トップ
>
空家
>
あきや
ふりがな文庫
“
空家
(
あきや
)” の例文
其間
(
そのあいだ
)
に村人の話を聞くと、大紙房と小紙房との
村境
(
むらざかい
)
に一間の
空家
(
あきや
)
があつて十数年来
誰
(
たれ
)
も住まぬ。それは『
鬼
(
き
)
』が
祟
(
たたり
)
を
作
(
な
)
す為だと云ふ。
雨夜の怪談
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
空家
(
あきや
)
へ残して来た、黒と灰色との
斑
(
まだら
)
の毛並が、
老人
(
としより
)
のゴマシオ頭のように
小汚
(
こぎた
)
ならしくなってしまっていた、
老猫
(
おいねこ
)
のことがうかんだ。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
おもての雨戸はすっかり破られて、
家内
(
なか
)
も、
空家
(
あきや
)
のようになっていた。ところどころ壁まで落ちて、まるで半倒壊のありさまだった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
銀座の
大通
(
おほどう
)
りに
空家
(
あきや
)
を見るは、
帝都
(
ていと
)
の
体面
(
たいめん
)
に関すと
被説候人有之候
(
とかれそろひとこれありそろ
)
へども、これは
今更
(
いまさら
)
の事に
候
(
そろ
)
はず、
東京
(
とうけふ
)
闢
(
ひら
)
けて銀座の
大通
(
おほどほ
)
りの
如
(
ごと
)
く
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
それは近世の日本染織界に起った一大悲劇でありました。昔あれほど忙しく働いた大倉庫は、まるで
空家
(
あきや
)
のように荒れ始めました。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
▼ もっと見る
隅の方についている門が入り口であろうが、掛け金や錠前らしいものもなければ、
呼鈴
(
ベル
)
さえもない。これは
空家
(
あきや
)
に相違ないと私は思った。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
が、心がけては居たのだが、
空家
(
あきや
)
、せめて二間位の空間と思つても、それすらありさうになかつた。困つて了つて宿の内儀に話をすると
札幌
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
空家
(
あきや
)
の感じだ。腕時計を見た。九時を少しすぎている。外出しているのかしら。まさか違約するはずはない。何か事故が起ったのだろうか。
女妖:01 前篇
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
かあいいおじょうちゃんは、今まで
空家
(
あきや
)
だったその家に住みこみました。もちろん、お母さんや
書生
(
しょせい
)
さんもいっしょです。
赤とんぼ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
今度は声を出して案内を
乞
(
こ
)
うて見た。依然、何の反響もない。留守なのかしら
空家
(
あきや
)
なのかしらと考えているうちに私は多少不気味になって来た。
西班牙犬の家:(夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇)
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
屋敷の土べいの一所が、長方形にくり抜けると露路であり、その向こう側に
空家
(
あきや
)
があり、空家の塀もくり抜かれていて、開閉自在となっていた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
また
空家
(
あきや
)
が沢山ありました。玄関から高い窓にまで
蔦蔓
(
つたかづら
)
が登つて、門の石柱の上では焼物の唐獅子が番をしてゐました。
文化村を襲つた子ども
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
清光園と云つて浴客の為に作られた丘上の遊園地の一隅に、小さな
空家
(
あきや
)
があつて、亨一はその家を借りて移り住んだ。
計画
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
夜通し
鉦太鼓
(
かねたいこ
)
を鳴らしていた屋敷のうちが、今はひっそりとして
空家
(
あきや
)
かと思われるほどである。門の
扉
(
とびら
)
は
鎖
(
とざ
)
してある。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
昼間の
空家
(
あきや
)
は淋しい、薄い人の影があそこにもこゝにもたゝずんでいるようで、寒さがビンビンこたえて来る。
放浪記(初出)
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「番場町の家は十日も前から
空家
(
あきや
)
ですよ。與三郎に捨てられて、何處へ行つたか、町内の者にもわかりません」
銭形平次捕物控:319 真珠太夫
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ただ、一軒、入口の
硝子
(
ガラス
)
が、めちゃめちゃに
壊
(
こわ
)
れている
空家
(
あきや
)
が目についた。どうもその家が、ドロレス夫人の宿だったように思うのであるが、入口の壁には
