見当けんとう)” の例文
旧字:見當
約六十キログラムぐらいの重量をのせてとべるほどの大きなものと見当けんとうをつけた、この重量は、連盟員中の最重量者の目方である。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
とうとう神社じんじゃというところまではなしすすんだのでございました、まことにひとうえというものはなになにやらさっぱり見当けんとうがとれませぬ。
みずうみの上で、こんなにキラキラ光るのは、いったいなんだろうと考えてみましたが、さいしょのうちは、さっぱり見当けんとうがつきません。
そしてっているひとたちは、みなかおつつんでばかりしているので、こちらのくにふねとも外国がいこくふねとも見当けんとうがつかないのです。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さァ——」横瀬は、モシャモシャ頭髪かみのけを、指でゴシゴシいた。「注射器は判るが、尖端さきについている針が無いから、見当けんとうがつかねえ」
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
王子は道案内者としてまっ先に進みましたが、一昨日の夜ほの白い道が続いていたのはどの方向だか、さっぱり見当けんとうがつきませんでした。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
いっその事また停車場を飛び出そうかしらと思って、今までプラットフォームの方を向いていた足を、入口の見当けんとうに向け易えた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
若者わかものには、命の木がどこにあるのか、見当けんとうもつきません。とにかく、たびにでて、足のつづくかぎり、どこまでも歩いていこうと思いました。
しかし、子どものほうではだれもまだ着物の先生に見当けんとうがつかぬらしく、ま顔で見つめている。笑いかけてもわからぬらしい。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
自分もその物音を聞いたばかりで、その正体を見とどけないのであるから、物に馴れている留吉にも見当けんとうが付かなかった。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「はてね……。だが、相州そうしゅうとか伯耆ほうきとか京ものとか、およそ、その短刀の系図ぐらいは見当けんとうがついていねえんでしょうか」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岩とも泥とも見当けんとうのつかぬ、灰色をなすった断崖だんがいは高だかと曇天に聳えている。そのまた断崖のてっぺんは草とも木とも見当のつかぬ、白茶しらちゃけた緑を煙らせている。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
なになにやら、一こう見当けんとうかなくなった藤吉とうきちは、つぎってかえすと、箪笥たんすをがたぴしいわせながら、春信はるのぶこのみの鶯茶うぐいすちゃ羽織はおりを、ささげるようにしてもどってた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「今日までは何を話して好いのか見当けんとうがつかないで困っていたけれども」などと肇は云ったりした。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
それがどこへ来るか、さっぱり見当けんとうがつかぬ、浅く来るか深く来るかさえ見当がわからないのです。
気を留めて聞くとたしかに別の音がある。ハテナ、あの辺か知らんと、その別の音のする方の雨煙濛〻もうもうたる見当けんとうへ首を向けて眼をると、もう心安げになった蔵海がちょっと肩に触って
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
コンティニ宮がどこにあるかさえも、まったく見当けんとうがつきませんでした。
「こいつはいかん、どこへ手錠てじょうをはめればいいんだ、見当けんとうがつかんぞ」
わたしは広間から飛んで出たが、なにしろ真っ暗であるので、どこが出口であるか見当けんとうがつかない。そのうちに私のうしろでは、ひゅうひゅうという鞭の音がきこえて、女の叫び声がひびいて来た。
どこにひそんでいるのか皆目かいもく見当けんとうのつかないことだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
どんな人か見当けんとうがつくでしょう。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
見当けんとうが皆間違って来て
自分の愛と人の愛と云えば、たとい分量性質が同じでもついに所有者が違って参ります。愛の見当けんとうが違います。方角が違います。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
議員さんがたは、この事件ことをいっしょけんめいに相談しましたが、さて、男の子をどう処置しまつしていいか、見当けんとうがつきません。
それは二人にとってさら見当けんとうのつかないことだった。話はそれまでとなって、白丘ダリアと伯父とは、警視庁を辞去じきょした、というのであった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小川おがわも、も、はたけゆきしたにうずもれてしまって、どこがみちやら、それすら見当けんとうがつかなくなってしまったのであります。
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さて、少年は、つかまえてはみましたが、さいしょのうちは、この小人をどうしたらいいのか、見当けんとうがつきませんでした。
