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生憎
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あやにく
ふりがな文庫
“
生憎
(
あやにく
)” の例文
時に兄の
利吒
(
りた
)
は
托鉢
(
たくはつ
)
なして
食
(
し
)
を得んと
城中
(
まち
)
に入りしが、
生憎
(
あやにく
)
布施するものもなかりければ
空鉢
(
くうはつ
)
をもて
還
(
かえ
)
らんとしけるが、
途
(
みち
)
にて弟に
行遇
(
ゆきあ
)
ひたり。
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
かくても貫一は
膝
(
ひざ
)
を
崩
(
くづ
)
さで、
巻莨入
(
まきたばこいれ
)
を
取出
(
とりいだ
)
せしが、
生憎
(
あやにく
)
一本の莨もあらざりければ、手を鳴さんとするを、満枝は
先
(
さきん
)
じて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
もみじのような手を胸に、
弥生
(
やよい
)
の花も見ずに過ぎ、若葉の風のたよりにも
艪
(
ろ
)
の声にのみ耳を澄ませば、
生憎
(
あやにく
)
待たぬ
時鳥
(
ほととぎす
)
。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
苦悶の上また苦悶あり、一の苦悶を愈さんとすれば、
生憎
(
あやにく
)
に他の苦悶来り、
妾
(
しょう
)
や今実に苦悶の
合囲
(
ごうい
)
の内にあるなり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
彼は
俄
(
にわか
)
に
立止
(
たちどま
)
って声する
方
(
かた
)
を
透
(
すか
)
し
視
(
み
)
たが、
生憎
(
あやにく
)
に暗いので正体は判らぬ。更に耳を
澄
(
すま
)
して窺うと、声は
一人
(
ひとり
)
でない、
尠
(
すくな
)
くも
二人
(
ふたり
)
以上の人が倒れて
苦
(
くるし
)
んでいるらしい。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
ヤッサモッサ
捏返
(
こねかえ
)
している所へ
生憎
(
あやにく
)
な来客、しかも
名打
(
なうて
)
の
長尻
(
ながっちり
)
で、アノ
只今
(
ただいま
)
から団子坂へ参ろうと存じて、という言葉にまで
力瘤
(
ちからこぶ
)
を入れて見ても、まや薬ほども
利
(
き
)
かず
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
みちみち源叔父は、わが帰りの遅かりしゆえ淋しさに堪えざりしか、
夕餉
(
ゆうげ
)
は戸棚に
調
(
ととの
)
えおきしものをなどいいいい行けり。紀州は一言もいわず、
生憎
(
あやにく
)
に嘆息もらすは翁なり。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
左右を見ずして
直
(
ひた
)
あゆみに
為
(
せ
)
しなれども、
生憎
(
あやにく
)
の雨、あやにくの風、鼻緒をさへに踏切りて、
詮
(
せん
)
なき
門下
(
もんした
)
に
紙縷
(
こより
)
を
縷
(
よ
)
る心地、
憂
(
う
)
き事さまざまにどうも
堪
(
た
)
へられぬ思ひの有しに
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
人もさはよか※なりと
怨
(
え
)
じて、掻いくくみて臥しぬる後、いと寒き折などに、唯
単衣
(
ひとえぎぬ
)
ばかりにて、
生憎
(
あやにく
)
がりて……思ひ臥したるに、奥にも外にも、物うち鳴りなどして
恐
(
おそろ
)
しければ
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
結ひ
繞
(
めぐ
)
らしたる生垣の穴より、入らんとすれば
生憎
(
あやにく
)
に、
枳殻
(
からたち
)
の針腹を指すを、
辛
(
かろ
)
うじてくぐりつ。声を知るべに忍びよれば。太き
槐
(
えんじゅ
)
の
樹
(
き
)
に
括
(
くく
)
り付けられて、
蠢動
(
うごめ
)
きゐるは正しくそれなり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
屈
(
かゞ
)
め折角の御入來なれども
眞實
(
まこと
)
に御氣のどく千萬
生憎
(
あやにく
)
只今
(
たゞいま
)
肴
(
さかな
)
は賣切しゆゑ見世を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
出入
(
でいり
)
のものを呼んで戸締りを直そうと思ったら
生憎
(
あやにく
)
、暮で用が立て込んでいて来られない。そのうちに夜になった。仕方がないから、元の通りにしておいて寝る。みんな気味が悪そうである。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
さてわが再び見じとの決心は、
生憎
(
あやにく
)
にまた悉く消え失せたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
