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龕
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がん
ふりがな文庫
“
龕
(
がん
)” の例文
斷崖の一隅に
龕
(
がん
)
の形をなしたる低き岸あり。灌木
疎
(
まばら
)
に生じて、深紅の花を開ける草之に
雜
(
まじ
)
れり。岸邊には一隻の帆船を繋げるを見る。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
岩壁に懸けられた
面
(
おもて
)
達は、眼を開いたり眼を閉じたり、口を開いたり口を閉じたり、
龕
(
がん
)
の焔の揺れるに連れて、その表情を変えていた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
長い荒けずりのベンチの、安っぽい布をかけたのが、壁と天井とで形造られた広い
龕
(
がん
)
の前に、長々とおいてある。龕には低い窓がついている。
予言者の家で
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
或
(
ある
)
龕
(
がん
)
の中へ身を片寄せて二三
間
(
げん
)
後
(
あと
)
に成つて居る和田さんと
良人
(
をつと
)
とを待ち合せた時、幼い時に聞いた
三途
(
さんづ
)
の河の
道連
(
みちづれ
)
の話を思ひ出すのであつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
暗い片隅には、聖像の前に燈明が上げてある。このちら/\する赤い火があるために、部屋が寺院にある
龕
(
がん
)
か、遺骨を納める石窟かと思はれる。
板ばさみ
(新字旧仮名)
/
オイゲン・チリコフ
(著)
▼ もっと見る
そしてその上に壁に切り込んだ
龕
(
がん
)
のやうな所から大きな鍋が吊り下げてあつて、中には一ぱい
麦酒樽漬
(
ビイルだるづけ
)
にしたキヤベツと豚の肉とが入れてある。
十三時
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
「わたしが自分で
遣
(
や
)
ります。」こう云って、エルリングは左の方を指さした。そこは
龕
(
がん
)
のように
出張
(
でば
)
っていて、その中に
竈
(
かまど
)
や
鍋釜
(
なべかま
)
が置いてあった。
冬の王
(新字新仮名)
/
ハンス・ランド
(著)
旅人は
懼
(
おそ
)
れて救いを求めると、主人は承知して、
龕
(
がん
)
のなかに供えてある竹筒を取り出し、押し頂いて彼に授けた。
中国怪奇小説集:11 異聞総録・其他(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一学
(
いちがく
)
もおなじようにすすぎをおえ、
神殿
(
しんでん
)
の
龕
(
がん
)
にみ
灯
(
あかし
)
をともした。ふとみると、そこに
禁裡
(
きんり
)
のみ
印
(
しるし
)
のある
状筥
(
じょうばこ
)
がうやうやしく三ぼうの上にのせられてある。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
セルギウスは草庵の小さい
龕
(
がん
)
の前で晩のミサを読んだ。草庵には這入られるだけの人が這入つてゐた。二十人位もゐたゞらう。皆位の高い人や金持である。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
鶴見はその石の頂上にある平面のところに、かつては小さな
龕
(
がん
)
が
祀
(
まつ
)
られてあったものと想像した。この石はそこの村での或る信仰の対象物であったらしい。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
関家の定紋九曜を
刳
(
く
)
りぬいた白木の
龕
(
がん
)
で、あなたが死ぬ時一処に
牧場
(
ぼくじょう
)
に埋めて牛馬の食う草木を肥やしてくれと遺言した老夫人の白骨は、此中に在るのだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
石垣の中に作り込めたる
龕
(
がん
)
に、受苦聖母の祈願像あり。その前に花瓶。グレエトヘンそれに新なる花を挿す。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
倫敦塔の歴史は英国の歴史を
煎
(
せん
)
じ詰めたものである。過去と云う
怪
(
あや
)
しき物を
蔽
(
おお
)
える
戸帳
(
とばり
)
が
自
(
おの
)
ずと裂けて
龕
(
がん
)
中の
幽光
(
ゆうこう
)
を二十世紀の上に反射するものは倫敦塔である。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし僕の目を惹いたのは何よりも両側の
龕
(
がん
)
の中にある大理石の半身像です。僕は何かそれ等の像を見知つてゐるやうに思ひました。それも亦不思議ではありません。
河童
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
木道具や窓の
龕
(
がん
)
が茶色にくすんで見えるのに、
幼穉
(
ようち
)
な現代式が施してあるので、異様な感じがする。
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
一劃ごとに扉が附いているので、その間は
隧道
(
トンネル
)
