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由緒
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ゆいしょ
ふりがな文庫
“
由緒
(
ゆいしょ
)” の例文
いったい吉野の山奥から
熊野
(
くまの
)
へかけた地方には、交通の不便なために古い伝説や
由緒
(
ゆいしょ
)
ある家筋の長く存続しているものが
珍
(
めずら
)
しくない。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
西の京から薬師寺と
唐招提寺
(
とうしょうだいじ
)
へ行く途中の春景色にはじめて接したとき、これがほんとうの
由緒
(
ゆいしょ
)
正しい春というものなのかと思った。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
津崎の家では
往生院
(
おうじょういん
)
を菩提所にしていたが、往生院は
上
(
かみ
)
のご
由緒
(
ゆいしょ
)
のあるお寺だというのではばかって、高琳寺を
死所
(
しにどころ
)
ときめたのである。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それぞれ何らかの
由緒
(
ゆいしょ
)
があって、武蔵の生涯のうちに、たとえ三年か四年の或る間だけでも、彼の手に愛された品であろうと思われる。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あなたの郷里でも同じ事だろうと思いますが、田舎では
由緒
(
ゆいしょ
)
のある家を、相続人があるのに
壊
(
こわ
)
したり売ったりするのは大事件です。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
八王子の
在
(
ざい
)
、高尾山下浅川附近の古い
由緒
(
ゆいしょ
)
ある農家の墓地から買って来た六地蔵の一体だと云う。眼を半眼に開いて、
合掌
(
がっしょう
)
してござる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
江戸の生まれで、
由緒
(
ゆいしょ
)
はなんでござりますやら、兄は御家人くずれ、弟は小ばくちうちの遊び人、どちらにしてもならず者でござります。
右門捕物帖:38 やまがら美人影絵
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
尋ねてみると今日から三日間の「
塩市
(
しおいち
)
」だということ。なお「塩市」とは何だと尋ねてみると、これにはまた一つの歴史的の
由緒
(
ゆいしょ
)
がある。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夜な夜な、
物置
(
ものお
)
きやうまやの中、または青空の下の木のかげにねむったあわれな子どもが、いまは
歴史
(
れきし
)
に
由緒
(
ゆいしょ
)
の深い
古城
(
こじょう
)
の主人であった。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
こんな移り気な弟子があるかと思うと、大阪天王寺町の
由緒
(
ゆいしょ
)
ある仏師の弟で田中栄次郎という人が内弟子になっていました。
幕末維新懐古談:78 谷中時代の弟子のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
路地には往々江戸時代から伝承し
来
(
きた
)
った古い名称がある。即ち
中橋
(
なかばし
)
の
狩野新道
(
かのうじんみち
)
というが如き歴史的
由緒
(
ゆいしょ
)
あるものも
尠
(
すくな
)
くない。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
由緒
(
ゆいしょ
)
のある人——もとより、はじめからそうにらんではいた。
言
(
げん
)
を左右にして身分を明かさないところがなおいっそう、そう思われたのだが。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
なかなか
由緒
(
ゆいしょ
)
のある寺で
委
(
くわ
)
しい事はここで申す必要はありませんから略しますがそこにある坊さんの
舎
(
こや
)
について宿りました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
しかし小児はそんな古い
由緒
(
ゆいしょ
)
を知らない。それに親たちの
心持
(
こころもち
)
までは呑みこめぬ者が多いので、いつしかこの特権は
濫用
(
らんよう
)
せられるようになった。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
いずれ叔母に聞いてみればそれぞれ
由緒
(
ゆいしょ
)
のある貴夫人たちなのであろうけれど、そういう貴夫人たちというものはどんな会話をするものかしらと
恢復期
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
まさか彼が先祖青山道斎のこの村のために建立した
由緒
(
ゆいしょ
)
の深い万福寺を焼き捨てに行くとは
真
(
ま
)
に受けもしなかったが、なお
二人
(
ふたり
)
してそのあとをつけた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
が、その内に困まった事には、少将もいつか康頼と一しょに、神信心を始めたではないか? それも
熊野
(
くまの
)
とか
王子
