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恙
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つつが
ふりがな文庫
“
恙
(
つつが
)” の例文
祭はこうして
恙
(
つつが
)
なく終りました。最後に町内を一
繞
(
めぐ
)
りした一団は、元の御神酒所の前へ帰って、ホッとした心持でくつろぎます。
銭形平次捕物控:017 赤い紐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
母上
兄妹
(
けいまい
)
の
恙
(
つつが
)
なきを喜びて、さて時ならぬ帰省の理由かくかくと述べけるに、兄は
最
(
い
)
と感じ入りたる
体
(
てい
)
にて始終耳を傾け居たり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
しかしその御文は
恙
(
つつが
)
なく、御姫様の御手もとまでとどいたものと見えまして、珍しくも今度に限って早速御返事がございました。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一朱銀五つと小銭少しばかりを入れてある紙入れは
恙
(
つつが
)
なくそのふところに残っていて、ほかには何も紛失物はないと女房のお国は申し立てた。
半七捕物帳:45 三つの声
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
其時道に迷ってお困りになっていると、忽然として二頭の神狼が現れ、先に立って御案内をしたので
恙
(
つつが
)
なく御登山なされた。
奥秩父
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
▼ もっと見る
ここ一時間を無事に保たば、
安危
(
あんき
)
の間を
駛
(
は
)
する
観音丸
(
かんのんまる
)
は、
恙
(
つつが
)
なく直江津に
着
(
ちゃく
)
すべきなり。
渠
(
かれ
)
はその全力を尽して浪を
截
(
き
)
りぬ。
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お旅立と
承
(
うけたまわ
)
りながら、何かととりまぎれお留守お見舞もいたしませず、しかしお
恙
(
つつが
)
なくお戻りなされて、喜ばしゅう存じます
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
ソノイマダ交付セザルヲ以テ皆仮ニ民舎ニ館ス。晩ニ際シ諸僚佐来ツテ道路
恙
(
つつが
)
ナカリシヲ賀ス。土浦藩ノ長吏奥田図書来ル。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
扶け起して竹杖にしばりなどせしかば
恙
(
つつが
)
なくて今は二尺ばかりになりぬ。痩せてよろ/\としながら猶燃ゆるが如き紅、しだれていとうつくし。
小園の記
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
ただ今、戻りました。——殿にも、いつもいつもお
恙
(
つつが
)
なく。また
方々
(
かたがた
)
にも、官兵衛の留守中、何くれとなきご忠勤。お礼を
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
このままであなた様も
恙
(
つつが
)
なくお勤めが成就できるとお思いでしょうか、あなた様のお考えも承っておかねばなりませぬ。
花桐
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
その次に来ると今一度謡わせられて、
恙
(
つつが
)
なく
記憶
(
おぼ
)
えていると又一つ新しいのを書いてもらえる。すこし上達して来ると
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
「その
猜疑
(
うたがい
)
は
理
(
ことわり
)
なれど、
僕
(
やつがれ
)
すでに罪を悔い、心を翻へせしからは、などて
卑怯
(
ひきょう
)
なる
挙動
(
ふるまい
)
をせんや。さるにても黄金ぬしは、
怎麼
(
いか
)
にしてかく
恙
(
つつが
)
なきぞ」
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
近き流を見るに、
濁浪
(
だくろう
)
岸を打ちて、堤を破りたるところ少からず。されど稲は皆
恙
(
つつが
)
なし。夜軽井沢の油屋にやどる。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
若し平心を以て射たりしならば則、
恙
(
つつが
)
なからむと、因りて還し投ず。則、其矢落下して、天稚彦の高胸に中りぬ
「ほ」・「うら」から「ほがひ」へ
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
『池北偶談』二六に、〈釈典に三必死あり、いわく人の老病、竹の結実、騾の懐胎、しかるに
康熙
(
こうき
)
某年、旗下人の家に、騾ありて子を生みついに
恙
(
つつが
)
なし〉。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
米国人の歓迎祝砲海上
恙
(
つつが
)
なく
桑港
(
サンフランシスコ
)
に着た。着くやいなや土地の
重立
(
おもだっ
)
たる人々は船まで来て祝意を
表
(
ひょう
)
し、
之
(
これ
)
を歓迎の始めとして、陸上の見物人は
黒山
(
くろやま
)
の如し。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
軽い
驚風
(
