備前びぜん)” の例文
兵庫に在留する英国人の一人ひとりは神戸三宮の付近で、おりから上京の途中にある備前びぜん藩の家中のものに殺され、なお一人は傷つけられ
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「……備前びぜん岡山、備後灘びんごなだ、松山上空」とラジオは艦載機来襲を刻々と告げている。正三の身支度みじたくが出来た頃、高射砲がうなりだした。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
さて、諸国のことを伝え聞くに、九州には河太郎かわたろうというものあり、四国には猿神さるがみというものあり、備前びぜんには犬神というものあり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
赤松氏の老臣浦上宗則うらがみむねのりが主家をくつがえして、国中大乱に陥ちたとき、宗円は備前びぜんからこの播磨はりまに乱をのがれて来て、以来久しい浪人生活をしていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
、五郎正宗でも何んでも良い、無銘の備前びぜん物だが、長い方にも脇差にも、一點の血曇りも無いぞ、よく見るが宜い
秀秋は裏切り者として名高くなったが、その功によって徳川家からは疎略にあつかわれず、筑前から更に中国に移封いほうして、備前びぜん美作みまさか五十万石の太守たいしゅとなった。
馬妖記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すめらみの、おためとて、備前びぜん岡山を始めとし、数多あまたの国のますらおが、赤い心を墨で書き、国の重荷を背負いつつ、命は軽き旅衣たびごろも、親や妻子つまこを振り捨てて。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
死罪を一等免ぜられて、備前びぜん児島こじまへ流罪という知らせであった。同時に、重盛から成親宛の親書があって
それにつれて刀も動く。と、閃めいた穂先、流星の如く胸へ走る、数馬の備前びぜん祐定すけさだ二尺五寸五分、払いは払ったが、帷子の裏をかいて胸へしたたか傷けられた。
鍵屋の辻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
そして岡田宮おかだのみやというお宮に一年の間ご滞在になった後、さらに安芸あきの国へおのぼりになって、多家理宮たけりのみやに七年間おとどまりになり、ついで備前びぜんへお進みになって
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
万彦はじぶんの知っている神仙のことについてはなした。備前びぜんくに赤磐郡あかいわごおり太田村おおたむら大字万富おおあざまんとみ小字梅こあざうめという処に山形尊やまがたそんと云う盲人があった。その盲人はその時三十歳であった。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
私の家は代々備前びぜん上道じやうたう浮田うきた村の里正を勤めてゐた。浮田村は古くぬま村と云つた所で、宇喜多直家うきたなほいへ城址じやうしがある。其城壕しろぼりのまだ残つてゐる土地に、津下氏は住んでゐた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
『和名鈔』の時代には曾比そび、それが『壒嚢抄あいのうしょう』には少微しょうびとなり、近世に入っては少鬢しょうびんともなったが、なお播磨はりまでは将人しょうにん伯耆ほうき出雲いずもでは初人しょにん備前びぜん美作みまさかでは初爾しょにといって
万葉以後一千年の久しき間に万葉の真価を認めて万葉を模倣もほうし万葉調の歌を世に残したる者実に備前びぜんの歌人平賀元義一人のみ。真淵の如きはただ万葉の皮相を見たるに過ぎざるなり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
播磨はりま美作みまさか備前びぜん備中びっちゅう備後びんご安藝あき周防すおう長門ながとの八ヵ国を山陽道さんようどうと呼びます。県にすれば兵庫県の一部分、岡山県、広島県、山口県となります。ざっと明石あかしから下関までであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
あのお囃しは備前びぜんさまのお屋敷の、こっちの角にある屋台でやっているのだ、と仕事をしながらおみきは思った。ここへ移って来てから五年とちょっとのあいだに、親子心中が三度もあった。
