吸込すひこ)” の例文
つぎをんなは、こしからかげつち吸込すひこまれさうに、悄乎しよんぼりこしをなやしてしやがむ……びんのはづれへ、ひよろりとつゑさきけてあをい。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
みぎよう次第しだいであるから、著者ちよしや結論けつろんとしては、地割ぢわれに吸込すひこまれるような現象げんしようは、わがくににては絶對ぜつたいおこらないといふことに歸着きちやくするのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
貴方あなたなどは、才智さいちすぐれ、高潔かうけつではあり、はゝちゝとも高尚かうしやう感情かんじやう吸込すひこまれたかたですが、實際じつさい生活せいくわつるやいなやたゞちつかれて病氣びやうきになつてしまはれたです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
自分は長椅子から立上りさわやかな風におもてを吹かせ、あたゝかく静かな空気を肺臓一ぱいに吸込すひこみ、遠くの星の殊更美しい一ツを見詰めて、さて唇を開いて声を出さうとすると
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
何しろ幾百年來ねんらい腐敗ふはいしたあらゆる有機體いうきたいの素を吸込すひこむで、土地はしツけてゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そしてふかぶかと胸一杯むねいつぱいに匂やかな空氣を吸込すひこめば、ついぞ胸一杯に呼吸したことのなかつた私の身體からだや顏には温い血のほとぼりがのぼつて來て何だか身内に元氣が目覺めて來たのだつた。………
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
マルヂヴエ群島ぐんとうへんから南方なんほうむかつてはしるなる、一層いつそう流勢ながれはや潮流てうりう吸込すひこまれてるとさとつたときおもはず驚愕おどろきこゑはつしたことと、かつものほんんだおびたゞしきくぢらむれはるか海上かいじやうながめたことほか
しらけて、しばらく言葉ことば途絶とだえたうちに所在しよざいがないので、うたうたひの太夫たいふ退屈たいくつをしたとえてかほまへ行燈あんどう吸込すひこむやうな大欠伸おほあくびをしたから。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雪枝ゆきえはハツとせて、いは吸込すひこまれるかと呼吸いきめたが、むね動悸だうきが、持上もちあ揺上ゆりあげ、山谷さんこくこと/″\ふるふをおぼえた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、煙管きせるく。とじり/\と吸込すひこんで吹殼ふきがらのこそげいてけないやつ、よこなぐりに、並木なみきまつへトンとはらつて、はなかすみ江戸えどそら筑波つくばよこいそぐ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
呆気あつけとられてる/\うちに、したはうからちゞみながら、ぶくぶくとふとつてくのは生血いきちをしたゝかに吸込すひこ所為せゐで、にごつたくろなめらかなはだ茶褐色ちやかツしよくしまをもつた、痣胡瓜いぼきうりのやうな動物どうぶつ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)