(
おうじ
)
とか、
由緒
(
ゆいしょ
)
のある神を拝むのではない。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これは
由緒
(
ゆいしょ
)
ある
御方
(
おかた
)
から
母
(
はは
)
が
拝領
(
はいりょう
)
の
懐剣
(
かいけん
)
であるが、そなたの一
生
(
しょう
)
の
慶事
(
よろこび
)
の
紀念
(
きねん
)
に、
守刀
(
まもりがたな
)
としてお
譲
(
ゆず
)
りします。
肌身
(
はだみ
)
離
(
はな
)
さず
大切
(
たいせつ
)
に
所持
(
しょじ
)
してもらいます……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
何につけ
彼
(
か
)
につけ日本の邪魔ばかりをしている憎い奴だと思っていた某大国から、この
由緒
(
ゆいしょ
)
ある途方もない大きな贈物をおくられて、
愕
(
おどろ
)
かぬ者があろうか。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それらの美術品は、どれを見ても、みな
由緒
(
ゆいしょ
)
のある品ばかり、私設博物館といってもいいほどのりっぱさです。
少年探偵団
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
シテ見るとこの「ケイヅ」といふ言葉は誇るべき
由緒
(
ゆいしょ
)
といふやうな事を意味する当時の俗言であつたと見える。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
加うるに
由緒
(
ゆいしょ
)
の深い
寺刹
(
じさつ
)
がどれだけあるでありましょうか。従ってそれらのお寺や信心に
篤
(
あつ
)
い
在家
(
ざいけ
)
で用いる仏具の類や数は並々ならぬものでありましょう。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
「この釜は、」と私はその
由緒
(
ゆいしょ
)
をお尋ねしようとしたが、なんと言っていいのか見当もつかない。「ずいぶん使い古したものでしょう。」まずい事を言った。
不審庵
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そして結局相撲は取らないでおしまいになるのである。どういう
由緒
(
ゆいしょ
)
から起こった行事だか私は知らない。
田園雑感
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
由緒
(
ゆいしょ
)
ある京都の士族に生まれたその人の皮膚は美しかった。それがなおさらその人をあわれにして見せた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
アッシャー一族の血統は非常に
由緒
(
ゆいしょ
)
あるものではあるが、いつの時代にも決して永続する分家を出したことがない、いいかえれば全一族は直系の子孫だけであり
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
何か
由緒
(
ゆいしょ
)
のあるものばかりで、往診に行った時、遠い山中で掘って来たとか、不治と思った患者が全快したお礼に持って来たとかいうようなので、目ぼしいのは
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
(細身の
杖
(
つえ
)
を突き鳴らし、大声で)おお、なんじら、年ふりし
由緒
(
ゆいしょ
)
ある影たちよ。夜ともなれば、この湖の上をさまよう影たちよ。わたしたちを寝入らせてくれ。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
バッハの就任した聖トーマス学校は、十三世紀以来の伝統を有する
由緒
(
ゆいしょ
)
の深いもので、その学生は食物と教育とを支給されて、四つの市立教会の聖歌隊を勤めた。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
型を固定させたという
由緒
(
ゆいしょ
)
付の米国生れの金魚、コメット・ゴールドフィッシュさえ備えられてあった。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
平凡に妻をもらい子を
儲
(
もう
)
けて、
安穏
(
あんのん
)
に一生をくらせたかもしれない、だがこの男はそうはならなかった、三河以来という
由緒
(
ゆいしょ
)
ある家柄と、八百石の禄を捨てたうえ
滝口
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
世々
従
(
じゅ
)
四位下
侍従
(
じじゅう
)
にも進み、
網代
(
あじろ
)
の
輿
(
こし
)
に
爪折
(
つまお
)
り傘を許され、
由緒
(
ゆいしょ
)
の深いりっぱなお身分、そのお方のご家老として、世にときめいた吉田
玄蕃
(
げんば
)
様の一族の長者として
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
附記 五、六年後に、横浜郊外に
由緒
(
ゆいしょ
)
ありげに
御簾
(
みす
)
などさげた小家があった。その家の女主人は隠遁した芳川鎌子で、若い運転手と同棲していると新聞消息子は伝えた。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
御主人様は、この地方では
由緒
(
ゆいしょ
)
ある家柄の御方でいらっしゃいましたが、人の