のような暗さで、昼間でも
龕
(
がん
)
の電燈が
点
(
とも
)
っている。左右の壁面には、
泥焼
(
テルラコッタ
)
の朱線が彩っているのみで、それが唯一の装飾だった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
武男は母を憤らず、浪子をば今は世になき妻を思うらんようにその心の
龕
(
がん
)
に祭りて、浪子を思うごとにさながら遠き野末の悲歌を聞くごとく、一種なつかしき
哀
(
かな
)
しみを覚えしなり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
朋輩
(
ほうばい
)
の僧達は
龕
(
がん
)
を
買
(
こ
)
うてその骨を焼き、骨塔を雷峰の下に造ったのであった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
地蔵菩薩の
龕
(
がん
)
かなにかのやうに負ひ
春と修羅 第二集
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
永い間の年月に、堅固な錠前も
腐蝕
(
くさ
)
ったものと見え、手に連れて扉が開いた。扉の向こうに
龕
(
がん
)
がある。龕の中に人がいる。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
食
畢
(
をは
)
りて媼は我を
牽
(
ひ
)
きて
梯
(
はしご
)
を登り、二階なる二
龕
(
がん
)
にいたりぬ。是れわれ等三人の
臥房
(
ねべや
)
なり。わが龕は戸口の向ひにて、戸口よりは最も遠きところにあり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
洞
(
ほら
)
の左右には
処処
(
ところ/″\
)
に暗い大きな
龕
(
がん
)
が掘られて居て、人人は蝋燭を
其
(
その
)
中へ差入れて
覗
(
のぞ
)
いたが何物も見えなかつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
龕
(
がん
)
のうえから、白い花びらが
一
(
ひと
)
ひら
蛾
(
が
)
のように舞って、姫の黒髪にとまった。万野が手をのばす前に、姫は自身の手でそれをとって、指の先で、
弄
(
もてあそ
)
びながら
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僕はちょっと
憂鬱
(
ゆううつ
)
になり、次の
龕
(
がん
)
へ目をやりました。次の龕にある半身像は
口髭
(
くちひげ
)
の太い
独逸
(
ドイツ
)
人です。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
許宣は法海禅師の弟子となって雷峯塔の下におり、その塔を七層の大塔にしたが、後、業を積んで
坐化
(
ざけ
)
してしまった。朋輩の僧達は
龕
(
がん
)
を買ってその骨を焼き、骨塔を雷峯の下に造ったのであった。
雷峯塔物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その杭の上にささやかな
龕
(
がん
)
を載せて、浮世の波の押寄せる道の辻に立てて、かすかな
一穂
(
いっすい
)
の
燈明
(
とうみょう
)
をかかげようと念じていたことも、今となってはそれもはかない夢であった。かれには夢が多すぎた。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
草庵と云ふのは山の半腹を横に掘り込んだ洞窟である。亡くなつた先住イルラリオンもそこに葬つてある。即ち洞窟の一番奥の
龕
(
がん
)
が墓になつてゐて、その隣の龕が
後住
(
ごぢう
)
の寝間になつてゐるのである。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
隅や
龕
(
がん
)
に甲冑が飾ってある。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
島太夫は
恭
(
うやうや
)
しく
一揖
(
いちゆう
)
したが、そろそろと
龕
(
がん
)
まで歩いて行き燭台に
仄
(
ほの
)
かに灯をともした。部屋の中が
朦朧
(
もうろう
)
と明るんで来る。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
三四年前反対派の大騒ぎがあつて改葬されたゾラの
棺
(
くわん
)
はユウゴオと同じ
龕
(
がん
)
の中に
向
(
むかひ
)
合せに据ゑられて居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
その一
夕
(
せき
)
、相府の宴には、
踵
(
きびす
)
をついでくる客の車馬が迎えられた。相府の群臣も陪席し、大堂の欄や歩廊の
廂
(
ひさし
)
には、華燈のきらめきと
龕
(
がん
)
の明りがかけ連ねられた。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その胸は高く躍りて、その聲は折るれども
撓
(
たわ
)
まぬ力を歌ひぬ。我歌はこゝに終り、喝采の聲は座に滿ちぬ。獨り我は
瞚
(
またゝき
)
きもせで、
龕
(
がん
)
の前なる老女をまもり居たり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
しかし僕の目をひいたのは何よりも両側の
龕
(
がん
)