きょうふう
)
ということで、その後は
恙
(
つつが
)
なく御成育になり、元服と同時に、相違なく家督相続さしゆるされるむね、お達しがあり、家中一同恐悦に存じておりました。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
詮方なく「天主よ御身のために尽したるミゲル提督ならびに部下の人々を
恙
(
つつが
)
なく故国へ戻らせたまへ」
イノチガケ:――ヨワン・シローテの殉教――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
誰が死んだ彼れが死んだと、自分の一家は
恙
(
つつが
)
なくても、少くとも、知人友人を失わないものはなかったろう。この騒ぎの名残が今日でも東京の電車に跡を
止
(
とど
)
めている。
女婿
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
寛平御記
(
かんぴょうぎょき
)
各一合、
小右記
(
しょうゆうき
)
六合などの
恙
(
つつが
)
なかったことは、不幸中の幸いとも申せるでございましょう。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
此十年余の限りない波瀾にも、最近の大震災にも幸に
恙
(
つつが
)
なく、ここに「みみずのたはこと」の巻末に於て、粕谷の書斎から遙に諸君と相見るを得るは、感謝の至です。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
宮古
(
みやこ
)
や
八重山
(
やえやま
)
の
大阿母
(
おおあも
)
などは、危険の最も多い荒海を渡って、一生に一度の
参覲
(
さんきん
)
を
恙
(
つつが
)
なくなしとげることを、神々の殊なる
恩寵
(
おんちょう
)
と解し、また常民に望まれぬ光栄としていた。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
源蔵が若君の
恙
(
つつが
)
なき姿を見て、初めて張つめし気の
弛
(
ゆる
)
みしは忠臣の真面目にて、戸棚に入れあれば大丈夫とは知りながら、今更の如く安心せし様を示せるは芝居としての見せ場なり。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
と漁夫はその
語
(
ことば
)
を聴くやすでに
魂魄
(
こんぱく
)
のあるところをおぼえず、夢のごときものわづかに醒むれば、この時彼が身はもとの浜べに、しかも
恙
(
つつが
)
なく、しかも乗れる舟は朽ちて、——朽ちて
松浦あがた
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
読経の後、遺族、近親、参会者、築地小劇場員の焼香があって、当日
出来
(
しゅったい
)
したデスマスクが発表された。午後三時半法事を終って、ここに小山内薫先生の築地小劇場葬は
恙
(
つつが
)
なく終了した。
小山内薫先生劇場葬公文
(新字新仮名)
/
久保栄
(著)
マアこんな風で、ブランカも
恙
(
つつが
)
[#「恙」は底本では「」](妙ねすこし)なかったことをおよろこび下さい。机の上に、内科読本など揃えてそのままとんでは哀れを止めてしまいます。
獄中への手紙:12 一九四五年(昭和二十年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
赤犬は「キャン。」と一声悲鳴をあげると、後をも見ずに逃げ去った。私はほっとした。やれやれ。見るとメリーは気づかわしそうに私を見守っている。いい
塩梅
(
あんばい
)
にメリーは
恙
(
つつが
)
なかった。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
只今
暇
(
いとま
)
給はらば、
三六六
娘子
(
をとめ
)
の命も
恙
(
つつが
)
なくおはすべしといふを、庄司
更
(
さら
)
に
肯
(
う
)
けず、我
三六七
弓の
本末
(
もとすゑ
)
をもしりながら、かく
三六八
いひがひなからんは、
大宅
(
おほや
)
の人々のおぼす心もはづかし。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
この時の我が国書には、「日出処の天子書を
日没処
(
ひいるところ
)
の天子に致す、
恙
(
つつが
)
なきや」
国号の由来
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
昨夜
恙
(
つつが
)
なく帰宅致し候
儘
(
まま
)
御安心
被下度
(
くだされたく
)
、
此
(
こ
)
の
度
(
たび
)
はまことに御忙しき折柄種々御心配ばかり相懸け候うて申訳も
無之
(
これなく
)
、幾重にも
御詫
(
おわび
)
申上候、御前に御高恩をも謝し奉り、
御詫
(
おわび
)
も致し度候いしが
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
昨夜以来御心痛
奉拝察候
(
はいさつたてまつりそうろう
)
、御令嬢は
恙
(
つつが
)
なく我輩の掌中に
在之候
(
これありそうら
)
えば慮外ながら、御放念相成度万一御希望なれば、金一万五千円○○山麓記念碑
裡
(
うち
)
、
稚松
(
わかまつ
)
の根方へ御埋没あり次第御帰還の
取計可仕
(
とりはからいつかまつるべく
)
誘拐者
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
それより飲料に供すべき氷雪の収拾、室内の掃除、防寒具の調製、その他
炊事
(
すいじ
)
一切
(
いっさい
)
の事を同人に一任し、予は
専
(
もっぱ
)
ら観測に従事し、やや骨を休むることを得て、
