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愛撫
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あいぶ
ふりがな文庫
“
愛撫
(
あいぶ
)” の例文
この愛すべくむじゃきな部下をしみじみと
愛撫
(
あいぶ
)
するようにながめていましたが、いつにもなく右門に似合わない述懐をもらしました。
右門捕物帖:05 笛の秘密
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
お豊は彼の手を片方で握ったまま、片方の手でやさしく
愛撫
(
あいぶ
)
した。お豊の手は熱くて、握り合わせたほうは、じっとり汗ばんでいた。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
無性格のように弱い姉よりもずっと
頼母
(
たのも
)
しく自分を愛して呉れる叔母の
愛撫
(
あいぶ
)
のなかで今一度少女の幸福を味わってから死んで行き度い。
勝ずば
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
かつては美しく
蠱惑
(
こわく
)
にみちて、恋いわたり、男の
愛撫
(
あいぶ
)
に打ちまかせて夜ごとに情炎を燃やした身を、ひっそりと埋めていることだろう。
イオーヌィチ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
ほんに、どのような
宿世
(
すくせ
)
であったか、その晩以来、雪太郎は、菊之丞の手に引き取られて、やさしい
愛撫
(
あいぶ
)
を受ける身となったのだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
▼ もっと見る
時々源氏の不純な
愛撫
(
あいぶ
)
の手が伸ばされようとして困った話などは、だれにも言ってないことであったが、右近は怪しく思っていた。
源氏物語:31 真木柱
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「侘び」の心境するものは、悲哀や
寂寥
(
せきりょう
)
を体感しながら、実はまたその生活を懐かしく、肌身に抱いて沁々と
愛撫
(
あいぶ
)
している心境である。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
そこにある者は幸福の気を呼吸し、生命はよきかおりを発し、自然はすべて純潔と救助と保護と親愛と
愛撫
(
あいぶ
)
と
曙
(
あけぼの
)
とを発散していた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私はたいていそれらの生きものを相手にして時を過し、それらに食物をやったり、それらを
愛撫
(
あいぶ
)
したりするときほど楽しいことはなかった。
黒猫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
彼はそれを
愛撫
(
あいぶ
)
するというよりも、何か器具の光沢を
磨
(
みが
)
いているような錯覚に陥りながら、やがて摩擦は上半身へ移って行く。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
赤馬は上野介の
愛撫
(
あいぶ
)
した彼の乗馬である。江戸から、毎年のように領地へ帰ってくるごとに、彼は一人の従者もつれず領内の巡視に出かける。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
おそらく彼は母親の眼の中に、苦情を言うがいいと勧めるような
愛撫
(
あいぶ
)
を、本能的に感じたのであろう。彼女は彼の方へ両腕を差出して言った。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
強者は道徳を
蹂躙
(
じゅうりん
)
するであろう。弱者は又道徳に
愛撫
(
あいぶ
)
されるであろう。道徳の迫害を受けるものは常に強弱の中間者である。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
おお、あそこの
岩窟
(
がんくつ
)
のなかに据えたならば、等身の、マリア観音そのままだと、モルガンがお雪を
愛撫
(
あいぶ
)
する心は、尊敬をすらともなって来た。
モルガンお雪
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そして、両親の
愛撫
(
あいぶ
)
を、二人っきりで半分ずつとってしまう。にんじんがやって来た時には、もうほとんど、彼の分は残っていないのである。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
又彼女はそれを全幅的に受け入れ、理解し、熱愛した。私の作つた木彫小品を彼女は懐に入れて街を歩いてまで
愛撫
(
あいぶ
)
した。
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
ふと、砂浜での少年との
愛撫
(
あいぶ
)
の記憶がよみがえって、あの夜も砂を
叩
(
たた
)
きつけ怒ったような顔で、逃げるように夜の海に走りこんだ少年を
想
(
おも
)
っていた。
朝のヨット
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
子供のないさびしい人や自分の思うままになる
愛撫
(
あいぶ
)
の対象を人間界に見失った老人などがひたすらに
猫
(
ねこ
)
をかわいがり
ねずみと猫
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
私は彼の方へ接近して行って、この当座の主人である彼に会釈するために、敬意を表するために彼の頭を
