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偶々
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たまたま
ふりがな文庫
“
偶々
(
たまたま
)” の例文
偶々
(
たまたま
)
道に迷うて、旅人のこの
辺
(
あたり
)
まで踏み込んで、この物怖しの池の
畔
(
ほとり
)
に来て見ると、こは不思議なことに年若い女が
悄然
(
しょんぼり
)
と
佇
(
たたず
)
んで
森の妖姫
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ギラ・コシサンの住んでいるガクラオの
共同家屋
(
ア・バイ
)
に
偶々
(
たまたま
)
グレパン部落の女がモゴルに来た。名をリメイといって非常な美人である。
南島譚:02 夫婦
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
結髪の妻節子を喪ってから、長男夫婦の世話になって居たが、
偶々
(
たまたま
)
病に臥してからつくづく、世話人なしでは老境を過せないと感じた。
安吾人生案内:06 その六 暗い哉 東洋よ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
公卿達が、
偶々
(
たまたま
)
縁者の諸侯から、田舎の産物を贈って貰うと必ずこれを献上した。天皇は、これを殊の外ご賞美遊ばされたと言う。
にらみ鯛
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
が、男は、物々しい殿中の騒ぎを、茫然と眺めるばかりで、更に答えらしい答えをしない。
偶々
(
たまたま
)
口を開けば、ただ
時鳥
(
ほととぎす
)
の事を云う。
忠義
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
これなり帰るのも惜しく、
偶々
(
たまたま
)
出会つた木の実とりの子供達についてゆく。長い竹竿を持つてゐて、椎の繁みをたたいてまはるのである。
椎の実
(新字旧仮名)
/
橋本多佳子
(著)
幸村は、
偶々
(
たまたま
)
越前少将忠直卿の臣原
隼人貞胤
(
はやとさだたね
)
と、互に武田家にありし時代の旧友であったので、一日、彼を招じて、もてなした。
真田幸村
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
巻五の天平二年正月の梅花歌中に「小弐
小野大夫
(
おぬのまえつきみ
)
」の歌があるから、この歌はその後、
偶々
(
たまたま
)
帰京したあたりの歌ででもあろうか。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
偶々
(
たまたま
)
感じ候故
序
(
ついで
)
に申上候。荒木令嬢の事、
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
相迎
(
あいむかえ
)
候事と決心仕候。
併
(
しか
)
し随分苦労の種と存候。夜深く相成候故
擱筆
(
かくひつ
)
仕候。草々不宣。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
偶々
(
たまたま
)
さる会場で同席して帰途が同じだから同車で帰る途中、わたくしは彼を陋屋に請じて酒を愛する彼のために粗酒を
侑
(
すす
)
めた。
幽香嬰女伝
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
其処
(
そこ
)
には例の魔だの
天狗
(
てんぐ
)
などという奴が居る、が
偶々
(
たまたま
)
その連中が、
吾々
(
われわれ
)
人間の
出入
(
でいり
)
する道を通った時分に、人間の眼に映ずる。
一寸怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
言を換えていうと自分と古芸術とが
偶々
(
たまたま
)
何処かにおいて一つの契合点を得たのである。あるいは古芸術において自分の反映を認めたのである。
芸術と国民性
(新字新仮名)
/
津田左右吉
、
津田黄昏
(著)
よし
偶々
(
たまたま
)
根ざしても、やがて枯れ
凋
(
しぼ
)
んでしまふ。恋愛のデリケートな繊緯は日々挽き砕かれる圧迫に耐へることが出来ない。
結婚と恋愛
(新字旧仮名)
/
エマ・ゴールドマン
(著)
然
(
しか
)
るに山の会で此話をして帰京した後、十月になって
偶々
(
たまたま
)
別の帳面が出たので調べて見ると、夫には玉岳、ノワカ池と並べて書いてあります。
登山談義
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
偶々
(
たまたま
)
看護人でも近寄ろうものなら大声を上げて
喚
(
わめ
)
き出す始末で、他人の患部へ手を触れることを
烈
(
はげ
)
しく拒絶するのだった。
三狂人
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
又一方には民間で拵えた木像が多く、此は名も知れないようになっているが、その中にはどうかして
偶々
(
たまたま
)
いいものがある。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
木の葉にまじつて流れ下る三年魚迄の小型。
偶々
(
たまたま
)
かゝる大型の成魚は放流して来春を待つのが釣人の良心の命令である。
釣十二ヶ月
(新字旧仮名)
/
正木不如丘
(著)