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
引越しあとの
空家
(
あきや
)
は総じて立派なものでは無いが、彼等はわが
有
(
もの
)
になった
家
(
うち
)
のあまりの不潔に胸をついた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
優秀者のために使用され優秀者から見捨てられた語のあるものは、あたかも
空家
(
あきや
)
のようなものであって、優秀者が立ち去ったあとには、新しい精力が住んでいる。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そうしてそれがことごとく西洋館である。しかも三分の一は
半建
(
はんだて
)
のまま
雨露
(
あめつゆ
)
に
曝
(
さら
)
されている。他の三分の一は
空家
(
あきや
)
である。残る三分の一には無論人が住んでいる。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何
(
なに
)
、そんな
処
(
ところ
)
にお
浦
(
うら
)
が
居
(
ゐ
)
るか、と……
詰
(
つま
)
らん
事
(
こと
)
を——お
浦
(
うら
)
の
居処
(
ゐどころ
)
は
居処
(
ゐどころ
)
で
話
(
はなし
)
が
違
(
ちが
)
う。
空家
(
あきや
)
を
探
(
さが
)
すのは
私
(
わたし
)
が
探
(
さが
)
して
私
(
わたし
)
が
其処
(
そこ
)
へ
入
(
はい
)
るんだ。——
所帯
(
しよたい
)
を
持
(
も
)
つのぢやない。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そうなくてさえ薄暗い六畳二間ががらんとして荷物を運び出した後がまるで
空家
(
あきや
)
のように荒れていた。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
遊んで居てもいけないからと云うので、今度商法をね……当節は兎角商法
流行
(
ばやり
)
で、遠州の方から
葉茶
(
はぢゃ
)
を送ってくれると云うので、
蠣殻町
(
かきがらちょう
)
に
空家
(
あきや
)
が有ったもんだから
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
この家が
空家
(
あきや
)
であることは前から知っていたが、今入ってみると、
寂然
(
ひっそり
)
していてカタとの物音もないのと、あやめも分かぬ真の闇に、一種異様な気味わるさを感じた。
空家
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
「向うの
空家
(
あきや
)
の地下に貯蔵してあるのを発見したんです。つまり……是が怪鳥事件の原因なんです」
廃灯台の怪鳥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこでよく見ると、この別荘風の建物は最近二十年ぐらいは
空家
(
あきや
)
になっていたらしく、門は大きくひらいたままで腐っていて、草は路を埋めるように生い茂っていました。
世界怪談名作集:15 幽霊
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
小径に沿うては
田圃
(
たんぼ
)
を
埋立
(
うめた
)
てた
空地
(
あきち
)
に、新しい
貸長屋
(
かしながや
)
がまだ
空家
(
あきや
)
のままに
立並
(
たちなら
)
んだ処もある。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
空家
(
あきや
)
の庭とか、土蔵の裏とかに限るようだから、私の座敷は妙に空家臭くなるのであった。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
こんな
空家
(
あきや
)
、気にいるもいらないも、ないじゃないの……でも、人間に疲れて、ひとりになりたくなると、朝でも夜中でも、東京から車をとばしてきて、この家へ入りこんで
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
例もの通り
空家
(
あきや
)
のやうに靜かで、太政官の大きな姿は窓にも入口にも現はれなかつた。
太政官
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
二三日
空家
(
あきや
)
になっていたのにも係わらず、台所がきれいにふき
掃除
(
そうじ
)
がされていて、
布巾
(
ふきん
)
などが
清々
(
すがすが
)
しくからからにかわかしてかけてあったりするのは一々葉子の目を快く刺激した。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それから幾週間も
空家
(
あきや
)
になっていたのだから、ストーブの火をよくおこしてくれ。寝床へも空気を入れるようにしてくれ。もちろん、そこに
蝋燭
(
ろうそく
)
や
焚
(
た
)
き物があるかどうだか見てくれ。
世界怪談名作集:02 貸家
(新字新仮名)
/
エドワード・ジョージ・アール・ブルワー・リットン
(著)
でも、灰色ネズミたちの数がふえてきますと、だんだん
大胆
(
だいたん
)
になって、町なかまではいってくるようになりました。さいしょは、黒ネズミたちのすてた古い
空家
(
あきや
)
に、ひっこしました。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
