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鬱々
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うつうつ
ふりがな文庫
“
鬱々
(
うつうつ
)” の例文
総
(
すべ
)
ての悩みも悲しみも、苦しみも
悶
(
もだ
)
えも、胸に秘めて、ただ
鬱々
(
うつうつ
)
と一人
哀
(
かな
)
しきもの思いに沈むというような可憐な表情を持つ花です。
季節の植物帳
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
しかし館は土塀に囲まれ、その上森のように
鬱々
(
うつうつ
)
とした、庭木にこんもり取り巻かれているので、仔細に見ることは出来なかった。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
祐天僧正の弘経寺にあった時
累
(
かさね
)
の怨霊を救った事、また境内の古松老杉
鬱々
(
うつうつ
)
たる間に祐天の植付けた
名号
(
みょうごう
)
桜のある事などが記されている。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
鬱々
(
うつうつ
)
として、いまにも何かはじまりそうな気分である。金剛寺門前町は、危機をはらんだまま、表面しずかに風にまかせている。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
母親は、やつれた面をあげ、夫をみあげたが、笏は、やはりちからなく坐ってしばらく黙っていたが、やっと
鬱々
(
うつうつ
)
しい口をひらいて言った。
後の日の童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
▼ もっと見る
ときどきは
鬱々
(
うつうつ
)
として生命を封付けられる
恨
(
うら
)
みがましい生ものの
気配
(
けは
)
いが、この半分
古菰
(
ふるこも
)
を冠った池の方に立ち
燻
(
くすべ
)
るように感じたこともあるが
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
従兄弟
(
いとこ
)
なり親友なり未来の……夫ともなる文三の
鬱々
(
うつうつ
)
として楽まぬのを
余所
(
よそ
)
に見て、
行
(
ゆ
)
かぬと云ッても勧めもせず、平気で澄まして
不知顔
(
しらぬかお
)
でいる
而已
(
のみ
)
か
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「いいや、もうおれの
堪忍
(
かんにん
)
もやぶれた。大丈夫たる者、
豈
(
あに
)
鬱々
(
うつうつ
)
として、この生を老賊の膝下に
屈
(
かが
)
んで過そうや」
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
隙間
(
すきま
)
に吹きこむ風を、彼のわかい年齢は防ぐすべを知らず、充分に教えられてもいなかった。無論彼はそんなことは考えなかった。ただ
鬱々
(
うつうつ
)
としていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
相変らず、ケルミッシュを
鬱々
(
うつうつ
)
としたものが覆っている。二人は前回の影響もあり、白昼幽霊をみる思い。
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
長崎の湾も小山は
水際
(
みづぎは
)
からすぐに
聳
(
そび
)
え立つて、そのまた小山には、
鬱々
(
うつうつ
)
と松が茂つてゐる、しかし上陸して見ると、植物はノオルウエイよりも
遙
(
はる
)
かに熱帯的である。
日本の女
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
薄寒き
棟割長屋
(
アパルトマン
)
の一室にて祝うことになったが、コン吉たるもの、風光
明媚
(
めいび
)
、風暖かに碧波
躍
(
おど
)
る、
碧瑠璃海岸
(
コオト・ダジュウル
)
の春光をはるかに思いやって
鬱々
(
うつうつ
)
として楽しまず、一日
ノンシャラン道中記:03 謝肉祭の支那服 ――地中海避寒地の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その晩いっぱいとあくる朝の間じゅう、わたしはなんだか
鬱々
(
うつうつ
)
と
沈
(
しず
)
み
込
(
こ
)
んだ気持で過した。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
彼女は自分の室にただ一人で、火の消えた暖炉のほとりにすわりながら、
鬱々
(
うつうつ
)
として晩を過ごした。暖炉に火を入れるだけの元気もなければ、床にはいるだけの力もなかった。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それとはあんな御気性だから、
怪我
(
けが
)
にも
仰有
(
おっしゃ
)
りはしないけれども、何をいったって、初めて男を知ったお姫様だ。
貴方
(
あなた
)
が内を出てからは、
鬱々
(
うつうつ
)
として人にもお逢いなさらない。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は焼け出されて津軽の生家の
居候
(
いそうろう
)
になり、
鬱々
(
うつうつ
)
として楽しまず、ひょっこり訪ねて来た小学時代の同級生でいまはこの町の名誉職の人に向って、そのような八つ当りの愚論を吐いた。
嘘
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼女はがっかり気落ちのした
凋
(
しお
)