の中にある大理石の半身像です。僕は何かそれらの像を見知っているように思いました。それもまた不思議ではありません。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あの奥の
龕
(
がん
)
のような所の
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
岩を
刳
(
く
)
り抜いて作られた
龕
(
がん
)
から、獣油の灯が仄かに射し、
石竹
(
せきちく
)
色の夢のような光明が、畳数にして二十畳敷きほどの、洞窟の
内部
(
なか
)
を
朦朧
(
もうろう
)
と
烟
(
けむ
)
らせ
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
粟田
(
あわた
)
山の春は、その部屋いっぱいに
香
(
にお
)
って、微風が、
龕
(
がん
)
か、
瓔珞
(
ようらく
)
か、どこかの
鈴
(
れい
)
をかすかに鳴らした。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その中にただゴティック風の柱がぼんやり木の
肌
(
はだ
)
を光らせながら、高だかとレクトリウムを守っている。それからずっと堂の奥に
常燈明
(
じょうとうみょう
)
の
油火
(
あぶらび
)
が一つ、
龕
(
がん
)
の中に
佇
(
たたず
)
んだ聖者の像を照らしている。
おしの
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
水がピチャピチャと石段を洗い、小波をウネウネと立てている。石段の左右に
龕
(
がん
)
ある。青白い
燈火
(
ひかり
)
が射しいる。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
二つの
吊燈明
(
つりとうみょう
)
と
龕
(
がん
)
の内へ
燈
(
ひ
)
を入れに行ったのである。そしてもどると、初めて良人の隣に坐った。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大きな書架、
龕
(
がん
)
の中の半身像、三四枚の肖像の額、壁にとりつけた牡鹿の頭、——彼の周囲にはそれらの物が、
蝋燭
(
らふそく
)
の光に照らされながら、少しも派手な色彩のない、冷かな空気をつくつてゐた。
山鴫
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
愛慾をそそる香の煙り! 愛慾をそそる
龕
(
がん
)
の
燈火
(
ともしび
)
! 依然として洞内は淫らであり、依然として洞内は物凄い。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
廊には、
龕
(
がん
)
の灯が、ほのかに
点
(
とも
)
る。
勤行
(
ごんぎょう
)
の僧たちの姿が、かなたの本堂で、赤くやけて見えた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
トウルゲネフは大きな息をしながら、ふと
龕
(
がん
)
の前に足を止めた。
山鴫
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と、握っていた薄刃物を、天井から宙へ下がっている、
唐土
(
からくに
)
渡りらしい飾りのついた、切り子形の
龕
(
がん
)
の
燈火
(
ひ
)
にかざしながら、医師は決心したように云った。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
愛宕
(
あたご
)
、清水をすぐ下に望む
大廂
(
おおびさし
)
の
彼方
(
かなた
)
に、夕富士の暮れる頃になると、百間廊下の
龕
(
がん
)
には見わたす限りの
燈
(
あかし
)
が連なり、御所の
上﨟
(
じょうろう
)
かと
紛
(
まご
)
う風俗の美女たちが、琴を抱いて通り
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
長老はちょっと黙った
後
(
のち
)
、第三の
龕
(
がん
)
の前へ案内しました。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今は
凄
(
すさま
)
じく荒れ果てて器具も調度も
頽然
(
たいぜん
)
と古び
御簾
(
みす
)
も
襖
(
ふすま
)
も引きちぎれ部屋に不似合いの塗りごめの
龕
(
がん
)
に二体立たせ給う
基督
(
キリスト
)
とマリヤが
呼吸
(
いきづ
)
く気勢に折々光り
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それから起こった光景はと云えば、床が傾いたので
龕
(
がん
)
が倒れ、龕が倒れたので火を発し、それが
器物
(
うつわ
)
へ燃え付いて、地下室が見る見る火事になったのである。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その間も香炉からは煙りが立ち、微妙に部屋を
馨
(
かお
)
らせている。その間も
龕
(
がん
)
からは
菫色
(
すみれいろ
)
の
燈火
(
ひかり
)
が、ほんのりと四方を照らしている。そうして聞こゆる催情的音楽!
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
龕
漢検1級
部首:⿓
22画
“龕”を含む語句
神龕
龕燈
龕燈提灯
仏龕
小龕
御龕
龕燈返
葬龕
窓龕
白狐龕
龕灯
壁龕
船龕燈
石龕
龕灯提灯
釣龕燈
龕前
聖像龕
袂龕灯
起龕
...