妻君「それに
生憎
(
あやにく
)
今日は南京豆の煮たのがあるばかりで外に何の料理も出来ていませんし、魚屋もまだ来ず、家にあるものは
鶏卵
(
たまご
)
位ですから鶏卵で何か
拵
(
こしら
)
えましょうか。中川さん失礼ですが玉子はどうしたのが一番いいでしょう」
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
生憎
(
あやにく
)
さわぐ胸のさき
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
かく言捨てて蒲田は片手して
己
(
おのれ
)
の帯を解かんとすれば、時計の
紐
(
ひも
)
の
生憎
(
あやにく
)
に
絡
(
からま
)
るを、
躁
(
あせ
)
りに躁りて引放さんとす。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
此處
(
こゝ
)
は
大黒屋
(
だいこくや
)
のと
思
(
おも
)
ふ
時
(
とき
)
より
信如
(
しんによ
)
は
物
(
もの
)
の
恐
(
おそ
)
ろしく、
左右
(
さゆう
)
を
見
(
み
)
ずして
直
(
ひた
)
あゆみに
爲
(
せ
)
しなれども、
生憎
(
あやにく
)
の
雨
(
あめ
)
、あやにくの
風
(
かぜ
)
、
鼻緒
(
はなを
)
をさへに
踏切
(
ふみき
)
りて、
詮
(
せん
)
なき
門下
(
もんした
)
に
紙縷
(
こより
)
を
縷
(
よ
)
る
心地
(
こゝち
)
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
それにしても
生憎
(
あやにく
)
に雪が酷い。
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も一時を
凌
(
しの
)
ぐ為に、
彼女
(
かれ
)
は
此
(
こ
)
の
空屋
(
あきや
)
の戸を明けようとすると、
半
(
なかば
)
朽
(
く
)
ちたる雨戸は
折柄
(
おりから
)
の風に煽られて
礑
(
はた
)
と倒れた。お葉は転げるように内へ入った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それで過度の興奮を
忌
(
い
)
んで、一夜の安静を
切
(
せつ
)
に
冀
(
こいねが
)
った。なるべく熟睡したいと心掛けて
瞼
(
まぶた
)
を合せたが、
生憎
(
あやにく
)
眼が
冴
(
さ
)
えて
昨夕
(
ゆうべ
)
よりは却って寐苦しかった。その内夏の夜がぽうと白み渡って来た。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
生憎
(
あやにく
)
誰も心附かん。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
或
(
あるひ
)
は
摧
(
くだ
)
けて死ぬべかりしを、
恙無
(
つつがな
)
きこそ天の
佑
(
たすけ
)
と、彼は数歩の内に宮を追ひしが、流に
浸
(
ひた
)
れる
巌
(
いはほ
)
を
渉
(
わた
)
りて、既に渦巻く
滝津瀬
(
たきつせ
)
に
生憎
(
あやにく
)
! 花は散りかかるを
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
左右を見ずして
直
(
ひた
)
あゆみに爲しなれども、
生憎
(
あやにく
)
の雨、あやにくの風、鼻緒をさへに踏切りて、詮なき門下に紙縷を
縷
(
よ
)
る心地、憂き事さま/″\に何うも堪へられぬ思ひの有しに
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
かえで
生憎
(
あやにく
)
に春彦どのはありあわさず、なんとしたことでござりましょうな。
修禅寺物語
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
人
(
ひと
)
は
知
(
し
)
らじと
自
(
みづか
)
ら
晦
(
くら
)
ませども、
優
(
やさ
)
しき
良人
(
をつと
)
が
心
(
こゝろ
)
ざし
生憎
(
あやにく
)
纒
(
まつ
)
はる
心地
(
こゝち
)
してお
律
(
りつ
)
は
路傍
(
ろばう
)
に
立
(
たち
)
すくみしまゝ、
行
(
ゆ
)
くまいか
行
(
ゆ
)
くまいか、
寧
(
いつそ
)
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つて
行
(
ゆ
)
くまいか、
今日
(
けふ
)
までの
罪
(
つみ
)
は
今日
(
けふ
)
までの
罪
(
つみ
)
うらむらさき
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
過
(
すぎ
)
たるは
及
(
およ
)
ばざる
二人連
(
ふたりづれ
)
とは
生憎
(
あやにく
)
や、
車
(
くるま
)
は
一人乘
(
いちにんの
)
りなるを。
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
“生憎”の意味
《名詞》
(古)ひとえに恨むこと
(出典:Wiktionary)
生
常用漢字
小1
部首:⽣
5画
憎
常用漢字
中学
部首:⼼
14画
“生憎”で始まる語句
生憎様