やまい)” の例文
高辛氏こうしんしの時代に、王宮にいる老婦人が久しく耳のやまいにかかって医師の治療を受けると、医師はその耳から大きなまゆのごとき虫を取り出した。
シテ酒家ニ付セ使メズ/老後功名古暦ノ如シ/酔来顔色唐花ノごとシ/東風料峭トシテ天街遠ク/やまいシテタ下沢車ニル〕
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
父母病弱なる者には父母のやまいを憂えよと言い、敬なき者には父母を敬せよと説き、愛嬌なきものには色をやわらげて仕えるのが第一だと教える。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
燕王此の勢を、国に帰れるよりやまいたくして出でず、これを久しゅうして遂にやまいあつしと称し、以て一時の視聴をけんとせり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
酷いんですとも! でもまあ、氷嚢を七ツと聞いて、やまいに対してほとんど八陣のそなえだ。いかに何でも、と思ったが不可いけない。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たとえ漢中の張魯が、わが国にあだをなすとも、それは疥癬かいせん(皮膚病)のやまいにすぎぬ。けれど玄徳を引き入れるのは、これ心腹の大患です。不治の病を
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われら日本人は癲癇と聞くと、ただ白い泡を連想するに過ぎないが、西洋では古くこれを神聖なるやまいとなえていた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
末文に至り中にも智恵の浅き故に五のやまいおこると言うは、智恵浅きが故に智恵浅しと言うに異ならず、前後文を成さずと雖も、文字上の細論はしばら
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
前なる父がうなじ白髪しらがを見つめて、浪子は思いに沈みぬ。良人おっとに別れ、不治のやまいをいだいて、父に伴なわるるこの遊びを、うれしといわんか、かなしと思わんか。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
伯牛はくぎゅうやまいあり、子これを問い、まどより其の手を執りて曰く、之をうしなわん、命なるかな、斯の人にして斯の疾あるや、斯の人にして斯の疾あるやと。——雍也篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
たゞぼく心配しんぱいでならぬは家内かない——だ。ことほうべにしたようになつて呼吸こきうせわしくなる。ぼくこれるのがじつつらい。先生せんせい家内かないおなやまいのものが挑動いらだとき呼吸こきうきいことがあるかネ。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
縷紅新草るこうしんそう」は、先生の生前発表せられし最後のものにして、その完成につくくされし努力は既にやまいを内に潜めいたる先生の肉体をいたむる事深く、その後再び机にむかわれしこと無かりしという。
遺稿:01 「遺稿」附記 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
日午ひるにはそこなう激しきやまいあり
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
不治のやまいを得たりければ
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
「子やまいはなはだし」の章と並べているのも変であるし、顔淵の語にも痛切に響くものがない。用心して読むべき個所と思われる。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
張昺ちょうへい謝貴しゃきの二人、入りてやまいを問うに、時まさに盛夏に属するに、王はを囲み、身をふるわせて、寒きことはななだしとい、宮中をさえつえつきて行く。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
七月七日の夕べ、片岡中将の邸宅やしきには、人多くつどいて、皆低声こごえにもの言えり。令嬢浪子のやまいあらたまれるなり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
なおよく探究すると、公に言いにくい夫のやまいがいつのまにか妻に感染したのだということまでわかった。
手紙 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五に癩病などの悪きやまいあれば去る。六に多言くちまめにてつつしみなく物いひ過すは、親類とも中悪く成り家乱るゝ物なれば去べし。七には物を盗心ぬすむこころ有るを去る。此七去は皆聖人の教也。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いつぞや召使の婢が金子をかすめて出奔せしに、お艶はいかのがすべきとて、直ちに足留あしどめの法といえるを修したりき、それかあらぬか件の婢は、脱走せし翌日よりにわかに足のやまい起りて
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
洪武十七年、やまいを得て死するや、太祖親しく文をつくりてまつりを致し、岐陽王きようおうに追封し、武靖ぶせいおくりなし、太廟たいびょう配享はいきょうしたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かく見れば孔子のやまいはなはだしということが子路と連関してのみ語られているゆえんも明らかとなるであろう。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
よしこのやまいゆとも一たび絶えし縁は再びつなぐ時なかるべきを感ぜざるにあらざるも、なお二人が心は冥々めいめいうちに通いて、この愛をば何人なんびともつんざくあたわじと心にいて
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
(ああ、われこそは心かたくなに、なさけなく邪慳無道であったずれ。耳うときものの人十倍、心のひがむを、やまいなりとて、神にも人にも許さるべしや。)とおッつけ、慚愧ざんき後悔をするのです。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一 およそ婦人の心様こころさまの悪き病は、やわらしたがわざると、いかりうらむと、人をそしると、ものを妬むと、智恵浅きと也。此五のやまいは十人に七、八は必ず有り。是婦人の男に及ざる所也。自らかえりみいましめてあらためさるべし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
身にはやまいあり、胸にはうれいあり、悪因縁あくいんねんえども去らず、未来に楽しき到着点とうちゃくてんの認めらるるなく、目前に痛き刺激物しげきぶつあり、よくあれども銭なく、望みあれどもえん遠し
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
神職 町にも、村にも、この八里四方、目下もっか疱瘡ほうそうも、はしかもない、何のやまいだ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
滝さん、まあ、こうやって、どうするつもりだねえ。いいえ、知ってるさ。私だって、そうだったが、殊にお前さん銭金ぜにかねに不自由はなし、売ってどうしようというんじゃあない、こりゃやまいなんだ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
縷紅新草るこうしんそう」は、先生の生前発表せられし最後のものにして、その完成につくくされし努力は既にやまいを内に潜めいたる先生の肉体をいたむる事深く、その後再び机にむかわれしこと無かりしという。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(蔦、こう神経が過敏になっちゃ、やまいは重いな。)
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)