愛撫
(
あいぶ
)
した。
西班牙犬の家:(夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇)
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
愛撫
(
あいぶ
)
するだけではあきたらず、それを愛するの余りに、彼は、ギルガメシュ伝説の最古版の粘土板を
噛砕
(
かみくだ
)
き、水に
溶
(
と
)
かして飲んでしまったことがある。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
私は夫のあの
執拗
(
しつよう
)
な、あの変態的な
愛撫
(
あいぶ
)
の仕方にはホトホト当惑するけれども、そういっても彼が熱狂的に私を愛していてくれることは明らかなので
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
太陽の第一
箭
(
せん
)
が雲間を破って空を走った。このとき、次郎の
愛撫
(
あいぶ
)
に身をまかせていたフハンが、両耳をキッと立てて鼻を鳴らすと、
河岸
(
かし
)
を
上手
(
かみて
)
へ走った。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
かつは自分が倉地から同様な狂暴な
愛撫
(
あいぶ
)
を受けたい欲念から、先の事もあとの事も考えずに、現在の可能のすべてを尽くして倉地の要求に応じて行った。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
夫人は久し振に
逢
(
あ
)
った弟をでも、
愛撫
(
あいぶ
)
するように、耳近く口を寄せて
囁
(
ささや
)
いたり、軽く
叱
(
しっ
)
するように言ったりした。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
沢山の麻油や孤踏夫人や又その
愛撫
(
あいぶ
)
を思い出しもしたのであるが、親愛なるものに
訣別
(
けつべつ
)
したがるかたくなな
寂寥
(
せきりょう
)
は、やはりその時も有るには有ったらしい。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
長男のゆえにめったにうけることのない母の
愛撫
(
あいぶ
)
は、満六歳の男の子を勝利感に
酔
(
よ
)
わせた。にこっと笑って何かいおうとすると、並木と八津に見つかった。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
看護婦の目を盗んで、ささやきと
愛撫
(
あいぶ
)
だけで我慢しながら、その我慢のつらさゆえにこそ、ついにこの完全犯罪ともいうべき殺人を計画するにいたったのです。
妻に失恋した男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それは『玉葉』『風雅』の歌のように自然の
愛撫
(
あいぶ
)
から感じられる、静寂な生活のほの温かさでもない。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
すぐ二人の女は彼のいうことを聞き、彼のところへもどって、彼を
愛撫
(
あいぶ
)
し、急いで欠勤届を書いた。
変身
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
が、それよりももっとはげしく彼女の心臓が
鼓動
(
こどう
)
しているのを、その瞬間、私は耳にした。そしてそれが私に、そういう
愛撫
(
あいぶ
)
を、ほんのそのデッサンだけで終らせた。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そうして冷たい飛沫が顔にかかるたびに、半睡の彼には、それが
愛撫
(
あいぶ
)
のように思われるのだった。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
しかりしこうして、同人に一女あり登美という(この年十一歳九カ月)。
愛撫
(
あいぶ
)
至らざることなし。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
するとみのりは不意に立ち上がって、泳ぐような手付きをしながら
柩
(
ひつぎ
)
の
傍
(
そば
)
へ進み寄った。そして、
死骸
(
しがい
)
の上へ最後の
愛撫
(
あいぶ
)
をしていたが、
経帷子
(
きょうかたびら
)
に包まれた腕に触れたとき
宝石の序曲
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
僕を
外
(
そと
)
に置くこと三年、
其
(
その
)
実子なる
秀輔
(
ひですけ
)
のみを
傍
(
かたわら
)
に
愛撫
(
あいぶ
)
すること三年、人間が其天真に帰るべき門、墳墓に
近
(
ちかづ
)
くこと三年、
此
(
この
)
三年の月日は彼をして自然に返らしたのです。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
結婚の
指環
(
ゆびわ
)
を受け取り、愛のすべての形式(きつと彼が注意深く守るであらうが)を忍び、魂はまつたく拔け
殼
(
がら
)
であることを、知ることが出來ようか、彼が與へる
愛撫
(
あいぶ
)
は
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
愛撫
(
あいぶ
)
——これが私の愛の特質らしくも思われる。私は
何人
(
なんぴと
)
に対してもそうした愛をもつ。
母の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
これに反して抽斎は陸を
愛撫
(
あいぶ
)
