あかゞね)” の例文
彼は人種学の教科書の教へるとほりに黒髪で、あかゞねいろの額が広く、面長おもながであつたが、その乱れた髪につけてゐる香油はパリ生粋きつすゐのものだつた。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
鋳像家ちうざうかわざに、ほとけあかゞねるであらう。彫刻師てうこくしのみに、かみきざむであらう。が、ひとをんな、あの華繊きやしやな、衣絵きぬゑさんを、詩人しじん煩悩ぼんなうるのである。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
混堂ゆやつゞきて厨処だいどころあり、かまどにも穴ありて地火を引て物をにることたきゞに同じ。次に中のあり、ゆかの下より竹筩たけつゝを出し、口には一寸ばかりあかゞねはめて火をいださしむ。
おぼえさせまた金者かなもの相針あひばりはいくらにあかゞねつぶしにして何程といふ相場をきゝ一々手覺ておぼえに書留かきとめさせて歸りしが夫より長八夫婦は店住たなすまひとなり翌日よりかごかつぎ紙屑かみくづ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
板のやうな掛蒲団をあはせの上にかぶつて禿筆ちびふでを噛みつゝ原稿紙にむかふ日に焼けてあかゞね色をしたる頬のやつれて顴骨くわんこつの高く現れた神経質らしいおな年輩としごろの男を冷やかに見て
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
このしづかな判然はつきりしない燈火ともしびちからで、宗助そうすけ自分じぶんる四五しやく正面しやうめんに、宜道ぎだう所謂いはゆる老師らうしなるものをみとめた。かれかほれいによつて鑄物いものやううごかなかつた。いろあかゞねであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今はあのあかゞね色の空を蓋ふ公孫樹の葉の、光沢のない非道な存在をも赦さう。オールドローズのおかつぱさんは埃も立てずに土塀に沿つて行くのだが、もうそんな後姿も要りはしない。
秋の悲歎 (新字旧仮名) / 富永太郎(著)
美しい襞を形づくつてゐる外套の為めに気の毒な位である。それは長くは続かなかつた。吠えるやうな大喝一声に、棚の硝子ガラスが震動して、からから鳴つた。フアウヌスがあかゞねの腕を振り翳した。
クサンチス (新字旧仮名) / アルベール・サマン(著)
あかゞねの壁き上げて父の身を
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
混堂ゆやつゞきて厨処だいどころあり、かまどにも穴ありて地火を引て物をにることたきゞに同じ。次に中のあり、ゆかの下より竹筩たけつゝを出し、口には一寸ばかりあかゞねはめて火をいださしむ。
やすましておくれ、とこしをかけて一息ひといきつく。大分だいぶあつたかでございますと、ばゞあかゞね大藥罐おほやくわんちやをくれる。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あかゞねを浴びたこの額を沈めたい
四行詩 (新字旧仮名) / 富永太郎(著)
あかつきしもき、夕暮ゆふぐれきりけて、山姫やまひめ撞木しゆもくてて、もみぢのくれなゐさとひゞかす、樹々きゞにしきらせ、とれば、龍膽りんだう俯向うつむけにいた、半鐘はんしようあかゞねは、つきむらさきかげらす。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くちなは料理れうり鹽梅あんばいひそかにたるひとかたりけるは、(おう)が常住じやうぢう居所ゐどころなる、屋根やねなきしとねなきがう屋敷田畝やしきたんぼ眞中まんなかに、あかゞねにてたるかなへ(にるゐす)をゑ、河水かはみづるゝこと八分目はちぶんめ
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)