毛布けつと)” の例文
と呼ばれて毛布けつとの上へ草履を脱いで上つた私達は、お重の中のおはぎをお皿なしに箸で一つ一つ摘んで食べようとしました。小い従兄は
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
初手しよて毛布けつとくるんで、夜路よみち城趾しろあとへ、とおもつたが、——時鳥ほとゝぎすかぬけれども、うするのは、はなれたおうらたましひれたやうで
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雪童子は眼を丘のふもとに落しました。その山裾やますその細い雪みちを、さつきのあか毛布けつとを着た子供が、一しんに山のうちの方へ急いでゐるのでした。
水仙月の四日 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
例の三人が毛布けつとの下でうめいた声が、普通の寐息と違ふ事に気の付いたものも多数あるに違ひない。併し誰一人昨夜の刑の執行者を告げるものはない。
たい容顏きりようほうなれども、いかにもいかにもの田舍風いなかふう午房縞ごぼうじま綿入わたいれにろんなく白木綿しろもめんおびあを毛布けつとひざしたに、まへこゞみにりて兩手りようてかしらをしかとおさへし。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのとき黒装束くろせうぞく覆面ふくめんした怪物くわいぶつが澤村路之助丈えとめぬいたまくうらからあらはれいでヽあか毛布けつとをたれて、姫君ひめぎみ死骸しがいをば金泥きんでいふすまのうらへといていつてしまつた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
胸が惡いとも云ふので、仰向けに寢られるやうにしてやり、胸から足の方へ毛布けつとをかけてやつた。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
はて困つたと腕車の上。薄汚れし毛布けつとに、寒さは寒し、降る雪に、積もつてみても知れてゐる。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
毛布けつとを地に敷き、少し早けれど携へたる牛乳、パン、ジヤム等にて昼食ちうじきし、午憩ひるやすみす。
實際じつさいさむくなつてもるものがないんだと辯解べんかいするので、さむければやむない、夜具やぐるとか、毛布けつとかぶるとかして、當分たうぶん我慢がまんしろとつたはなしを、宗助そうすけ可笑おかしくかへして御米およねわらはした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
どこで毛布けつとを賣りつけることもできはしない。
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
いい毛布けつと
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
こどもは力もつきて、もう起きあがらうとしませんでした。雪童子は笑ひながら、手をのばして、その赤い毛布けつとを上からすつかりかけてやりました。
水仙月の四日 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
をとこは、をんなたましひ時鳥ほとゝぎすつたゆめて、しろ毛布けつとつゝんでらうと血眼ちまなこ追駆おつかまはさう……寐惚面ねぼけづらるやうだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
義雄がお鳥はと見ると、案外平氣で、毛布けつとの中で足は縮めてゐるが、仰向けになつたまま、目をつぶつてゐる。近よつて、わざと大きな聲で他の人々にも聽えるやうに
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
呼んで居た人、席を二三枚の毛布けつとで作つて居る人は、皆金右衛門さんの家の下男でした。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
それから毛布けつとに荷物をくるんで
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
毛布けつとねてむつくり起上おきあがつた——下宿げしゆくかれた避難者ひなんしや濱野君はまのくんが、「げるとめたら落着おちつきませう。いま樣子やうすを。」とがらりと門口かどぐち雨戸あまどけた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひとりの子供が、赤い毛布けつとにくるまつて、しきりにカリメラのことを考へながら、大きな象の頭のかたちをした、雪丘のすそを、せかせかうちの方へ急いで居りました。
水仙月の四日 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ふ/\燈心とうしんともして、板敷いたじきうへ薄縁うすべりべたり、毛布けつとく……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
太市は毛布けつとの赤いズボンをはいた
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
公園こうゑんかこひ草畝くさあぜまくらにして、うちの女中ぢよちうひと毛布けつとにくるまつた。これにとなつて、あの床屋子とこやしが、子供弟子こどもでしづれで、仰向あふむけにたふれてる。わづか一坪ひとつぼたらずのところへ、左右さいうんで、人數にんずである。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まとつた毛布けつとしろつた、ひとつめたい粉蝶ふんてふつてえむとする。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なに、ぢき其處そこだよ。旦那だんな毛布けつとあづかろかい。」
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)