だて)” の例文
ところが困つた事には、このお医者がエマアソンを読まうとすると、きまつたやうに其処そこへ飛び込むで来て、邪魔だてする者がある。
岸の、弓形の、その椰子の並木路を、二頭だての馬車や、一頭立の潚洒しょうしゃな軽い馬車が、しっきりなしに通っている。めずらしい自動車も通る。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ロダン先生の馬車に乗るのは名誉だと云つて皆の心はおどつた。しかし馬車は随分質素な一頭だてで、張つた羅紗の処処ところどころ擦れ切れたのが目に附く。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
だから、何も洗いだてをして、どうの、こうのと、詮議立せんぎだてをするんじゃあないけれども、今来る途中で、松のすしが、妙なことをいってあてこすったよ。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
穀蔵に広い二階だての物置小屋、——其階下したが土間になつてゐて、稲扱いねこきの日には、二十人近くの男女が口から出放題の戯談じようだんやら唄やらで賑つたものだ。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「馬鹿なッ、若し僕が真犯人であったら、一目で分るそんな兇器を、死骸の胸に残して置くものですか。それは却て、僕の無実を証拠だてているのだ」
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それじゃあおまえあんまりというものだよ、何もわたし達あおまえの叔母おばさんに告口いつけぐちでもしやしまいし、そんなにかくだてをしなくってもいいじゃあないか。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
父は官を辞したのち商となり、その年の春頃から上海の或会社の事務を監督しておられたので、埠頭に立っていた大勢の人に迎えられ、二頭だての箱馬車に乗った。
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
八「手前は盲目かも知れん、また此の者が何うしたか存ぜんけれども、予が服へ斯様に泥を附けて、其の上に理窟を申し、杖を以て手向いだてをすれば許さんぞ」
ラフマニノフのレコードは、普通『前奏曲=嬰ハ短調』と『三頭だてそり』だけでも事足りるだろう。協奏曲やソナタを蒐集に加えるのは特別な興味を持った人だけでいい。
ここまで追いつめられながら、まだ隠しだてをしようとはさすがの自分にも道理と思えなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
づ今夜は帰つてくれとて手を取つて引出ひきいだすやうなるも事あらだてじの親の慈悲、阿関はこれまでの身と覚悟してお父様とつさん、お母様つかさん、今夜の事はこれ限り、帰りまするからは私は原田の妻なり
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さっそく馭者台の下から何やら灰色の羅紗の襤褸ぼろをひっぱりだして袖をとおし、しっかり手綱をつかむなり、彼のお説教を聞きながら好い気持に疲れてよたよたと脚を運んでいた三頭だての馬を
先生箇条だてをした試験をおうけになりましたね。
「いいえ、異なことをいうんじゃあない、隠しだてをされてはおかしくないよ、お前、松のすしは一体どうしたんだえ、」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
両側とも菜飯田楽なめしでんがく行燈あんどうを出した二階だての料理屋と、往来おうらいせばむるほどに立連たちつらなった葭簀張よしずばり掛茶屋かけぢゃや
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
早く其の刀を取返し、あだを討って御帰参になるようにして下せえ、今お前がいう通り、主人と知って刃向はむけだてをした丈助だから、磔刑はりつけに上っても飽き足らねえ奴だが
それは原氏が旅へ出ると、いつも無益やくざな買物ばかりするので、成るべくそばにゐてだてして欲しいといふ事なのだ。高橋氏は頭のなかに、原夫人の険しい顔を思ひ浮べた。
「あらっしゃいましょうより、いらっしゃいましょうの方が聞きいいよ、ねえ苦沙弥君くしゃみくん」とまた迷亭がとがだてをすると主人は「どっちでも同じ事だ」と気のない返事をする。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今夜こんやかへつてれとてつて引出ひきいだすやうなるもことあらだてじのおや慈悲じひ阿關おせきはこれまでの覺悟かくごしてお父樣とつさん、お母樣つかさん今夜こんやことはこれかぎり、かへりまするからはわたし原田はらだつまなり
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さしつむしゃくおさえて御顔打守うちまもりしに、のびやかなる御気象、とがだてもし玉わざるのみか何の苦もなくさらりとらちあき、重々の御恩にのうて余る甲斐かいなき身、せめて肩め脚さすれとでも僕使つかい玉わばまだしも
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
小紅屋のやっこたいらの茶目が、わッ、とおどかして飛出す、とお千世が云ったはその溝端。——稲葉家は真向うの細い露地。片側だて四軒目で、一番の奥である。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余が桜の杖にあごささえて真正面を見ていると、はるかに対岸の往来おうらいい廻る霧の影は次第に濃くなって五階だての町続きの下からぜんぜんこの揺曳たなびくもののうちに薄れ去って来る。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二頭だての箱馬車が電車を追抜けて行った。左側は車の窓からほりの景色が絵のように見える。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
別にとがだてもしないが、同じ持つて帰るなら、もつと美しい物を見つけて欲しかつた。
汝をおっ殺すべえと思ってるところへ、汝が来るてえのはばちだ、只た一人の忰を親の身として殺したんだぞ野郎、御主人さまへ刃向はむけだてをしたんだから、汝は磔刑はりつけにあがる程の悪党だが
諸慾しよよくくほどまゐりますから、それは/\不足ふそくだらけで、それにわたし生意氣なまいきですものだからつひ/\心安こゝろやすだてに旦那だんなさまがそとあそばすことにまでくちして、うも貴郎あなたわたしにかくしだてあそばして
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
という時、二枚だてのその障子の引手の破目やぶれめから仇々あだあだしい目が二ツ、頬のあたりがほの見えた。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すべて将軍家とか、大家たいけの檀那方とかいふものは、出入の者が白い徳利を持つてゐようと、短銃ピストルを持つてゐようと、成るべく見て見ぬ振をしなければならぬ。もしかとがだてをして
舞台の道具だてはそのまま役者絵の背景に移され布局上最も重大なる一要素となりぬ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一体殿様だの、物特だのが何か大それた事でも仕出来しでかさうとする時には、次のからよく人がだてに出て来るもので、それが二千石の家老であらうが、篆刻家であらうが少しの差支もない。
今後これからは誰一人間違つた事をだてして呉れるものも無くなるだらう
かくだてをする友人には随分気味を悪がられた程の人だ。
と、たつだてをしたといふ事だ。