蔬菜そさい)” の例文
ゆるいかゆと、つぶした蔬菜そさいであるが、この頃ではあごがうまく動かないとみえ、口からこぼしたりするので、ずいぶん時間がかかる。
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
満洲に働く人々の家庭生活において、住居と同じように、あるいはそれ以上に切実な問題は、冬期の生鮮蔬菜そさいの貯蔵の問題である。
満洲通信 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
あぜ玉蜀黍とうもろこしの一列で小さく仕切られている畑地畑地からは甘い糖性のにおいがして、前菜の卓のように蔬菜そさいを盛りあつめている。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しんをとめるものは心をとめ、肥料のやり時、中耕の加減かげんも、兎やら角やら先生なしにやって行ける。毎年わし蔬菜そさい花卉かきたね何円なんえんと云う程買う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それよりもむしろ東京という都会に接する近在の農村では、東京で消化し得る果物、蔬菜そさい、その他生魚等の生産をはかる方が有利であろうと思う。
私の小売商道 (新字新仮名) / 相馬愛蔵(著)
しかいづれも發汗はつかんともなうてかつしたくちさわやかな蔬菜そさいあぢほつしないものはない。貧苦ひんくなやんでさうして蔬菜そさい缺乏けつばふかんじてるものは勘次かんじのみではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それから今日の農芸や園芸は在来の春夏秋冬のうちに草花や果物や蔬菜そさいなどを収められぬ位に発達してゐる。
発句私見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ことしの夏、雨といっしょに、硝酸アムモニヤをみなさんの沼ばたけや蔬菜そさいばたけに降らせますから、肥料を使うかたは、その分を入れて計算してください。
グスコーブドリの伝記 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その魚はかつては海で泳いでいたものを、漁師ぎょしがとって、そして人がそれを買ってお蔬菜そさいにして食って、その頭を捨てた。そこへ青蠅あおはえが飛んで来て食っているのである。
念仏と生活 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
人畜の食料となる果実・蔬菜そさい・穀物・牧草等を成長せしめ、木材を成長せしめるすべての土地、住宅・公共の建築物・鉱山の建設物・工場・店舗等が建設せられる土地
きんという植物は元来がんらいはたけに作る蔬菜そさいの名であって、また菫菜きんさいとも、旱菫かんきんとも、旱芹かんきんともいわれている。中国でも作っていれば、また朝鮮にも栽培せられて食用にしている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
なほ、近所の百姓たちに簡便に出来る蔬菜そさいの速成栽培のやりかたを教へたり、子供のある家では子供の内職として家鴨あひるを飼ふやうにといふやうな事を奨励してあるいたりした。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
段〻と左へ燈光ともしびを移すと、大中小それぞれの民家があり、老人としよりや若いものや、蔬菜そさいになっているものもあれば、かさを張らせて威張いばって馬にっている官人かんじんのようなものもあり
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
アオヤ 栽培する蔬菜そさいにも青物という名を延長し、これをひさぐ店を青物屋ということは、東日本一般の風であったが、東京などはいつの間にかこれをヤオヤというようになった。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
道釈どうしゃく人物、花鳥、動物、雲鶴うんかく、竜、蔬菜そさい図、等が描かれてあります、その群青ぐんじょう、朱、金銀泥、あい、などの色調は、さも支那らしい色調であって、大変美しい効果のものであります
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
そしてわずかに発芽する蔬菜そさいのたぐいを順次に生に忠実な虫に供養するまでである。勿論もちろん厨房ちゅうぼうの助に成ろうはずはない。こんな有様であるから田園生活なんどは毛頭もうとう思いも寄らぬことである。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
料理に一番大事なことといえば、それは材料のよしあしをることである。材料のさかな、あるいは蔬菜そさいなど、優れてよいものを用いる場合は、料理は、おのずから易々いいたるものである。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
辻立つじだちから引き揚げて帰ると、そのままの姿で玄米こめかしぎ、薪をわり、また、畠の芋や蔬菜そさいなどってきて——ともあれ大家族の晩飯のしたくに、夕煙りをにぎわい立てているのだった。
こう云う風な生物なまものの多い、しかも田舎の割烹店かっぽうてんで作るおさだまりの会席料理などよりは、この家の台所でこしらえる新鮮な蔬菜そさいの煮付けの方が食べたかったのであるが、試みにたいの刺身にはしを着けて見ると
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おそらくは患者たちの手で作られているのであろう、水々しい蔬菜そさい類の青葉が眼の届かぬかなたまでも続いていた。患者の住んでいる家はどこに在るのかと注意して見たが、一軒も見当たらなかった。
いのちの初夜 (新字新仮名) / 北条民雄(著)
厳寒地の生鮮蔬菜そさいの貯蔵の問題は、満州などでも大分騒がれているようであるが、樺太の北のはてではどうなっているのであろう。
ツンドラへの旅 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
庭はずれに菜園を作り、二人で蔬菜そさいを育てたり、思いついては庭前の松の枝をそろえたりする他に、なにをこれという仕事もなく気持も動かない。
初蕾 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ういふ理由わけ比較的ひかくてき餘裕よゆうのある百姓ひやくしやうよりも貧乏びんばふ百姓ひやくしやうは十ぶんはやかも數次しば/″\新鮮しんせん蔬菜そさいあぢあふのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
四 これは田園でんえん新鮮しんせん産物さんぶつである。われらは田園の風と光の中からつややかな果実かじつや、青い蔬菜そさいといっしょにこれらの心象スケッチを世間せけんに提供するものである。
帰宅後、電燈の点じ難く、食糧の乏しきを告げんことを惧れ、蝋燭らふそく米穀べいこく蔬菜そさい罐詰くわんづめの類を買ひ集めしむ。
こういう山間の村において、雑事に栽培蔬菜そさいを用い始めたのは古いことではあるまい。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
東京が段々だんだん西へ寄って来て、豊多摩とよたま荏原えばらの諸郡は追々市外宅地や工場等の場所になり、以前もっぱ穀作こくさく養蚕ようさんでやって居た北多摩郡が豊多摩荏原にかわって蔬菜そさい園芸品えんげいひんを作る様になり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
一升の小豆あずきか、一籠ひとかご蔬菜そさいか、或いは一本の木材に過ぎないものであったかもしれないが、名もない田舎の郷士だの田野の民が、伝手つてを求めて、ひそかに御所へ献納をねがい出ているためしも多い。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菊萵苣きくぢさと和名はついているが、原名のアンディーヴと呼ぶ方が食通の間には通りがよいようである。その蔬菜そさいが姉娘のお千代の手で水洗いされざるで水を切って部屋のまん中の台俎板だいまないたの上に置かれた。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
蔬菜そさい市場、家禽市場などがこれである。
蔬菜そさいは新鮮入手に努力すべし
日本料理の基礎観念 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
……あれは畑いじりが好きで蔬菜そさい物を二たんも作っていますが、畑仕事をするときや、お役の馬草刈りなどにはこれを冠ります、頭に載せるものだから清浄な心がこもっていなければ
日本婦道記:萱笠 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ぱんにさうではあるがこと勘次かんじつくられた蔬菜そさいすべ成熟せいじゆくおくれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
余等が帝劇のハムレットに喜憂きゆうそそいで居る間に、北多摩きたたまでは地が真白になる程雹が降った。余が畑の小麦こむぎも大分こぼれた。隣字となりあざでは、麦はたねがなくなり、くわ蔬菜そさいも青い物全滅ぜんめつ惨状さんじょううた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
まだ中に蔬菜そさいが残っている紙袋をお絹の前の台俎板だいまないたほうり出した。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
蔬菜そさい
料理メモ (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)