すると
偶々
(
たまたま
)
その場にいた祖父が、「馬鹿野郎。子供のくせに、いまから金をためることなんか覚えて、どうするんだ。」と百雷の
轟
(
とどろ
)
くような声を出した。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
ところが時
偶々
(
たまたま
)
クリスマスの季節にあたったために、手紙の配達がおくれ、僅か四百
哩
(
マイル
)
を隔てたスミス博士の手に入るまでに、十日以上の
日子
(
にっし
)
を要した。
イグアノドンの唄:――大人のための童話――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
で、
偶々
(
たまたま
)
叔母のうちの二階で手にすることの出来た本は、私に非常な興味を感じさせた。それが何の本であったかは、今では想像して見ることすら出来ない。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
偶々
(
たまたま
)
他人が外部へあらわした悪のために振動させられ、その悪のヴァイブレーションが、その人に向って一種異様な好奇の感じを与えるからではあるまいか。
「心理試験」序
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
ただ、おそろしく気まぐれでその上並々ならぬ空想癖をもっていたために、それが
偶々
(
たまたま
)
こうした思いがけない調子外れの行為となって現われる迄の事であった。
嘘
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
それからは
先
(
ま
)
ず無事に家へ帰ったものの、
今日
(
こんにち
)
まで、こんな恐ろしい目に出会った事は
未
(
いま
)
だにない、今でも独りで居て
偶々
(
たまたま
)
憶出
(
おもいだ
)
すと、思わず戦慄するのである。
白い蝶
(新字新仮名)
/
岡田三郎助
(著)
また
偶々
(
たまたま
)
僥倖
(
ぎょうこう
)
のある問題にゆき当ったという点もないわけではないでしょうが、しかし熱心に科学の仕事に携わらなければそこには到達できないのでありますし
キュリー夫人
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
京伝や馬琴の流を汲んだ戯作者の残党が
幇間
(
ほうかん
)
芸人と伍して僅かに
余喘
(
よぜん
)
を保っていたのだから、
偶々
(
たまたま
)
文学
勃興
(
ぼっこう
)
の機運が熟しても
渠
(
かれ
)
らはその運動に与かる力がなくて
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
ついにそれが果されるに至ったのは、
偶々
(
たまたま
)
沖縄県の学務部長に赴任された山口泉氏からの
招聘
(
しょうへい
)
があったからによるのであります。私は心を
躍
(
おど
)
らせて海を渡りました。
沖縄の思い出
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
偶々
(
たまたま
)
信濃新報を見しに、処々の水害にかえり路の安からぬこと、かずかず
書
(
か
)
きしるしたれば、
最早
(
もはや
)
京に還るべき期も迫りたるに、ここに
停
(
とど
)
まること久しきにすぎて
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
丁度私達が、
偶々
(
たまたま
)
遇ふあの面会の時の話を、立ち会ひの看守達にともすれば干渉されるやうに——。
ある女の裁判
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
従って世間の評判も悪い、
偶々
(
たまたま
)
賞美して呉れた者もあったけれど、おしなべて非難の声が多かった。
余が翻訳の標準
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ウエリントンは
偶々
(
たまたま
)
ナポレオンを相手とするワーテルローの戦場において彼の真髄を発揮したが、およそ高遠なる理想を行わんとする場所は人生の到るところにある
早稲田大学
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
高橋おでんも、
蝮
(
まむし
)
のお政も、
偶々
(
たまたま
)
悪い素質をうけて生れて来たが、彼女たちもまた美人であった。おでんもお政も悪が
嵩
(
こう
)
じて、盗みから人殺しまでする羽目になった。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
偶々
(
たまたま
)
以て夢中遊行状態特有の怪異なる行動が当夜、同所に於て行われたる事跡を物語るものにして
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
食後の休みなどには、
種々
(
しゅじゅ
)
の
世間談
(
せけんばなし
)
も初まったが、この怪談というものは、
何
(
いず
)
れの人々も、興味を持つものとみえて、私等は
或
(
ある
)
晩のこと、
偶々
(
たまたま
)
それを初めたのであった。
感応
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
朝鮮に関するオッペルトの新刊が紹介されてるのを読んで、私は
偶々
(
たまたま
)
ある奇怪な事件を想起した。
撥陵遠征隊
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