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
……江州ごうしゅうへ入っては佐々木家へ仕え、京へはいっては三好家へ仕え、播磨はりまへ行っては別所家へ仕え、出雲いずもへ行っては尼子家へ仕え、備前びぜんへ行っては浮田家へ仕え、安芸あきへ行っては毛利家へ仕えた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
成経 清盛めは父とわしとを同じ備前びぜんの国に流しました。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
秀吉は時を移さず、包囲中の三木城に行動を起し、援軍の佐久間勢や筒井勢をして、毛利の蠢動しゅんどう備前びぜんの境におさえさせた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
備前びぜん備後びんごにては、猫神、猿神と名づくるものがあるそうだ。これらはみな類似のものに違いない。民間に伝われる書物に『人狐弁惑談じんこべんわくだん』と申すものがある。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
彼の心には、父成親の行方だけが気にかかっていたのである。その成親は、備前びぜんの児島が港に近いという理由で、備前、備中の境、有木ありき別所べっしょという山寺に移された。
御父上松根備前びぜん様の思召おぼしめしを継いで、余吾之介様は屹度きっとあの悪人共を退治して下さるであろう、乳母は冥土めいどからそれを拝見いたします——とこう申しておりました、余吾之介様
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
神職講習会へ来ていた備前びぜん国幣中社安仁こくへいちゅうしゃやすひと神社の禰宜太美万彦ねぎふとみのよろずひこと云う者が、某日あるひ一人のつれとともにやって来た。万彦は宮地翁の机の傍にあった神仙記伝の原稿に眼をけた。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
同じ御隠居の庶子しょしにあたる浜田はまだ島原しまばら喜連川きつれがわの三侯も、武田らのために朝廷と幕府とへ嘆願書を差し出し、因州、備前びぜんの二侯も、浪士らの寛典に処せらるることを奏請した。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あるとき天皇はそのころ吉備きびといっていた、今の備前びぜん備中びっちゅう地方ちほうの、黒崎くろさきというところに、海部直あまのあたえという者の子で、黒媛くろひめというたいそうきりょうのよいむすめがいるとお聞きになり
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
その他薩摩、長門、因幡いなば備前びぜん等の諸藩からも役人が列席している。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大阪の天王寺かぶら、函館の赤蕪あかかぶら、秋田のはたはた魚、土佐のザボン及びかん類、越後えちごさけ粕漬かすづけ足柄あしがら唐黍とうきび餅、五十鈴いすず川の沙魚はぜ、山形ののし梅、青森の林檎羊羹りんごようかん越中えっちゅう干柿ほしがき、伊予の柚柑ゆずかん備前びぜんの沙魚
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
此度このたび備前びぜん摺鉢すりばち底抜けて、池田宰相味噌をつけたり
鍵屋の辻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
サイジ 備前びぜん邑久おく
「そうか。西国表は、備前びぜん美作みまさか因幡いなばの三ヵ国とも、毛利への万一の備えに、一兵もうごかすなと申しつけたことも、手ちがいなく達しておるか」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つぎに安芸あきのトウビョウ、備後びんご外道げどう備前びぜんのチュウコなどは山陽独特に相違ない。安芸のトウビョウは、一般の説では蛇であると申している。すなわち蛇つきである。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
