よみ)” の例文
熱心は敬服すべきである。精神はよみすべきである。その善意的なるもまた多とすべきである。あるにもかかわらず学生は迷惑である。
作物の批評 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ウム、御仏みほとけも、おれたちの奉仕をよみしてくださるだろう。——同時に、おれたちの生活も、今は、感謝と輝きに充ちきったものだ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西は玄白の熱心をよみするように、二、三度頷いた。が、彼の与えた答は、否定的だった。彼は、西海の人に特有な快活な調子で答えた。
蘭学事始 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
然樣さういふ貴い努力が積累ねらるればこそ世が進歩するのであるから、實に世間全體に取つても甚だ尚ぶべくよみす可き事なのである。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
人生に悩みながらほそい腕に悪戦苦闘して、切抜け切抜けしてゆく殊勝さを見ると、涙ぐましいほどにその勇気をたたよみしたく思う。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
いざ願はくは彼の來れるをよみせ、彼往きて自由を求む、そもこのもののいとたふときはそがためにいのちをも惜しまぬもののしるごとし 七〇—七二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
神様、私共は、貴方の前に二人のよき、神のよみし給う子として、若し与えられたものがあるなら、それを以て己らを貫く事に致しましょう。
唐国に使いして多くの文書宝物を得て帰った吉士長丹きしのちょうたんの労をよみして位をのぼし、ほう二百を給し、呉氏くれうじの姓を賜わった如きは、唐国をクレと称し
国号の由来 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
よみせられて、下したまえる天佑というものだ。おい杉田、貴様が意外に元気で、こんなに泳げるというのも天佑の一つだぞ
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
古人は事に臨んでみだりに情をほしいままにせざる事を以てよみすべきものとなした。喜怒哀楽の情を軽々しく面に現さないのをもっとも修養せられた人格となした。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
実に幸なことには、新古今時代の歌人たちの努力を、若き後鳥羽院はよみたもうた。このようなことは、近世この方殆どなくなってしまったのである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
餓鬼大将としても頗る殊勝なよみすべき餓鬼大将である。卑しい職工の息子ではあるけれど、或は斯う云う少年が将来ほんとうの英傑となるのかも測り難い。
小さな王国 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
マリヤはその心のあふれ湧きて、そのつゝしみを受け入れ給ひし嬉しさに叫びしその聲と同じやうによみし給ふ。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
思ふに天主もごへんの信心を深うよみさせ給ふと見えたれば、万一勤行ごんぎやう懈怠けたいあるまじいに於ては、必定ひつぢやう遠からず御主『えす・きりしと』の御尊体をも拝み奉らうずる。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
然し私は、叔父の不在が私のある種の計画に願つてもない好条件を生むことになるので、いささかよみすべき道義的な想念の萌芽を文句なしにもみつぶしてしまつたのだ。
狼園 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
もたらした陳歩楽ちんほらくだけは(彼は吉報の使者としてよみせられろうとなってそのまま都にとどまっていた)
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
つまりこれは、カリーの女神のよみし給わなかったことでしょうか。それからも、ミス・ヘミングウェーは相変らずの態度で、おお機会チャンスと、叫ばせられたのも何度かありました。
一週一夜物語 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
若夫もしそれ斬奸之徒は、其情をよみし、其実を不論あげつらはず、其実を推し、其名を不問とはずすみやか放赦はうしやせられよ。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
讃嘆すべきことには、仏は審判者ではなかったのである。あるものをよみしあるものを罰するのではない。彼は大悲なのである。何ものをも彼の慈悲で迎え取ってしまうのである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
悪魔が二人、額をよせてニヤニヤ笑いながら、お互の悪だくみの深さをよみし合う、あれね。そういう意味で、もっとお互の心の中をさらけ出したいのよ。あなたの云う露出狂だわね
断崖 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
朝夕あけくれ黄金丸が傍にかしずきて、何くれとなく忠実まめやかに働くにぞ、黄金丸もその厚意こころよみし、なさけかけて使ひけるが、もとこの阿駒といふ鼠は、去る香具師こうぐしに飼はれて、種々さまざまの芸を仕込まれ
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
ある程度まで内向的を重んずる樣になつたのはよみすべしだが、何等の能力もない死物もしくは虚無(といふ抽象物)に逆襲的壓迫力があるかの如く見なす思想が盛んになつたのは
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
その多いのが必ずしも悪いとわが輩は言わぬ。おのれを捨てて社会の利益をはかるの望ましきことはいうまでもない。ことすに国家観念こっかかんねんより打算ださんするもはなはだよみすべきことである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
天を敬うのもまた道徳の立場においてである。天を敬いさえすれば福を得る、というのではなく、道にかないさえすれば天によみされる、というのである。ここに思想史上の革新がある。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