れた顔つきになって、顔の両側には長い髪の毛が悲しげに垂れさがって、
鬱々
(
うつうつ
)
とした姿勢で思い沈んでいるところは、昔の
画
(
え
)
にある*罪の女にそっくりだった。
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
戯談
(
じょうだん
)
を言いかけられたりすることは苦しくてならぬふうである。
鬱々
(
うつうつ
)
と物思わしそうにばかりして以前とはすっかり変わった夫人の様子を源氏は美しいこととも、可憐なこととも思っていた。
源氏物語:09 葵
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
今も
守礼
(
しゅれい
)
の門は心を正せよと告げているのです。
歓会
(
かんかい
)
の石彫は神域を犯すなと守っているのです。
円覚
(
えんかく
)
の山門は修行せよと
誡
(
いまし
)
めているのです。
鬱々
(
うつうつ
)
たる城下の森は千歳をことほいでいるのです。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
灰色に
鬱々
(
うつうつ
)
とした雲は、
覆
(
おお
)
いかぶさるように空を
罩
(
こ
)
め、細い
白茶
(
しらちゃ
)
けた
路
(
みち
)
はひょろひょろと足元を抜けて、
彼方
(
かなた
)
の
骸骨
(
がいこつ
)
のような冬の森に消えあたりには、名も知らぬ雑草が、重なりあって折れ
朽
(
くち
)
ていた。
自殺
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
旅人は何か
鬱々
(
うつうつ
)
と考えに沈んでいるらしかった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
離々として
鬱々
(
うつうつ
)
として春の草
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
かけてやり啼かせるようにした大抵快晴の日の方がよく啼くので天気の悪い日は従って春琴も気むずかしくなった天鼓の啼くのは冬の末より春にかけてが最も
頻繁
(
ひんぱん
)
で夏に至ると追い追い回数が少くなり春琴も次第に
鬱々
(
うつうつ
)
とする日が多かった。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
鬱々
(
うつうつ
)
たり
盧溝
(
ろこう
)
の北。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
背後には
鬱々
(
うつうつ
)
と茂った山が、夜空に
矗々
(
ちくちく
)
と
聳
(
そび
)
えている。明るい美しい陽はないが、その代り満天の星の数が、
豹
(
ひょう
)
の眼のように光っている。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
再び
鬱々
(
うつうつ
)
の日来たり、約一年半、父や叔父の読み古した軍記、文学、講談などの雑誌に埋れて夢を見続けていた。
簡略自伝
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
と、歎声を発し、果ては、身もだえせぬばかり、玄蕃允の
我意
(
がい
)
を
罵
(
ののし
)
っておられる——という
帷幕
(
いばく
)
の内紛が洩れるに至って、中軍の士気も何となく
鬱々
(
うつうつ
)
と重く
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分は何という大きなうそをついていたことであろう、筒井は終日、
鬱々
(
うつうつ
)
としてそれらの
愉
(
たの
)
しかった水郷の家のことが、心におおいかかって来てならなかった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
それより照子、
鬱々
(
うつうつ
)
として
愉
(
たのし
)
まず、
愁眉
(
しゅうび
)
容易に開けざるにぞ、在原夫人は
語
(
ことば
)
を尽して、
賺
(
すか
)
しても、慰めても頭痛がするとて額を
押
(
おさ
)
え、弱果てて見えたまえば、見るに見かねて
侍女等
(
こしもとども
)
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一同はそれらの小屋をも後にして俗に千本桜といわれた桜の立木の間をくぐり抜け、
金竜山
(
きんりゅうざん
)
境内の裏手へ出るとそぞろ本山開基の昔を思わせるほどの大木が
鬱々
(
うつうつ
)
として
生
(
おい
)
茂っている。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
俺の記憶にあるかぎりでは、ただの一度も
愛
(
いと
)
しらしい言葉を掛けられたこともなかッたから、俺はもう生涯誰からも愛されることはないのだと断じこみ、はかないあきらめを抱いて
鬱々
(
うつうつ
)
としていた。
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
鬱々
(
うつうつ
)
と花暗く人病みにけり
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
その土塀の内側には、
常磐木
(
ときわぎ
)
が
鬱々
(
うつうつ
)
と
籠
(
こも
)
っている。で、屋敷の構内の、どの部屋で講義をしようとも、声は外界へは聞こえないであろう。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
戴宗の報告を聞きすました満座の
眉色
(
びしょく
)
は、一瞬、しいんと恩人の受難を
傷
(
いた
)
み、また
鬱々
(
うつうつ
)