先
(
ま
)
ずこれまでの造化の試験を
恙
(
つつが
)
なく
寒中滞岳記:(十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間)
(新字新仮名)
/
野中至
(著)
朝な夕なに他の女子がその
良人
(
おっと
)
を
労
(
いたわ
)
るを見て、我独り旧時の快を忘るべけんや、ああ神よ我が
良人
(
おっと
)
をして
恙
(
つつが
)
なからしめよ、彼の行路をして安からしめよ、今我は彼に着き
纏
(
まと
)
い心を尽す能わずとも
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
「別来、
恙
(
つつが
)
無きや。」
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「どうぞ
恙
(
つつが
)
なく——」
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
天文十八年、悪魔は、フランシス・ザヴイエルに
伴
(
つ
)
いてゐる
伊留満
(
いるまん
)
の一人に化けて、長い海路を
恙
(
つつが
)
なく、日本へやつて来た。
煙草と悪魔
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
四方の障壁にはまだ
恙
(
つつが
)
ない
金碧
(
きんぺき
)
の絵画が眺められる。どこからともなく薄煙は流れ入るが、火焔が伝わって来るには
微
(
かす
)
かな
遑
(
いとま
)
がありそうである。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もし
某
(
それがし
)
幸ひにして、見事父の讐を復し、なほこの命
恙
(
つつが
)
なくば、その時こそは心のまま、御恩に報ゆることあるべし。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
廃刊せられたりといひ伝へたる『明星』は廃刊せられしにあらでこのたび第十一号は
恙
(
つつが
)
なく世に出でたり。相変らず勿体なきほどの善き紙を用ゐたり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
若い書生が勤勉に手入れをしてくれるので、わたしの病臥中にも花壇はちっとも
狼藉
(
ろうぜき
)
たる姿をみせていない。夏の花、秋の草、みな
恙
(
つつが
)
なく生長している。
薬前薬後
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
但
(
ただし
)
御身
(
おんみ
)
に
恙
(
つつが
)
なきやう、わらはが手はいつも銃の口に、と心を
籠
(
こ
)
めた手紙を添へて、両三
日
(
にち
)
以前に
御使者
(
ごししゃ
)
到来。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
斯う言った蔭口が、左馬之助の耳にも聞えないではありませんが、左馬之助はその美しい顔を曇らせる様子もなく、
恬然
(
てんぜん
)
として
恙
(
つつが
)
ない日を送って居りました。
新奇談クラブ:08 第八夜 蛇使いの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
巨人知らず
闇中
(
あんちゅう
)
鉄棒もて縫工を打ち殺さんとして空しく寝床を砕く、さて
早
(
はや
)
殺しやったと安心して翌朝見れば縫工
恙
(
つつが
)
なく生き居るので巨人怖れて逃げ去った
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
長き
海路
(
うみじ
)
も
恙
(
つつが
)
なく無事横浜に着、直ちに汽車にて上京し、
神田
(
かんだ
)
錦町
(
にしきちょう
)
の
寓居
(
ぐうきょ
)
に入りけるに、一年余りも先に来り居たる叔母は大いに喜び、一同を
労
(
いた
)
わり慰めて
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
「ご心配には及びません。八重は、間もなく郷士体の者に救いあげられ、
恙
(
つつが
)
なく江戸へ帰っております」
顎十郎捕物帳:01 捨公方
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
巴里は再度兵乱に
遭
(
あ
)
ったが依然として
恙
(
つつが
)
なく存在している。春ともなればリラの花も
薫
(
かお
)
るであろう。しかしわが東京、わが生れた孤島の都市は全く滅びて灰となった。
草紅葉
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
寛平御記
(
かんぴょうぎょき
)
各一合、
小右記
(
しょうゆうき
)
六合などの
恙
(
つつが
)
なかつたことは、不幸中の幸ひとも申せるでございませう。
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
または難船をした者が遥かにこの御岳に
祈請
(
きしょう
)
して、
恙
(
つつが
)
なく島に戻った話もある。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それから九月一日の大震にもお蔭で
恙
(
つつが
)
なく、五十六歳と五十歳のアダム、イヴは、今年七月秋田から呼んだ、デダツ(モンペの方言)を
穿
(
は
)
いて「奥様、あれ持って来てやろか」と云う口をきく
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
恙
漢検1級
部首:⼼
10画
“恙”を含む語句
無恙
微恙
恙無
恙虫
不恙
御微恙