三方さんぽう)” の例文
いまのは勝負しょうぶなしにすんだので、また、四五にんのお役人やくにんが、大きなお三方さんぽうなにせて、その上にあつぬのをかけてはこんでました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
お庄は銀貨を一顆ひとつぶ紙にひねって、傍に出してあった三方さんぽうの上に置いて、そこを出て来た。出る時、俥で乗り着けて来た一人の貴婦人に行き逢った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
さうしてこの水田すいでん東西南とうざいなん三方さんぽう比較的ひかくてきかた地盤ぢばんもつかこまれてゐる。かういふ構造こうぞう地盤ぢばんであるから、地震ぢしん比較的ひかくてきはげしかつたであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
きのうのおまつりに、氏子うじこがあげた物であろう。三方さんぽうの上に、うずたかく、大げさにいえば、富士ふじの山ほどんであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いしとこ三方さんぽうまうけて死體したいくようになつてあつたり、天井てんじよう家屋かおく屋根やねをまねてあるのもあつたり、内部ないぶ刀劍とうけんかたちつたものなどがあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
一杯いっぱい雛壇ひなだんのやうな台を置いて、いとど薄暗いのに、三方さんぽう黒布くろぬの張廻はりまわした、壇の附元つけもとに、流星ながれぼし髑髏しゃれこうべひからびたひとりむしに似たものを、点々並べたのはまとである。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この高山かうざんは、風景ふうけいきわめてうるはしく、吾等われらたつしたるいたゞきは、三方さんぽう巖石がんせき削立せうりつして、自然しぜん殿堂でんどうかたちをなし、かゝる紀念塔きねんたふつるには恰好かつこう地形ちけいだから、つひ此處こゝ鐵車てつしやとゞめた。
(与五郎の手をとって押しいただく、奥より玉虫は三方さんぽう土器かわらけを持ちていず。)
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「さあ、三方さんぽうから彼奴きゃつかこんでしまうのだ。それ、懸れッ」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこでそっとものえるじゅつ使つかって、お三方さんぽうの中の品物しなもの素早すばやえてしまいました。そしてすましたかおをしながら
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
荒浪あらなみ鞺々どう/\打寄うちよするみさき一端いつたんには、たか旗竿はたざほてられて、一夜作いちやづくりの世界せかい※國ばんこくはたは、その竿頭かんとうから三方さんぽうかれたつなむすばれて、翩々へんぺんかぜなびく、その頂上てつぺんにはほまれある日章旗につしようき
すると、あるおやしろの拝殿にその蜜柑が見つかった。いもだの人参だのといっしょに、三方さんぽうに載って、神前に上がっていたのである。城太郎は蜜柑だけ懐中ふところに詰めこんで逃げて来たのだった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南屋の普請ふしんかかって居るので、ちょうど与吉の小屋と往来を隔てた真向まむこうに、小さな普請小屋が、真新まあたらしい、節穴ふしあなだらけな、薄板で建って居る、三方さんぽうが囲ったばかり、編んで繋いだなわも見え
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今一いまひとおほきいいしつくつたものに石机いしづくゑ、すなはちどるめんといふのがあります。それはすこしひらたいいし三方さんぽうて、そのうへにやはりひらたい大石おほいしをのせた一見いつけんてーぶるのかたちをしたものであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「ではわたくしからもうげます。お三方さんぽうの上におせになったのは、みかん十五です。」
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ひがし西にしみなみ三方さんぽうこのしま全面ぜんめんで、見渡みわたかぎ青々あを/\としたもりつゞき、處々ところ/″\やまもある、たにえる、またはるか/\の先方むかう銀色ぎんしよく一帶いつたい隱見いんけんしてるのは、其邊そのへん一流いちりうかはのあることわかる。