たる義憤に燃えた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
きょうも
鬱々
(
うつうつ
)
としてまた愉しく、何度も置きかえ、置く場所をえらび、光線の来るところに誘われて運び、或いはどうしても一個の形態でさだまらない場合、二つあてを捉え
陶古の女人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
拝殿
(
はいでん
)
の
裏崕
(
うらがけ
)
には
鬱々
(
うつうつ
)
たる其の公園の森を
負
(
お
)
ひながら、
広前
(
ひろまえ
)
は一面、
真空
(
まそら
)
なる太陽に、
礫
(
こいし
)
の影一つなく、
唯
(
ただ
)
白紙
(
しらかみ
)
を
敷詰
(
しきつ
)
めた
光景
(
ありさま
)
なのが、
日射
(
ひざし
)
に、やゝ
黄
(
きば
)
んで、
渺
(
びょう
)
として、
何処
(
どこ
)
から散つたか
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
広重は
顔見世乗込
(
かおみせのりこみ
)
の雑沓、茶屋
飾付
(
かざりつけ
)
の壮観を
外
(
よそ
)
にして、待乳山の老樹
鬱々
(
うつうつ
)
たる間より唯
幾旒
(
いくりゅう
)
となき
幟
(
のぼり
)
の貧しき
鱗葺
(
こけらぶき
)
の屋根の上に
飜
(
ひるがえ
)
るさまを以て足れりとなし、また
芝居木戸前
(
しばいきどまえ
)
の光景を示すには
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
鬱々
(
うつうつ
)
と人病む家の夕桜
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
しかし不動のその姿からは形容に絶した一道の殺気が
鬱々
(
うつうつ
)
として
迸
(
ほとば
)
しっている。どだい武道から云う時はまるで勝負にはならないのであった。
三甚内
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
なにかといえば、それは春も半ばの頃、かねてから遺恨
鬱々
(
うつうつ
)
と時をうかがっていた
曾頭市
(
そうとうし
)
の豪族、曾一門を討って亡き前の総統
晁蓋
(
ちょうがい
)
の無念ばらしをしたことだった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
拝殿の
裏崕
(
うらがけ
)
には
鬱々
(
うつうつ
)
たるその公園の森を負いながら、
広前
(
ひろまえ
)
は一面、
真空
(
まそら
)
なる太陽に、
礫
(
こいし
)
の影一つなく、ただ
白紙
(
しらかみ
)
を敷詰めた
光景
(
ありさま
)
なのが、
日射
(
ひざし
)
に、やや
黄
(
きば
)
んで、
渺
(
びょう
)
として、どこから散ったか
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
異人は
岩頭
(
がんとう
)
に坐っている。前には大河が泡を噛んで大蛇のように走っている。それらのものの
背後
(
うしろ
)
には、
鬱々
(
うつうつ
)
と茂った緑の山が、すくすくと空に
聳
(
そび
)
えている。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
秋もいつか十月を過ぎ、
肥馬
(
ひば
)
天に
嘶
(
いなな
)
くときを、その将軍の宮は、神泉苑の御所のふかくに、若さと智と、また多血から来る
鬱々
(
うつうつ
)
な
忿懣
(
ふんまん
)
とをやりばなくしておいでだった。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
で、嘉門はこのごろ中は、家にばかり
鬱々
(
うつうつ
)
と引き籠もっていて、朝に昼に晩に飲酒ばかりしていた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いまさらのようなものだが、こんなさいの民主政体のまどろさには
鬱々
(
うつうつ
)
とせずにいられない。
随筆 私本太平記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
思えば今年の夏のこと、兄甚三に送られて、この曠野まで来た時には、緑が
鬱々
(
うつうつ
)
と茂っていた。その時甚内の乞うに
委
(
まか
)
せ、甚三の唄った追分節は、今も耳に残っていた。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これでみても、すでに将士のあいだでも、足利家のうちに
鬱々
(
うつうつ
)
とこもっていた長年月が、なんとはなく今日という日を待って、いまや爆発寸前の異常をおびていたもののようだった。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
石秀と街で別れて、彼はそっちへ出向いたが、
鬱々
(
うつうつ
)
と、腹が煮えてたまらない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
咳
(
しわぶき
)
も立てず物も云わぬ! 訓練されたる薩摩武士、武者押しとしてはまことに堂々、しかも殺気は
鬱々
(
うつうつ
)
と立ち、意気は盛ん、油断はなく、敵の城下を押し通るのに、臆した様子は少しもない。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
が、今日の旅路を
鬱々
(
うつうつ
)
と、そんな先案じにとらわれている彼でもなかった。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鬱
常用漢字
中学
部首:⾿
29画
々
3画
“鬱々”で始まる語句
鬱々葱々