興行の間だけ、土地の太夫元が
空家
(
あきや
)
を借りてあてがってくれた、嵐粂吉の住居です。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もと西隣の行者が住んでいた家は、今も尚お借り手がなくて
空家
(
あきや
)
であった。東隣の小学校教員の家は、はや雨戸を閉めてしまった。真暗な家の中から周蔵の苦しんでうめく声が聞える。
黄色い晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
何やら氣が
退
(
ひ
)
けて、甚く其處らを憚りながら、急足で長屋の通路を通り抜けると……兩側に十軒の長屋が四軒まで
空家
(
あきや
)
になってゐて、古くなツた貸家札は、風に剥がれて落ちさうになツてゐた。
昔の女
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
本所
(
ほんじょ
)
。鎌倉の病室。
五反田
(
ごたんだ
)
。
同朋町
(
どうほうちょう
)
。
和泉町
(
いずみちょう
)
。
柏木
(
かしわぎ
)
。
新富町
(
しんとみちょう
)
。八丁堀。
白金三光町
(
しろがねさんこうちょう
)
。この白金三光町の大きな
空家
(
あきや
)
の、離れの一室で私は「思い出」などを書いていた。
天沼
(
あまぬま
)
三丁目。天沼一丁目。
十五年間
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
この裏どなりが
空家
(
あきや
)
だつたときの屋根下へ立つてゐた事もありました。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
自然
競
(
せ
)
りあげられて、一台千円などという法外な値となります。向側は何事もなくて、立派な家が並んでいます。そこの人たちはそれぞれ地方などへ疎開して、
空家
(
あきや
)
に留守番だけがいるのでした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
長屋の一軒で、六畳、四畳半、三畳、の三間ある平屋だが、その荒廃のさまは
空家
(
あきや
)
同然といってよい。調度類はほとんどなく、襖、障子は破れ放題、ガラス戸のガラスも、満足なのは、幾枚もない。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
本当の家は京都の
今出川
(
いまでがわ
)
にあるが、ここでわしのために定めてくれた家は、今まで
空家
(
あきや
)
になっていた——この幽霊の出そうな空屋敷に、いわば座敷牢といったようなものに、わしはひとり納められて
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「
空家
(
あきや
)
のようにしては置かれまいっちぇ」
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
空家
(
あきや
)
の
傀儡踊
(
あやつり
)
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
長庵はかく低声に唄いながら、その、夕方になっても未だ灯もつけない、
空家
(
あきや
)
同然のおのが住居の中を、珍しそうに見廻している。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
以前は当主の父の隠居所で、今は
空家
(
あきや
)
になっているのを、鷲撃ちの時節には手入れや掃除をして、出張る役人に寝泊りさせるのを例としていた。
鷲
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
足利の
栄町
(
さかえちょう
)
六十三番地に、ちょっとした
空家
(
あきや
)
が有りましたから、これを借受け、
飯事世帯
(
まゝごとしょたい
)
のように小瀧と二人で暮して居りましたが、小瀧は何か旨い物が
喰
(
た
)
べたいとか
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
露路へはいりながら、しどい
場処
(
ところ
)
ですといって番地と表札をさがしたが、西川鉄五郎の家はどうしても知れないので
空家
(
あきや
)
のような家で聞くと、細い細い声で返事をした。
旧聞日本橋:03 蕎麦屋の利久
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
近頃は両側へ
長家
(
ながや
)
が建ったので昔ほど
淋
(
さみ
)
しくはないが、その長家が左右共
闃然
(
げきぜん
)
として
空家
(
あきや
)
のように見えるのは余り気持のいいものではない。貧民に活動はつき物である。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
たましいのない
空家
(
あきや
)
にすることができる人、それが完全にできる人ほど、上等の霊媒だそうです。
ふしぎ国探検
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
もう、これからは、この家は
空家
(
あきや
)
になるのかな——赤とんぼは、しずかに首をかたむけました。
赤とんぼ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
空
常用漢字
小1
部首:⽳
8画
家
常用漢字
小2
部首:⼧
10画
“空”で始まる語句
空
空地
空虚
空想
空洞
空腹
空気
空嘯
空手
空蝉