人非人にんぴにん)” の例文
命が惜いように見えるでしょうか? わたしはそれほど恩義を知らぬ、人非人にんぴにんのように見えるでしょうか? わたしはそれほど、——
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「いい訳はあるまい。あさましい人非人にんぴにん。その風俗をした姿を、羅馬ローマの町の辻にさらしものにして、お前の肉親たちにも見せてやりたい」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よくも孝助を弓のおれったな、それのみならず主人を殺し、両人ふたり乗込んで飯島の家を自儘じまゝにしようと云う人非人にんぴにん、今こそ思い知ったか
普通に非人という語は「人非人にんぴにん」で、人にして人に非ずだと解しておりますが、それは後世の思想で、残酷な解釈であります。
実に立派な口上を有仰おつしやいましたでは御座いませんか、それ程義のお堅い貴方なら、何為なぜこんな淫乱いんらん人非人にんぴにん阿容おめおめけてお置き遊ばすのですか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
葉子のような人非人にんぴにんはこうしてやるぞといって、わたしを押えつけて心臓でも頭でもくだけて飛んでしまうほど折檻せっかんをしてくれたらと思うんですの。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
我々は単に、空想、情熱、主観等の語を言うだけでも、その詩的のゆえ嘲笑ちょうしょうされ、文壇的人非人にんぴにんとして擯斥ひんせきされた。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
「おのれ……コノ人非人にんぴにん。キ……貴様はコノ俺を……オ……オモチャにして殺すのか……コ、コ、コノ冷血漢……」
怪夢 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「畜生、まったくそうだ! 畜生!……下司げす野郎……人非人にんぴにん! そうだ人非人だ!……おれは大嫌いだ。大嫌いだ。……死んじまうがいいや、死にやがれ!」
犧牲ぎせいにしてもおまへさまのおこゝろうかゞさききてかへねんはなし父御てゝごさまの今日けふおほ人非人にんぴにん運平うんぺいむすめ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お辰の話きいては急につのを折ってやさしく夜長の御慰みに玉子湯でもしてあげましょうかと老人としより機嫌きげんを取る気になるぞ、それを先度せんども上田の女衒ぜげんに渡そうとした人非人にんぴにん
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
とらへてくれう。……やい、モンタギューめ、破廉恥はれんち所行しょぎゃうめい。うらみ死骸むくろにまでおよぼさうとは、墮地獄だぢごく人非人にんぴにんめ、引立ひきたつる、尋常じんじゃういてい。けてはおかぬぞ。
「畜生! 犬! 人非人にんぴにん! もう貴様には用はないんだ! 出て行けったら出て行かんか!」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
仮名手本かなでほん忠臣蔵』の作者竹田出雲たけだいずも斧九太夫おのくだゆうという名を与えられて以来、殆ど人非人にんぴにんのモデルであるようにあまねく世間に伝えられている大野九郎兵衛という一個の元禄武士は
磯部の若葉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
妾は驚きつつまた腹立たしさのなく、骨肉の兄と思えばこそかく大事を打ち明けしなるに、卑怯ひきょうにも警察に告訴して有志の士をきずつけんとは、何たる怖ろしき人非人にんぴにん
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「さようさよう。同じ大石殿の家来のちゅうにも、瀬尾孫左衛門のような人非人にんぴにんもあれば、またあんな忠義なものもある。まさかの場合になって、始めて人の心は分るものでござるな」
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
ほとんど最下等の労働者にさえよわいされない人非人にんぴにんとして、多勢たぜいの侮辱を受けている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今にも貴嬢あなた打擲ちやうちやくなさるかと、お側に居る私さへ身がふるひました——それに奥様の悪態を御覧遊ばせ、恩知らずの、人非人にんぴにんの、なんのと、ても口にされる訳のものでは御座いませぬ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
見返みかへらぬとは鳥獸におとりしやつ親でもなし子でもなし見下果たる人非人にんぴにん切齒はがみをなせども又外にべき樣も有ざれば家財雜具かざいざふぐを人手に渡し其身は嫁と諸共もろともに淺草諏訪町にて裏店を借請かりうけすゝぎ洗濯せんたく賃仕事ちんしごと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
横領しようと企らんだ、飛んでもない人非人にんぴにんなんでございます
蛇性の執念 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
何うも生きて居ては操が立たんから自害をさしてくれと云った、な、これ仮令たとい悪事を知ったとて人を生埋いきうめにするような人非人にんぴにんの其の方でも
「き、貴さま如き、義も恩も知らぬ人間から、武門の難に立った母と子の心がけを、講釈こうしゃくしてもらおうとは思わん。人非人にんぴにんめが、恥を知れッ」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その河童はだれかにかえるだと言われ、——もちろんあなたも御承知でしょう、この国で蛙だと言われるのは人非人にんぴにんという意味になることぐらいは。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そうして吾輩をこの世に二人といない、極悪無道の人非人にんぴにんとして君に指摘させようとしているのだよ
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
らぬいままでどほ嫁舅よめしうとになりたしとかきいあきれるなりかんがへて人非人にんぴにん運平うんぺいむすめ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
殺した事も皆々みな/\汝ぢだと疑つてゐるぞ此盜人野郎ぬすびとやらう乞食こじきに近い此彌十よりは遙かおとりし人非人にんぴにんめサア言わけが有なら返答へんたふろと大聲おほごゑに言こめけるに流石さすが不敵ふてきの段右衞門も更に無言むごんとなり此時に至つて大いに赤面せきめんたる有樣なれども未だ白状はざりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
見るも浅ましき人非人にんぴにんども、なんの面目あってこれへ来たか。ひとたび窮すれば、関羽を呉へ売り、ふたたび窮すれば、呉を裏切って馬忠の首をくわえ来る。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
相「へい、やっていますか、呆れたものだ、そういえばちら/\そんな噂もあるが、恩人の思いものをそんな事をして憎い奴だ、人非人にんぴにんですねえ、それから/\」
実際私は殺人の罪悪をぬり隠して、N家の娘と資産とを一時盗もうと企てている人非人にんぴにんなのでございます。私は顔が熱くなって参りました。胸が苦しくなって参りました。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
人非人にんぴにんだと? おい久米一、うぬはどれほどな名人だか知らねえが、余り慢心して気まで変にならねえがいい。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄の自滅をするという事をくわしく知って居ながら、ういう不都合をするとは云おう様ない人非人にんぴにん
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
恩を仇なる汝が不所存、云おうようなき人非人にんぴにん、此の場において槍玉に揚げてくれるから左様心得ろ
「毒蛇といってあきたらねえ人非人にんぴにん、足蹴ぐらいはやすいこったわ」
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なに……これ人非人にんぴにん……その形姿なりは何んだ、能くもずう/\しく其様そんな真似をして此処へ来て
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
人非人にんぴにん、斬ってしまえッ!」伊那丸の命令一下に
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其のとがを梅三郎に負わそうと存じて、証拠の物を取置き、其の上ならず御舎弟様を害そうと致した事も存じてる、百八十余里へだった国にいても此の福原數馬はく心得てるぞ、人非人にんぴにん
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いたかっ、人非人にんぴにん!」と、奮いかかってきた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
云おうようなき人非人にんぴにん最早逃げる道はないから覚悟をしろ
「に、人非人にんぴにんめッ」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)