讒言
(
ざんげん
)
にあって地位も領地も失い、その後はこの野の片隅にわびずまいをしていらっしゃいました。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
何とかいう
氏族
(
うじぞく
)
の
末流
(
まつりゅう
)
に当る
由緒
(
ゆいしょ
)
ある家庭の長男に生れたと信じている私の父が、事実、その頃はまだかなり裕福に暮していた祖父のもとで
我儘
(
わがまま
)
な
若様
(
わかさま
)
風に育てられたところから
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
その鏡の作られた時代や
由緒
(
ゆいしょ
)
について考証や鑑定を求めたが、それは日本で作られたものでない、おそらく支那から渡来したものであろうという以上には、なんの発見もなかったので
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
三輪山と云って人里離れた山中にホコラがあり、三輪神社と称し、奈良朝頃からの
由緒
(
ゆいしょ
)
ある氏神の
由
(
よし
)
だが、
名残
(
なごり
)
をとどめているのは大木の密林ばかり、ホコラはオモチャのように小さい。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
加世子にはやくざな弟が二人もあった。高等教育を受けて、年の若い割に
由緒
(
ゆいしょ
)
のある大きな寺に納まっている末の弟を除くほか、何かというと姉を頼りにするようなものばかりであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
先ず等持院の寓居を想像せよ、京都近郊の田舎に在る、しかも足利歴代の将軍の
位牌
(
いはい
)
木像などの
由緒
(
ゆいしょ
)
ある古い大寺を想像せよ。その大寺の裏がかった処にあるささやかな一間を想像せよ。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
その竹藪は
薙
(
な
)
ぎ倒され、逃げて行く人の勢で、
径
(
みち
)
が自然と
拓
(
ひら
)
かれていた。見上げる樹木もおおかた中空で
削
(
そ
)
ぎとられており、川に添った、この
由緒
(
ゆいしょ
)
ある名園も、今は傷だらけの姿であった。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
まして鵜川は、加賀国にその
由緒
(
ゆいしょ
)
も古い、
白山
(
はくさん
)
神社の末寺なのだ。
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
「
肥前
(
ひぜん
)
大村藩
(
おおむらはん
)
です。昔をいえば、これでも
由緒
(
ゆいしょ
)
正
(
ただ
)
しい侍ですよ」
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
後の文芸協会の
基
(
もと
)
を作った
由緒
(
ゆいしょ
)
づきな家だったそうだ。
早稲田神楽坂
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
尤
(
もっと
)
も私はこの寺の歴史と仏像にはさほど心をひかれない。法隆寺や薬師寺や東大寺に比べると格式もちがうし
由緒
(
ゆいしょ
)
も深いとはいえない。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
「いやいや、この鷲はわたしの
飼
(
か
)
い鳥でもない、
持主
(
もちぬし
)
といえば、
武田家
(
たけだけ
)
にご
由緒
(
ゆいしょ
)
のふかい鳥ゆえ、まず伊那丸君の物とでももうそうか」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ある日、
由緒
(
ゆいしょ
)
ありげな数人のものが、不意にこの猟師小屋へ押しかけて来て、食糧品と猟の
獲物
(
えもの
)
があらば、残らず買ってやるとのことです。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一番仕舞のが普通の華族でやはり昔から大変に
由緒
(
ゆいしょ
)
のある家、あるいはまた国家に功労のあった大臣の子孫らであります。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
この下女はもと
由緒
(
ゆいしょ
)
のあるものだったそうだが、
瓦解
(
がかい
)
のときに
零落
(
れいらく
)
して、つい
奉公
(
ほうこう
)
までするようになったのだと聞いている。だから
婆
(
ばあ
)
さんである。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
九寸五分の柄は、
鮫
(
さめ
)
の皮に金の
留釘
(
とめくぎ
)
を打った、
由緒
(
ゆいしょ
)
ある古物であった。鮫皮の膚ざわりが、冷たくこころよかった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
代りに自分の大小をやろうというのである。しかし蜂谷は、この
金熨斗
(
きんのし
)
付きの大小は蜂谷家で
由緒
(
ゆいしょ
)
のある品だからやらぬと言った。甚五郎はきかなんだ。
佐橋甚五郎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
由
常用漢字
小3
部首:⽥
5画
緒
常用漢字
中学
部首:⽷
14画
“由緒”で始まる語句
由緒付
由緒書
由緒深
由緒因縁