偶々
(
たまたま
)
外的の関係は教師と生徒であっても、本能の発露は村の若衆と小娘との情事めいています。
惨めな無我夢中:福知山高女の事件について
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
紙の古きは大正六年はじめて万年筆を使用されし以前に
購
(
あがな
)
われしものを
偶々
(
たまたま
)
引出して用いられしものと覚しく、墨色は未だ新しくしてこの作の近き頃のものたる事を
証
(
あか
)
す。
遺稿:01 「遺稿」附記
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
遺書を見るに及びて
益
(
ますます
)
復讐
(
ふくしゅう
)
の志を固うす。
偶々
(
たまたま
)
久吉順礼姿となりて楼門下に来り、五右衛門と顔を見合すを
幕切
(
まくぎれ
)
とす。これを読まばこの筋の評する
価
(
ねうち
)
なきこと自ら
明
(
あきらか
)
ならん。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
老人はどこかへこの怒りの情を表現せずにはいられぬ。
偶々
(
たまたま
)
そばにふらふらと歩いている失業者、学生、或いはその他の通行人が来る。老人は彼らに向かって演説を始める。
蝸牛の角
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
盗るものは必ず
現金
(
げんなま
)
と決っておりますが、不思議なことに、一夜のうちに、二里も三里も離れた、山の手と下町を荒したり、
偶々
(
たまたま
)
人に追われても、疾風のごとく逃げ去って
銭形平次捕物控:042 庚申横町
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして
偶々
(
たまたま
)
、上等のものにありついた時は、また、素晴らしく
悦
(
よろこ
)
ぶ事も出来ようという訳だ。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
そんなところに
偶々
(
たまたま
)
シメジと呼ぶ白い茸が早く
簇生
(
そうせい
)
していることがあるので、注意深い眼を見張って桜の幹に片手をかけつつ、くるりと向うへ
繞
(
めぐ
)
って行く粂吉を見ることがある。
茸をたずねる
(新字新仮名)
/
飯田蛇笏
(著)
偶々
(
たまたま
)
第十六世紀の宗教戦時代に、スイスの Valais の村民が他宗派の圧迫を
蒙
(
こうむ
)
り、子供たちを引き連れ、Aletsch 氷河の遠方まで、Viesch 谷に沿うて
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
その他の地方では
偶々
(
たまたま
)
同じ語があっても、それは
只
(
ただ
)
至って限られたる意味に用いられる。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
また
偶々
(
たまたま
)
庭に出るとそこから採集して来た植物を今でも昔と同じく標品に製作して他日の考証に備える用意を怠ってなく、その押紙を取換える事など皆自分でやらんと気が済まない。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
年寄なぞに
偶々
(
たまたま
)
見覚えがあって会釈しても、相手はキョトンとした顔をしていた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
防禦軍を指揮せんがために戦場に
赴
(
おもむ
)
こうとしたが、
偶々
(
たまたま
)
途中で民会において内乱を起さんことを議しているという報知を得たので、直ちに引返し、民会に赴いてこれを鎮撫しようとした。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
後に至っても
偶々
(
たまたま
)
師匠が当時のことを私に話して、本当に媒酌人をするということは重大な責任のあることを語られましたが、この時の心配苦労の一通りでなかったことが推察されました。
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そして、これは都会の人間から
永劫
(
えいごう
)
に直接具体的には聞き得ず、こういう
偶々
(
たまたま
)
の場合、こういう自然現象の際に於て、都会に住む人間の底に潜んだ嘆きの総意として、聴かれるのであった。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それもこの
気息奄々
(
きそくえんえん
)
たる場面を活気づけようとして、わざわざ姿を現わしでもしたように、
蓙
(
ござ
)
がけの荷を積んだ荷馬車で
偶々
(
たまたま
)
一人の百姓がそこへ乗りこんで来たればこそで、いつもだったら
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
故にその死を取らんとするに当りて
偶々
(
たまたま
)
或
(
ある
)
事情によって死せざるを得る時は、その病的観念は却て破壊し潰滅して、そこに健的の人と更生し、即ち勇気に満ち希望に生くる人となって働き出し
貧富幸不幸
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
偶
常用漢字
中学
部首:⼈
11画
々
3画
“偶”で始まる語句
偶
偶然
偶〻
偶像
偶人
偶合
偶時
偶中
偶座
偶数