の実况を知るが為ならんか。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
よって至誠は天をも感ずるとか云う古賢こげんの格言を力にして、折さえ有ればつとめて叔母の機嫌きげんを取ッて見るが、お政は油紙に水を注ぐように、跳付はねつけて而已のみいてさらに取合わず、そして独りでジレている。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
此の花車という人は追々おい/\出世をして今では二段目の中央なかばまで来ているから、師匠の源氏山も出したがりませんのを、義によっておいとまを下さいまし
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
よって余は最初の計画に変更を加え、二十章以後を逐章研究することをめて、最後の数章のみを講ぜんと欲する。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
動物電気によって一種のヒプノヂズム式作用を起すものと見える。狐が人を化すと云ふのも嘘では無いらしい。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
その方法によっうやらうやら塩酸を拵えて、これに亜鉛を溶かして鉄に錫を試みて、鋳掛屋の夢にも知らぬ事が立派に出来たと云うようなことが面白くてたまらぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
よって又一を先導として、餘作同道にてウエンベツざんに登る。川を渉り、或は沿岸を往き、或は樹間或は湿地を通行するに、熊の脚痕あしあと臥跡ふしあとあり。漸く進んで半腹はんぷくに至るに、大樹の多きに驚けり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
今日こんにちの眼を以て、この台場の有用無用を論じたくない。およそ六十年の昔、初めて江戸の海にこれを築いた人々は、これによって江戸八百八町の人民を守ろうとしたのである。
一日一筆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
是は芝赤羽根あかばねの勝手ヶ原の中根兵藏なかねひょうぞうという家持いえもち町人の所へ忍入り家尻やじりを切って盗取ぬすみとった八百両の内の古金で、皆此の通り三星の刻印の有る古金で有るによって、其方そちが唯貰ったでは言訳が立たぬ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
下町は知らず、我々の住む山の手では、商家しょうかでも店でこそランプを用いたれ、奥の住居すまいでは大抵たいてい行灯あんどうとぼしていた。家によっては、店頭みせさきにも旧式のカンテラを用いていたのもある。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
此の者は其の方と面体恰好がう似てるぞ、其の方がしいて隠すと此の者は重き刑に行われるが、其の方の実父なれば、清左衞門の口から士道立ち難いによって申せまいが、其の方が申すに仔細はない
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)