ダメス王の鼻が、この使命を最もよく発揮して、ここに人類界最高の記録を破り得た事をよみする。さらにその死後に於ける裁判に於ても、この本領を空前絶後にまで発揮し得た事を嘉する。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
皇室ではそれをよみせられ、召し上げられて飽衣美食でもてなしました。長寿者はたちまち死にました。粗食故に長寿していた生命が、美食に遇ってたちまち破損してしまったのだそうです。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その臣従をよみし、鳥の功を賞して、この詔とともに大仁だいにんの位を賜わり、また近江おうみ国坂田郡の水田二十町を下された。鳥はその田を私せず、天皇のために更に金剛寺を建立したと伝えられている。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
戦ひに死してはいを敵に向けず、其勇は実によみすべし。然れども戦ふ為にうまれ、戦ふ為にたふる可きは、夫れ仏国か。一大魔ありて人間界を支配するとせば、彼は仏国を以て一闘犬となしつゝあるなり。
想断々(2) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
「あなたの懺悔は神に達した。神はよみし給うた。アーメン」
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
我が歌をよしとよみしてたまひたる陸軍大将の太刀ぞこの太刀
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
彼等は罪を犯せるにあらず、よみすべきことはありとも汝がいだく信仰の一部なる洗禮バッテスモをうけざるが故になほたらず 三四—三六
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
倉廩そうりんを封じて、兵燹へいせんから救われたことは、まさに天道のよみすところである。曹操は、そのお志に対し、足下を鎮南将軍に封じるであろう」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同時に両性の清らかな愛による互いの選択と、その神のよみし給う結合の形としての結婚を主張した。
院が良経と俊成・定家との一群の新傾向をよみされたところに、『新古今』の大体の特色の生れるもとがあったが、一首一首を錦繍のように豪奢で絢爛けんらんな歌ばかりでそろえられたのは
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
その目的は実によみすべきであるが、同じく青年の会合でも、三、四十年前に行われたるものは、若い衆の寄合いと称して、若い衆といえばろくでもないことをする者、思想も理想もなく
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「さあ、わたくしは皆さんと違ってまだチョンガーなんだから、天帝もわたくしの日頃の罪汚れなき生活をよみしたまい、きっと素晴らしい景品を恵みたまうから、今に見ててごらんなさい」
軍用鼠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
我今彼らの芸術を品評せず唯その意気をよみしその労を思ひその勇に感ず。
一夕 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
其の意氣は愛す可きも、其の中正を失へるはよみす可からざる事である。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
春晝しゆんちうの靜けきまゝにしまらくは狸のつらの澁きをよみ
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
と、遠い以前の事どもを追想しかたがた、孫権の態度も神妙なりとよみして、群臣と共に使者を引いて、関羽の首を実検した。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次の焔はグラツィアーンの笑ひより出づ、彼は天堂においてよみせらるゝほど二の法廷を助けし者なり 一〇三—一〇五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ではない。一点私心のない何ものかがそれをよみしない恥かしさ、苦しさ、を覚えるのだ。
また日本の政治を改善したいと思うまでは理想としてよみすべきであるが、これを行うには大臣にならねばならぬことはない。理想を実現するにある位地をむさぼるのはいまだ真の理想とは思われぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
旁〻かたがた、どうかと思っていた質子を、かく早速伴って来た誠意に対しても、官兵衛の二心なきことを再認識して、大いによみしている風もうかがわれる。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分のいた難題もすべて高氏が素直にうけ入れたことを多として、大いによみしているのであろう。そのうえ高氏から約束の誓書をも差出したので
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玄徳の父母祖先の墳墓つかは、すべて涿郡たくぐんにあるので、母公は、婿の孝心をよみし、それに従うのはまた、妻の道であると、機嫌よく夫婦ふたりを出してやった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の精兵は、たちまち、地方の鼠賊そぞく掃滅そうめつしてしまった。朝廷は、彼の功をよみし、新たに、「鎮東将軍ちんとうしょうぐん」に叙した。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世に乱なかれと、民のために祈られてこそみかどですのに、九五きゅうごそんをもって、若公卿ばらの陰謀をよみしあそばすなどは、世の末、思いやられてなりません。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翠竹院の号はその折、叡覧えいらんの光栄に浴したうえ、彼の本邦医学に寄与した功労をよみしたもうて、朝廷から下賜かしあらせられたものとか、都の人々も聞いている。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ごもっともじゃ。さればその儀については、君もさらさら、お咎めではおわしまさぬ。そればかりか、其許そこの功をよみせられ、征東将軍の称を贈って、宰相の心を
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)