半途はんと)” の例文
この事業はいまだ半途はんとにして如何いかになり行くべきや、常なき人の世のことはあらかじめいいがたし、ただこの趣意をつらぬかんこそ、わらわが将来の務めなれ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
すで半途はんとにいたれば鳥の声をもきかず、ほとんど東西をべんじがたく道なきがごとし。案内者はよく知りてさきへすゝみ、山篠やまさゝをおしわけへいをさゝげてみちをしめす。
ことに住宅などはまだその改良の半途はんとであり、敵の空襲というような、前にはかんがえて置くことのできなかった危険と不安とが、大きいのから小さいのまで
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「いや、さまでには行き届きません。しかし隠岐への旅も、ようやく半途はんと、明日からはまた、非情な旅路です。どうぞ今日ばかりは心ゆくまで、一日の御休息を」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不遠慮に何にでも手を触れるのが君の流儀で、口から出かかった詞をも遠慮勝えんりょがち半途はんとめるのが僕の生付うまれつきであった。この二人の目の前にある時一人の女子おなごが現れた。
突然と横合から飛び出した宗近君は、滑るべく余儀なくせられたる人を、半途はんとさえぎった。遮ぎられた人は邪魔にうと同時に、一刻の安きをもとの位地にむさぼる事が出来る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もうよほど歩いたから、発光路もじきだろうと、道程みちのりを聞いて見ると、ちょうど半途はんとだというので、それからまた勇気を附けて歩きましたが、歩いても、歩いても発光路へは着かない。
ばんこまるのは物質ぶっしつというものの兎角とかくくずやすいことで、いろいろ工夫くふうしてつくってても、みな半途はんとながれてしまい、立派りっぱたましい宿やどになるような、完全かんぜん人体じんたい容易ようい出来上できあがらなかったそうでございます。
只今大膳よりきゝ及び承知したりしか箇樣かやう大望たいまうは中々うきたる事にては成就じやうじゆ覺束おぼつかなしまづ根本こんぽんより申合せてたくまねば萬一まんいち中折なかをれして半途はんと露顯ろけんに及ぶ時は千辛萬苦せんしんばんくも水のあわなるばかりか其身の一大事に及ぶべし先名乘なのり出る時は必ず其生れ所とそだちし所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すで半途はんとにいたれば鳥の声をもきかず、ほとんど東西をべんじがたく道なきがごとし。案内者はよく知りてさきへすゝみ、山篠やまさゝをおしわけへいをさゝげてみちをしめす。
その上私は神経衰弱しんけいすいじゃくに罹りました。最後に下らない創作などを雑誌にせなければならない仕儀しぎおちいりました。いろいろの事情で、私は私のくわだてた事業を半途はんとで中止してしまいました。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
古縄ふるなはへびとしおどせば、おどされたるびつくりして片足かたあし泥田どろたへふみいれしを衆人みな/\辴然おほわらひす。此みちすべ農業のうげふ通路つうろなればいこふべき茶店ちやみせもなく、半途はんといたりて古きやしろに入りてやすらふ。
二人ふたりあたまなかかへつたすごあわやうなものがやうやしづまつたとき二人ふたり安井やすゐまた半途はんと學校がくかう退しりぞいたといふ消息せうそくみゝにした。彼等かれらもとより安井やすゐ前途ぜんときずつけた原因げんいんをなしたにちがひなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
古縄ふるなはへびとしおどせば、おどされたるびつくりして片足かたあし泥田どろたへふみいれしを衆人みな/\辴然おほわらひす。此みちすべ農業のうげふ通路つうろなればいこふべき茶店ちやみせもなく、半途はんといたりて古きやしろに入りてやすらふ。
彼等かれら安井やすゐ半途はんと退學たいがくさせ、郷里きやうりかへらせ、病氣びやうきかゝらせ、もしくは滿洲まんしうつたつみたいして、如何いか悔恨くわいこんくるしみをかさねても、うすること出來できない地位ちゐつてゐたからである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ピトロクリの谷は秋の真下ましたにある。十月の日が、眼に入る野と林を暖かい色に染めた中に、人は寝たり起きたりしている。十月の日は静かな谷の空気を空の半途はんとくるんで、じかには地にも落ちて来ぬ。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)