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一頃
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ひところ
ふりがな文庫
“
一頃
(
ひところ
)” の例文
さるにても、
御坊塚
(
おんぼうづか
)
のこの本陣も昼の
一頃
(
ひところ
)
にくらべると、何と、
寥々
(
りょうりょう
)
たる松風の声ばかりではあると、彼は、
憮然
(
ぶぜん
)
として見まわした。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その後も地方を今紫の名を売物にして、若い頃の男舞いを持ち廻っていた様であった。
一頃
(
ひところ
)
は、根岸に待合めいたこともしていた。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
と祖母さんも言って、
一頃
(
ひところ
)
は電車に乗ってさえ
眩暈
(
めまい
)
が起ったほどの節子に引越の手伝いの出来る時が来たことを
悦
(
よろこ
)
び顔に見えた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
一頃
(
ひところ
)
私はその近所に居たので、毎日のやうに通つて麥酒を飮んだり、人氣のない廣間の中で、ぼんやり物を考へながら、秋の日の午後を暮してゐた。
宿命
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
一体僕は
稟賦
(
ひんぷ
)
と習慣との種々な関係から、どこに出ても傍観者になり勝である。西洋にいた時、
一頃
(
ひところ
)
大そう心易く附き合った爺いさんの学者があった。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
相変らずの黄いろい顔だが、さすがに
眼
(
め
)
の中に、
一頃
(
ひところ
)
の無分別さだけはなくなりましたね。やっと
愛玩用
(
あいがんよう
)
の小犬じゃなくて、一人前の男に見えますよ。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
向
(
むか
)
う
側
(
がは
)
の
湯屋
(
ゆや
)
に
柳
(
やなぎ
)
がある。
此間
(
このあひだ
)
を、
男
(
をとこ
)
も
女
(
をんな
)
も、
一頃
(
ひところ
)
揃
(
そろ
)
つて、
縮緬
(
ちりめん
)
、
七子
(
なゝこ
)
、
羽二重
(
はぶたへ
)
の、
黒
(
くろ
)
の
五紋
(
いつゝもん
)
を
着
(
き
)
て
往
(
ゆ
)
き
來
(
き
)
した。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
母の顔を見るたびに、彼女を
欺
(
あざ
)
むいてその日その日を
姑息
(
こそく
)
に送っているような気がしてすまなかった。
一頃
(
ひところ
)
は思い直してでき得るならば母の希望通り千代子を
貰
(
もら
)
ってやりたいとも考えた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
父の善良なこと父が
曾
(
かつ
)
て私を誰れよりも可愛がつてくれたこと、父が
一頃
(
ひところ
)
親類先の
旧
(
ふる
)
い借金に苦しんでゐた当時の心事を私は自分の記憶から呼び起しては父に対する感傷的な涙を味はつた。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
「おう、おう、お心にもない
一頃
(
ひところ
)
の戦には、さこそ、お心を
労
(
つか
)
われたことでおざろう。したが、まだ少々、御苦労事が残っておりますな」
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一頃
(
ひところ
)
の熱狂に比べると、町もシーンとして来た、小諸停車場の前で吹く
喇叭
(
らつぱ
)
の
音
(
ね
)
が町の空に響き渡つた。入営するものを寄せ集めの
相図
(
あひづ
)
だ。
突貫
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
江の浦口野の
入海
(
いりうみ
)
へ
漾
(
ただよ
)
った、漂流物がありましてな、
一頃
(
ひところ
)
はえらい騒ぎでございましたよ。浜方で拾った。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それから
一頃
(
ひところ
)
は、博士が歸つて湯を使ふ所へ、母君が來て用事を話すことになつてゐた。
半日
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
一頃
(
ひところ
)
ならば
市中
(
まちなか
)
の塔や
空寺
(
あきでら
)
でも堂々と住んでいられたものが、次第に洛外に追われて、その洛外にも安心しては
棲
(
す
)
めなかった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
老大
(
ろうだい
)
」と言って、若い連中から
調戯
(
からか
)
われるのを意にも留めずにいた岡等より
年長
(
としうえ
)
の美術家もあったが、その人の
一頃
(
ひところ
)
住んだ画室も同じ家つづきにある。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
恁
(
かゝ
)
る
趣
(
おもむき
)
を
知
(
し
)
つたため、
私
(
わたし
)
は
一頃
(
ひところ
)
は
小遣錢
(
こづかひ
)
があると、
東京
(
とうきやう
)
の
町
(
まち
)
をふら/\と
俥
(
くるま
)
で
歩行
(
ある
)
く
癖
(
くせ
)
があつた。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
自分は一時の権威者としてフォイトに脱帽したに過ぎないのである。それと丁度同じ事で、
一頃
(
ひところ
)
芸術の批評に口を出して、ハルトマンの美学を根拠にして論じてゐると、或る後進の英雄が云つた。
妄想
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「その信長を、
一頃
(
ひところ
)
は、稀なわがままものよ、
阿呆
(
あほう
)
の殿よと、今川家などにおいても、よう笑いばなしに取沙汰があったが」
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「これでも繁ちゃんは、
一頃
(
ひところ
)
から見るといくらか
温順
(
おとな
)
しく成ったろうか」と岸本が言出した。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
只管
(
ひたすら
)
人懐
(
ひとなつ
)
かしさに、進んで、喜んで朝から出掛ける……