「じゃ何しろ、馬春堂と伊兵衛から先に片をつけるとしよう。お粂の方は駕屋を洗ってみたらほぼ見当けんとうがつくだろうから、そう急ぐにも当るまい」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さァ自分じぶんにはさっぱりその見当けんとうがつきませぬが、指導役しどうやくのおじいさんのおはなしでは、あれでも現世げんせの三十ねんくらいにはあたるであろうとのことでございました。
ただだまって一本松の方を見ているのは、そこまでの距離きょりが、自分たちの計算では見当けんとうがつかなかったからだ。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「これで一廉いっかどの手柄をした積りでいたところが、ちっと見当けんとうが狂いましたよ」と、半七老人は額をなでながら笑い出した。「まあ、だんだんに話しましょう」
半七捕物帳:36 冬の金魚 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かねて見当けんとうをつけておいた質屋しちやの蔵へ行って、その戸口で術をほどこしますと、不思議にも、戸と壁とのわずかな隙間すきまから、すーっと中にはいり込むことが出来ました。
泥坊 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
逃がしたのは残念だが、見当けんとうのついたのは喜ばしい。
目測もくそくで岸までは、約百メートルの見当けんとうだ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
けれどもその呑みかけているのが何であるかは、握りの先が丸くすべっこくけずられているので、かえるだか鶏卵たまごだか誰にも見当けんとうがつかなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし、これからさき、どのくらいのあいだ、このアシとどろの岸とを、鳥たちがじぶんのものとしていられるかは、ちょっと見当けんとうがつきません。
弟はすみっこにすわって、じぶんもその話をきいているのですが、それがなんのことやら、さっぱり見当けんとうがつきません。
おじさんは、それがなんのおとであるか見当けんとうがつかないので、賢二けんじくんのにいさんか、ねえさんかが子供こども活動写真かつどうしゃしんでもやっているかとおもったのでした。
北風にたこは上がる (新字新仮名) / 小川未明(著)
指差ゆびさしをして卜斎ぼくさいの顔を見あげたが、その卜斎は、蛾次郎がじろうとは、まるで見当けんとうちがいなほうに目をすえているのであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うへえ、やっぱりそうか。もうすこしで戸まどいするところだった。なんしろこうきれいに焼けちまっちゃ見当けんとうがつきやしない。じゃあ、アバよ」
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その街道かいどうくらいつづいているかとおたずねですか……さァどれくらい道程みちのりかは、ちょっと見当けんとうがつきかねますが、よほどとおいことだけたしかでございます。
すすきや雑草をかきわけて、声のした方角へたどって行ったが、ふだんでもめったにはいったことのない草原で、しかも夜なかのことであるから、父にも確かに見当けんとうはつかない。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ところが、紳士はとても巧妙で、トニイにはどうしても見当けんとうがつきませんでした。とったと思っていると、一枚もとっていません。まだとらないと思ってると、四五枚ポケットにしまいこんでいます。
街の少年 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
始めは何の音ともまたどこから来るとも判然はっきりした見当けんとうがつかなかったが、聞いているうちに、だんだん耳の中へまとまった観念ができてきた。
変な音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
にんおとこは、おもおもいのことをいいました。しかし、そのたからのはいっているはこは、どこにあるものか、まったく見当けんとうすらつかなかったのであります。
三つのかぎ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「まあ、そんな見当けんとうだな。どうしてもまた、五十両ばかりることができちゃって、くれじゃああるし、弱ってるんだ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なぜだか、われわれには、まだ分っていない。自分たちの姿をわれわれに見せることを極端きょくたんにきらっているのだろうが、なぜそうなんだか見当けんとうがつかない」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
くれなきゃ、おらの金がいくらあるだか、ちゃんとわかるになあ。これじゃ、手あたりしだいにねじこんだやつが、いくらになるのか、見当けんとうもつきゃあしねえ。
その時は隠居もかなり激しく怒った様子で、お亀も蒼い顔をしていたというから、その喧嘩がもとでこんな事になったらしいが、どんな喧嘩をしたのか誰も知らねえから見当けんとうが付かねえ。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そうして鼓をんだ。自分は少し待ってくれと頼んだ。第一彼がどこいらで鼓を打つか見当けんとうがつかないからちょっと打ち合せをしたい。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)