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黄楊
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つげ
ふりがな文庫
“
黄楊
(
つげ
)” の例文
そういえば、私が本のうしろに捺す印を
黄楊
(
つげ
)
で手紙の字からこしらえて、いつか押しておめにかけたの覚えていらっしゃるでしょうか。
獄中への手紙:07 一九四〇年(昭和十五年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
黄楊
(
つげ
)
の木の二三本に
霰
(
あられ
)
のやうなこまかい白い花がいつぱいに咲いてゐるのが、隅の方に貧しくしほらしい裝ひを見せてゐたけれ共
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
そこでエミリアンは、さつそく町の方へいつて、大きな
鳥籠
(
とりかご
)
と、それをつゝむ黒い
布
(
きれ
)
と、
黄楊
(
つげ
)
の青葉をたくさん、買ひこんできました。
エミリアンの旅
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
黒襟の袢纏か何かで洗い髪に
黄楊
(
つげ
)
の横櫛という、国貞好みの仇っぽいお神さんを想像していた小圓太は大へん意外のような心持がした。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
「でも変ですよ。お母さんは、枝の日曜日(復活祭前の日曜)には
黄楊
(
つげ
)
の枝をもらいに連れてってくれると言っていたんだもの。」
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
興福寺の宝物の
華原磬
(
かげんけい
)
(鋳物で四
疋
(
ひき
)
の竜が
絡
(
から
)
んだもの)というものを
黄楊
(
つげ
)
で縮写したのを見ましたが、精巧驚くべきものでした。
幕末維新懐古談:78 谷中時代の弟子のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
さんざん考えた揚句、湯へ行くので持っていた
黄楊
(
つげ
)
の
梳
(
す
)
き
櫛
(
ぐし
)
に、自分の毛を五六本抜いて巻きつけ、万兵衛の
袂
(
たもと
)
にそっと入れた。
銭形平次捕物控:152 棟梁の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
はらりと下る前髮の毛を
黄楊
(
つげ
)
の
鬂櫛
(
びんぐし
)
にちやつと掻きあげて、伯母さんあの太夫さん呼んで來ませうとて、はたはた驅けよつて袂にすがり
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
それがどういうわけでお六櫛というのか
謂
(
いわ
)
れは聞きませんでしたが、とにかく本物の
黄楊
(
つげ
)
で作った特有な形をした櫛でした。
木曾御岳の話
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
強い西風は祭の行列の始まつてゐる間に吹き起つて、
黄楊
(
つげ
)
の枝々を地上に撒き散らし、暗い灰色の戸帳を空に敷いてゐた‥‥
氷島の漁夫:01 氷島の漁夫
(旧字旧仮名)
/
ピエール・ロティ
(著)
ありふれた三日月型の
黄楊
(
つげ
)
の櫛ですが、水のなかに漬かっていたにも似合わず、油で気味の悪い程にねば/\していました。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と、日常使用されていた
黄楊
(
つげ
)
の
櫛
(
くし
)
をおやりになった、というほどの話もある。恩賞と人心の周波ともいえるような微妙な雰囲気の程度がわかる。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
墓に向って左側に、一本の
黄楊
(
つげ
)
の木が植えられているが、いまはその木かげになって半ば隠れてよく見えなくなっている、一基の小さな墓がある。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
前面には、
黄楊
(
つげ
)
やその他の灌木類を植えた小さな花壇があった。しかし、この神聖な区画は、私たちは実際ほんのたまにしか通ったことがなかった。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
藪
(
やぶ
)
の中の
黄楊
(
つげ
)
の木の
胯
(
また
)
に
頬白
(
ほおじろ
)
の巣があって、幾つそこに
縞
(
しま
)
の入った卵があるとか、
合歓
(
ねむ
)
の花の咲く川端の
窪
(
くぼ
)
んだ穴に、何寸ほどの
鯰
(
なまず
)
と鰻がいるとか
洋灯
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
あたりを片付け
鉄瓶
(
てつびん
)
に湯も
沸
(
たぎ
)
らせ、
火鉢
(
ひばち
)
も拭いてしまいたる女房おとま、
片膝
(
かたひざ
)
立てながら
疎
(
あら
)
い歯の
黄楊
(
つげ
)
の
櫛
(
くし
)
で
邪見
(
じゃけん
)
に
頸足
(
えりあし
)
のそそけを
掻
(
か
)
き
憮
(
な
)
でている。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
一方には
黄楊
(
つげ
)
や、林檎や、梨や、
櫻桃
(
さくらんぼ
)
等の樹が立ち並び、他方の花壇には古めかしい樣々の花、
紫羅欄花
(
あらせいとう
)
や、
亞米利加撫子
(
アメリカなでしこ
)
、
櫻草
(