一頃
(
ひところ
)
皆無
(
かいむ
)
だつた
旅客
(
りょかく
)
が急に
立籠
(
たてこ
)
んだ時分は
固
(
もと
)
より、今夜なども
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
の
落溜
(
おちたま
)
つたやうに方々から
吹寄
(
ふきよ
)
せる客が十人の上もあらう。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
誰が作ったのか、こう長歌めいたことばに、おのずからな節をつけて、三々五々、水戸の城下を
横刀闊歩
(
おうとうかっぽ
)
、
一頃
(
ひところ
)
は高唱して
憚
(
はばか
)
らなかったこともある。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
言
(
い
)
って、
一頃
(
ひところ
)
はよく
彼女
(
かのじょ
)
のところへ
遊
(
あそ
)
びに
通
(
かよ
)
って
来
(
き
)
た
近所
(
きんじょ
)
の
小娘
(
こむすめ
)
もある。
光子
(
みつこ
)
さんといって、
幼稚園
(
ようちえん
)
へでもあがろうという
年頃
(
としごろ
)
の
小娘
(
こむすめ
)
のように、
額
(
ひたい
)
のところへ
髪
(
かみ
)
を
切
(
き
)
りさげている
児
(
こ
)
だ。
伸び支度
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
……そこで
一頃
(
ひところ
)
は東京
住居
(
ずまい
)
をしておりましたが、何でも
一旦
(
いったん
)
微禄
(
びろく
)
した家を、
故郷
(
ふるさと
)
に
打
(
ぶ
)
っ
開
(
ぱだ
)
けて、村中の
面
(
つら
)
を見返すと申して、
估券
(
こけん
)
潰
(
つぶ
)
れの古家を買いまして、両三年
前
(
ぜん
)
から、その伜の学士先生の嫁御
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夜明けの
一頃
(
ひところ
)
は濃密な霧だった。それに一万以上の軍勢がつかう兵糧の
炊
(
かし
)
ぎに、陣々の炊煙もたちこめて、松の多い尼ヶ崎一帯は、松か霧か人か煙か。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
東京
(
とうきやう
)
で『ネツキ』といふ
子供
(
こども
)
の
遊
(
あそ
)
びのことを
父
(
とう
)
さんの
田舍
(
ゐなか
)
では『シヨクノ』と
言
(
い
)
ひます。
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
は
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
なりに
子供
(
こども
)
の
遊
(
あそ
)
びにも
流行
(
はやり
)
がありまして、
一頃
(
ひところ
)
『シヨクノ』が
村中
(
むらぢう
)
に
流行
(
はや
)
りました。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
一頃
(
ひところ
)
から見ると、
清洲
(
きよす
)
の町はさびしくなっていた。人口も減り、大きな商家や侍屋敷の数も目立って
減
(
へ
)
ってきた。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人は
詭謀
(
きぼう
)
や
反間
(
はんかん
)
の中に生きているので、要心すぎて疑いぶかく、妻にさえ油断せず、骨肉の間さえ破壊されかけた
一頃
(
ひところ
)
の——社会悪はなお人間のなかに
澱
(
よど
)
んでいた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一頃
(
ひところ
)
、露命をつないだ馬の沓の恩は忘れそうじゃと、後々、
誡
(
いまし
)
め合うて、細川家へお抱えとなった今月の今日を、毎年の寄合い日と決め、こうして
藁
(
わら
)
の
莚
(
むしろ
)
に、昔をしのび
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
伝統すでに二千年、ときには
建武
(
けんむ
)
の前後、室町末期のごとき、世風の
壊敗
(
かいはい
)
、人心のすさびなど、嘆かわしい
一頃
(
ひところ
)
はあったにせよ、皇室への臣民の真心にはかわりはなかった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どの顔もどの顔も、わが世の春を
謳歌
(
おうか
)
した藤原氏の
一頃
(
ひところ
)
のように、
長閑
(
のど
)
けく見えた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「美濃の内乱に出会いましたので、関所固めや、駅伝の調べが
一頃
(
ひところ
)
やかましくて」
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
戊辰
(
ぼしん
)
前に洋行したという噂のある渋沢栄一も帰朝して、
一頃
(
ひところ
)
、静岡の紺屋町に商法会所を創立して
頭取
(
とうどり
)
となっていたが今では新政府の官員になって東京に羽振りをきかせているという。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、いうような情熱が、
二十歳
(
はたち
)
をこえた
一頃
(
ひところ
)
の彼には、放縦、狂躁、浮薄なかたちをもって、不良質をひどく素行にあらわしていたものだったが、それが雪乃と恋をするようになってから
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一頃
(
ひところ
)
は、目付役兼検見方として、千曲川を改修し、山には檜を植林し、低地には、
林檎苗
(
りんごなえ
)
を奨励した。又、温泉の利用だの、火薬の製法だの、
葡萄酒
(
ぶどうしゅ
)
の作り方などをも、才学にまかせて試みた。
脚
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一頃
(
ひところ
)
は、鬼のように追い廻し、江戸では一つ家においたこともあるが、決しておれに心はゆるさない。……考えてみれば、関ヶ原の
戦
(
いくさ
)
へ出た後から、お通は、おれという枝から離れて地へ落ちた花だ。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
一頃
(
ひところ
)
からみれば、近頃は、
金剛力
(
こんごうりき
)
ぞ」
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
頃
常用漢字
中学
部首:⾴
11画
“一”で始まる語句
一
一人
一寸
一言
一時
一昨日
一日
一度
一所
一瞥