して、身辺におらせて使役しつつ、或時五百にこういった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それは、今までわしには見せたことのない
恍惚
(
こうこつ
)
が一ぱいに浮いているのだ。どの様にわしが燃え立ち、必死に
愛撫
(
あいぶ
)
しても、ついぞ、見せなかった恍惚の表情がくっきりと残っている。
面
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
彼の愛のたわむれは、どう見ても
熊
(
くま
)
がやさしく
愛撫
(
あいぶ
)
するようなものだったが、ひそひそ声のうわさ話によれば、彼女はまんざら彼の望みをうちくだきもしなかったということだった。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
能面のごとき端正の顔は、月の光の
愛撫
(
あいぶ
)
に
依
(
よ
)
り金属のようにつるつるしていました。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
さう言ふうちにもお樂は、お菊の死骸をかき上げかき上げ、赤ん坊でもあやすやうに、血潮に濡れた肩から、頸筋へ、額にかゝる黒髮のあたりへと、際限もない
愛撫
(
あいぶ
)
を續けるのでした。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
実になんとも言えず
魅惑的
(
みわくてき
)
な、
高飛車
(
たかびしゃ
)
な、
愛撫
(
あいぶ
)
するような、あざ笑うような、しかも
可愛
(
かわい
)
らしい様子があったので、わたしは
驚
(
おどろ
)
きと嬉しさのあまり、あやうく声を立てんばかりになって
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
敵城を前にして、すッかり
野風呂
(
のぶろ
)
であたたまった秀吉は、こうつぶやきつつ、まッ
赤
(
か
)
になった下ッ腹へ、ウン、と、一つ力をいれて、いかにも
愛撫
(
あいぶ
)
するごとくへそのまわりをなではじめた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女はもう一ぺん村瀬の肉体を桃色のラムプのやうに燃え立たせようと試みた。静かな桃色の炎のなかにこの青年を眠り込ませようと
冀
(
こいねが
)
つた。彼女は以前にもまして熱い
愛撫
(
あいぶ
)
を村瀬に与へた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
唯
(
たゞ
)
一人心細き旅路に
上
(
のぼ
)
りけるに、
車中
(
しやちゆう
)
片岡直温
(
かたをかちよくをん
)
氏
(
し
)
が
嫂
(
あによめ
)
某女
(
ぼうぢよ
)
と
同行
(
どうかう
)
せられしに逢ひ、同女が
嬰児
(
えいじ
)
を
懐
(
ふところ
)
に抱きて
愛撫
(
あいぶ
)
一方
(
ひとかた
)
ならざる有様を目撃するにつけても、他人の手に愛児を残す母親の浅ましさ
母となる
(新字旧仮名)
/
福田英子
(著)
こうして、このさかずきを
愛撫
(
あいぶ
)
する
私
(
わたし
)
どもも、いつまでもこの
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
生
(
い
)
きてはいられるのでない。さかずきも
大事
(
だいじ
)
だが、だれの
力
(
ちから
)
でもそれより
大事
(
だいじ
)
な
自分
(
じぶん
)
の
命
(
いのち
)
をどうすることもできないのだ。
さかずきの輪廻
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
鳴咽
(
おえつ
)
する柿丘の声と、
淫
(
みだ
)
らがましい
愛撫
(
あいぶ
)
の言葉をもって
慰
(
なぐさ
)
めはじめた雪子夫人の
艶語
(
えんご
)
とを
其
(
そ
)
の
儘
(
まま
)
、あとに残して、僕はその場をソッと滑るように逃げだすと、
跣足
(
はだし
)
で往来へ飛びだしたのだった。
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この二疋だけは殺し度くないものだと留守の間はよく青年に云いつけ、帰って来れば弥之助手ずから食物を当てがって
愛撫
(
あいぶ
)
をこころみて居ると、さすがによくなずいて弥之助の書斎を離れない。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
二人の生活の
交渉点
(
こうしょうてん
)
へ触れてゆく日になれば、語りたいことや訊きたいことがたくさんあった。三十年以前に死んだ父の末子であった私は、大阪にいる長兄の
愛撫
(
あいぶ
)
で人となったようなものであった。
蒼白い月
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
太祖これを見たまいて、
爾
(
なんじ
)
まことに純孝なり、たゞ子を
亡
(
うしな
)
いて孫を頼む老いたる我をも
念
(
おも
)
わぬことあらじ、と
宣
(
のたま
)
いて、過哀に身を
毀
(
やぶ
)
らぬよう
愛撫
(
あいぶ
)
せられたりという。其の性質の美、推して知るべし。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
“愛撫”の意味
《名詞》
いとおしみ、なでること。愛しみ扱うこと。
(出典:Wiktionary)
“愛撫”の解説
愛撫(あいぶ、en: caress)とは、
優しく、あるいは愛情をこめて、触れたり、さすったりすること。
なでさすってかわいがること。
なでんばかりにかわいがること。
(出典:Wikipedia)
愛
常用漢字
小4
部首:⼼
13画
撫
漢検準1級
部首:⼿
15画
“愛撫”で始まる語句
愛撫者