さくらさう
)
、三
色菫
(
しよくすみれ
)
などが
青萵
(
かはらにんじん
)
や
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
洗髪
(
あらいがみ
)
に
黄楊
(
つげ
)
の
櫛
(
くし
)
をさした若い職人の女房が松の湯とか小町湯とか書いた
銭湯
(
せんとう
)
の
暖簾
(
のれん
)
を掻分けて出た町の角には
伝通院
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「これ、おばさんのでなくて、往来に落ちていたよ。」といって、一枚の
黄楊
(
つげ
)
の櫛を鍋被の女の手に渡すと、
後
(
あと
)
も振向かずに一目散に逃げるように駆け出した。
櫛
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
印形を彫るには、我国の木彫と同様、小口をきざみ、そして木も
黄楊
(
つげ
)
のように見えるから、我国のと同じものなのであろう。人は誰でもみな印形を持っている。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
昼でも暗い
鬱蒼
(
うっそう
)
たる
竹藪
(
たけやぶ
)
に沿うて
石礫
(
いしころ
)
だらけの坂道を登って行くと、石垣を畳んだ大きな土手の上には
黄楊
(
つげ
)
の垣根が竹藪と並行に小一町ばかりも続いているのです。
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
藍の小弁慶のお召の
半纏
(
はんてん
)
を着て、鏡に向って立膝をしながら、洗い髪の
兵庫
(
ひょうご
)
に、
黄楊
(
つげ
)
の櫛を
無雑作
(
むぞうさ
)
に横にさして立ち上るところへ、二階から小娘が下りて来ました。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
木には
黄楊
(
つげ
)
、
椎
(
しい
)
、
檜
(
ひのき
)
、花には石竹、朝顔、
遊蝶花
(
ゆうちょうか
)
、
萩
(
はぎ
)
、
女郎花
(
おみなえし
)
などがあった。寺の林には蝉が鳴いた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
帯
(
おび
)
引占
(
ひきし
)
めて夫の……といふ
急
(
せ
)
き心で、昨夜待ち明した寝みだれ髪を、
黄楊
(
つげ
)
の
鬢櫛
(
びんくし
)
で掻き上げながら、その
大勝
(
だいかつ
)
のうちはもとより、慌だしく、方々心当りを探し廻つた。
夜釣
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
アントアネットの室の中を見回していた——(勉強の机はアントアネットの室に置いてあるのだった)——
黄楊
(
つげ
)
の小枝といっしょに
象牙
(
ぞうげ
)
の十字架が上方にかかってる
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
将棋の駒をつくったやつに聞いてみると、あちらの
黄楊
(
つげ
)
は日本の黄楊にくらべて、年輪がつまっていて、三倍ぐらい堅いそうです。やはり自然が苛烈で、そうなるんだね
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
ごく静かな通り路で、湖処山という有名な
黄楊
(
つげ
)
のたくさんある山があり、この山の下の村である。
故郷七十年
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
お節は両手をうしろの首筋の方へ廻して細い
黄楊
(
つげ
)
の
櫛
(
くし
)
で髪をときつけながら立つて居た。物置の戸口と柱一つを
界
(
さかひ
)
にして小窓が切つてある其外には
手洗鉢
(
てうづばち
)
が置いてある。
出発
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
赤い
攣
(
ちぢ
)
れた髪毛が額に迫り、その下で紅と栗との軟い顔がほつとり上気してゐる。黒く澄んだ、
黄楊
(
つげ
)
の葉の目が、やさしく、ただしシニカルでありたさうに折々見上げる。
夭折した富永太郎
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
泊岩
(
とまりいわ
)
の奇岩の
累々
(
るいるい
)
たるあたりは、これまた自らなる庭園で、小さな盆地には水を
湛
(
たた
)
え、
黄楊
(
つげ
)
、つつじなどの群生しているものは、皆
刈込
(
かりこ
)
んだような形をしており、有明海
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
歯は入歯でしたが、それが
鉄漿
(
かね
)
でも附けたかのように真黒で、
黄楊
(
つげ
)
で造らせたとのことでした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
(春はらと
訓
(
よむ
)
又同国に
原田
(
はるた
)
といふ所あり、原をはると訓す、ゆゑ
未詳
(
いまだつまびらかならず
)
。)一山みな
黄楊
(
つげ
)
のみといへり。五里飯塚駅。伊勢屋藤次郎の家に休す。此駅天満宮及納祖八幡の祠あり。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
そして雜木の茂つた灌木林の中に澤山の
黄楊
(
つげ
)
が見かけられた。犬黄楊らしかつたが、殆んどその木ばかりの茂つた所もあつた。さつき通つた村の名もこれから出たのだと思はれた。
梅雨紀行
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