でも、そのころになると、この宿場を通り過ぎて行った東山道軍の消息ばかりでなく、長州、薩州、紀州、藤堂とうどう備前びぜん、土佐諸藩と共に東海道軍に参加した尾州藩の動きを知ることはできたのである。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すゑる故一同見ても居られず組頭くみがしら周藏佐治右衞門傳兵衞木祖兵衞きそべゑ長百姓喜平次善右衞門神主かんぬし備前びぜん醫師いし玄伯等各自おの/\中に立入たちいりまづ双方さうはう共に預りて此日は皆々引取しがお里は組頭周藏へ預け其夜なほ又周藏方へ惣内始め寄合て心得違ひの趣きにあつかひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「極秘ですが、備前びぜん池田新太郎少将いけだしんたろうしょうしょうなどと、ひそかに、お会いなされたこともあります。そのほか、有力な西藩せいはんの諸侯や、公卿堂上中くげどうじょうちゅうのさる方々とも」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊勢国(山田、松阪、津、一身田、四日市、桑名) 尾張国(名古屋、熱田、津島、大野、半田) 三河国(豊橋、岡崎、北大浜、西尾、蒲郡、豊川) 遠江とおとうみ国(掛川、浜松、平田、中泉) 駿河するが国(静岡、小川、清水、藤枝) 相模さがみ国(大磯) 武蔵国(忍) 上総かずさ国(千葉、茂原) 近江おうみ国(大津、豊蒲、五ヶ荘、愛知川、八幡、彦根、長浜) 美濃国(岐阜) 上野こうずけ国(安中、松井田、里見、高崎、八幡) 岩代いわしろ国(福島) 陸前国(築館、一迫) 陸中国(盛岡、花巻) 陸奥むつ国(弘前、黒石、板屋野木、鰺ヶ沢、木造、五所川原、青森、野辺地) 羽前うぜん国(米沢、山形、寒河江、天童、楯岡、新庄、鶴岡) 羽後うご国(酒田、松嶺、湯沢、十文字、横手、沼館、六郷、大曲、秋田、土崎、五十目、能代、鷹巣、大館、扇田) 越後国(新井、高田、直江津、岡田、安塚、坂井、代石、梶、新潟、沼垂、葛塚、新発田、亀田、新津、田上、加茂、白根、三条、見附、浦村、片貝、千手、六日町、塩沢、小出、小千谷、長岡、大面、寺泊、地蔵堂、新町、加納、野田、柏崎) 丹波国(亀岡、福知山) 丹後国(舞鶴、宮津、峰山) 但馬たじま国(出石、豊岡) 因幡いなば国(鳥取) 伯耆国(長瀬、倉吉、米子) 出雲国(松江、平田、今市、杵築) 石見いわみ国(波根、太田、大森、大国、宅野、大河内、温泉津、郷田、浜田、益田、津和野) 播磨はりま国(龍野) 備前びぜん国(閑谷) 備後びんご国(尾道) 安芸国(広島、呉) 周防すおう国(山口、西岐波、宮市、徳山、花岡、下松、室積、岩国) 長門ながと国(馬関、豊浦、田辺、吉田、王喜、生田、舟木、厚東、萩、秋吉、太田、正明市、黄波戸、人丸峠、川尻、川棚) 紀伊国(高野山、和歌山) 淡路国(市村、須本、志筑) 阿波国(徳島、川島、脇町、池田、撫養) 讃岐さぬき国(丸亀、高松、長尾) 伊予国(松山、宇和島、今治) 土佐国(高知、国分寺、安芸、田野、山田、須崎) 筑前国(福岡、若松) 筑後国(久留米、吉井) 豊前ぶぜん国(小倉、中津、椎田) 豊後ぶんご国(日田) 肥前ひぜん国(長崎、佐賀) 肥後ひご国(熊本) 渡島おしま国(函館、森) 後志しりべし国(江差、寿都、歌棄、磯谷、岩内、余市、古平、美国、小樽、手宮) 石狩国(札幌、岩見沢) 天塩てしお国(増毛) 胆振いぶり国(室蘭)
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
この期間に、播磨はりま備前びぜんの国境の捨児、尼子一族のっていた上月こうづき城は、必然な運命に委されて落城した。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その辺りから、備前びぜん国境くにざかいの方へ、白く蜿蜒うねうねはてを消しているのが、海岸線と見て間違いはあるまい。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
備前びぜん播磨はりまの国境から、毛利軍が引揚げを行うとともに現われたものが、浮田直家の裏切りだった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼が、薩摩へ行くと、その著名を聞いて、土地の瀬戸口備前びぜんなる剣家が
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それなのに、父忠盛も、今では、刑部卿ぎょうぶきょうに昇っている。但馬たじま備前びぜん播磨はりまと、所領の地も、三ヵ国に在る。自分だけが、こうなのではなかった。——たとえば、源氏の六条為義なども、同様だった。
備前びぜん岡山の城はいまさかんなる改修増築の工事にかかっている。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)