)” の例文
旧字:
恐らく終生変らず、又、育つこともないもので、怖れ、うる切なさ、逃げ、高まりたい切なさ、十五の私も、四十の私も変りはないのだ。
石の思い (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
しかし自分が奇異に思うことは、そう云う風に常にしたったのは主として母の方であって、父に対してはさほどでもなかった一事である。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
チョビやすの「辻のお地蔵さん」に合わせて、お美夜みやちゃんがいろいろと父母ふぼうる所作事をして見せるんです。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いなと云へどふるしひのがしひがたり、ちかごろ聞かずてわれひにけり」と万葉まんようの歌人がうた通りです。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
とにかく、このYという女は、手帖の主人公をたいへんしたっているのだ。その主人公の筆蹟が、彼の筆蹟とおなじであるのは、一体どうしたわけであるか。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なばひもねとや我妹子わぎもこ吾家わぎへかどぎてくらむ 〔巻十一・二四〇一〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
はなは、自分じぶんが、母親ははおやしたうように、つねに太陽たいようのありかをしたっていたからです。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
がれる市十郎なるが故に、夜も日も怨みに恨みつめなければ、それを胸に持てなかった。ときには、その市十郎と、お縫との、ふたりを呪咀じゅその像にえがいて身も心もほむらにした。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
□○子よ、御身おんみは今はたいかにおはすや。笑止やわれはなほ御身をへり。さはれ、ああさはれとてもかかる世ならばわれはただ一人恋うて一人泣くべきに、何とて御身をわずらはすべきぞ。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
けれど、彼が成長して立派なとても美しい青年になった時、彼女は含羞はにかむようになり、間もなく夢中になってがれるようになった。この恋心は彼女がヤアギチと結婚するその日まで続いた。
一つはもともとからあった女をうる心、も一つは女をはなれてひややかに女をみまもる心でございます。このあとの方の心が年とともに大きくなってきましてわたしにこう申すのでございます。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
おもひつるひたしのこゝろ一途いちづになりぬさりながらこゝろこゝろほかとももなくて良之助りやうのすけうつるものなんいろもあらずあいらしとおもほかてんのにごりなければわがひとにありともらずらねばきを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はるとやすまじきものの物懲ものごりにみだれはててし髪にやはあらぬ
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
芝付しばつき美宇良崎みうらざきなるねつこぐさ、相見ずあらばあれひめやも
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
またみなもと頼光よりみつ中納言維仲卿ちうなごんこれなかきやう御息女ごそくぢよひさせたまひて
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今さらに別れするより苦しくも牢獄ひとや二人ふたりひしまされり
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この壺も、おれと同じ、人をう嘆きの姿
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
さがて、またなれひて、その熟実うみみ
夏の日 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
いかばかり彩鳥あやどりの音のひしき。
あやどり (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
ふる心のいとまなさよ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その葛巻は痩せる思いで令嬢にいこがれ致死量に近いカルモチンをガブガブのんでかろうじて眠りをとっている。世はままならぬものである。
青い絨毯 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
げて行く母をしたう少年の悲しみのこもっていることが、当時のいとけない自分にも何とはなしに感ぜられたと見える。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
我背子わがせこれば屋戸やどくささへおもひうらがれにけり 〔巻十一・二四六五〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
田舎に生れた者が田舎をうばかりでなく、都に生れた者でも田舎に育てば矢張田舎が恋しくなる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
女には男あつかいされぬ君子くんしも、山野さんや侠児きょうじにはしたわれる事
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ああ妻なよび髪ねびて、わがひ待てる
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
こひはれぬ嫉妬ねたみもて
友に (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
なほふる女の身。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
おもたまふぞとさしのぞかれ君様きみさまゆゑと口元くちもとまでうつゝをりこゝろならひにいひもでずしてうつむけばかくたまふはへだてがまし大方おほかたりぬれゆゑのこひぞうらやましとくやらずがほのかこちごとひとふるほどならばおもひにせもせじ御覧ごらんぜよやとさし
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それからている我が子に名残なごりをしみつつ「いしくば訪ね来てみよ和泉いずみなる———」と障子へ記すあの歌。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いなといへどふる志斐しひのがひがたりこのごろかずてわれひにけり 〔巻三・二三六〕 持統天皇
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
この人と私は、いこがれ、愛し合っていたが、とうとう、結婚もせず、肉体の関係もなく、恋いこがれながら、逃げあったり、離れることを急いだり、まあ、いいや。
山の根の木立こだちくろくしてしづけきを家いで来つつふることあり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)