或日暮にわしが
黄楊
(
つげ
)
の木にくぎられた路に沿うて、わしの家の小さな庭を散歩してゐると、気のせゐか楡の木の陰にわしと同じやうに歩いてゐる女の姿が見え、しかも其楡の葉の間からは
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
茣座小次郎、伊賀三郎、
黄楊
(
つげ
)
四郎の三人は、甲賀流忍術の達人であった。
五右衛門と新左
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「夜ははやあけたよ。忍藻はとくに起きつろうに、まだ声をも
出
(
い
)
ださぬは」
訝
(
いぶか
)
りながら床をはなれて忍藻の母は身繕いし、手早く口を
漱
(
そそ
)
いて顔をあらい、
黄楊
(
つげ
)
の
小櫛
(
おぐし
)
でしばらく髪をくしけずり
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
鹿児島は近在が
黄楊
(
つげ
)
の木の産地であるため、そこの
黄楊櫛
(
つげぐし
)
は仕事のよさで名があります。更になお名があるのはその町の
錫細工
(
すずざいく
)
で、伝統はどういう仕事が正しいのかを工人たちに教えています。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
お庄はお袋の指図で、浅草にいたころ挿したような
黄楊
(
つげ
)
の
櫛
(
くし
)
などを、前髪を広く取った島田髷の
頭髪
(
あたま
)
に挿さされた。そして手の足りない時は、座敷へ出て客の相手をもしなければならなかった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
油を吸った
黄楊
(
つげ
)
の櫛が、貝細工のような耳のうしろに悩ましく光っている
風情
(
ふぜい
)
、散りそめた姥桜にかっと夕映えが照りつけたようで、
熟
(
う
)
れ切った女のうまみが、はだけた胸元にのぞく膚の色からも
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
詳しい原因は私に納得できぬが、幼少からの經驗からいつても、木活字は材が
黄楊
(
つげ
)
にしろ櫻にしろ、屈りやすく高低が狂ひやすい。印刷機がプレスでなくばれんであれば尚さら汚かつたにちがひない。
光をかかぐる人々
(旧字旧仮名)
/
徳永直
(著)
黄楊
(
つげ
)
のさし
櫛
(
ぐし
)
がおちたのかと
思
(
おも
)
つたら、それは
三ヶ月
(
みかづき
)
だつた。
桜さく島:見知らぬ世界
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
代々木の
白樫
(
しらかし
)
がもと
黄楊
(
つげ
)
がもと飛びて
歩
(
あ
)
りきし
栗鼠
(
りす
)
の
子
(
こ
)
吾妹
(
わぎも
)
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
花に
匂
(
にお
)
いもない
黄楊
(
つげ
)
の枝が触れている呼鈴を力なく押す。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
其処には水に落ちたばかりの
黄楊
(
つげ
)
の櫛があった。
蟹の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
騾馬のひくべき其軛——
黄楊
(
つげ
)
の軛に
鈕
(
つまみ
)
あり
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
黄楊
(
つげ
)
の小櫛の
野口雨情民謡叢書 第一篇
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
はらりと下る前髪の毛を
黄楊
(
つげ
)
の
鬂櫛
(
びんぐし
)
にちやつと
掻
(
か
)
きあげて、伯母さんあの太夫さん呼んで来ませうとて、はたはた駆けよつて
袂
(
たもと
)
にすがり
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
散々考へた揚句、湯へ行くので持つてゐた
黄楊
(
つげ
)
の
梳
(
す
)
き
櫛
(
ぐし
)
に、自分の毛を五六本拔いて巻きつけ、萬兵衞の
袂
(
たもと
)
にそつと入れた。
銭形平次捕物控:152 棟梁の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
手にとって見せたのは
黄楊
(
つげ
)
の櫛なので、阿部さんも思わず口のうちで「おやっ」と云いました。それはたしかに例の櫛です。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
呟きながら、横へさした
黄楊
(
つげ
)
の
櫛
(
くし
)
で、洗い髪の毛の根を無性に掻きながら、
黒曜石
(
こくようせき
)
の歯をならべた
鉄漿
(
おはぐろ
)
の
唇
(
くち
)
から、かすかな舌打ちをもらしていた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“黄楊(ツゲ)”の解説
ツゲ(黄楊、柘植、樿、学名 : Buxus microphylla var. japonica)は、ツゲ科ツゲ属の常緑低木。別名で、ホンツゲ、アサマツゲ、コツゲなどともよばれる。主に西日本の暖かい地域に分布し、伝統的に細工物の材木として貴重とされ、高級な櫛や将棋の駒の材として知られるほか、垣根や庭木の植栽にも使われる。日本の固有変種。
(出典:Wikipedia)
黄
常用漢字
小2
部首:⿈
11画
楊
漢検準1級
部首:⽊
13画
“黄楊”で始まる語句
黄楊櫛
黄楊材
黄楊樹